皆さんこんにちは、ドリーム・アーツ採用担当の山本です。
今回の記事は、協創パートナー推進本部の玉川のインタビューをご紹介します!
ドリーム・アーツは「デジタルの民主化」を掲げ、企業の業務部門自らがデジタル化を推進する動きを支援しています。このためドリーム・アーツの社員には、従来型の「お客さんから言われた通りに作る」というSI(システムインテグレーション)型支援から、「お客さんが自律・自走できるデジタル化のお手伝いをする」ための支援へと発想の転換が求められます。この転換に、「抽象化力」がどのように関わっているのでしょうか。カスタマーサクセスの玉川理咲子さんに聞きました――。
※「抽象化力研修」について、詳しくはこちらをご覧ください。
手を動かす主体がお客さんに変わった
―玉川さんは現在、「カスタマーサクセス」という部署で働いているそうですね。以前の仕事とは内容が大きく変わり、最初は大変だったと聞いています。
2018年にドリーム・アーツに入社したのですが、2年半ほど前にカスタマーサクセスの部署が新設され、そこに異動になりました。
しかし新設されたカスタマーサクセスの部署では、手を動かす主体がお客さんに変わり、真逆の発想が求められるようになりました。DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質を理解してもらい、私たちが持っているSmartDB(スマートデービー)に関する知識や活用の考え方を、お客さんのなかに根付かせる必要があります。新しい発想に基づいた事業を進める部署なので、答えがない道を歩むのは本当に苦労しました。
たとえば、お客さんの中でSmartDB導入の事務局を担う方が、「初めてのことで自信がない」とおっしゃる場合にどのように支援すべきか。「私たちがぐいぐい引っ張って行くべきなのか」「いや、最終的にお客さんが自分たちで回せるようにならないと意味がない。では、どこまで入っていくべきなのか」など、どんな支援がベストなのかを考える日々でした。
―入社したときに「具体と抽象」の研修を受けたそうですが、カスタマーサクセスの仕事で役立ちましたか。
研修では「ものごとを考えるときに、“点”で考えるのではなく、俯瞰した目線で考えることが重要」といった考え方を学びました。ただ、理解はできたものの、実践は難しそうで不安に思った記憶があります。その時は正直、業務に生かせそうなイメージは持てませんでした。
でも今では、日々抽象化力を駆使しています。お客さんと一緒に悩み、対策を考えるだけでなく、お客さんに「“そもそも”何を実現したいのでしょうか?」と、抽象度を上げる問いかけを重ね、高い視点を持つ習慣をつけるようにしています。
抽象化力を駆使して取り組んだ「型化」
―抽象化力の重要性に気付いたきっかけはありますか。
カスタマーサクセスの部署が発足して1年ほど経ったころ、オンボーディング(※1)を型化する取り組みが始まりました。それが一つのきっかけになりました。
※1: 新しいお客さんが継続的にサービス・プロダクトを使いこなせるように支援するプロセスのこと
お客さんによってSmartDB活用の目的や方法は異なりますが、ぶつかりやすい壁や悩みはある程度共通しています。そうした場合に取るべきアクションや役立つ情報などをまとめ、標準化された「型」を作ろうということになったのです。
個別のお客さんの支援をしながら、並行して「すべてのお客さんに役立つ共通項は何か」「どこに再現性があるのか」を考えるのは抽象化力が求められ、非常に苦労しました。でも、その型化の経験で、具体と抽象の考え方が身に付き、実践できるようになりました。
―チームでは、どうやって型化に取り組んだのでしょうか。
「そもそも何のためにそれが必要なんだっけ?」といった問いを何度も投げかけ合いました。
たとえば、「こんな活動を入れようと思います」という報告について、最初に聞いた感じではとてもよいことのように聞こえてしまうことがあります。そこで、「その活動の目的って何だっけ」という問いがあると、本質的な目的に合致しているか確認することができます。また、「それなら、同じ目的を持つほかのお客さんにも活かせるかな?」「多分こういうケースなら活かせると思います」と議論が展開できます。
異なる複数の悩みの中から似た点を見出して抽象化する。そこにまた、別の具体的なケースを照らし合わせてみると、これまで使っていたのとは違う手段で悩みが解消できることがわかったりすることもあります。そうして具体と抽象を行ったり来たりすることで、スピード感を持って、高いレベルの型化ができたと思います。
―それはやはり、全員が「具体と抽象」の研修を受けていることが効いているのでしょうか?
もちろん理論は大切ですが、それだけでは難しいように思います。普段から、チームの中で具体と抽象を行ったり来たりするための「投げかけ」をどれだけしているか。普段から「そもそも」を問う問いかけがしょっちゅう投げかけられるので、自然に鍛えられたように思います。
プロジェクトの先に、どんな姿を描いているのか
―お客さんと話をするときには、どんなことを意識していますか?
