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ホットリンクのデータサイエンティスト・榊が語る、SNSマーケティングの可能性

ホットリンクは、今でこそマーケティング支援のイメージを持たれるようになっていますが、元はSNSデータ分析から始まった企業であり、データドリブンを徹底しています。

そんなホットリンクのサービス力・提案力を支えるのは、社内のデータサイエンティスト勢。彼らは、クライアントごとの課題を解決するためのデータ分析や、社内外向けのシステム開発に取り組んでいます。
実際、彼らはホットリンクでどのような役割を担っているのか、どのように事業と関わっているのか。

ホットリンクのR&D部 部長で、中国・清華大学の「世界的AI研究者2000人」リストに載った8人の日本人の1人でもある榊に聞いてみました。

榊 剛史(データサイエンティスト)
開発本部 R&D部
部長/工学博士

ホットリンクにおけるデータアナリストとデータサイエンティスト、何が違う?

―当社において、データサイエンティストとはどのような役割なのでしょうか?

榊:
具体例を出して説明してみましょう。たとえば、ある化粧品メーカーから、「どのような話題をSNS投稿に含めると反応が良さそうかを調べたい」と要望を受けたとします。

調べた中で「市況的にはスキンケア用品の話題量が多いけど、企業アカウントの特色的にデオドラント製品の方が合いそうだ」とコンサルタントが仮説を立てる。その仮説の根拠となるデータ分析をデータサイエンティストに依頼したり、社内外のツールを使ったりして形成し、データアナリストがわかりやすい状態に成型してコンサルタントに渡す。これが、一連の流れです。

データサイエンティストから道具や材料を提供してもらい、データアナリストが調理し、コンサルタントが顧客に料理を運び、プレゼンするイメージですね。

―榊さんは、R&Dに所属されていますよね。クライアントワークだけでなく、新システムの開発にも携わっているのでしょうか。

榊:
はい。基礎技術と応用技術の開発に携わっています。基礎技術とは、あらゆるシステムの基礎になるような、普遍性の高い技術のこと。たとえば、日本語の分析システムなんかはわかりやすいと思います。日本語を機械で扱う時、内容を読み取るには、単語で区切って意味を判別しなければいけない。

現在、言語を扱うAIは、新聞や論文など、研究者が使いやすいデータを利用している場合が多い。でもそうなると、新たな単語やソーシャルメディアに特化した表現に対応できないんです。特にSNSでは日々新しい単語が生まれている。当社は、SNSに特化した日本語抽出技術を開発して、当社全サービスの底上げを狙っています。

ちなみに応用技術とは、シンプルに新サービスや新機能の開発を指します。
基礎と応用は、時期によって取り組む比率は変わってきます。

―他に、部として取り組まれていることはありますか?

榊:
社外向けのプレゼンス向上も担っています。テックブログ公開や、オープンソースも積極的に公開していますね。AIを使った事業をやっているので、専門スキルを持った人材が来るといいなと。

また、社内でもエンジニアのなかでAIを学びたい人もいるので、メンターをつけてAI人材の教育も行っています。

―AIをビジネスの現場で活用できている会社はまだ少ない印象があります。ホットリンクの場合はどうなのでしょうか?

榊:
広告運用の作業効率化に活用しています。フォロワー獲得施策を実施する際、フォロワーになる可能性の高い良質なユーザーを、コストパフォーマンスよく取っていきたいですよね。当社の分析技術である「コミュニティクラスタ」を使えば、どのようなターゲットを狙えば良いのかを、機械学習を用いて自動抽出できます。

極論、手作業で集めてくることもできる。でも、自動で抽出した方が早いし正確なんですよね。AIを導入してから、作業効率は確実に向上できていますし、実際、成果も上がっています。

私たちが開発したソーシャルメディア分析「コミュニティクラスタ」はSNS上でつながっているユーザー同士を自動的にコミュニティ分類し、コミュニティごとの興味関心、嗜好性を推測できる優れものです。

Twitter上のコミュニティは無数に枝分かれして分散していて、どこにターゲットがいるか、普通はアタリを付けることすらままなりませんが、コミュニティクラスタであれば簡単に最適なコミュニティを見つけ出すことができます。

データドリブン施策により、クライアントのSNSマーケティングを成功させた事例

―「コミュニティクラスタ」の技術をクライアントに活用して成功した事例を教えてください。

榊:
大手食品会社のキャンペーンで、あるタレントさんが起用され、そのタレントさんを軸にSNSマーケティングを実施したいとご相談を受けたことがあります。その際、そのタレントさんのファン属性を、コミュニティクラスタを用いて調査してみたんです。

すると、意外な結果が出ました。そのタレントさんは今はテレビで活躍されている方なのですが、以前は2.5次元ミュージカル(アニメの実写化ミュージカル)に出演されていて、ファン属性はほとんどがそのミュージカルファン、いわゆるオタククラスタの方が多かったんです。

