はじめてWantedlyで記事を書く代表の佐々木です。
当社はインターネットサービスを開発している広島の会社なのですが、広島で2016年から子ども向けのプログラミングスクール「スタートプログラミング」も運営しています。
私がスタートプログラミングを始めた時には、まだ広島には子ども向けのプログラミングスクールが存在しておらず、黎明期からコツコツと運営してきました。
起ち上げ時期には子ども向けのプログラミング教育そのものがなかなか認知・理解されず苦労したことや、ビジネスとして成立するまでが大変で、これまでたくさんの紆余曲折がありました。
また今年はコロナの影響などもあり一時期は運営を諦めかけたこともありましたが、なんとかお陰様で来年には東広島の西条で4教室目(西条校)を開校することになりました。
まだまだ理想には程遠い状況ですが、子ども達が成長した姿を見ていると、途中で諦めずにやってきてよかったなぁと感じています。
新教室起ち上げの良い機会なので、スタートプログラミングのこれまでの歴史もふりかえりながら、スタートプログラミングの戦略や目指すビジョンなどをご紹介してみようと思います。
スタートプログラミングとは?
スタートプログラミングは小学生向けの広島市にあるプログラミングスクールです。
2016年8月に1教室目(出汐校)を起ち上げ、教室運営をはじめて5年目になりました。
現在は3教室(広島市南区出汐、広島市中区紙屋町、広島市安佐南区西風新都)で運営していますが、冒頭でも書いたように2021年2月に東広島の西条に新しく教室(西条校)を開校する予定です。
当社がもともとWeb技術を主体としたIT企業だったこともあり、基本的にはソフトウェア向けのプログラミングを中心とした教育カリキュラムで運営しています。
母体がIT企業ですので、カリキュラムは本格さを追及しており、長く通う生徒の中にはJavaScriptフレームワークでのWebアプリ開発、Webサイト、iOSアプリ開発や、Unityアプリ開発など、エンジニアでもびっくりするような作品を作る子もいます。
教室のようす
発表会のようす
なぜプログラミング教室を作ったのか?
私は広島市の出身なのですが、関東のSIerで長くシステムエンジニアをやっていました。
大規模チームのプロジェクトマネージメントが主な業務で、カテゴリとしては3Gの携帯電話時代から初期のスマートフォンごろまで、OSの開発からアプリケーションの開発、ファームウェアの開発など、移動体通信デバイス開発はひと通りやったかなというキャリアです。
その後、関東から地元広島に戻り、2014年1人自宅で起業したのが当社(クランチタイマー株式会社)の始まりです。
関東から広島に戻って感じたのが、関東に比べて広島のIT企業で魅力的に感じる会社が少なかったこと。
また、自分に子供がいたこともあって、プログラミング教育を通じて広島のIT環境をよくできたらと思ってはじめたのがきっかけでした。
仮説検証と教育現場経験
スタートプログラミングは2016年からはじめましたが、アイデアとしては2014年ごろからあたためていました。
当時はまだ広島に子ども向けのプログラミング教室がなかったので、はじめにどのレイヤー(小学生・中学生・高校生・大学生)をターゲットするかはかなり迷いましたし、そもそもニーズがあるのかもわかりませんでした。
また私にはプログラミングの経験は十分にありましたが、教育の経験は皆無だったこと、店舗(教室)を借りてのローカルビジネスの経験もなく、すべてが始めてでした。
そこで、まずはリーンスタートアップ的にニーズの検証を行おうと考えました。
最初の検証内容は、「そもそも子供がプログラミングを学びたいと感じるのか?」という点についてです。
実際にやったことは、Twitterで小学生〜大学生を募集し、無料で3ヶ月ほどプログラミングを私が教えてみました。
年代別に授業を行い、カリキュラムの種類や教え方などいくつかフォーマットを作って、反応を見ながら対象と教育の方向性を検証していきます。
結果的に、ニーズの発見、プログラミング教育を最も必要とする対象を絞り込むことができ、また対象に最適な教育方針が見えてきたことで、小学生・中学生を対象とした、個別指導型の教育スタイルに落ち着きました。
続いて、教育の経験がなかったので、教育現場を経験したいと考えました。
いろいろと調整した末、広島コンピュータ専門学校という専門学校の教員として講師を担当させていただくことになり、実際に1年間授業を受け持って教員として生徒にWeb系の授業を行うことで、教育現場を経験しました。
