インヴァスト株式会社で事業推進部に所属し、1月13日にリニューアルされた「お金と投資」の学習アプリBibroの開発にBizリードとして参画した鎌田奈緒氏にお話を伺いました。
新Bibroで強化されたポイントや苦労した点、また開発の裏側など幅広く語っていただいています。
新Bibroは投資関連コンテンツアプリとして国内ナンバーワンを目指す
-1月13日に「お金と投資」の学習アプリ「Bibro」をリニューアルしました。今回の新バージョンについて特徴を教えてください。
Bibroは2022年3月に最初のバージョンを発表しましたので、今回が2回目のリリースとなり前バージョンから大きく3つの点を強化しました。
まず、パーソナライズ機能の精度向上が最も大きな改良ポイントとなっています。前バージョンではコンテンツ紹介のルートがある程度決まっており、ユーザーが最初にグルーピングされた段階でどのルートを辿るか決まってしまっていたんですね。
でも、今回の新バージョンでは書籍の要約を読めば読むほどマッチング精度が高まるロジックを組み込んでいますので、アプリを使うほどパーソナライズの度合いが高まっていくのが特徴になっています。コンテンツのパーソナライズはBibroが提供する大きな価値のひとつだと考えており、今回のリニューアルでかなり精度が向上したと感じています。
また搭載コンテンツ(紹介する書籍)が大きく増加しました。最初のバージョンでは書籍数が不足しているというご指摘を多くいただいていたので、コンテンツの拡充はメインテーマのひとつだったんです。
前バージョンで10数個程度だった書籍数は今回60以上にまで増えており、その後も随時更新・追加していますので5倍以上になっています。なるべく早い段階で金融・経済・投資関連コンテンツ搭載アプリとして国内でナンバーワンを目指したいと考えています。
3点目がユーザー参加できる仕組みの導入で、クイズやステータスを追加しました。前バージョンは利用者が受け身で使う性格が強かったので、新バージョンではクイズやアンケートなどアクションを求める機能を搭載したんです。
アンケートには例えば投資におけるリスク許容度について「このコンテンツを読んで、もう少し大胆に投資するスタイルでもいいと思いましたか?」など意識の変化を問う設問も含めています。回答によってユーザーのステータスを「堅実」「アグレッシブ」、投資についての知識を「深い」「スターター」といった形で可視化できるようになっているんです。
ステータスは「入門・初心者」から「熟達」「求道者」などいくつものクラスに発展していきますから、ユーザーの皆さんにはクラスアップをアプリの利用動機にしていただければいいなと考えています。
それから機能の追加ではありませんがアプリのインターフェースもかなり改善させました。前バージョンでは動作が重いという指摘が届いていたので、モッサリ感を解消したり画面が遷移する際の動き方を改良したんです。
文字が小さくて読みづらい、記事が長すぎるなどの意見もありましたから、フォント数や色の調整で読みやすさを追求したり、コンテンツの文字数を調整するなどの対策も取り入れています。
-1月13日に発表されて以降、評判はいかがですか?
リリースしてからまだ1ヶ月経っておらず、現在は初期ユーザーの皆様から意見を集めているところなのですが、前バージョンよりかなり良いという評価を数多くいただいています。
「これまでにあまり体験したことがないサービスだ」「自分では手に取らなかっただろう書籍に出会えた」という声も聞かれています。特に多いのが「投資を勉強したいがどうすればよいかわからないユーザーにはとても良いサービスだと思う」という意見ですね。
アプリの使用感も前バージョンで目立っていた不評が今のところゼロですから、ユーザーインターフェースに関しても改良の効果が出ていると考えています。
開発チームには業務委託が多数、社員より権限持つエンジニアも
-新バージョンを開発するに当たり、前バージョンの反省点として意識していたのはどのような点でしたか?
