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あまりに綺麗な完結作でこれがシリーズ最終作で全然ありです『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』感想

こんにちは。映画を語るサロンのKKです。

今月は今年の1月に劇場公開された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の感想について投稿したいと思います。

この感想は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を鑑賞していることを前提にしているので、未視聴の方はネタバレにご注意下さい。




前作の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で戦ったミステリオによって正体が世界中にバレてしまったピーター・パーカーはメディアやニューヨーク市民、当局によって彼の今までのヒーロー活動の是非を問われるようになってしまいました。彼女のMJと親友のネッドと一緒にMIT(マサチューセッツ工科大学)を受けますが、スパイダーマン騒ぎのせいで3人共が入学を拒否されてしまいます。
無関係の二人を巻き込んでしまったことに罪悪感を感じるピーターはドクター・ストレンジに頼んで世界中の人がピーターがスパイダーマンであることを忘れる魔法をかけてもらいますが、その魔法が失敗してしまいます。この魔法の失敗が原因で別の世界からピーターの正体を知っている人間が彼らの世界へやってきてしまい、しかも彼らは全員スパイダーマンと戦ったヴィランでした。彼らは意図せず超人的な力を持って暴走して悪者となってしまったため、ピーターは彼らを治してから元の世界に帰そうとしますが、多次元宇宙(マルチバース)の運命を変えてしまうと主張するドクター・ストレンジと対立することになります。



以前の映画感想記事でも書きましたが、スパイダーマンは3シリーズの実写映画化が行われており、興味がない人にとってどんな違いがあるのか分からないということも発生してしまうややこしい作品です。
しかし、それには大人の事情というものがあるせいです。スパイダーマンとは映画会社同士の権利が絡んだ複雑なスーパーヒーローです。

1990年代にマーベルは経営難に陥り、自分たちのキャラクターであるスーパーヒーローの映像化権を映画スタジオに売っていました。映像権として売られたのは当時人気スーパーヒーローだった『ファンタスティック・フォー』や『X-MEN』などがおり、その中でスパイダーマンがソニー・ピクチャーズによって買われました。
そこで作られたのが2000年代のサム・ライミ監督の『スパイダーマン』シリーズです。これが大ヒットして3作目まで映画化されました。このシリーズは2007年に完結しましたが、ソニーは2012年にキャストや世界観を新たにした『アメイジング・スパイダーマン』シリーズというのを制作しました。このシリーズは本来4作目まで制作されることが予定されていたにもかかわらず、2作目の興行収入が想定より下回ってしまい、こちらのシリーズは2作で終了となってしまいました。


一方で、人気のヒーローたちの映像権を売ってしまったマーベルは映画公開前まではあまり人気がないヒーローであった『アイアンマン』を映画化してこちらも大ヒットを収め、そこから20作以上のシリーズであるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に繋がっていきます。
そして2015年にソニーとマーベルが手を組んだことで、MCUにトム・ホランドが演じる3人目の「スパイダーマン」が登場することになりました。

そんな複雑でややこしい背景があるスパイダーマンであるからこそ、この映画がいかにファンにとって嬉しい作品となったのかが想像に難くありません。


別の世界からやってきたヴィランというのがソニー・ピクチャーズである『スパイダーマン』と『アメイジング・スパイダーマン』シリーズに登場する敵役です。この『スパイダーマン』シリーズはソニーとマーベルの共同製作だからこそ前のシリーズのキャラクターを全く同じキャストや設定のまま登場することが出来ました。
もちろんこの作品の一番の目玉となっているのは『スパイダーマン』のトビー・マグワイアと『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールドが出演したことです。
彼らはアイアンマンなどMCUとは全く関係がない世界の物語のため、本来なら彼らが登場するということはあり得ないことです。そんな3人のスパイダーマンが同時に存在するというのはファンの夢が実際に映画で見られたというのはそれだけでこの映画を名作と言ってもいいような気がします。

