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事業のトップが人事のトップに?「CHO」が描く次の3カ年

2021年7月、キュービックのメディア事業を牽引してきた木村圭介さんが人事責任者に就任しました。メディア事業本部長時代の振り返りと、新人事責任者として語る「キュービックのこれから」について、連載第3回目の今回も市原純がインタビューしてきました。

◆話し手
・木村圭介(@kimura1205
株式会社キュービック執行役員CHO(チーフ・ヒト・オフィサー:最高人事責任者)。弘前大学を卒業後、株式会社ドリコムに入社。その後株式会社えふななの創業メンバーとして参画したのち、キュービックに入社。執行役員メディア事業本部長を経験したのち、執行役員CHOとして人事領域を管掌。営業・マーケティング・組織開発・広報・制度設計と幅広く携わっている。
◆聞き手
・市原純(@Junomi_icchi
2018年新卒入社。北海道生まれ。キュービックに内定後、内定者インターンとして転職領域のコンテンツメディア運用チームに配属される。新卒入社後、クライアントのオウンドメディア運用チーム→営業部署の立ち上げ→ウォーターサーバーメディアの広告運用と営業を兼務→社長室に所属。

メディア事業本部時代を振り返って

ー 木村さんがメディア事業本部長へ着任した経緯を教えてください。

木村:
もともと13期(2019年6月)までは集客手法の機能別組織で組織編成されており、メディア事業は大きく3つの部署に分かれていました。そのうち1つの部署を管掌していましたが、14期(2019年7月)に顧客業界別の組織体制へ変更したタイミングでメディア事業本部長に就任しました。

ー コロナ禍で苦しんでいる会社が多い中、業績を成長させることができたのはなぜですか?

木村:
大きく二つ要因があると考えています。

一つ目は、ユーザーファーストの本質的な価値を届ける技術/文化を伸ばすことに注力したことです。デジタルマーケティング業界は「ハック」によって成果を生み出そうとする人や会社も多い中、コンテンツの品質やユーザー価値、顧客貢献といった「ビジネスとしての本質」に向き合うことを、強い意思で選択し続けました。

結果、クライアントやユーザーからの信頼、Googleなどプラットフォームからの評価などがついてきて、しっかり業績に結びつけることができました。大手新聞社とのアライアンスが実現するなど、会社の真摯な姿勢が認められる機会が増えていったと思います。

二つ目は、営業力の強化です。元々マーケター主体の会社で、営業に力を入れることができていませんでした。そのため、せっかく磨き上げていた媒体力やメディアの本質的な価値を、顧客である広告主企業に伝えることが十分できていませんでした。

営業組織を強化し、我々の強みをしっかり顧客に伝えることができるようになったこと。ニーズを丁寧に拾ってきめ細かく対応できるようになったことで、「ただの集客チャネル」との認知だったところから「事業のパートナー」として認めていただけるようになっていきました。

これにより、お取り組みの幅が大きく広がったり、大きな広告投資をいただけたりと、事業が加速していきました。対峙するメンバーの成長にもつながっていったと思います。

メディア事業の本部長としての振り返り

ー メディア事業本部長の時を振り返ってみて、改めてどうでしたか?

木村:
正直、苦悩しかなかったです(笑)。12期までは3チームのうち1チームの責任者として業績責任を持っていましたが、メディア事業本部長になった際、合計7チーム(メディア事業部全体)の業績責任を持つようになったため、管掌領域が一気に大きくなりました。これは大変でしたね。

ー 確かにそうでしたね。具体的に何が大変でしたか?

木村:
「プレッシャーの質が変わったこと」と「マネージャーのマネジメント」ですかね。
本部長になる前は「3チーム中の1チーム」のみの管掌で、3人の事業マネージャーの中の1人でした。ここから本部長になることで管掌する規模は3倍以上になったわけですが、物理的な規模以上に「全社業績を1人で担う」というプレッシャーは大きかったです。当事者意識が高まり、「会社の課題」が全て自分によって生まれているのではないかと考えるようになりましたね。

もう一つは、抜擢人事でマネージャーたちを登用して役割を任せたことです。新任のマネージャーたちはメンバーとしての成果を生むことはできていたので、自分の業務マネジメントはできていました。しかし、マネージャーとしてのスキルは十分に備わっているはずもなく、多くのメンバーは成長によるキャッチアップを期待しての抜擢でした。ただ、そのキャッチアップ途中では誰かがカバーしないといけない。結局、本部長業務をやりながら、マネージャーたちの業務をサポートするのが本当に大変でした。

3点目として、組織編成を機能別から業界別に変更したことも大きな壁になりました。旧組織体制では集客手法の機能別組織だったため、検索エンジンや広告媒体(Google,Yahoo!など)の特性・特徴の把握など、純粋なデジタルマーケティングの技術を磨いて戦う編成になっていました。一方、新組織体制においてはより広告主やインターネットユーザーといった顧客・市場に向き合うことを重視するため、「業界別」に組織構造を再編しました。この変更により、マーケターには3Cの観点などからマーケットを見立てて、戦略に落とし込むスキルが新たに必要になりました。デジタルマーケティングのオペレーションだけ回していれば成果が出る、という状態ではなくなり、メディア運営=事業運営として一段高いスキルセットを磨いていく必要がありました。

最初はこうした経験はなかったこともあり、ほぼ全マネージャーができなかったんですよね。そのため、戦略については四半期ごとにかなりコッテリと振り返る場を設け、戦略立案スキルを丁寧にインストールしていきました。最初は何をどう考えればいいかわからず戦術的なことばかりを語っていたマネージャーも、マーケット動向を深く洞察して戦略に落とし、その戦略をメンバーに深く浸透させることができるようになっていきました。

このプロセスを通じてマネージャーが成長してくれたおかげで、組織はかなり強くなったと実感しています。

特に15期(2020年7月〜2021年6月)は外部環境の変化が大きく、事業にとって厳しい1年でした。それでも会社を大きく伸ばせたのは、変化に対応し、自ら決断をできるマネージャーが育ったおかげです。そしてそれは、配置戦略による育成・・・つまり組織体制の変更と抜擢人事が花開いた結果だと思っています。

ー あらためて「抜擢人事」の効果は何でしょうか?

