八峰町は…
八峰町の面積の八割近くが、森林。
町のデータを見て、まずこの数字に目が止まりました。
総面積は約234平方キロメートル。
そのうち農地はおよそ一割で、しかもその多くが峰浜地区に集まっている。
つまり、平地が少ない。
農業をやる土地としては、条件が良いとは言えません。
田んぼを広く取ることも、畑を大きく展開することも難しい。
平地が少ないというのは、それだけで選べる作物が絞られるということでもあります。
ではなぜ、この町で椎茸なのか。土地の側から考えてみたくなりました。
森
まず森です。八峰町の森林は白神山地の一部にあたります。
白神山地といえば、東アジア最大級と言われる原生的なブナ林。
1993年に世界自然遺産に登録された場所。
椎茸というきのこは、もともとコナラやクヌギ、シイといった広葉樹の枯れ木に生えるもので、この土地の森は、椎茸にとって本来の住処に近い環境だったということになります。
気候も見てみると、冬は日本海からの北西の季節風が強く吹き、平野部で10から50センチ、山間部では1メートルを超える雪が積もります。
米を作るにも、野菜を作るにも、冬の数ヶ月は動きが止まる土地です。
そう考えると、屋内で温度と湿度を管理する菌床栽培という方法は、この土地の弱点をかなり打ち消す選択でした。
雪が積もっていても、中では椎茸が育つ。
外の季節に左右されない仕事を、雪国の中に作れる。
これは働く側から見ても大きい話で、冬になると仕事が減る、収入が季節でぶれる。
地方の一次産業だと珍しくない話ですが、菌床栽培はそこが違います。
一年を通して同じリズムで働ける産業を、雪の多い町に置けている。
もうひとつ面白いのが、この町の地質。
八峰町は2012年に八峰白神ジオパークとして認定されていて、かつては銀山も油田もありました。
調査した人からは「地層の箱庭みたいだ」と言われたほど、変化に富んだ土地なんだそうです。
銀を掘り、油を掘り、今は森の資源できのこを育てている。
この町は昔から、地面の下や森の中にあるものを何とかして生業にしてきた場所なんだと思いました。
ただ、ここまで並べた条件が「だから椎茸になった」という直接の証拠にはなりません。森があって、雪が降って、平地が少ない。そういう土地は他にもあります。
同じ条件でも椎茸をやらなかった町の方が、たぶん多い。
調べていて思ったのは、土地の条件は理由の半分でしかないということです。
残りの半分は、誰かがここでやると決めたこと。
森があるからきのこ、じゃなくて、森がある土地で、きのこで食べていくと決めた人がいた。その順番なんだと思います。
条件が揃っている土地に人が集まるんじゃなくて、揃っていない条件の中で何かを選んだ人がいたから、町の産業になった。
八峰町の椎茸も、たぶんそういう成り立ちをしています。
八峰町という名前も、2006年に八森町と峰浜村が合併してできたものです。
町の形そのものが、そんなに古いものじゃない。
ここで何を主産業にしていくかは、まだ決着していない話なんだと感じました。
森が八割の町で、農地が一割の町で、何を作って生きていくか。
答えはひとつじゃないと思います。
今この町で椎茸が主産業のひとつになっているのは結果であって、最初から決まっていた道ではなかった。
私たちが椎茸をやっているのも、その途中経過のひとつでしかありません。
この先の八峰町の未来を一緒に作っていきませんか?