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9月からスタートしたインタビューシリーズ。
前回は、日本を飛び出してインドへ。
そして第四弾となる今回は、社内を飛び出して社外へ。
ご登場いただいたのは、アイティップスにとって初契約となる「坪井利三郎商店」の代表取締役社長 坪井健一郎様。
「坪井利三郎商店」は創業明治35年、なんと120年の歴史を持つ愛知県の建築会社です。
契約企業様に直接お話を伺う大変貴重な機会となりました。
改めまして、この場でお礼をお伝えしたいと思います。
ありがとうございました。
目次
- 日本で働く外国人労働者問題、皆さんは何を思い浮かべますか?
- 「送り出し機関への手数料制度」に対する解決の仕組みとは?
- 坪井健一郎代表取締役社長様へのインタビュー
- 賛同いただいた点と不安な点
- 外国人材のキャリアについて
- 外国人材採用を足掛かりに、海外展開へ
さて、インタビューに入る前に、皆さんにお聞きしたいことがあります。
日本で働く外国人労働者問題、皆さんは何を思い浮かべますか?
- 厳しい就業環境
- 人権侵害
- 給与未払い
- 転職ができない
- 失踪率が高い
- 送り出し機関への手数料制度
- 母国で抱える大量の借金 ・・・
このような問題が報道されています。
なかでも私たち、アイティップスでは「送り出し機関への手数料制度」により借金を抱えて入国する実習生の実態を重要問題としてとらえ、
「外国人材の金銭的負担を減らし、特定技能人材として日本へ送り込む仕組みづくり」に、今まさに取り組んでいます。
参照元:技能実習生の支払い費用に関する実態調査の結果について(法務省)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001377469.pdf
※フィリピンでは、法律で規定された手数料以外の支払いは禁止されている。
参照元:技能実習生の支払い費用に関する実態調査の結果について (法務省)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001377469.pdf
※フィリピンでは、法律で手数料の上限が定められている。
「送り出し機関への手数料制度」に対する解決の仕組みとは?
「すべてのがんばる人に、幸せを」これがアイティップスのミッションです。
インドでは、建設作業員として従事する人のほとんどが貧しい農村部出身の若者たちです。私たちは日本を目指す彼らの負担を少しでも軽くする育成モデルの構築を目指しています。
アイティップスの特徴の一つが、インドに自前の訓練校と建設現場があることです。
将来日本で働く訓練生はみな、この訓練校で基礎的な建築技術、日本語、そして日本的習慣やルールを学びます。
さらに、彼らは訓練校の生徒としてだけではなく、建築作業員として、インド国内の日系ゼネコンの建築現場で実践を積みます。現場での実践中、彼らには賃金が支払われます。この賃金と訓練費用を相殺することで、訓練生の実質負担額をゼロにしようという仕組みです(※)。
(※本年度の訓練生の訓練費はすべて無料、住居及び食事もすべてアイティップスが負担)
さらに、訓練生は、技能実習制度ではなく、特定技能制度を活用することで、現地の送り出し機関を通さず、直接日本の受け入れ企業と雇用契約を結ぶことができます。
これにより、彼らは手数料を支払うことなく(借金をせず)日本の企業で働くことができます。
坪井健一郎代表取締役社長様へのインタビュー
さて、ここからは、私たちが運営する職業訓練校の卒業生二名の採用を決めた「坪井利三郎商店」の坪井健一郎代表取締役社長様へのインタビューになります。
採用に至った経緯、ぶっちゃけ不安点、外国人材に期待することなどをお伺いしました。
小西:
まずは今回、インド人材二名をを採用するに至った経緯をお聞かせください。
坪井社長:
実は過去にベトナム人の技能実習生を採用したことがありました。しかし、日本での就業年数の制限や業務が限定されていることもあり、残念ながら定着しませんでした。
一般的に人材不足を解決するために、外国人材を採用することが多いですが、弊社は新卒採用者も多く、また職人を社員として多く抱えているため、人材については実は困っていません。
むしろ、新しいチャレンジ、そして将来の海外展開なども見越して外国人材の採用を検討しているときに、ラトネッシュさんと出会いました。
小西:
過去に技能実習生を採用されたご経験があるのですね。
その時のご経験や、将来の海外展開についてもお伺いしたいのですが、
まずは、ラトネッシュとの出会いから、アイティップスの取り組みのどのような部分に賛同いただき、インド人材の採用に至ったかお聞かせください。
賛同いただいた点と不安点
坪井社長:
ラトネッシュさんからお話を伺い、
アイティップスさんの輩出する人材は、「技能実習生」ではなく「特定技能」であること、
また、来日する人材に借金を負わせる「送り出し機関への手数料制度」という解決が難しい構造的な問題を、自分たちの事業の仕組みで解決するその姿勢と事業モデルに賛同しました。
小西:
ありがとうございます。
受け入れ企業・働く外国人材、双方にとってプラスになる関係性こそが、外国人材と共生していく上で大事であると考えています。
坪井社長:
ただ、実は、ちょっと不安要素もあります・・・
社内からも外国人材の採用は賛成だが、「インド」となると国民性の違い・習慣の違いなど不安視する意見があったのは事実です。
小西:
確かに・・・
時間の感覚ひとつとっても日本とインドでは極端に違う気がします。
また、ルールを守ることは日本人なら小さいころから当たり前のように刷り込まれてきましたが、その当たり前の捉え方がインドと日本では大きく異なりそうです。
坪井社長:
建築現場は常に危険と隣り合わせ。
時間を守ること・約束を守ること、協調性を持つことはとても重要です。
採用したお二人には、建築技術や日本語能力は働き始めたら身についていくので今の段階ではそこまで期待していないのです。
何より期待するのは、「時間を守る・約束を守る」といった日本で働くうえでのあたり前のルールを習得していることです。
(キャプション)社寺営繕・建築事業現場(坪井利三郎商店オフィシャルサイトより)
小西:
実際インドのアイティップス社と訓練校に訪問いただくと聞きました。
坪井社長:
はい、私の目でしっかり訓練校の様子を拝見し、「共に働くにあたって安心できる人材であること」を、社内には共有したいと思います!
