椎茸の「産地」は、どこで決まるのか
スーパーで椎茸のパックを裏返すと、「国産」や「秋田県産」などと書いてある。
それを見て、秋田の山の中で育った椎茸なんだろうな、と思う。同時に、国産だから安心だとも思う人もいるでしょう。
この仕事に関わるまでは自分自身もそう思っていました。
でも数年前まで、その表示には少し事情がありました。
収穫した場所が、産地だった
2022年の3月まで、生の椎茸の原産地は「収穫した場所」で表示するルールでした。
一見、何の問題もなさそうに聞こえます。
ところが椎茸の場合、ここに抜け道がありました。
菌床栽培は、おがくずなどを固めたブロックに菌を植えて育てます。
この菌床を作って、菌を植えるところまでを海外で済ませる。
それを日本に運んで、ハウスで芽を出させて収穫する。
そうすると、収穫地は日本なので「国産」と表示できたんです。
実際、中国からの菌床の輸入は大きく増えていました。
椎茸農家の中でも問題提起されていた頃があります。
報道によると、輸入量は10年ほどで約5倍になり、2021年には3万7千トンを超えているようだ。
椎茸が育つ時間の大半は、菌床の中で菌が広がっていく期間です。
その大部分を海外で過ごしたものが、最後の数週間だけ日本にいて「国産」になる。
消費者の感覚とはずいぶんズレた話でした。
ルールが変わった
これを受けて、2022年3月30日に表示のルールが見直されました。
今は、菌を植えた場所、つまり「植菌地」が原産地になります。
中国で植菌して日本で収穫したものは、「中国産」と表示しなければいけません。
半年ほどの猶予期間を経て、今はこのルールで売り場に並んでいます。
ひとまず安心。
このニュースや事実を知った時、自分も少し驚いたのですが、椎茸に限らず他の野菜や果物などもこういったことがあるのかもと思った記憶があります。
椎茸の産地という、当たり前に信じていた情報が、つい最近まで曖昧だったこと。
そして、その曖昧さを変えるのに、ルールそのものを動かす必要があったこと。
今は、パックの表示をよく見ると、植菌した場所と収穫した場所が別々に書かれている商品もあります。
この記事を書くためにも、近所のスーパーで椎茸の棚を端から裏返してみたのですが、国産の横に、中国産の生椎茸も普通に並んでいる。
値段はやっぱり違っていて、その差を見て選ぶ人がいるのも自然なことだと思いました。
うちの椎茸の「産地」
レンチナスは、菌床を自分たちで作っています。
おがくずを詰めるところから、菌を植えて育てるところまで、全部八峰町の中です。
だから表示のルールが変わっても、うちの椎茸は何も変わりませんでした。
秋田県は、椎茸の生産量で全国4位の産地でもあります。
「秋田県産」という表示が、名前だけでなく中身まで秋田であること。
それが当たり前になったのは、実はここ数年の話。
伊勢社長は、こう話していました。
「八峰町だからこそ、この事業ができてるっていうところもある」
ただ、自分たちで菌床を作るのは、手間もコストもかかります。
海外の菌床を使えば安く済むところを、あえて全部自前でやっている。
その分、現場の負担は大きいし、効率の面ではまだ改善の余地がかなりあります。
産地の表示が正しくなったことで、どこで作られたかを気にする人は、たぶん前より増えた。
でも売り場で裏返して見る人がどれくらいいるかと言われると、まだ多くはないと思います。
「八峰町で、最初から最後まで作っている」という価値を、どう伝えればちゃんと届くのか。
そこはこれからも引き続き追求する部分です。
作り方にこだわるだけでは、届かない。
こういう話を、商品の見せ方や売り方まで落とし込んでいく仕事が、今のレンチナスには足りていません。
次の記事では、菌床をどこで作るかで何が変わるのか、もう少し業界の構造の話を書こうと思います。