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データサイエンスの先駆者の挑戦──「すべてに精通したチームづくり」そして「キャリアの変革」へ

新卒からデータサイエンス一筋の鎌田 真太郎。分析ベンダーや大手人材派遣会社を経てfreeeへと転職し、データサイエンスチームの立ち上げから着手。以後、データを用いたビジネス分析社内でのデータ民主化などを行いました。そんな彼が、自らのキャリアとビジョンについて語ります。

事業会社のアナリストを経てfreeeへ

(入社当時の鎌田)

大学では金融のゼミに入っていた鎌田。大学院でデータマイニングと出会い、分析のおもしろさを知りました。

鎌田 「数字は、きれいに状態を表現できるのが魅力。ただ単に『改善しました』といっても、何がどうなって100が200になったのかわからない。でもデータとして結果を表現し、分析を通してその原因を探ることでより効果的な行動につながる。そこにおもしろさを感じました」

新卒でそのまま分析業界へ飛び込みます。

鎌田 「当時は超マイナーな業界でした。周りでデータサイエンティストになる人なんてほとんどいませんでしたが、『合理的な判断がものごとを良くする、そのためにはデータ見るのが一番だ』と思っていました。

それに、さまざまな情報が蓄積されるこれからの時代、データはよりビジネスにおける重要な要素になっていくと確信していました」

新卒入社した会社では、受託でのデータ分析業務を担当。まだクラウドもまったく普及していない時代でしたが、たくさんのプロジェクトでさまざまなデータに触れ、経験を積みました。

その中で、世の中にはデータは溜まっているけど、目の前の数字をどう扱っていいかわからない企業が多いという課題を実感します。鎌田はその解決のため、大手事業会社に転職し、分析でビジネスに価値をもたらすところまで経験の幅を広げました。freeeに出会ったのはこのころでした。

鎌田 「大手事業会社で働いている時期に、まだ小さかったfreeeに遊びに来たんです。それ以降も、採用の方に『最近どうですか、遊びに来ませんか』と度々声をかけていただいていたので、事業会社の次を考えたときには真っ先に連絡しました」

こうして2017年7月、freeeに入社し、データを元にした全社KPIの設計に従事することに。freeeがいかに「マジ価値」を提供できているかを数字上から読み解きやりたい事業や進みたい方向性と照らし合わせて業務を進める必要がありました。

鎌田 「当初は思ったような分析がなかなかできませんでした。というのも、組織体系に大きな課題があったのです。当時のfreeeにはデータ分析の専任チームがなく、各チームで分析できる人が個別に対応していました。

その結果、一部の人たちに集計分析の依頼が集中し、ナレッジは蓄積しづらく、抜本的な改善にもなかなか手がつけられない状態でした。それを改善するべく、KPIの設計と並行して分析チームの独立に着手することを決意しました」

「技術とビジネスのバランス」が、スペシャリティのあるチームをつくる

(freee9階・asobibaにて)

分析チームの独立というのは簡単ですが、マネジメントのやり方・必要な人数・評価の仕方・組織構成など、決めることは山積み状態。さらに鎌田は「今freeeに一番合った形は何なのか」を考えながら、試行錯誤を繰り返しました。

その中で重要なのは“バランス“だったと語ります。たとえば一見、「分析」という専門性の高い分野には技術がもっとも重要な要素に思えますが──。

鎌田 「技術だけにフォーカスした仕事をやっていると、どうしてもアウトプットが少なくなりがちです。新規性の高い仕事なので仕方ないのですが、『ビジネス成果はなんだったの?』という問いからは絶対に逃げられません。

『何をしたのか、どんな技術を使ったのか』ではなく『どんな分析結果をアウトプットして、その結果どんなインパクトを見込んでいるのか、そのためにどんな目標に責任を負うのか』を明確にしようということですね」

他方でビジネス視点に寄りすぎるのも危険であると、鎌田は語ります。

鎌田 「ビジネスと正対して業務に没頭すると、どうしても技術要素が薄くなります。分析に関わる技術はすごい勢いで進化しており、ちょっと油断するとすぐトレンドに追いつけなくなってしまいます。

分析をやっていく上で技術は一番大事という意識統一を行い、しっかりキャッチアップできるよう機会をつくっていくことにしました」

こうして鎌田がたどり着いたのは「すべてに精通したチーム」という解答でした。

鎌田 「データサイエンスはビジネス理解・集計分析・エンジニアリングの総合格闘技です。

そのすべてに精通したチームにすることを目標にしました。個々人として何かひとつ以上のスペシャリティを持って動き、チームとしてはすべてのスペシャリティを保有する。さらに、現実世界にインパクトを出すところまでコミットする。そんな想いでチームをつくりました」

こうして形になったデータサイエンスチームは立ち上げ当初の3倍以上に拡大し、全社ミーティングで出される数字のほとんどを算出しています。

鎌田 「それらの値は事業計画を立てるときに極めて大事で、数字を見て経営陣が判断を変える可能性もあります。また数字や分析結果が間違えていると、大勢の人の時間を奪ってしまい、取り返しがつかないことになってしまう。チームに与えられた使命は大きいですね」

正しいデータを迅速に届けるために──意識している「3つのこと」

(業務中)

データサイエンスチームのこれからの課題は、どううまく運用し続けるか。そのために意識していることが3つあるといいます。

鎌田 「まず、コミュニケーションを大事にすること。状況の変化が激しいので、そのときに必要な情報はコミュニケーションの中からしかわからないのだという意識があります。