外国人材のキャリアについて
小西:
実際に、採用後どのような業務からスタートするのでしょうか?
坪井社長:
まずは板金業から、その後屋根工事業務を担当することを想定しています。
そこは新卒の日本人と同様です。その後適性を見て、多能的な業務に携わってもらえればと思います。
小西:
建築業における多能工化は労働力不足の解決として建築業界全体で取り組まれていますね。
特定技能をもつ外国人材には、多能工についても期待されていますか?
坪井社長:
そうですね。技能実習生は、日本での就業期間が短く、またできる業務も限られています。従って単能工的な仕事しか担当できない制約がありました。
でも特定技能はその制約がないので、業務の幅は広がると思います。
今は建築物も多様化しており、例えば屋根ひとつとってもソーラーシステムや断熱性などの機能面はもちろん、建築素材も多様化しています。
私たち建築業者は、技術や見方を時代に合わせて多様化していかなくてはならないと思っています。
(キャプション)太陽光・エネルギー事業(坪井利三郎商店オフィシャルサイトより)
小西:
多様な技術を取得することで、将来キャリアの選択肢が増えるのは、日本人に限らず外国人材にとっても、有益なことだと思います。
まだまだ認定されている人数は少ないですが、特定技能1号から2号へステップアップした外国人材が、日本の建築業を支える将来は遠くはないかもしれません。
坪井社長:
働く本人の意思を尊重し目指す将来像を実現するため、キャリアを見える化することは私どもの会社では重要な取り組みと位置付けています。
もちろん外国人材においても同様にキャリア形成を支援していきます。
小西:
坪井様のそのようなお考えを聞いたら、
今回採用いただいた二名は、自分たちが「イチ労働者」としてだけではなく「坪井利三郎商店のメンバー」として扱ってくれていると実感すると思います。ありがたいことです。
坪井社長:
さらに、建築業は「地産地消」といわれています。
小西:
「地産地消」といえば農業・食をイメージしますが、建築業と関係するのですか?
坪井社長:
その土地の労働力、その土地の建材を使い、建築物を完成させるという点で「地産地消」と言えます。
弊社で働く外国人材には、仕事を通して学んだ技術を自国に継承し、その土地のヒト・モノを活用して建築に活かしてほしいとも思います。
外国人材採用を足掛かりに、海外展開へ
小西:
日本技術の海外への継承という点は、まさにアイティップスの事業と通じるところがありますね。
そして、冒頭の経緯をご説明いただいた際に、「将来的に海外展開」というフレーズがありましたが、最後にその点を少しお聞かせください。
坪井社長:
海外での事業は、過去には依頼ベースで単発的に請けたことはあります。
ただ今後は、長期的な目線で海外展開を視野に入れています。
現地法人・現地日本法人からの委託業務だけではなく宮大工の技術継承や、育てたインド人材とともにインドでの事業に挑戦していく、といった将来像も思い描いています。
小西:
アイティップスとしても、日本の建設会社様が、足元の人材不足の一助としてインド人材を受け入れるだけではなく、より長期的な視点をもって、日本のインフラ技術を輸出し外貨を稼ぐために、外国人材を加えた混合チームを構築して頂きたいと考えています。
日本の技術・完成品のクオリティの高さ、そこにたどり着くまでのプロセスも含め、海外から評価される日が来ると信じています。
そして、今回採用いただいたインド人材の二人が御社の事業に貢献することを切に祈っています。
彼らの働きっぷりをインタビューできる日が来れば、その際はまたご登場よろしくお願いいたします。
この度はインタビューにご対応いただきありがとうございました。