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思春期の自分を黒歴史ではなく大人への第一歩 『私ときどきレッサーパンダ』感想

こんにちは。映画を語るサロンのKKです。

気温の上がり下がりが激しい中皆さん体調はいかがでしょうか?
私は花粉症のせいでどうやって外に出ないで過ごせるかを画策する日々です。


今回は3/11にディズニープラスで配信が始まった『私ときどきレッサーパンダ』を紹介したいと思います!



カナダに住む13歳のメイは成績優秀で同じボーイ・バンドのファンである親友たちがいて、喜んで家の寺院の手伝いもする子供です。
ある日、描いたイラストを母親に見られたことがきっかけで、彼女は巨大なレッサーパンダになってしまいます。それを周りに隠そうとするけど大暴走を起こしてしまい、結果的に家族や親友3人に知られてしまいました。
母親からレッサーパンダへの変身は家に代々伝わる呪いであり、1ヶ月後に行う儀式によって永久に変身しなくなると言われましたが、変身をきっかけに今まで優等生だったメイはどんどん感情をコントロールできなくなっていきます。


みなさんは思春期と呼ばれる頃どんな悩みがあったでしょうか?
肉体の変化、感情の不安定さ、親との衝突など今までなかったことが起きたなんてことはなかったではないでしょうか?


この作品は一見するとコメディ映画ですが、主人公であるメイがレッサーパンダになるということを通してそんな思春期特有の悩みに真っ直ぐとぶつかるお話です。


主人公であるメイはいわゆるティーンと呼ばれるようになる13歳の少女です。
この映画ではメイが子供から大人として成長する物語となっていますが、その過程で死体探しの冒険や27年に一度現れるピエロを退治することなどはしません。
彼女が自分の身体や精神が大人になっていくことを受け入れるというものです。
メイのレッサーパンダへの変身をファンタジー要素としながらも、思春期のメタファーとして描いています。


物語を始める前のメイは勉強もできて自分の意見もはっきり言うし、実家の手伝いも喜んでするまさに理想の娘です。彼女はそれを自分が望んでやっていると思っていましたが、実際は母親が望んだ子供を演じている部分もありました。
メイの母親は自分の娘をとても愛しているものの、娘が心配でこっそりと学校に忍び込む・娘の交友関係に口に出すなど過保護で過干渉で支配的なところもあり、いわゆる「毒親」の一面も持っています。
彼女も母親のことは大好きですが、自分の好きなボーイ・バンドや親友のことを母親が悪く言っても反論できずに母親の思う通りの娘を演じてしまっています。


メイが母親との関係が大きく変わるきっかけとなったのもレッサーパンダへの変身でした。
まず初めての変身で動揺したメイは母親に部屋から出ていってと怒鳴ります。母親も驚きますが、言った本人も驚いており、今までそんなことをしたことがないのに本能的に母親に大声を上げたのだと分かります。

変身の原因を教えてもらっても自分のことを親に受け入れてもらえないと彼女は悲しみ、自分のことを醜いと自己否定をしていましたが、三人の親友は友達のメイがレッサーパンダになっても否定せずに受け入れてくれます。
さらにあることでお金が必要となり、親に内緒でメイと友達たちは変身能力を使ってお金稼ぎを始めました。

そこからメイは家族より友達を優先するようになり、徐々に親から離れていきます。また、服装も派手になっていきアクセサリーをつけるようになり、自分という存在を手探りながら探しているようでした。
それまでの彼女は親の言う通りに勉強したり学校活動を行なっていましたが、親ではなく自分の好きなことや好きなものを主張していく姿がまさに思春期の子供らしいと感じました。
小学生くらいまでだと確かに親の言うことがルールであり正しいことだと思っていましたが、成長していくにつれて自分で物事を判断できるようになり、親の考え方と異なっていくようになります。

今作ではそれらのメイの行動をただの反抗期とするのではなく、親の願う姿ではない自分に成長してくことを彼女自身と母親が受け入れていこうとする姿を描いており、とても印象的でした。


子供がいつまでも親の言うことだけを聞くなんていうことを有り得ないと大人になった今になると強く思います。それがどうしても親が思っている自分と乖離してしまうことは起こることはありますが、それをどうやって解決させるかを誠実に描かれているのかこの映画でとても好きなところです。

以前『ミラベルと魔法だらけの家』の感想記事で主人公のミラベルは新しい主人公の描かれ方がしていると書きましたが、今作はさらにキャラクターの描き方に磨きがかかって今までに見たことがない主人公やその家族・友人が登場しました。
友達と遊ぶのが大好きで、ボーイ・バンドに夢中な女の子たちや子供のことを完全に理解しているわけではない完璧ではない親というのはディズニー映画ではとても珍しい描写だと感じました。



残念ながら映画館での上映はなく配信サービスのディズニープラスでのみ配信されていますが、子供には大冒険をしなくても大人に成長できるということを、親には子供はどうやっても変化していくことを教えてくれる映画として是非の多くの人に見てもらいたいと思ったとてもオススメの一作です。

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