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SESってなに?派遣と違うの?未経験ITエンジニアが知らないIT業界の本音と建前

未経験でIT業界の求人を探していると、よく「SES」という言葉が出てきます。

「システム エンジニアリング サービス」という言葉の頭文字を取って、「SES」と呼ばれているのですが、IT業界初心者には「?」の言葉ではないでしょうか。

調べてみても「技術者の労働を提供する」とか、「実質的に派遣と同じ」とかイマイチわかりづらく書かれていることが多いように思います。

そこには、IT業界特有の本音と建前が関係しており、未経験者にとっては混乱しがちな部分なのですが……。

しかし、未経験のITエンジニアを志望する方も、そういう事を理解しておくことで入社後どのような働き方をするのか想定することができます。

ざっくりでも理解しておくことで、将来の仕事選びに役立つでしょう。

今回は実際にSESで働いた経験もある元エンジニアの人事がわかりやすく解説します!

SESってなんですか?ざっくり教えます

「SES(System Engineering Service)」は直訳すると「システム技術提供」となりますが、これだと意味がわかりにくいですよね。

IT用語に出てくるアルファベットの略称は日本語に直すと意味を理解できるものも多いですが、和訳してもイメージを掴むことができない言葉の一つです。

そもそもは「システムエンジニアリング」という言葉が、システムの設計や開発、保守などを統合的に管理する技術や手法のことを指し、そういったものを顧客に「提供する」という意味でサービスという言葉が使われたと考えられます。

しかし、IT業界で「SES」という時は、ほとんど「客先常駐型の勤務形態」という意味で使われています。

一般的にですが、仮にA社という企業に就職すると、A社のオフィスに出社し、A社の上司の指示で、A社の仲間と一緒に仕事をするというイメージがあるかと思います。

SESの場合、就職したA社のオフィスではなく、お客様であるB社のオフィスに出社し、B社のメンバーや同じ案件に入っているA社のメンバーと一緒に仕事をすることになります。

場合によってはA社と同じようにB社と取引している別企業のメンバーと一緒に仕事をすることもあります。

ただし、最近はリモートワークが盛んになってきているため、お客様先のオフィスに出社する機会が無い場合もありますが、その場合でも「お客様先で働いている」という考え方になります。

この様なITエンジニアの働き方を「客先常駐」や「客先派遣」と呼びます。

仕事の内容について指す言葉ではないので、実際にどんな仕事をするのかはお客様のニーズによって様々です。

お客様のもとでプログラミングをするエンジニアもいれば、ネットワーク構築やサーバー保守をおこなうエンジニアもいますし、お客様の使っているシステムをサポートするエンジニアもいます。

企業やプロジェクトによって異なりますが、複数のメンバーをお客様先へ常駐させ、お客様先の業務をまるっと任されるケースもあれば、自社からは自分だけが一人でお客様先のチームに参加するような形で働く場合もあります。

SESをITエンジニアの視点でざっくりまとめると、入社した企業ではなく、お客様先の企業に入り込み、その企業の社員のように仕事をすることです。

派遣契約とどう違うの?ちょっと複雑な契約の話

「待って、それって派遣ってやつでは?」という方もいらっしゃると思うので、ここからは少し複雑な業務契約に関するお話をしていきます。

客先常駐をするときには「業務委託契約」という業務契約で企業同士が取引する場合と、「労働者派遣契約」という業務契約の場合があります。

一般的にSESは「業務委託契約」という契約での客先常駐を指す言葉です。

業務委託契約の中にも「請負契約」や「準委任契約」など分かれてくるのですが、今回は割愛します。

この「業務委託契約」とは、業務の成果の提供を約束する契約です。例えば「このプログラムを作るから手伝ってね」とB社が言った場合、お仕事を受けたA社はその手伝うという行為に責任を持ちます。

A社のエンジニアはどのように仕事を進めるか、自分たちで決めることができます。

B社は、仕事が終わった結果さえちゃんと満足ができていれば、作業の途中でやり方に口出しはしません。


一方で「労働者派遣契約」とは、労働力の提供を約束する契約です。

同じように「このプログラムを作るから手伝ってね」とB社がお願いした場合、お仕事を受けたA社はプログラミングを手伝ってくれるA社の社員を依頼先の企業に提供します。

そして、派遣契約の場合は、どんな仕事をするのかや、どのように進めるかは派遣先のB社が決め、エンジニアはその指示に従います。

この2つの契約の違いを簡単にまとめると以下のとおりです。


業務委託契約:

成果(モノだけでなくサービスも含まれる)の提供を求められる。

仕事の指揮命令系統は委託された企業にある。


労働者派遣契約:

労働力の提供を求められる。

仕事の指揮命令系統は派遣先の企業にある。


上記の通り、SESはほとんどの場合「業務委託契約」で、お客様先の課題解決を手伝う等サービスを成果として、お客様先に常駐しながら仕事をしているような状況です。

契約上、お客様先に常駐していたとしても、常駐先の企業の人からエンジニアに指示することはできないのですが、この原則が守られていないことも多く、トラブルの種になることもあるようです。