当時は会社経営の2年目であり、自身も受託開発を担当していたり、スタッフもいる会社でしたのでプロジェクトマネージメントも行っており、極限に忙しかった記憶があります。
それでも、企画やビジネスプランを検討する段階では、かならず自身が現場を経験して体験しないと本質が見えないと思っていましたし、今でも実際のユーザーの声はプロダクトオーナーがもっとも聞くべきだと考えています。
コンセプトの策定
ニーズの検証と教育現場を経験し、次にビジネスプランを検討しました。
プランを考えるにあたって最初に決めたことは商圏です。
目的が「プログラミング教育を通じて広島のIT環境をよくする」ことでしたので、広島県内というエリアで子供にプログラミングを教えるというところはすぐに決まりました。
続いて、ポジショニングですが、検討当時(2015年)の段階で2020年から小学校にプログラミング教育が導入されることがわかっていましたので、今後民間が運営するプログラミング教室が増えていくことは容易に想像がつきました。
そこで、まずは学習塾や習い事教室などいわゆる教育ビジネスを運営する企業との差別化を検討しました。
最短で参入障壁を築く効果的な方法を考えたとき、やはりIT企業としての当社の強みを活かすこと、すなわち本格さや、高いITスキルを身につける教育が最も適切であろうと考えました。
プログラミング教育ビジネスは模倣がしやすいビジネス領域ですので、極論をいうとブランディングが最大の差別化にはなると思いますが、起ち上げ当初は広島市というローカルエリアという商圏に絞ること、また高いプログラミングスキルを教育するという、ビジネス構築が困難なポジションを選択することで差別化しようと考えるに至り、現在は変えていますが、コンセプトを練った当時のキャッチコピーは「未来のITエキスパートを育てるプログラミングスクール」としていました。
その後、数年経過し、多くの子供向けプログラミング教室が立ち上がりましたが、未だにIT企業が運営する広島の子供向けプログラミング教室は当社のみとなります。
このコンセプトを理解いただいているのもあって、当教室にはわざわざ他県からも通ってくださる生徒さんもいらっしゃいます。
ビジネスの起ち上げと最初の顧客を見つける
細かいビジネスプランまで策定し、次は実際に教室を立ち上げるフェーズです。
半径自転車15分で通える広島市で最もターゲット(小学生)の多い地域を探し、結果的に広島市南区出汐という場所で教室を構えることを決めました。
続いて、最初の顧客を見つけるため、プログラミングの体験会を申し込める簡素なランディングページを1日で作り、地元の紙面にプレスリリースを打つとともに、SNSなどで公開しました。
結果的に10名程度の申し込みがあり、当時はまだ物件を借りていませんでしたので、近くの広島市が運営する時間貸しの会議室を格安で借りてプログラミングの体験会を行いました。
結果的に体験会を受けてくださった方のほとんどが最初の顧客となり、物件を契約する前に生徒を獲得することができました。
ポジショニングの見直しとビジョンの言語化
最初の顧客が獲得できましたので、広島市南区出汐に物件を借りて、実際に教室の運営をはじめました。
始めた当初はまだ生徒も少なくビジネスとして成り立っていなかったので、エンジニアとして勤務していたスタッフにもメンターとして授業に入って手伝ってもらいながら運営していました。
土日も教室を運営していましたので起ち上げの初年度は1年間、私はほぼ休みなし。
事務スタッフもいませんでしたので、会社経営、事務作業、開発業務と平行で教室運営をしており、全く余力がない状態で次のステップについても検討する余裕がなく、健全な状態とは言えませんでした。
その後、生徒が増え、損益分岐を超えそうなタイミングで、すべてを教室スタッフに引き継ぐことにしました。
引き継ぐタイミングで必要だと感じたのが、ポジショニングの見直しとビジョン(教育理念)の言語化です。
教室を起ち上げてから少し経つと広島市内で少しづつ子供向けのプログラミング教室が増え、もっと明確で尖ったポジションを確立する必要があると考えました。
そこで、あらためて広島市内のプログラミング教室の調査、その他競合となる学習塾や習い事教室などのポジションをプロットし、よりプロフェッショナルで自己表現を追及するポジションに教室のコンセプトを昇華させることにしました。
もう一つ、重要だと考えたのが教室スタッフへのメッセージです。
