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ファインディは顧客の事業開発を支援する新たな取り組みとして、『Findy Insights』を立ち上げました。生成AIの急速な進化を背景に、開発組織が抱える課題へのアプローチも変化しつつあります。
従来の「開発の効率化」だけでなく、「上流の意思決定支援」まで役割を拡張するこのプロジェクトは、どのような問題意識や想いから生まれたのでしょうか。
プロダクトを牽引する稲葉さん、開発をリードするエンジニアの嶋村さん、LLMの実装を担うLLMテックリードの奥田さんの3名に、3ヶ月という短期間でのリリースを実現した開発の舞台裏と、新サービスが目指す未来について話を伺いました。
稲葉 将一|執行役員 CPO
リクルートで国内転職事業・海外HR事業にて、プロダクトマネジメントや事業企画等を経験した後、ファインディにジョイン。2024年より、プロダクトマネジメント室を立ち上げ、室長として管掌。海外展開や生成AIによる新規事業を牽引している。
奥田 堯子|LLMテックリード
大学では純粋数学を専攻し修士・博士課程で研究後、新卒でデータサイエンティストとして運輸最適化や電力予測、LLM検証などに従事。現在は「Findy Insights」の立ち上げを担い、LLM実装・検証をリード。
嶋村 康平|バックエンドエンジニア
大学でコンピュータサイエンスを専攻し、新卒でWeb系SIerに入社。約5年半にわたりWeb開発の受託案件に携わり、要件定義から開発・テストまで一連の工程を経験。2023年にファインディへ転職し、Findy Team+の開発を経て、2024年5月から「Findy Insights」の立ち上げ・開発を担当。
目次
事業・プロダクト開発の課題は、「コードを書くスピード」から「企画段階での意思決定」へ
事業構想を描き始めてから、わずか3ヶ月でのスピードリリースを実現
不確実性の中で磨かれていった、個人とチームとしての進化
AI時代に、日本の事業創出をリードする未来を描く
さいごに
事業・プロダクト開発の課題は、「コードを書くスピード」から「企画段階での意思決定」へ
―この度、新たにリリースされた『Findy Insights』は、事業企画を生成AIで支援するサービスとのことですが、どのような背景で立ち上がったのでしょうか。
稲葉:
『Findy Insights』を立ち上げた理由は大きく二つあります。
一つは、生成AIやコーディング支援ツールの進化によって、プロダクトづくりにおける本質的な課題が大きく変わり始めていると感じたからです。これまで私たちは『Findy Team+』を通じて、開発組織の生産性を可視化・改善し、開発投資に対するリターンを高める支援を行ってきましたが、その過程で「人がコードを書くスピード」という課題は、技術の進化によって急速に解消されつつあると実感するようになりました。
一方で、事業やプロダクト開発の現場では、「何を、なぜ作るのか」という上流の意思決定に多くの時間と迷いが費やされており、そのスピードと質がプロダクトの成否を大きく左右しています。この意思決定のプロセスを、データと生成AIの力で支援できないかと考えました。
―なるほど、もう一つは?
稲葉:
分析対象となるデータの変化です。これまで私たちは、SaaSプロダクトを通じて取得したデータをもとに可視化や課題解決を行ってきました。その中心にあったのは、データベースで管理されるいわゆる「System of Record」のデータです。
しかし、生成AIの進化によって、分析対象となるデータの幅は大きく広がりました。 議事録や商談ログ、ユーザーの声といった、これまでデータとして取得・活用しきれていなかった非構造データも含めて分析できる環境が整いつつあります。
こうした技術的な進化も背景に、より広い視点で顧客課題にアプローチできるのではないかと考え、新規サービスとして『Findy Insights』を立ち上げることを決めました。
―市場環境の変化に合わせて支援の幅を広げるための取り組みなんですね。具体的に、どのように顧客の意思決定を支援していくのでしょうか。
稲葉:
いくつかアプローチはありますが、一つは「ナレッジの属人化と散在」という事業立ち上げにおける根深い課題の解消です。これは特にエンタープライズ企業で顕著なのですが、人事異動や組織拡大が日常的に起こる一方で、過去の事業立ち上げの経緯や、どのような意思決定が行われ、なぜうまくいかなかったのかといった重要な知見が、組織の資産として十分に蓄積されていません。
その結果、意思決定は個人の経験や記憶に依存したものになりやすく、同じような試行錯誤が繰り返されてしまいます。Findy Insightsでは、この構造そのものを変えることで、事業開発における意思決定の質とスピードを、組織全体で引き上げることを目指しています。
例えば、顧客との商談データ一つとっても、「なぜ受注につながったか」「なぜ断られたのか」という理由をデータとして捉え直すことで、主観に頼らない組織としてのインサイトになります。
Findy Insightsが向き合う課題はナレッジの属人化や情報収集の難しさなど様々
ユーザー接点を起点としたナレッジ資産化と、インサイトに基づく仮説検証を支援
―技術面を担う奥田さんと嶋村さんは、このプロジェクトの構想を初めて聞いたとき、どのような印象を持たれましたか?
