「大手企業からスタートアップへ」という転職が、スタンダードになってきました。
ところが、私たちカケハシのような医療スタートアップへの転職は、まだまだ一般的ではないように思います。もしかしたら、プロダクトや事業ドメインの専門性の高さが心理的ハードルになってしまっているのかもしれません。
社内を見渡してみると、全く異業種からカケハシへ転職し、活躍しているメンバーも多く在籍しています。LINEを活用した患者さんと薬剤師のコミュニケーションツール「Pocket Musubi」の開発を手がけているエンジニア・種岡篤志もそのひとり。
全くの異業種、しかも上場企業にてエンジニアとして活躍していた種岡は、なぜカケハシを選んだのでしょうか。そこには社会課題と向き合うことを決心したエンジニアとしての覚悟がありました。
医療業界でテクノロジーを駆使して社会問題と向き合う意義
— まず、カケハシへ転職した経緯から教えてください。
前職では「食べログ」などを運営するカカクコムにて、新規事業サービスを手がける部署にいました。いくつもの新サービス開発に関わってはきましたが、特に医療系のサービスに携わった経験はありません。
カケハシへの転職理由は2つ。1つは、もともと大学時代に生命工学という学問を専攻していたこともあり、バイオテクノロジーや医療技術に興味があったから。もう1つは、エンジニアとして医療問題と向き合う意義を感じたからです。
— というと?
少子高齢化が進み、65歳以上の人口がピークになることで起こりうると言われる「2040年問題」。当然今より健康面の課題を抱える人は増えるだろうし、避けられることはないと思います。まだ今は潜在化している部分が多いけど、ここ数年でより顕在化していくのではないでしょうか。そういう意味で、医療業界に身を置き、エンジニアとしてテクノロジーを駆使して課題解決していくことには大きな意義があるように感じました。
— 数ある医療スタートアップの中でカケハシを選んだのには、どういう想いがあったのでしょう?
きっかけは、CTOの海老原と面談したときに「ゼロベースで今まさに開発を進めようとしている患者さん向けプロダクトがある」という話を聞いたことです。0→1のフェーズに入っていくことはエンジニアとしてのキャリアとしても非常に意味があると感じました。
というのも、前職では新規事業には関わっていたものの、いつもリリース少し前にチームに入ることがほとんど。リリースとその後の運用に関わることは多かったのですが、0→1の醍醐味を感じるようなフェーズには立ち会えていませんでした。
一方で、トップダウンではなく自分たちでKPIを決めて、トライ&エラーを繰り返していくような新規事業ならではの仕事の進め方はすごく肌に合っていて。残念ながら私が関わっていたサービスの成長はすでに頭打ち状態だったのですが、プロダクトの成長と自分の成長が比例するような環境、エンジニアとして技術だけではなくビジネスへのコミットが求められるような環境にはおもしろさを感じていました。「0→1に関われる」、「プロダクトの成長を自分の成長につなげられる」。その2点がカケハシを選んだ理由です。
属人化されたナレッジが飛び交うチームはダサい
— 当時100名規模だったカケハシへの入社に抵抗はなかったですか?
それは全くないですね(笑)。私もエンジニアのはしくれなので、自分にそれなりのスキルがあれば、仮にカケハシのビジネスがうまくいかなかったとしても、路頭に迷うようなことはないと思っていましたから。
むしろそのリスクを防ぐためにチャレンジしないことよりも、先ほどお伝えしたような社会課題に向き合うことで得られる経験値のほうが圧倒的に大きいですし、医療スタートアップのプロダクトにゼロベースで関わることのメリットの方がエンジニアとしては魅力でした。
— 入社後の話も教えてください。入社以降「こんなはずではなかった!」と感じたことはありませんでしたか?
それも全くないです(笑)。海老原から言われていたように入社後は当時新プロダクトだったPocket Musubiのチームにジョインして、それ以来、業界のDXのど真ん中にいるようなワクワクを毎日味わえていますので。そもそもカケハシのビジョンと自分のやりたいことが一致していたので、今後も大きな乖離は生まれないと思っています。
— 言語という点ではいかがでしょう?
それは全く変わりました。カケハシはPythonとTypeScriptがメインの言語なのですが、私はどちらも使ったことがなかったので。ただ、エンジニアにとって大切なのは、言語ではなくもう少し上位概念であるフレームワークへの理解だと思っていて。少なくともカケハシには転職して扱う言語が変わったことで苦労したようなメンバーはいないように思います。そもそも知らない言語は学べばいいし、学ぶこともさほど苦にならないので。
— 逆に、入社して気づいたカケハシの魅力はありますか?