どんなビジョン(教育理念)を目指すのかを言語化しました。
いろいろと言葉をチョイスし、数日かけてビジョンを策定しました。
策定したビジョンが以下の通りです。
「高度なITものづくり教育で 子どもたちの好奇心に火をともし 未来のイノベーターを育む」
実際に私がこれまで様々な開発を経験して常に感じているのが、プログラミングは手段であって目的ではないということ。
したがってプログラミングを教えることは目的ではなく、将来活躍できるIT人材を育成することが目的であり、ITスキルで生み出したプロダクトを自分の言葉で発信できるような教育を目指しているので、あえてインパクトのある「イノベーター」という言葉をチョイスしました。
プログラミング教室をビジネスとして成立させる難しさ
教育領域のローカルビジネスというカテゴリは全くの未経験でしたので、はじめてみて教室ビジネスの難しさを痛感したことがたくさんありました。
- 参入障壁が低い
- 商圏が限られる
- 単価が安い
- 労働集約型ビジネスであり利益率が低い
- 新規顧客獲得の難しさ
- 新規顧客獲得できるタイミングが年度の切り替わりに集中
- 他の習い事教室との競合
- 継続率(LTV)向上の難しさ
- 物件のキャパシティが売上のアッパー
一言でいうと、固定費が高く非常に利益率が低いSaaSビジネスのようなイメージです。
実際黒字化までが大変でした。
最近では、コロナ禍もありこれまで増えてきた他のプログラミング教室の閉校するところがちらほら現れました。
2017〜2020年にかけてかなりの教室が増えましたが、実際にはじめてみるとなかなか利益が出ないのでやめざるを得ないだと思います。
教室ビジネスで大事なこと
顧客単価が低く利益率が低いビジネスですので、できるだけ集客にはコストをかけず効率的に新規入会を増やす必要があります。
学習塾などは単価が高く、さらに教科を増やすことでアップセルを狙えますが、実際プログラミング教室で学習塾のような授業料を支払うというマインドはまだまだ作れないのが現状だと思います。
当社の場合は、もともとWeb集客が得意でしたので、教室開校からWeb集客(SEO等)にはかなり力をいれてきました。
実際、広島の教室ではオーガニック検索で起ち上げから1位をキープしています。
結果的に集客が集中する一部のタイミングをのぞいて、基本的には広告類にはコストをほとんどかけずに生徒を増やしてきました。
起ち上げた最初のころは紙媒体のマーケティングもやりましたが、費用対効果はかなり低いので、現在は全く手を付けていません。
広告によるマーケティングに頼り、その費用をペイすることが難しいのもこのビジネスの難しいところだと思います。
基本的に入り口はWebと、いかに口コミで紹介してくださるかがビジネス的に大事なポイントだと思います。
また、新規入会を獲得することが難しいため、入会してくださった生徒にはできるだけ満足して長く通っていただけるように教育の品質とCSを上げていかなければなりません。
この点は、授業のカリキュラムも重要ですが、結局はメンター(先生)の指導スキルにかなり依存すると思います。
スタッフの人間力がLTVに直結するといっても過言ではありません。
そのため、スタッフの教育が非常に重要で、ビジョンを伝え続け、みなで定期的にふりかえり、改善をしつづけることが、地道ですがLTVを伸ばす唯一の方法だと思います。
今後のマーケット予測と当社の方針
プログラミング教室のビジネス側面の難しさをお伝えしましたが、かといってマーケットがないわけではありません。
現在のマーケットのステータスとしては、コロナ禍で導入が先送りになってしまったとはいえ、今後本格的な小学校でのプログラミング科目導入や、IT人材の慢性的な不足は変わらず、今後も拡大傾向にあると思います。
今後は、学歴主義の教育がさらに見直され、家庭の教育費がより専門性の高いプログラミングなどの習い事に振り分けられていくものと思います。
そんな中で当社が目指すのは、将来即戦力として活躍できるIT人材の育成であり、子どもたちには幼いころからスタートプログラミングでITスキルとそれを表現する力を身につけてもらいたいなと考えています。
スタッフを募集しています
教室で子どもたちにプログラミングを教えるメンターの他にも、教材開発やマーケティング資料に関するデザインなど、スタートプログラミングでは幅広くスタッフを募集しています。
副業やアルバイトとして、週1日からでも大丈夫ですので、興味がある方はお問い合わせください。