奥田:
純粋に「面白そうだな」という気持ちが最初にありました。特に、これまで分析が難しかったナレッジや暗黙知のような情報を、LLMを活用して意思決定に使える形にできるという点に大きな可能性を感じました。一方で、アウトプットの正確性や再現性をどう担保するか、どこまでをAIに任せるのかといった設計の難しさも、簡単なプロジェクトではないという緊張感もありましたね。
嶋村:
最初に話を聞いたときは、「これまでのファインディとはまったく異なるチャレンジだな」という印象でした。ただ、ちょうどその頃、コーディング系のAIが急速に進化していて、「単純なコーディング作業は、今後どんどんAIに置き換わっていくのではないか」と感じていた時期でもありました。
そうした流れの中で、エンジニアの役割も、実装そのものより「何を作るのか」「それをどう価値に落とし込むのか」といった、より企画寄りの領域へシフトしていくのではないか、というイメージを持っていました。今回のプロジェクトは、その自分が描いていたエンジニア像とも重なっていましたし、時代の流れとも合っている。きっと伸びていくサービスになるという感覚がありました。
事業構想を描き始めてから、わずか3ヶ月でのスピードリリースを実現
―改めて、この事業におけるそれぞれの役割について教えてください。
稲葉:
私はプロダクト全体の方向性や優先順位を決める役割を担っています。自ら商談に参加して顧客の生の声を拾いながら、「本当に解くべき課題は何か」「今このフェーズで提供すべき価値はどこか」を見極め、その判断を人的な支援も含めてサービス全体に反映していくことが主な役割です。
奥田:
私はMLエンジニアとして、LLMまわりの技術選定やアーキテクチャ設計、初期実装までを一貫して担当しています。会議文字起こしやチャット機能など、特にLLMが関わる機能については、まず私が小規模なプロトタイプを作成し、嶋村さんをはじめとした開発側のエンジニアに構造を共有して、プロダクトに組み込んでもらう流れで連携しています。
嶋村:
私はプロジェクト全体の開発面をリードする立場として関わっています。具体的には、バックエンド開発を中心に担当しながら、セキュリティやインフラ領域についても、SREの観点から設計・対応を行っています。また、他部門とも連携しつつ、セキュリティや運用に関するリスクの洗い出しや調整を進めています。プロダクトを安全かつ安定的に提供するために、技術面だけでなく、組織面も含めて全体を見渡す役割を担っています。
―事業の構想からリリースまで、どのような流れで開発を進めていったのか教えてください。
奥田:
最初の数ヶ月は、稲葉さんが作成した要件定義をもとに、ひたすら技術検証とプロトタイプの作成を進めていました。その後、開発チームが集まる場でプロトタイプを実際に見せながら、「こういうものをつくりたい」という意図や狙いを共有し、具体的な実装イメージをすり合わせていきました。
基本的には、私が技術面やUXのたたき台としてのプロトタイプを出して、稲葉さんと「この体験で想定と合っているか」をすり合わせ、開発チームには「どう組み込むか」を相談する形で開発を進めていきましたね。
嶋村:
私はまず、奥田さんがすでに作ってくれていた「こういうイメージで動かしたいものがある」という全体像をキャッチアップするところから始めました。
その上で、稲葉さんが描いているプロダクトの姿や目指している方向性を聞きながら、それを実現するにはどのような技術スタックが適しているのか、インフラをどう設計するか、データベースをどう構成するかといった、技術的な意思決定を一つずつ詰めていきました。
―事業構想を描き始めてから3ヶ月でリリースに至ったとのことですが、なぜこれほどのスピードで立ち上げることができたのでしょうか。
稲葉:
技術的には、生成AIを前提とした開発スタイルを最初から取れたことが大きかったと思います。バイブコーディング技術の発展によって、短い時間でアウトプットを形にできるという空気感が、2025年に入ってから一気に強まりました。
嶋村:
実際に開発に着手し始めた2025年の4〜5月頃から、コーディングエージェントの精度が一気に高まったのは、非常に幸運でしたね。そのままプロダクトにも適用できるレベルのアウトプットが出てくるようになり、このタイミングで開発の前提自体が大きく変わってきたと感じています。
今回のプロダクトは新規開発だったこともあり、こうした生成AIの進化を前提に、初期の設計段階からAI活用を見据えた構造を意識して進めることができました。
稲葉:
加えて、奥田さんがチームの中核として、企画から開発までを横断的に担ってくれたことも、大きな要因の一つでした。企画フェーズでは、私と壁打ちをしながら初期のモックを一緒に作り上げていきましたし、実装フェーズに入ってからも、AIのソリューションをどこまで踏み込み、ソフトウェアとしてどう成立させるかという点を第一に考え、密に連携しながら進めてくれました。そうした連携があったからこそ、このスピード感でのリリースを実現できたのだと思います。