それでは、同じようなオタククラスタをターゲティングして広告運用してみればいいのではと考え、実施してみたら非常に高い成果が出ました。

―そのタレントさんを深く知らないと発見できないようなファン層を発掘できたというわけですね。

榊:
そうです。ご指摘のとおり、そのタレントさんに詳しい人が広告担当であれば、同じようなターゲティングは可能です。とはいえ、広告担当者1人が全てのタレントさんに精通していることはありえませんし、調査するにも労力が割かれてしまう。

そこをテクノロジーによって全て巻取り、更に精度の高いターゲティングを実現できたということになりますね。

データのスペシャリストが語る、ソーシャルデータが持つ可能性

―ソーシャルデータの持つ可能性について、どう考えていますか?

榊:
非常に大きな可能性を秘めていると思います。ソーシャルメデイアの情報を元に行動する人が増えていますし、情報収集の場所でもあります。若い方ほどSNS検索が当たり前ですし、そのように使われていますよね。

今までは、ユーザー調査というとアンケートやグループインタビューが主流でしたが、今はSNSにユーザーの生の声は落ちています。データさえ取得できれば、忌憚のない率直な意見を聞けるわけです。

このような、本音を垣間見れるようなユーザー調査は、SNSの登場以前にはなかったのではないでしょうか。

また、SNSの場合、過去にさかのぼって調べられるのも利点ですね。
たとえば、「経年変化」といわれる、ちょっとずつ価値が変化しているものをさかのぼって調査したい場合、アンケートは定点調査として毎年とらなければいけないけど、SNSデータであれば欲しいと思ったタイミングで好きなだけ遡れます。

―ちなみに、SNSデータを応用して流行の予測はできるのでしょうか?

榊:
流行を予測したいという要望はいただきますが、まだ完璧には無理ですね。やはり一口に予測といっても、いろいろなタイプがあります。たとえば、毎年同じ時期に流行るものを推測するのは比較的簡単ですよね。

わかりやすい事例として、共同研究を進めている琉球大学の山田先生が発見した節分の事例がありますが、節分の時期って豆が売れますよね。実は、同時期にたまごボーロもよく売れるんです。節分の豆が食べられない幼稚園の子供にたまごボーロを与える習慣があるようなんですよね。育児世代や幼稚園関係者、食品業界にとっては普通かもしれませんが、一般の方にはあまり認知されていないトレンドです。でも、それもデータを見れば把握できます。

あとは来週・2ヶ月後・来年と、時間の単位でも違っていますね。
今はまだ研究段階なのですが、トレンドの始まりや、落ちるときの兆候を捉える仕組み作りに取り組んでいます。

ホットリンクデータ分析勢が目指すのは、「Twitterの全体像を解明すること」

―今後、どのような研究を推進していこうと考えられているのでしょうか。

榊:
予兆分析です。Twitterでバズるものバズらないものを可能な範囲で予測しようとしています。普通、Twitter上でどこで誰がなにを話しているのかは、ほとんど見えないじゃないですか。だからどこかで炎上が起きても火元がわからない。
まずは会話の流れを可視化し、話題がどのように広がっていったのかを分析できるようにしたいなと。そこまでできるとかなりビジネス活用できそうですよね。

具体的には、コミュニティクラスタ上で、情報俯瞰図を自動生成します。
Twitter上で情報がどのように伝播・拡散されているのかを視覚的に把握できます。情報とユーザーの関係性が把握しやすくなるので、さらにターゲティングを行いやすくなります。

さらに、ターゲティングした人たちが普段どのような情報に触れて、どのようなメディアを見ているのかもわかります。だから、それらのメディアを狙って広告出稿しましょうと提案することも可能です。

―SNSのあらゆる情報や動きが可視化され、分析対象にできると。

榊:
そうです。SNSには投稿テキスト、画像、動画、ユーザー間のソーシャルグラフ、投稿時刻などあらゆる情報が存在しますが、当社は各情報をかなりの深度で分析できるという強みを持っていますから。

―お話を聞いていると、データ分析側であってもマーケティング思考が根付いている印象を受けます。

榊:
R&Dというと、ひたすら研究に没頭しているイメージがあるかもしれません。ただ、研究だけやっていてもダメなんですよね。R&Dのような組織こそ、マーケティング知識を持っていなければただ死蔵在庫を生み出してしまうだけの場になってしまう。そのような状態にならないよう、他職種とのコミュニケーションを密に取って、互いのノウハウを共有するようにしています。

データ分析に関わる人たちもマーケティング視点を持てれば、会社に貢献できる確率が高くなるし、結果的にクライアントも成功し、自分の市場価値向上として返ってきますから。

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