アプリの中身については、全体的にアンバランスだったという点が前バージョンにおける社内共通の認識でした。圧倒的に不足している部分があったり、一方では使われない機能が盛り込まれていたり。
紹介するコンテンツの数が不十分でしたし、パーソナライズ機能も弱かったですから。ユーザーひとりひとりにマッチするコンテンツを紹介するというBibroのコアになる提供価値を大きく拡充していく必要がありました。
逆に、使われないのに搭載してしまっていた機能としてチャットがありました。アプリ利用後にユーザーが疑問に感じた点を質問できる機能でしたが、利用率が低かったんです。そこで、チャット機能は今回の新バージョンから外しています。
全体的に、前バージョンでは「パーソナライズした、あなたに合ったコンテンツを」というBibroの提供価値を十分に実現できていなかったのが反省点で、開発メンバーで何度も話し合い「届けたい価値ってなんだっけ?」という部分からBibroの本来あるべき姿を見定めていった形です。
-今回のバージョンはいつ頃から開発がスタートしたのでしょう。
去年の夏くらいから開発に取り掛かりました。2022年3月に前バージョンをリリースしてから3ヶ月ほどはユーザーインタビューなど調査期間に充て、夏にかけて検証と課題の抽出及び再検討を行ったんです。
ブレストを繰り返し7月頃から新バージョンの開発に取り組んで、約5ヶ月程度かけて完成させるというスケジュールでした。前バージョンの方がもう少し長くかかりましたから、今回は順調に開発できたという印象ですね。
というのも、前回はBibroとして初のリリースでしたからチームも大所帯で、外部の方の意見も伺いながら手探りで進めていく必要があったんです。今回は前バージョンで判明した課題を解決するという形のプロジェクトでしたから、手探りというわけではなかった点がスムーズに開発できた要因のひとつだったのだろうと考えています。
-開発チームの構成を教えてください。
開発チームはエンジニアチームとビジネスチームから構成され、エンジニアチームはリードエンジニアのほか5名とインターンが参加し、インヴァスト社員がPdMを担当しました。ビジネスチームは私以外にインヴァストから伊藤が担当したほか、外部からコンテンツディレクターに加わってもらいました。
プロジェクトのトップとして鶴見常務も実務まで関わっていましたので、合計10名強で進めた形ですね。
-開発チームのエンジニアは社員でしたかそれとも外部のスタッフでしたか。
インヴァストは社員だけでなく業務委託も積極的に活用していますので、エンジニアはリードエンジニア含め、5名のエンジニアも業務委託の方にお願いしました。
鶴見常務が先日の取材記事で「業務委託の方のほうが社員より権限を持っている場合も珍しくありません」と述べていましたが、Bibro開発チームでも業務委託の方にリードエンジニアとしてプロジェクトを引っ張っていただきました。
チームとしての一体感が強く充実した開発期間、力不足感じたことも
-開発で苦労した点についてお聞きしたいと思います。
前バージョンの開発では紹介する書籍について使用許諾を取るのに苦労しました。でも、今回は権利関係や手続き、編集に明るいコンテンツディレクターに参画していただいたので、前バージョンの時のような苦労はありませんでした。
それから前回は最初のバージョンでしたから、全く何もない状態で資料だけ持って許可を得るために動いていたので難航したケースが少なくなかったんですね。今回は既にアプリが存在していますから「こんな形で紹介したいです」とお話することで前回より安心感を持って判断いただくことができたという点も小さくなかったと考えています。
コンテンツの拡充はリリース後も続けており、現在も書籍の使用許諾を取る作業を行っていますが、権利者との交渉はとてもスムーズに進んでいます。
苦労した点としては、マッチングロジックを組むためのユーザーステータス数値の設定やクラスチェンジに関連する診断の中身を作る作業でしょうか。私を含むビジネスチームが担当しましたが、Bibroとしての基準を生み出す重要な作業でしたから、何週間もかかってしまったんです。
マッチングロジックなどベースとなる部分がずれてしまうと、アプリのデザインやインターフェースが良くても中身が的はずれになってしまうためです。ただ、チーム内で活発にマッチングロジック等についての意見交換をしながら進められたので、とても助かりました。
