こんにちは! エスタイルで記事のライティングを行っているフリーランスの清水です。
今回は、入社2年目、未経験からデータサイエンティストとして活躍するユージーンさんにインタビュー。「潜在顧客に商品を届けたい」と悩むクライアントの課題を、いかにして解決していくか。現在、取り組んでいる事例についてご紹介します。
【プロフィール】ユージーン
千葉県出身。千葉大学/大学院にて融合理工学、先進理化学を専攻。卒業後、化粧品メーカーに就職し、その後、エスタイルに入社。データサイエンティストとしてクライアントの課題解決を図る。趣味はビリヤード/モンハン/旅行。
「商品」ベースではなく「人」ベースで考える。未経験だからこそ柔軟に
──まずはユージーンさんについて、お聞きします。現在はデータサイエンティストとして活躍されていますが、以前は化粧品メーカーにお勤めだったんですね。
はい。1年目は研修として営業を経験し、2、3年で研究職に。化粧品の成分分析などをやっていました。3年ほど勤めたのち「データを分析する力をつけたい」「ビジネスをもっと効率化したい」との思いから、未経験でデータサイエンティストを募集しているエスタイルに入社することに決めました。
主な業務は、需要予測などをするAIモデルを作ること。たとえば、ある会社から新商品が発売されたときに、それが何個くらい売れそうかとの予測を、過去の販売データなどから考えていく。
業務工程で言うと、まずその企業について「どんな課題を持っているか」「どういうデータ・情報を使うことができるか」といったヒヤリングを行います。そして提供していただいたデータを、定量的な数値(特徴量)として出し、それをもとに需要予測モデルのシステムを作っていく。
モデルが一度できたら精度評価を行い、結果が返ってきたら、「実際に売れた個数」と「予測した個数」の値が、どれくらいずれているかを検証。「これなら実務で使えるか」「まだダメだ」といったかたちで調整していくんです。そして一度できたら、以降はそれを保守していく。たとえばコロナ前と後で売れる商品が変わっていたりと、データは常に新しくなるので、それに合わせて都度モデルを再作成していきます。
これが大まかな流れで、大変長期的で根気がいるんですが、やりがいのある仕事です。
──そういう中で、今回は全国展開する大手メーカーにかかわることになったと。そのクライアントは、どのようなことで悩んでいたのですか。
「潜在顧客」を見つけて、そこにアプローチをかけたい、という思いがあったようです。たとえば、店に買い物に来るお客さんで、店員さんとよくお話をしたりする人の場合、なにを買っているか/買いたいかは分かる。でも、来店回数が少なくて、たまに商品を買う、というような人や、買わないで帰っていくような人は、なにを求めているかがわからなかったりする。
そういう「買う可能性はあるけれど、店員との接触頻度が低い人」にアプローチして、自社のブランドに愛着を持ってもらう。そして最終的にはリピーターになってもらいたい、という思いがありました。
そこで、エスタイルが武器としている需要予測モデルを使う、という話になるのですが、これはいままで「商品」に紐づいた「需要」の予測だった。商品ごとに、それが売れるか売れないかを予想するというもので、たとえば「●●という新商品を出したが、これは実際に売れるのか」と考える。
でも今回のニーズは、あくまで「潜在顧客」。「人」がどういう商品を買うか、と「人」ベースで予測を立てなくてはいけない。そこで、今回はじめて「その人が買うか/買わないかを予測するモデル」というものを作ったんです。
──「商品」に紐づくものではなく、「人」に紐づくものを作ると。
はい。これまで、商品の需要予測をする際「店の会員が100人いる。100人買えば100個売れるよね」という考え方だったけれど、そもそも「その会員がなにを買ったか」を把握しているのであれば、それをもとに「その人」の需要予測も作れるのでは、と。
具体的には、顧客の過去の購買データなどから、「買いやすい」「買う/買わない微妙なライン」「次の商品は買うだろう」といった予測値をつくっていく。
その情報を、エリアごとに分けて、各店舗に渡していく。そうすると、各店の店員さんが予測値をみて、人に合わせて商品を個別に勧めることができると。
似ているもので言うと、「何月何日に何が何個売れた」を示すPOSデータがありますが、今回つくったのは「何月何日に、どんな人が何を買った」というもの。あくまで「人」を主語にしているので、それを基に個別の需要予測ができる。
今回は全国に店舗を持つクライアントさんが相手で、データも全店舗分つくる。そういった点もふくめ、この試みはエスタイル的には新しく、大きな意味を持つんです。取り組みの結果は、翌年中に出る見込みです。
「やってよかった」現状に満足せず、利便性・精度ともにより良くしていきたい
──今回新たな取り組みをする中で、とくに難しかったことは、どのようなことですか。
やはり、最終的には営業の方、つまり店頭で販売する方が、使いこなせるデータでなければいけない、ということですかね。普段であれば、僕たちデータサイエンティストは「生産計画をする方」や「出荷計画を立てる方」のためにモデルを作ることが多いのですが、今回はその奥、最前線で実際に物を販売する方に使ってもらうことになる。
だから「営業の方が使いやすい設計はどういうものか」と考えるのに、苦心しました。どんなツールを普段使うのかな、エクセルがいいのかな。エクセルの中でも何十万件のデータがあるから絞りかけができるほうがいいかな。そうしたら絞りかけはなにで行おうかな…といった具合に、突き詰めて考えました。
載せるデータも最小限に、とにかく普段データを扱わない方でも使いやすいように、というのを徹底しました。
──検証結果は来年中とのことで、今後はどのような動きになるのでしょうか。また今回、これをやったエスタイルの中での意義のようなものがあれば、教えてください。
まず、結果が出るのは、翌年中を予定しています。そして結果が良ければ、さらにブラッシュアップして他にも応用できればと思っています。
個人的な手応えとしては、まだ結果が分からないのでなんとも言えないですが、とにかくやってよかったなと。弊社としても、今後またメーカーとやりとりするときが来たら「こういうことやったことありますよ」と、事例として伝えられる。より企業のマーケティングに貢献できるようになっていきます。
まだ私は入社して1年ほど。それも未経験で入ったのですが、このような大きな案件に関わることができ、かつ試験的ではあるけれど「ユニークな視点で最先端の需要予測モデルをつくることができた」という実績を作ることができた。大変自信につながる経験になりました。