奥田:
チームとして、仮説をすぐに形にして見せる文化が根づいていたのは大きかったですね。稲葉さんとは毎朝15分ほどのミーティングを行い、そこでプロトタイプを持ち寄ってぶつけ合っていました。次に作るべき機能の要求を聞いてプロトタイプを作り、翌日また持っていって議論を重ねる──そんなサイクルを高速で回していました。
―今のお話を聞いて、チームとしての連携の強さがよく伝わってきました。
稲葉:
チーム全体で「まずはα版をリリースする」という前提に立ち、とにかく最小限の機能でお客様に価値を感じて頂ける状態(Minimum Sellable Product)をつくる、というスタンスはかなり揃っていたと思います。そうした目線が共有できていたからこそ、いい意味で割り切りを持ちながら、ここまで走り切ることができたのだと感じています。
嶋村:
開発面でも、お互いに役割を越境しながら進められていたので、とてもやりやすかったです。
AIと連携する部分の技術についても、当初はどうしても奥田さんに属人化している領域がありましたが、そこをブラックボックスのままにせず、バックエンド側でも実際に触りながら、一緒に開発していく形を取っていました。
その結果、徐々にチームとして中身を理解できるようになり、単に「AIを組み込む」だけではなく、「プロダクトとしてどうあるべきか」を議論しながら落とし込んでいく進め方ができました。
不確実性の中で磨かれていった、個人とチームとしての進化
―短期間でプロダクトの開発を進める中で、特に大変だった点はどこでしたか?
奥田:
PoC段階で一番苦労したのは、文字起こしの精度でした。
お客様との商談動画を読み込み、その内容を解析する機能があるのですが、メジャーな音声認識ツールをいくつか試しても、専門用語や会話の微妙なニュアンスを正しく拾うことができず、なかなか期待する精度に届かなかったんです。
この部分はプロダクトの技術的な肝でもあり、ここが崩れるとプロダクト自体が成り立たないという認識があったので、本当に必死でした。最終的には、社内のPdMの方が紹介してくれた別の文字起こしサービスを使うことで精度が大きく改善し、突破口が開けました。技術的な調査や試行錯誤も大事ですが、「周囲に早く相談して、知見を引き出すこと」が課題突破の近道になると強く実感しました。
嶋村:
開発観点で言うと、言語の選定も苦労した部分です。これまでファインディでは Ruby on Rails をメインに開発してきましたが、今回はLLMや機械学習との相性を重視し、Python を採用しています。
ただ、チームの中に Python をメインで使ってきたエンジニアがいたわけではなかったため、キャッチアップしながら進める形になりました。試行錯誤を重ねる中で、初期に考えていた設計は、今振り返るとほとんど残っていないと思います。
やりながら学び、自分たちなりに「より良さそうな形」を見つけるたびに、構造を都度見直していく。そんな進め方で開発を続けていきました。
―今回の事業開発を通じて、学んだことやご自身の成長を感じた点はありますか?
奥田:
自分の中で一番変わったのは、姿勢かもしれません。
前職が受託だったこともあり、何かに対して「できます」と言うのは慎重になりがちでした。でも今では、「技術で解決できることなら私がやるので、あとは任せてください」と、自然に言えるようになっています(笑)。
実際、それで多くの課題を突破でき、いくつもの機能がプロダクトとして形になってきました。ファインディのバリューでいう「前向き」ー挑戦しよう、正解はやってみないと分からない、という感覚がようやく自分の中にも根付いてきたように思います。それを可能にしているのは、チャレンジを受け入れてくれる環境と、それを支えてくれるチームの存在です。
嶋村:
私は、意思決定における柔軟性とスピードですかね。
「今のフェーズで何が最適か」「将来の負債を見据えたとき、どこで判断すべきか」を、スピード感を持って見極められるようになりました。
以前は、技術選定や設計に対して慎重になりすぎてしまう部分もありましたが、今回は「このまま進むと後々重くなりそうだ」と感じたタイミングで、構造や方針を思い切って切り替える判断ができました。GraphQL から REST API への移行や、データベース設計の見直しなどは、その代表的な例です。
完璧な設計を最初から目指すのではなく、状況に応じて柔軟に変えていく。その判断を早い段階で下せるようになったことは、自分自身にとって大きな成長だと思っています。
ーこのプロジェクトに取り組む中で、それぞれどんな瞬間にやりがいや面白さを感じていますか?