「そのプロジェクトがうまくいった先に、どんな未来を見据えているのか」という会話を挟むようにしています。
たとえば、「コストや人員に余力を持たせたいから」というお客さんは多いのですが、「その先に何があるのか」を問いかけます。生まれたリソースを注力業務に当てたいのか、新事業に力を入れたいのか、もっと働き方を楽にしたいのか、リモートワークを活用して好きなところで働けるようにしたいのか。みなさん、描く姿はさまざまです。そこが違うと、取るべき手段も変わってきます。そういった話を、打合せの冒頭のアイスブレイクなど、さまざまな会話の中に入れるようにしています。
ともすれば、足元ばかり見ながら歩いてしまうものですが、まずは目線を上げて「あの山を登ろう」と全員で目標を確認する。歩き始めてからも、足元を確認することは必要ですが、時々目線を上げて方向性を確認しないと、気付いたら全く違った方向に歩いていたということになりかねません。
―とはいえ、相手によって、抽象レベルの会話がスムーズに進むときと、そうでないときがありそうです。
そうなんです。抽象度が高い話をしたときの反応は、だいたい2パターンに分かれます。まず、比較的役職者や、ものごとをゼロから立ち上げて推進した経験がある人に多いのは、広い視野で上位の目標・目的を考えることの重要さに気づき、肯定的に捉えるケース。
一方、「そういったレベルの話が重要なのはわかるけれど、今そんなことを言われても余裕がないから難しい」といった反応をされることもあります。その場合は、まずはそのお客さんの悩み解消のお手伝いをします。そうでないと気持ちの余裕が生まれませんし、「ドリーム・アーツと抽象レベルの会話をしよう」という信頼関係も築けませんから。
「デジタルの民主化」に共感するお客さんが増えている
―「ITベンダーにお任せ」と比べると、内製化し自走するスタイルは一見お客さんにとっては大変そうに見えます。お客さんは、どんなところをメリットに感じているのでしょうか。
一番大きなメリットはスピード感だと思います。お客さんにしてみれば、業務のことは現場にいる自分たちが一番よくわかっているので、人に頼むよりずっとスムーズに求めるものが得られます。
外部のITベンダーに頼むと、第三者が介在することになるので、求めているものを伝えるときにコミュニケーションロスが発生します。また、一度完成しても、それで100%完璧であることはほとんどありませんから、使い始めると「やはりこんな風に変えたい」ということが出てきます。そこで、またITベンダーに依頼して修正してもらうのは大きな手間です。さらにコストもかかります。
内製は、最初は大変かもしれませんが、いったん回り始めると、自分たちが求めるものをすぐに実現して効果もすぐに実感できるようになります。そうしたスピード感や柔軟性をメリットに感じていただいています。
―こうした動きは、広がっているのでしょうか。
カスタマーサクセス部署発足時は少なかった印象ですが、最近広がっているのを実感しています。「デジタルの民主化」「自走サイクルをまわしましょう」といったお話にも、すぐに共感してくださるお客さんが増えています。
やはり、DXが浸透してきたことが大きいと思います。現場レベルではスピード感を求めて、そして経営層はコスト面を追求して内製化を選択されています。内製化するとスピードが上がりますし、コストも下げられますから。コロナ禍で業績がなかなか上がらないという企業は多いですが、それでも新しい取り組みをしないと生き残っていけないですし、DXも進める必要があります。それで内製化に目を向ける企業が増えているようです。
―それにともなってお客さんとのコミュニケーションも変化していますか。
はい。営業活動も変化しています。以前は、「いかにSmartDBの良さを訴求して買ってもらうか」が中心でしたが、最近は、営業活動の最初の段階から「お客さんがそもそもやりたいことは何でしょうか?」「経営的な背景を考えると、もう一段上の視点ではどんな目的がありますか?」といった問いかけをしています。
そうしたやり取りの中で、「お客さんが本当にやりたいことに、私たちが応えられるのか」を丁寧に確認します。お客さんとドリーム・アーツの双方で考え方を一致させ、私たちが本当にお客さんが求める価値を提供できるのか見定めたうえで関わるようになっていますね。
そうすれば、お客さんにも「ドリーム・アーツと話をすると、幅広い気付きがある」「その場しのぎや、目の前のことに対処するだけではない意見をくれる人たちだな」と見てもらえます。「私たちのことを本当に考えてくれているんだな」という信用が生まれて、「ドリーム・アーツと一緒に何かしたい」と考えてもらえるのではないかと思います。
自分の仕事のキャパが広がった
―抽象力を身に着けたことで、仕事の仕方に何か変化はありましたか?
