作った人が、値段を決められる時代になってきた
スーパーで100円の野菜を買ったとき、そのうちいくらが作った人に届いているか。
考えたことのある人は、あまり多くないと思います。
私もこの仕事に関わるまで、気にしたことがありませんでした。
調べてみると、思っていた以上に少ない数字が出てくるんです。
作った人に届くのは、半分以下
農林水産省の調査では、野菜や果物16品目を平均すると、店頭の値段のうち生産者が受け取っているのは48.5%。
残りの半分以上は、集荷、卸売、仲卸、小売と、流通の各段階の経費になっています。
流通にはそれだけの仕事があるので、それ自体が悪いわけではありません。
ただ、作る側から見ると、値段の半分以上は自分の手の届かないところで決まっているということです。
うちも農家です。
相場主体の場所に出荷をするとこのような数字が立ち並びます。
しかもそう言った場所には必ず規格というものが存在し、見た目で値段が変わるんです。
全く同じ味だし成分でも見た目で値段が変わってしまう。
相場に任せる怖さ
レンチナスには、それを身をもって知っている歴史があります。
創業した頃、うちは平茸を作っていました。
ところが、ブナシメジが流行り始めて、平茸の値段が一気に崩れた。
伊勢社長は、当時のことをこう振り返っていました。
「当初100グラムあたり100円以上してたものが、100グラムあたり10円とかまで下がって」
作る意味がない、という値段です。
自分たちがどれだけ頑張っても、相場が崩れれば、それで終わってしまう。
直接売る道が、広がっている
一方で、作った人が直接売る道は、少しずつ広がっています。
農産物の直売所の販売額は、2024年度で1兆1,344億円。
10年前の2014年度は9,356億円だったので、2割以上増えています。
ネット販売や、飲食店との直接取引も増えてきました。
直接売ると、値段を自分で決められるだけでなく、お客さんの声が直接届きます。
うちの黑椎茸も、そこから生まれました。
社長が対面販売をしていたとき、お客さんに「これ、どうやって食べますか」と聞いたら、ほとんどの人が「焼いて食べる」と答えた。
それなら、焼いたときに一番美味しい椎茸を作ろう、と考えたのが始まりです。
今では黑椎茸は、市場の相場とは別の値段で選んでもらえる商品になっています。
帝国ホテルに選ばれたり、テレビ番組で紹介されたりしたのも、相場の中で戦うのをやめて、自分たちで価値を作ってきた結果だと思っています。
規格から外れた椎茸も同じです。
形が悪いだけで味は変わらない椎茸を、地元の直売所に並べると、見た目より鮮度と値段で選ぶお客さんがちゃんと手に取ってくれる。
市場に出せばほとんど値がつかないものでも、売る場所を変えれば値段がつきます。
誰に、どこで売るかを自分たちで選べるようになると、同じ椎茸でも生まれる価値が変わってくる。
まだ、ほとんどは相場の中
ただ、今のうちの出荷の多くは、まだ相場に左右される売り方です。
産直や直接の取引は増やしたいけれど、売り先を開拓して、商品の見せ方を考えて、なぜこの値段なのかを伝える。
そこまで手が回っていないのが実情です。
飲食店に直接卸す、ネットで売る、加工品にして届ける。
考えられる道はいくつもあるのに、それぞれを形にする人が足りていません。
相場の波に振り回された平茸の時代を知っているからこそ、売り方を自分たちで持つことの大切さは、社内の誰もが分かっています。
作るだけではなく、どこで、誰に、いくらで売るかまで設計する。
それができれば、農業は「値段を決められる仕事」に変わっていくと思っています。
その仕組みを社員として一緒に作ってくれる人と、話してみたいです。