この指示命令系統がグレーな状態になっていることもIT業界全体の課題です。

他にも派遣契約は、自社が雇用している社員しか派遣できません。

別の企業から派遣で来てもらったエンジニアを、さらに別の企業に派遣することはできず、二重派遣という違法行為にあたるので気をつけなければいけません。


SESで働く人のメリット・デメリット

このSESという事業は、日本のIT業界で非常に大きなシェアを得ています。

企業としては自社でITエンジニアを抱えるよりも人にかかるコストが下げられたり、必要なスキルを持ったエンジニアを必要な時だけ調整することができる柔軟性があります。

そのためSESのニーズはとても大きく、日本のIT企業の8〜9割がSES事業をおこなっているとも言われています。

その中には従業員数が数名しかいない企業もあれば、数千人を超える企業もあるため、一概に企業規模で分かれるものではありません。

日本のIT業界を動かしているのはSESで働く人達だと言っても過言ではないかもしれませんね。

自社で自社案件に関わるエンジニアと比べて、どちらがいいとか、どちらのほうが凄いという事では無いのですが、SESで働く人のメリットやデメリットをみてみましょう。

●メリット

・いろいろなプロジェクトに参加できる

様々な企業やプロジェクトに関わるため、多様な経験を積むことができます。多くの技術やスキルを身に付ける機会が広がります。

大手企業の案件でエンジニアの経験が積めることは将来的にもプラスになることでしょう。


・人脈が広がる

多くの企業で働くことで、多くの人と出会い、ネットワークを広げることができます。これが将来の仕事やキャリアに役立つことがあります。


・柔軟な働き方ができる場合もある

常駐に入る企業や案件によっては、働く場所や時間が柔軟であったり、リモートワークが認められるケースもあります。


●デメリット

・派遣先による働き方の制限

派遣先での働き方は、派遣先の指示に従わなければならないため、自分のやり方や意見があまり反映されないこともあります。


・スキルが偏る可能性

SESでは特定のプロジェクトに長期間従事することがあり、新しい技術を学ぶ機会が限られる場合があります。同じ作業が続くと、スキルが一部に偏るリスクがあります。


・ぬるま湯状態になりがち

案件によっては同じことを繰り返すルーチンワークばかり行うようなものもあり、慣れたら楽な仕事だなと感じることもありますが、その楽さに慣れてしまうと他の仕事がより大変に感じます。

企業のキャリアステップ計画を確認したり、自身の目標を明確に立てていかないと、「あの人、経験年数は多いのにスキルがないよね」と思われてしまうことでしょう。

「SES やめとけ」はなぜ起こるのか?

どんなことにもメリット・デメリットはあり、それをどう受け止めるかは本人次第ですが、Webなどで検索すると、SESに対する風当たりは強いように感じます。

「SES やめとけ」や「SES ブラック」など、サジェストに出てくる言葉は不安になるような要素ばかりで、それについて説明しているブログ記事などが多く出てきます。

理由をまとめてみると以下のようなものでした。


・案件に参加してない待機期間は給与がカットされる

・給与が少なかったり上がりにくい

・ITエンジニア希望なのに家電量販店や携帯販売ショップに派遣される

・お客様に提出するスキルシートに嘘を書かされる


実際にそういう企業があったようで、いくら自分が未経験だとしても、入社してから上記のようなことを知ったら不安しかありませんよね。

そのような企業は改善されたり淘汰されたりで少なくなってきたと聞きますが、後悔しないためにも企業選びの段階でしっかり確認しておきましょう。

とはいえ、未経験ITエンジニアの場合、SES事業をあつかう企業に入社するケースがほとんどではないでしょうか。

逆に社内開発や自社案件に未経験エンジニアが参加するハードルはSES案件と比べて高く、そのような求人は未経験者にも経験者にも人気があるので狭き門になっているようです。

しかし、SESも未経験の方でも育成できる環境があったり、レベルに合った案件があったりすることが多く、エンジニアにとっても段階的なステップを踏みやすい事も事実です。

最初はやりたい仕事とズレを感じることもあるかもしれませんが、その後の自分の求めるキャリアをちゃんと叶えていけるビジョンを、会社と一緒に考えていくことが理想的ですね。

知識や経験を含めたスキルを持っていれば、自分の望むキャリアや働き方を実現できるのがITエンジニアのいいところかもしれません。

そのためにも自己研鑽が大切になってくるということを覚えておいてください。


今回はSESについてお話しましたが、ビジネスの契約の話が絡むので、IT業界未経験の方や新卒でIT業界に入社を目指している人にとっては少し難しいかもしれません。

しかし、自分がSESで働くとなった場合には知っておいたほうがいいことなので、今回の記事をきっかけに、細かい部分を調べてみて欲しいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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