バリューにも掲げている「情報対称性」ですね。仮に情報が非対称だと業務が属人化してしまうんですが、私は「その人じゃないとわからない」みたいな状況がすごくダサくて嫌いなんです。ナレッジシェアができていないと、なかなか休みが取れないですし、いつ誰かが体調を崩すかわからない現代にその働き方はナンセンスすぎますよね。
— 情報対称性を担保し、チーム全体のレベルを上げるために種岡さん自身が意識して実践していることがあったら教えてください。
チームで何かトライすることに尽きると思います。あれやこれやと施策を考えることももちろん大切なのですが、結局チームで実際に動くことが一番効果的だし、チームからの評価も高いですね。何より副次的な効果が大きい。
エンジニアはそれぞれバックグラウンドも得意分野もさまざまですが、だからこそ一緒にトライすることで「ここは自分が得意なので一緒にやりましょう。その代わりこちらのサポートをお願いします」といったコミュニケーションが生まれ、チームにおけるスキルの積み上げになるし、情報対称性、さらにはサービスへのコミットも強くなっていきますからね。
DXど真ん中の手応えを、カケハシで
— Pocket Musubiの開発でこだわった点があったら教えてください。
大きく分けて3つあります。
1つ目は、患者さんと薬剤師の2つの視点で物事を考えることです。カケハシにはMusubiという主力プロダクトがあるのですが、薬剤師の業務に特化しているサービスです。対してPocket Musubiは薬剤師とその先にいる患者さん向けのいわゆるBtoBtoCのサービスなので、薬剤師だけではなく患者さんの目線も非常に大切になってきています。
ただ、社内に有資格者がいる薬剤師はまだしも、患者さんの視点はそう簡単に身につくものではないので、カケハシが懇意にしている薬局にエンジニアが訪問して、Pocket Musubiの使われ方や患者さんの薬局での動き方などを見に行ったことがありました。コロナ禍になってからはなかなか足を運びづらくなっていますが、目線を上げるためにプロダクトマネージャーとのコミュニケーションは欠かせません。
2つ目は、エンジニアがサービスにコミットすることです。先ほども少し触れましたが、エンジニアの中には「エンジニアリングや技術に特化したい」というタイプも少なくありません。ただ、新規事業のエンジニアであれば技術力を持ち合わせていることは大前提として、プロダクトの戦略や方針にコミットしていくべき。むしろプロダクトの成長にアイデアを出せることこそが、醍醐味だと思うんですよね。サービスにコミットするエンジニアをもっと増やすために、個人的にも啓発に取り組んでいます。
3つ目は、こちらも先ほど少し触れましたが、チーム開発の視点を持つことです。このさき先私たちが向き合っていく課題はどんどん複雑化し、誰か一人の力で解決してきたものがチームの集合知でようやく太刀打ちできる時代へと移り変わっていくでしょう。先ほどご紹介した「情報対称性」に代表されるようなカケハシの6つのバリューも、結局のところ「チームで最高のパフォーマンスを上げるための6つの観点」と言い換えられます。
「患者さんと薬剤師の2つの視点」「エンジニアとしてのサービスへのコミット」そして「チーム開発の観点」、この3つがなければ今のPocket Musubiは存在していなかったと思います。
— ちなみに、実際に薬局訪問したからこそ気づけたことってありますか?
最近、患者さんが処方せんを写真に撮ってLINEで送る処方せん送信という機能をリリースしました。患者さんから処方せんが届くと薬局で「処方せんが届きましたよ」という通知音が鳴るようにしているのですが、実際に病院前にある薬局(門前薬局)に訪問して「薬局が想像以上に賑やか」な場合もあるということに驚きました。
薬剤師は患者さんと話していたり、常に動き回っていたりするので、通知音だけでは気づいてもらえないこともままある。ただ単に音量を大きくするだけでは意味がないので、「アクセントがある通知音に変更しよう」という結論になったのですが、リアリティーのある課題に気づけたのは薬局に訪問したからこそだと言えるのではないでしょうか。
— いろいろと聞いてきましたが、カケハシのエンジニアとして活躍するための条件があるとしたら何だと思いますか?
やはりチーム開発するための共感力が高い人が向いているように思います。そもそもチームで戦うことに価値を感じているメンバーばかりなので、同じ志向の方が成果が出しやすいのは誰の目にも明らかです。チームで課題解決に向き合っていくスタンスの方であれば、ぜひPocket Musubiのさらなる成長にコミットしていただきたいですね。
改めてですが、カケハシに入社して感じるのは「DXのど真ん中に携わっている」という手応えです。さらにPocket Musubiの場合は単に業務効率化だけではなく、薬剤師のマインドの醸成にも大きく寄与していると思っていて。Pocket Musubiを通した薬局外での患者さんとのコミュニケーションによって、これまで患者さんから聞き出せていなかった課題が顕在化していくわけです。
自分たちが当たり前だと思っていたことがそうでなかったり、伝えたつもりがうまく伝わっていなかったりといったことがファクトとして明らかになっていきます。だからより深い指導ができるし、それによって患者さんと薬剤師の関係性も深まっていく。
薬剤師というと薬を渡すことに焦点がいきがちですが、薬学的知見を活かして働くことでより大きなやり甲斐を感じている人も多いようです。「薬局はこのままではいけない」と思っている薬剤師の背中を押すようなプロダクトへと一緒に育てていけたら嬉しいです。