木村:
役割によって負荷が変わり、成長のギアが上がることですね。
実は私自身も本部長に就いたのは抜擢人事でした。かなり高い負荷がかかりましたが、振り返ってみると自分が一番成長できた期間だったと思います。

元々は、各メディアの最大化が会社の業績を一番伸ばすことであると考えていました。そのため、各チームのマイクロマネジメントをしようとしていました。ただ、管掌領域が3倍に広がったことで、それでは限界があることに気づきました。逆に各マネージャーに任せてみると意外とうまくいこともたくさんある。ここでようやく「本部長としてやるべき仕事は何か?」を考えるようになり、「メディア事業全体の方針や戦略」に力を注ぐことができるようになりました。

ー 今回の本部長としての経験を通じて得たことを教えてください。

木村:
厳しいと思うギリギリのラインの負荷をかけられるようになりたいと思いました。
会社としても「仕事を通じて人は成長する」と考えていて、成長には絶妙な負荷が必要です。自分だけでは絶妙な負荷をかけるのは厳しいので、上司や会社として個々人の成長と向き合う必要があります。会社としてチャレンジを許容してくれる環境はありがたいですし、今後は私もその環境をつくっていきたいですね。

2021年7月に就任した「CHO」って何?

ー 就任したCHOとはどんな役割なのですか?

木村:
CHOとはチーフ・ヒト・オフィサーで最高人事責任者という意味です。世の中的にはCHRO(チーフ・ヒューマンリソース・オフィサー)が一般的かもしれません。もともと会社としてHR(ヒューマンリソース)という、人をリソースと捉える表現が好きではありませんでした。キュービックのコアバリューが「ヒト・ファースト」ということもあり、「CHO」としました。役割は採用、育成、PR、カルチャーづくりなど、「経営目標を達成するための組織能力の調達と拡張」を担っています。

ー CHOとして16期以降取り組んでいきたいことは何がありますか?

木村:
主力であるデジタルメディア事業の「成長」と「発展」をさせることができる人材の獲得です。まずは、これまで通り既存事業の規模拡大ができる人の採用をしていきます。他方では、現在のキュービックが持っている資産を使って次の事業を生み出すことができる人の採用をしていきたいと思っています。人材や組織構造なども既存事業に特化していたので、新しい事業を伸ばそうとした時に「今までとは違う筋肉」が必要となるためです。

ー 「今までとは違う筋肉」とはどういったものでしょうか?

木村:
例えば、今までずっと野球をやってきた人は、いくら野球で活躍していてもスポーツがサッカーになれば簡単にはうまくいきません。既存のデジタルメディア事業の成長では、「現時点であるものの改善行動」をするためのPDCAスキルと多数のメンバーを動かす力が求められます。逆に新規の事業を生み出す力は、「どんな未来をつくり出したいか」というビジョンを打ち出す力や市場・競合・ユーザーの「課題」を見つける力、PM(プロジェクトマネージャー)のスキルも必要が必要です。そういった意味で新規の事業を生み出せるスキルを持った人材も採用していきたいと考えています。

ー 事業開発ができる人材はどこの会社も必要とされていると思います。そういった方々がキュービックを選ぶとすれば、どんな魅力がある思いますか?

木村:
キュービックに入社した人やキュービックをよく知る外部の人に言われる特徴としては、「社内がとても協力的である」という点があります。社内で新規事業を立ち上げる時は既存アセットを使っていくことがセオリーです。

他の会社だと、新規事業の部署はお金も生み出していないし、協力を仰いだ時に時間を取られている感覚になってしまい、すごく嫌がられるみたいな話をよく聞きます。しかし、キュービックでは嫌な顔をされないで協力してもらえます。これは小さいようでかなり大きい魅力なのではないかと思っています。

CHOとしての決意

ー CHOとしてキュービックの人事組織をどのようにしていきたいですか?

木村:
もっと人事チームの「事業への解像度」を上げていきたいと考えています。経営や事業の目標を達成していく上で人・組織の強化が必要であり、私が事業サイドから組織サイドへ異動してきた狙いでもあります。

16期の人事組織のテーマに「プロアクティブ」という言葉を設定しています。「今までよりも一歩踏み込んで会社や事業を理解しにいき、人事施策を提案していく」という姿勢へのコミットメントです。経営の最大アセットである「ヒト」の最適化をしていきたいと考えています。

人事チームのメンバーの事業解像度やミッション、ビジョンへの理解を高めていき、人事の専門性と掛け合わせた筋の良い提案を、自信を持って経営陣にぶつけていけるような組織にしていきたいです。

ー ありがとうございます!ということで今回の Next CUEBiC は木村圭介さんでした。次回は13期に立ち上げられたMA(法人営業部)のメンバーにインタビューしていこうと思います。どうぞお楽しみに!

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