パートナー企業と密にコミュニケーションを取りながら成功へと導く、カスタマーサクセスの仕事
――植原さんのハルモニアとの出会いは?
1人目の子どもを妊娠しているときに出会いました。出産までに関われる会社がないかなと、軽い気持ちで転職先を探していたんです。当時の会社選びの軸として“人間の良さ”を重視していました。会社の中にいる人の良さに事業や企業の成長性が紐づいてくると考えていたからです。“この人たちと仕事をして自分は納得できるのか”を大事にしていた中でハルモニアと出会い、出産するまでランサー(業務委託社員)として働きました。
産後はちょうどコロナ禍が始まるか始まらないかといった時期だったので、ハルモニア自体がドラスティックに変わるタイミングでもあったんです。それを踏まえてハルモニアに残る意思決定をしたので、産後はドライバー(正社員)として働くようになりました。
――これまでの経歴を教えてください。
新卒で富士通の営業をしていました。その後、当時の自分は海外志向が強かったのもあり、アフリカで事業を行っているスタートアップに転職しました。1年程タンザニアで勉強させていただいたあと、デロイトトーマツのコンサルに勤務し、その後も別のスタートアップで働きました。スタートアップとしてはハルモニアが3社目です。
――ハルモニアでの現在の業務内容を教えてください。
ビジネス関係の仕事全般です。コンサルティング寄りのものとプロダクト・ユーザー寄りのものがあるのですが、私は後者の業務を担当しています。具体的には、リリースしたプロダクトの利用者と密にコミュニケーションを取り、プロダクトを通じてどのような成功体験をしていただくべきか、そのボトルネックはどこにあるのか、プロダクトの方向性とお客様の会社が目指す方向性は一致しているのか等、情報を収集した上で判断してサポートする仕事です。いわゆるカスタマーサクセスと呼ばれる分野ですね。
――現在担当されているプロジェクトはどのようなチームで、どのようなパートナー企業と進めているのでしょうか。
今担当しているのは、食品ロスをなくすための「Harmoniaロスフリー」というプロダクトです。ハルモニアの全メンバーが関わっており、CEOの松村、コンサルタント、デザイナー、エンジニアのフルスロットルで取り組んでいます。私はこのプロジェクトには2人目の子どもの育休取得前から関わっているのですが、プロダクトの初期検証フェーズは終わり、実際にスーパーマーケットで活用されています。
――「Harmoniaロスフリー」について簡単に教えてください。
現段階ではスーパーマーケットのお惣菜の値引き業務の効率化に焦点を当てているプロダクトです。どれくらい値引きをすれば廃棄がなくなり、値引きによる損失を減らすことができるのか、毎日の売り上げデータから計算してくれます。それだけでは不十分なので、今どの商品が人気で、どの商品を増やすべきか、減らすべきかといった製造配分に対する提案もできるようになりました。
環境問題の捉え方 〜サステナビリティとリジェネラティブ〜
――CEOの松村さんのビジョンとして、気候変動や環境問題に対する想いが強いように感じます。植原さんはその辺りへの想いも元々強かったのでしょうか?
そうですね。ハルモニアの中で気候変動や環境問題が話題として強くなってきたのはここ数年のことなんです。私はそのタイミングで2人目の子どもの育休を取得中で、ちょうど東京から田舎へ移住して田畑を耕している頃に復職しました。
復職して間もない時期は目指すもののギャップについて松村と議論することもありました。松村が脱炭素に対する想いが強かったのに対し、私自身はリジェネラティブに関心があったんです。リジェネラティブは、環境が再生するよう人間が手入れすることを指していると私は考えています。「いつか終わりが来るサステナビリティはもう古いんじゃないか」というところまで、松村と深くディスカッションしました。
どうしても数字で測りやすいことが取り上げられがちですが、数字で測りきれないような影響こそが大事だと感じるので、そういうところは遠慮なく意見させてもらっています。ディスカッションの場を設けてしっかり話を聴いてくれるのも、ハルモニアならではですね。
――リジェネラティブの考え方について詳しく教えていただけますか。
リジェネラティブは何か営みをすることで環境が回復していくことが大きなポイントで、環境再生型の取り組みのことを指します。例えば、農業でいうと有機栽培やオーガニックはサステナブルだと言われますが、実際は土壌を耕すことによって中にいる微生物が死滅したり、炭素を固定してくれている植物を掘り起こすことで炭素が地上に帰ってしまったり…。この方法で土壌を耕していくと、地上の土はいつかなくなると言われています。つまり有機栽培やオーガニックは環境負荷が低いのは確かなのですが、ダメージを与え続けていることに変わりないんです。
最近は不耕起栽培という方法もあります。土の豊かさを保ちながら、土壌にいる生物多様性や環境の再生能力を養いながら食料を調達する手法です。これはリジェネラティブな農法と言えます。サステナビリティは炭素排出量の話題が取り上げられることが多いですが、リジェネラティブは生態系や多様性の豊かな回復が重要視され、少しでも回復していくように人間が取り組みをしていきましょうというものなので、現段階で日本国内で見かける話題は農業に関するものが多いですね。
――リジェネラティブへの関心が高まったのは何かきっかけがあったのでしょうか。
2年前に東京から熊本県南阿蘇村へ移住したのがきっかけです。大自然の中で生活をして自分で田畑を耕す中で、慣行農法による生産方法やそこに使われるエネルギーの非効率さを考えるようになりました。では他にどのようなやり方があるのだろうと考えたときに、リジェネラティブに興味を持つようになったんです。
――そもそも、なぜ南阿蘇村へ移住されたのですか?