結論だけ出すのではなく、原因も含めて丁寧にコミュニケーションをすることで実効性のある打ち手につながるんです。なので作業以上にコミュニケーションに時間をかけています。」

そしてその上で、「数字に嘘をつかせないこと」が重要でした。

鎌田 「今までの話と一見矛盾するんですけど、数字は、それだけでは信用できないんです。実は数字を使うと、簡単に嘘をつくことができる。たとえば結論ありきで都合のいい数字だけ持ってきたり、逆に言わない自由を悪用したり。

だからモラルがめちゃくちゃ大事なんです。悪意はなくとも、本質的な問題を見落としてしまう、間違った数字でうっかり話を進めてしまう、といった問題もまだあります。後でそれに矛盾を突きつける数字を自分で出してしまったときにはかなりつらいですよ。『この前と全然違うな』って言われたりして。

ですけど、そういうときでも誤魔化さないモラルが信用につながるのだと考えています。そういう意味で技術はもちろん大事ですが、『数字に嘘をつかせない』という決意はそれ以上に大事だと思っています」

その上で現在浸透させようとしているのは「データの民主化」という意識でした。

鎌田 「freeeではデータドリブンな意思決定を重視しているので、すべての人がデータを出せるような環境づくりを目指して活動しています。会社としても、数字を知りたいときにそのすべてを分析チームに依頼しているのは危ない。

問い合わせが増えると社内で順番待ちが発生して全体の成長スピードが落ちるし、優先順位をつけて仕事を進めても各チームへの説明などで時間が取られてしまいますから。要は中央集権化しすぎているとダメなんです」

そこで始めたのは、「留学」という取り組み。スキル向上のため教材を用意して自習できるようにし、毎週会議室を取りメンバーが常駐しています。

SQLやダッシュボードツールの使い方はもちろん、「こんな分析をしたい」「こんなエラーが出た」など、気軽に相談しやすいよう環境を整えたのです。これにより一定の成果が上がりました。

鎌田「たくさんの人が留学でSQLを勉強してくれて、今では簡単な分析は多くのチームでできるようになりました。非エンジニアでも、かなりの人数がSQLを書いて分析していますよ。

今後は基盤の整備にも取り組み、データ分析の敷居をもっと低くしようと取り組んでいます。freeeにはもともと、データドリブンな意思決定をしようというカルチャーがあるので、これをもっと高いレベルで実現できるよう取り組みを続けていきます」

データアナリストのキャリアのために──鎌田は先駆者として、これからも“分析“の自由を切り拓いていきます。

データサイエンティストの“在り方”を変えるために

(会議中、談笑する鎌田)

これまでデータ分析をキャリアの中軸に据えてきた鎌田は、データサイエンティストのキャリア構築にはたくさんの壁があると指摘します。

鎌田 「データサイエンス業界は転職が激しく、だいたい2、3年ぐらいで次の職場へ行ってしまうことが多いんです。その理由はさまざまですが、とくに組織上の課題として『キャリアに対する閉塞感』があると考えています。

分析していて、『課題はインフラだな』とか『もっとビジネスに関わりたいな』と考えることはよくあります。でも、『データサイエンティスト=分析が仕事』と決まっていると、なかなかそれ以外の経験ができないんですよね。そのとき感じた課題感が合ってるのかどうか、試す機会もなかなかありません。

だからデータサイエンティストと名乗らない人も多いんです。いってしまうと、データにしか関われないという印象を与え、どうしても距離を置かれてしまう。実際はそんなことないのに『数字だけ見てる人でしょ』って思われてしまうんです」

そのためfreeeではかなり柔軟性のあるチームづくりが行われた。

鎌田 「エンジニアともビジネス現場のメンバーとも距離が近くて、線引きを気にせず協働できることが強みです。

データ分析をバックボーンに、プロダクトマネージャーや基盤エンジニアに転身して活躍している人も実際にいます。キャリアへの閉塞感がない、それがfreeeでデータサイエンスをやることのメリットだと思います」

またさらに柔軟性を進化させ、チーム内組織も分析メンバードリブンで考え、流動的なものに。データサイエンティストとしてどういうキャリアを描きたいのか、その命題に真っ向から向き合いました。

鎌田 「データサイエンティストは、大きくアナリスト・ML(機械学習)エンジニア・データエンジニアとわかれていて、それぞれ壁が高いんです。他の会社だと部署が違うのは普通ですし、基本的にどれかを専任させられるんです。

でも本当は隣接してる仕事だから、複数の知識を持ってた方が仕事しやすいんですよ。なのでチーム立ち上げ時に、まず垣根をなくし、部署を異動せずにやりたいことがやれるようにしました。

それは自分がバリバリ一線でやっていたときにかなえられないキャリアだったので、自分のチームをつくったら絶対に実現させたかった事でもあります。ここに共感してたくさんの方々にジョインしてもらえました」

数字に魅せられて分析業界に飛び込み、業界と社内両方の課題を解決する組織づくりまで行ってきた鎌田。さらなる目標を掲げて、チームを運営している。

鎌田 「チーム内もワクワクして働いてくれているみたいで、自分としてはありがたい環境で働けていますし、やりがいも感じています。ですが、ここで満足したくはないですね。

チームとしてデータを使って今のビジネスをより強くしたり、新しいビジネスをつくったり、会社自体をどんどん強くしたいです。良い環境はできてると思うんで、野心がある人がさらに増えてほしいな、と。これからもそのための施策を講じていきます」
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