-開発を通じて、印象に残ったエピソードを教えてください。
今回の開発プロジェクトはポジティブな思い出が多かったのが印象的でした。定例MTGではとても建設的な意見が出て、エンジニアチームも技術的な要件だけでなくビジネスチームの業務について理解した上でアドバイスしてくれたんです。
ですから開発からの指摘で気付かされたというシーンも多く、チームとしての一体感をかなり感じることができました。エンジニアチームとビジネスチームの意見が対立して開発チーム全体がギスギスしてしまうケースも少なくないと思いますが、精神的なストレスを感じずにとても前向きに進めることができ充実していたという印象ですね。
一方で、私の個人的な力不足を感じる局面もかなり多かったと感じています。ビジネスチームで詰めた機能の要件や仕様が、決定に近い段階で作業漏れの発覚から仕様変更につながってしまったという事態があったり。
自分の視野の狭さや想像力の不足、開発チームへの影響について十分に理解できておらず先に考えておかなければいけなかったのが後手に回ってしまったということもありました。そういった点については反省しています。
昨年、外部講師からプロジェクトマネジメントのセミナーを受講する機会があったんですね。プロジェクト推進の基本を学べる場で、スケジュールの立て方や進捗の確認などプロジェクトマネジメントについてのノウハウを身につけることができましたが、実際のプロジェクトつまり実践の場で思い通りに進められたとまでは言えなかったのが悔しい思い出です。
-新Bibroに関して、これだけはお話しておきたいという点はありますか?
新バージョンをリリースし納得できるアプリを出せたと思っていますが、Bibroはこれが完成形ではなく発展途上なんです。どんどん良くしていくためのシナリオが社内にはまだたくさんありますから、これからの進化にも期待しながら利用していただけたらうれしいです。
インヴァストは女性にも活躍しやすい環境、社内を明るく賑やかにしたい
-鎌田さんにとって2022年はどんな年でしたか?
あっという間に過ぎた1年でした。2022年はBibroの前バージョンリリースと今回のバージョンの準備に追われましたし、社内ではそれ以外のプロジェクトにも関わらせていただいたんですね。一瞬で終わってしまった年、という印象です。
でも、忙しかったとか大変だったとは感じませんでした。インヴァストの働きやすい制度も影響しているのではないかと考えています。
私の場合、小さな子供がいますのでお迎えの時間に合わせてフレックスタイムを使ったり、子どもが体調不良になった場合にはリモートワークで働くなどプライベートに合わせた仕事のペースを組み立てることができたんです。
また夜の落ち着いた時間に仕事したりなど、公私両面でストレスを感じることなく過ごせたのが大きかったと思います。
事業開発の業務はコミュニケーションが活発な方が円滑に進むという面がありますので基本的には出社することが多いのですが、いざという場合にリモートワークに切り替えたり、フレックスタイムで早く帰宅したりといったことが可能なのは心理的にも安心できます。
-2023年はどんな年にしたいですか?
2022年はがむしゃらに進めてきた面も大きく、成長を実感できた一方で力不足を感じる場面も多くありました。むしろ力不足だなと思うことの方が多かったので、今年は自分の成長を去年より感じられるような1年にしていきたいと思っています。
インヴァストでは複数のプロジェクトが立ち上がっていますし、昨年末にはアルカドの設立も発表しました。やるべきことはまだまだ増えていきますので、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。
-新しく仲間として一緒に働きたいと考える方に対してメッセージをお願いします。
インヴァストは女性だからといって活躍の幅が狭まってしまうことが一切ない会社です。もちろん、男性にとっても活躍しやすい職場ですし、男性・女性に関わりなく能力とやる気があれば誰にとっても働きやすいと言って良いと思います。
女性の比率はインヴァスト全体で約25%とまだ多くはありませんから、女子会を開催できるよう、女性の方にも入社していただきたいですね。インヴァストではリモートワークも多く、オフィスが静かなので、コミュニケーションを取るのが好きな方と一緒に、社内を明るく賑やかにしていきたいです。
(取材日:2023年2月6日 聞き手:垣本陸)