ハルモニアはフルリモートの会社です。以前はオフィスに集まることが多かったのですが、コロナ禍以降はオフィスも解約して月に1回程集まるような組織になりました。最近では年に数回程度です。業務上、リモートを好む人が多い社風でもあります。
子どもができたタイミングでずっと東京に住み続けるか迷ったときに、移住という選択肢が浮かんだんです。フルリモートで働くことに対する会社からの後押しもあり、決断しました。ハルモニアの雰囲気として、それを応援してくれる風土が明確にあるんです。
――フルリモートの中で日々のコミュニケーションはどのように取られているのでしょうか?
日常的にはSlackやZoomでコミュニケーションしています。一緒に出張へ行く機会がたまにあるので、そういうときは食事をすることもあります。新メンバーが入ったときや会社の節目のイベント等、オフラインでコミュニケーションを取ることもありますよ。
ハルモニアは、セルフマネジメントの会社
――植原さんが仕事を行う中で感じる魅力と課題を教えてください。
月並みですが、パートナー企業が自分たちを信頼してくれていると感じるときや、ポジティブな影響を与えられたと実感できたときは嬉しいです。これはパートナー企業とすごく近いところで仕事ができているからこそだと思います。
ハルモニアの今の事業はロジカルな考え方やデータサイエンスの知識など、そういった観点からの示唆を出すことが求められます。数字で成果を出すことが重要な事業でもあるので、そこは自分自身スキルアップしていかなければいけないなと感じるところです。
――そうした自己研鑽を積むための支援制度はありますか?
個人の学習費用の補助をしてくれる「ヒーローサポート制度」があります。また、学ぼうと思えば先生になってくれるメンバーが社内にたくさんいるので心強いです。
――改めて、ハルモニアはどんな会社ですか?
他者への依存度が低く自立している人が多い、セルフマネジメントの会社です。一つひとつの仕事に対して、メンバーそれぞれがクオリティを意識してアウトプットを出そうとしています。もし業務量が増え過ぎたときは、マネージャーのせいにするのではなく自分で調整していきます。もちろん困っていることがあれば誰も責める人はいないですし、仕事でもプライベートでも一緒に問題解決しようとしてくれる優しい人ばかりです。
――新しい方がジョインされるとしたらどんな人がいいですか?
大事な時間とお金をかけて仕事をするわけなので、その仕事が生み出す価値がどういう方向に向かうのか、それが自分の正義に合致しているのか、そういったポリシーがある人と働いていきたいです。必ずしもサステナビリティやリジェネラティブに関心がないといけないわけではありませんが、社会や将来に向けてのインパクトを意識している人と働けた方がズレがなくて良いのかなと思います。
――最後に、植原さん自身についてプライベートの趣味なども含めて教えてください。
作物を自分で作り、良い食材を好きな料理にして食べることに幸福を感じます。リジェネラティブにも通ずると思いますが、「旬のものが美味しい」ことに幸福を感じるんです。この幸福感はこれからも大事にしていきたいですね。
人間という生物が自然の中でどうすればこの豊かさを守ることができるのかについて、プライベートにおいても関心があります。おいしい作物や海のおいしい魚が食べられると豊かな気持ちになりますよね。そういう食卓があるのは自分にとってもハッピーですし、子どもの世代にも引き継いでいきたいと強く思います。