見える範囲が広くなり、一度にできる仕事のキャパシティが広がったと感じています。
以前の私は猪突猛進型で、ただただ「一生懸命やります!」という姿勢でした。一つの案件に集中して、ついこだわりたくなって時間をかけてしまう傾向がありました。再現性のない活動が多く、「頑張っているのに、仕事が増えるばかりで楽にならない」と感じることが多かったです。周りからも「玉川さんは頑張ってはいるけど、あまり多くの仕事を任せられないね」と見られていて、そこが課題だと指摘されたこともあります。
抽象化を意識するようになってからは、一つの案件に取り組むときも、「別の案件でも使えるような形で資料を作っておこう」など、汎用性や応用のしやすさを考えるようになりました。また、自分一人で抱え込むのではなく、「このテーマならあの人と協力してやった方が早そう」「あの人に任せた方がいいかもしれない」といった視点が持て、より“協創”を意識するようになりました。
そういう発想を持って取り組むと、応用をきかせたり、複数のことに並行して対応できるようになったりするので、キャパシティが広がります。すると、その姿を見ている周りの人からも信用を得られやすくなり、さらに仕事がやりやすくなるといった好循環がまわるんじゃないか、と思うようにもなりました。
今はまだ、「半分理想論」というところですが、ようやくこうした流れがつかめてきたように思います。以前より、仕事が楽しいと感じることが増えてきました。
「抽象力」でダイエットにも成功
―抽象力が、仕事以外で役立っていると感じることはありますか?
実は最近、人生で初めてダイエットに成功して、この4、5カ月で体重が7キロ落とせたんです。「なぜだろう」と考えたら、抽象力のおかげでもあることに気付きました。
私は学生時代からずっと平均体重を上回っていて、自分の体形や体重にコンプレックスがありました。「細くなりたい、体重を減らしたい」という思いがずっとあり、何度もダイエットに挑戦したのですが、全然うまくいきませんでした。
今回ダイエットを決意したとき、「○キロ体重を落としたい」という具体的な目標を定める前に、「“そもそも”やせてどうなりたいか」を考えてみたのです。すると、「自分のプロポーションを変えて、好きな服を着てみたい」といった、見た目の要素以外にも、「体力をつけたい。健康的な体でありたい」という望みがあることがはっきりしました。
私は昔から体力がなくて、体調を崩すことも多かったのです。胃腸が弱く、冷え性や肩こりにも悩まされていました。そのために身体が重たく感じて、動くのがおっくうになってしまうという悪循環に陥っていたことにも気付きました。
それがわかったので、柔軟性を高めて筋力をつけるためにヨガに行き、胃腸に良い食事を作ろうとしっかり自炊するようにもなりました。それで健康的にやせることができました。
目先の「体重を落とす」ことだけにこだわっていたら、食べる量を極端に減らすなどの力ずくの方法を取ったりしたでしょうし、食べ過ぎた日があったら「もういいや」とあきらめていたと思います。最初に「そもそも」を分析して、「健康な体作り」という目的をはっきりさせてモチベーションを保ちながら、複数の手段を「仕組み化」して進められたのが、成功の要因だと思います。
―抽象力のお話からダイエットが出てくるとは思いませんでした。確かに、普段チームで投げかけ合っている「“そもそも”の目的は?」という問いかけは、仕事以外にもあらゆる場面で役立ちそうです。
その通りです。具体と抽象の力は、自分や他者との向き合い方を楽にするツールだとも思います。
私はもともと、人の反応がすごく気になってしまう方で、小さな失敗を気にして引きずることも多かったんです。それが自分でもイヤでした。
でもここ数年、仕事を通じて、何か失敗したとしても、視野を広げて抽象度を高めて見ると、実は「失敗」とはいえず、何か別のチャンスにつながっていることがたくさんあるということに気付くようになりました。仕事で怒られても、「そもそも」を問えば、「自分がしたこの発言に対して怒っただけであって、自分の人間性を批判されたわけではないんだ」とわかります。
そういった力をうまく使って、いくつになっても自分の力で、自分の機嫌をうまく取りながら、人生を楽しめるようになりたいです。
インタビューに同席した金井の感想
カスタマーサクセスの部署が新設され、役割がガラッと変わった玉川ですが、当初は発想の転換がなかなかできずに苦労したとのこと。組織や仕組みの変革はトップダウンでなされることが多いですが、その後大変なのが現場の「発想」や「マインド」の変革です。
その変革プロセスでカギとなったのが、目線をあげ抽象度をあげて話を本質に戻す「そもそも」の問いかけでした。「具体と抽象」の考え方は「変革プロセス」にも効くんですね!
お客さんの変革を支援するカスタマーサクセス部隊ですが、自らの体験を通してお客さんに「そもそも」を問いかけているのできっと説得力が増すのでしょう。
自ら変革を実践し、それをさらにお客さんに伝えることで、今回の「具体と抽象」の本質がドリーム・アーツ内部だけでなく外部のお客さんにまで広がっている様子が見えてとても嬉しく思いました。
出典:2022年11月15日ドリーム・アーツ コラムより
いかがでしたか?
新設部署の立ち上げから奮闘してきた玉川。研修で得た知識をそのままにするのではなく、上手に抽象力を活用して生き生きと働いている様子が伝わっていれば嬉しいなと思います!