今作はある意味アベンジャーズのような色々なキャラクターが集まる映画ですが、一貫してピーター(トム・ホランド)の物語が描かれています。
自分のせいで周囲の人間に迷惑をかけてしまっていたとピーターは罪悪感を感じたことにより、世界中に自分がスパイダーマンであることを忘れさせるということに繋がるのですが、そのことにより別の世界からヴィランがやってきます。
彼は今まで別の人間の起こした後始末を担うことが多かったですが、今回自分が原因で起きた問題を自分で後始末をすることになります。そこに高校生であるピーターの成長が見えてきます。
1作目の『スパイダーマン:ホームカミング』で自分の失敗により人が乗った船を沈没させかけてしまいましたが、結局ヒーローとしての保護者であるアイアンマンのトニー・スタークが助けてくれました。しかし、今作では新しい後見人役だと思っていたドクター・ストレンジと対立することになりました。彼は協力してくれず逆に別世界から来たヴィランを助けようとするピーターを止めて彼らを元の世界に帰そうとします。
そのことにより、ピーターは友人や家族だけを頼ることになりますが、彼らの能力を失くそうとするピーターの計画は失敗しておばであるメイを喪います。そして、自分のせいでおばを死なせてしまった彼は深く傷つき死に追いやった相手に深い憎しみを持ちます。
これは歴代スパイダーマンにあったおじを自分が逃した強盗のせいで殺されてしまうというエピソードと同じ流れとなっています。今までそこがスパイダーマンが誕生する始まりの物語ですが、逆に3作目にこれをやることにより、改めてスパイダーマンの原点を見ることができたと感じました。


他にも今作がよくできていると思った点はピーターだけでなく、歴代のピーターたちの救済の物語でもあったことです。
二人とも今までヒーローとして活動していく中で、様々な喪失や過ちを経験してきたことで同じ思いをピーター(トム・ホランド)にさせまいと弟分の彼をなんとか救おうとして過ちをさせないようにします。
悪の人格に支配されてしまった親友の父親を死なせてしまったことで親友と敵対してしまい、
ピーター(トビー・マグワイア)はおじを殺した犯人を死に追いやったにもかかわらず心が晴れることはなく、ピーター(アンドリュー・ガーフィールド)は戦闘に巻き込まれた恋人を救えなかったということがあり、それらは彼らの心に深い後悔を与えており、その後悔をピーター(トム・ホランド)に繰り返してほしくないという強い思いがありました。
個人的に特に心に刺さったのがピーター(アンドリュー・ガーフィールド)が落下するMJを救うシーンです。これは完全に『アメイジング・スパイダーマン2』のオマージュとなっており、あえて全く同じ構図することで恋人のグウェンを救えなかった彼に今度は間に合わせてMJを助けさせるということをさせたかったのではないかと考えさせられました。
しかもこの『アメイジング・スパイダーマン』シリーズは興行不振で続編の予定があったにもかかわらず2作で終了してしまったということがあるため、『アメイジング・スパイダーマン』ファンはグウェンを失った後のピーター(アンドリュー・ガーフィールド)をようやく見ることができたというのもこの映画で叶いました。
ある種この映画はMCU版のスパイダーマンの続編だけでなく、2001年版の『スパイダーマン3』と2012年の『アメイジング・スパイダーマン2』の続編とも言えるような作品となっています。

この映画は決してハッピーエンドというわけではありません。世界を救うためにピーター(トム・ホランド)は例外なく世界中の人の記憶から忘れさられることになってしまい、仲間や友人を全て失うことになってしまいました。それでも、彼はスパイダーマンであることをやめずにニューヨーク市民を助けることを選びました。その決断が彼がスパイダーマンであることの証だと全ての「スパイダーマン」の映画を見て強く実感しました。


「スパイダーマン」を好きであればあるほど強く刺さる一作だと思う映画となっていて、何度も見たくなる映画です。

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