稲葉:
新規プロダクトという不確実性の高い領域に挑戦している中で、こちらの思いや取り組みがきちんとお客様にも伝わり、商談の場で「これ、まさに欲しかったものだよね」と言っていただけることがあります。そうした反応が、受注という形につながる瞬間や、価値をしっかり受け取ってもらえていると実感できる瞬間は、やはり達成感を感じますね。
奥田:
私は、自分が作ったモックに対して稲葉さんから「これだね」と一発で言ってもらえた瞬間が、一番嬉しいです(笑) 企画と実装のイメージがぴたりと噛み合った感覚があって、チームでものづくりをしている実感が一気に高まります。
嶋村:
先ほど話した開発言語の選定もそうですが、開発タスクのほとんどが新しいことへのキャッチアップを伴うので、そこが大変であり一番楽しい部分です。これまで触れたことのない言語や技術に取り組んだり、AIエージェント的なものを作るための技術を学んだり、インフラ領域も手が足りない分、自分たちで対応したりしています。毎日が新しい挑戦の連続で、飽きることがないですね。
AI時代に、日本の事業創出をリードする未来を描く
―将来的に、『Findy Insights』を通じて、どのような世界や価値を実現していきたいと考えていますか。
稲葉:
生成AIを活用という観点では、これまでのDX推進の波──大手企業がデジタル化を進めてきた流れを超える、大きな変化を起こせると考えています。これまではDXが十分に進みきらなかった領域においても、生成AIを活用することで、大手企業の事業開発やプロダクト開発に大きなレバレッジをかけられるようになる。私たちは、そうした変化を後押しする存在でありたいと思っています。
先ほども触れましたが、Findy Insightsは、企業がこれまで蓄積してきた大きなアセットやナレッジに対してレバレッジをかけ、意思決定の質とスピードを引き上げるプロダクトです。このプロダクトを通じて、より多くの仮説検証や事業検証が、高精度かつスピーディーに行われるような世界を実現したいと考えています。
その結果として、日本全体の事業創出をリードできるプロダクトへと成長させていきたいです。
ー最後に、候補者の方へメッセージをお願いします!
奥田:
稲葉さんはPdM/PMMとしての意思決定はもちろん、技術への理解も深く、技術的に難しい話が出ても「じゃあUI/UXで巻き取ろう」とすぐに判断してくれます。 話が早く、意思決定のスピードも圧倒的に速い。だから、とても働きやすいです。
嶋村さんをはじめとする開発チームも、新しいことへのフットワークがとにかく軽くて、LLMまわりも気づけば自分たちでキャッチアップし、既存機能の拡張をどんどん進めてくれています。 おかげで、私は新しい技術検証に集中することができ、チーム全体で“挑戦のリレー”が自然に回っている感覚があります。
一人ひとりが自分の専門を持ちつつ、隣の領域にも踏み込んで一緒に課題を解く。 そんな“越境の連鎖”があるからこそ、AI時代のスピードでプロダクトを生み出せているんだと思います。
新しい技術や不確実な挑戦を楽しみながら、チームで前に進みたい方には、とても面白い環境だと思います!
嶋村:
プロダクトとしてまだまだ伸び代がある中で、これから本格的に開発を進めていくフェーズなので、「一緒に育てていく」感覚を強く持てるのは、すごく面白いところだと思います。
チームとしてもスピード感があり、裁量の大きい環境です。やりたいことがあれば手を挙げられますし、「それ、やってみよう」と前向きに受け止めてもらえる。ひたすら“前向きな人”がフィットするチームだと思います。
不確実性を楽しみながら、プロダクトもチームも一緒に育てていきたい。そんな方と、ぜひこのフェーズを一緒に走れたら嬉しいです。
ー皆さん、ありがとうございました!
さいごに
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みなさんとお話できることを楽しみにしています!