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2021年度、仕事はどうなる?

捨て去るもの、捨ててはいけないもの

今、時代を表すキーワードを挙げるとしたら、どんな言葉が思い浮かぶだろう。GoogleTrendで、「日本」「過去12ヶ月」『ビジネス、産業』「ニュース検索」を調べてみると、コロナ、テレワーク、レスピレーター(人工呼吸器)、在宅ワーク、倒産、ダウ平均株価…などコロナ禍に関連したワード、その影響を表すワードが目立つ。『仕事、教育』では、臨時休校、大学入試、転職、オンライン授業…などこちらもコロナ禍に関連したワードが目立つ。そして、まだまだ先が見えない今、時代は、社会は何を求めているのか?捨て去るもの、捨ててはいけないものは何なのか?

ズバリ「捨て去るもの」は、“既成概念”。これまでの日常がこれからもやってくるという意識、普通、当たり前、平凡…この繰り返しがこれからも続くというのは、もはや幻想に近い。

「捨ててはいけないもの」は、ズバリ“人材”。大手企業における、早期退職者の募集、新卒採用の見送り、教育予算削減がニュースとして、社会に流れている。近視眼的な対策は、この難局を乗り越えるための、最善の方策とは思えない。

消費行動の変化

世界的なコロナウィルスの感染拡大、それによるロックダウンや緊急事態宣言など2020年は、誰も経験したことがない、誰も予測し得なかったことが起こった。それに伴って、BtoC、BtoBいずれにおいても、その消費行動には大きな変化が起こった。

対面による営業活動、販売活動は極端に制限され、消費者側も対面を避け、オンラインの市場に移行した。ネット通販がこれまで以上に台頭し、オンライン商談が当たり前になりつつある。

「公益財団法人日本通信販売協会」の調査によると、2020年9月の通信販売売上高は、前年同月比でマイナス4.9%。しかし、これまで対面販売が主だった食料品(健康食品を除く)は、プラス26.1%、通信教育・サービスはがプラス36.4%となっている。

「経済産業省」商業動態統計によると、2020年9月の商業販売額は前年同月比で、マイナス12.7%となっている。旅行・観光・旅客など人の移動が伴う業種・業態について見てみると、例えば「観光庁」の主要旅行業者の旅行取り扱い状況速報によると、総取扱額は、前年同月比(9月)で、21.1%、およそ1/5までに落ち込んでいる。これらの状況は、統計に当たらなくても、それぞれの肌感覚で実感していることと思われる。

我々のような、教育・研修の業界、対面・集合研修をBtoBで行っている業界も、コロナウィルスの感染拡大、緊急事態宣言、自粛要請などの影響をもろに受けている。バブル崩壊、リーマンショック、3.11など、これまでに経済に大きな影響を与える事象が起こったが、その影響は限定的であり、影響を受けていないところが、影響を受けたところを支える事ができた。また、日常を取り戻す、復興・復活への道のりが描けたと言える。しかし、今回のコロナ禍は、そのどれも当てはまらない、未知の経験であった。

消費行動は劇的に、不可逆的に変化した。この先、これまでの日常、当たり前が戻ってくる保証もない。そんな状況を乗り越える方策を、各企業ともに模索している。

仕事の仕方が変わる

通勤、出社、会議、対面営業などの業務、入社式、新人研修、OJTなど採用・育成、懇親会、社員旅行、休憩中の雑談などの余白。2020年は、これまでの仕事のカタチがガラッと変わった。エッセンシャルワークと呼ばれる業種、業態にもその変化の波は押し寄せているのではないだろうか。

出社する人とテレワークをする人が混在する「まだらテレワーク」、Webカメラを通して見える(見せる)相手のプライベート、容姿や服装、マイクを通して聞こえる相手やその同居人の生活音に対して、否定的、威圧的な言動を行う「リモハラ」などの新たな問題が話題になる一方で、色々なストレスから解放された、自主的・主体的に仕事に関われるようになったなど正の側面も聞かれるようになってきた。

テレワーク・リモートワーク、ワーケーションが「仕事の仕方」として定着しつつあるが、消費行動の変化同様、この先コロナが収束(終息)したとしても、完全にコロナ前の状態に戻ることはないだろう。この変化によって、新たなビジネスが生まれたり、既存のビジネスが一気に成長したりという、副産物も多い。ビデオ会議サービス「Zoom®」を運営するズーム・ビデオ・コミュニケーションズは9月末、2020年5~7月期の売上高が前年同期比の4.6倍だったと発表している。

学びの量的、質的な変化

「産労総合研究所」の2020年度 教育研修費用の実態調査によると、2019年度と2020年度予算を比較してみると、予算が増加した企業は41.9%、減少した企業は45.7%、増減なしの企業は12.4%と、2年連続で「減少」企業が「増加」企業を上回ったとのこと。

また、教育研修費用総額の今後1~3年の見通しについては、「かなり増加」が4.0%、「やや増加」が24.8%に対し、「現状維持」が45.0%、「やや減少」16.8%、「かなり減少」9.4%なっている。これを、「現在のコロナ禍の状況下で、研修費用を減らす方向で見通しを立てる企業が増えていることがわかる。」と締めくくっている。

一方、弊社が行ったインターネット調査の結果からは、別の側面が伺える。外部講師や外部企業を活用して社員研修または新卒研修を行っている経営者、もしくは研修の導入を検討している会社の経営者、合計111名を対象に、「コロナ禍において組織が抱える課題」に関する調査を実施。新型コロナ流行前(3月以前)とコロナ禍の現在を比べて、人材(社員)の重要性は高まったと感じますか?との問に対して、62.2%の経営者が、withコロナにおいて「人材の重要性が高まった」と回答している。

そして、新型コロナ流行前(3月以前)とコロナ禍の現在を比べて、社員の能力やチームワークが、より事業に影響を与えると感じますか?との問に対して、71.2%の経営者が、コロナ禍において、「社員の能力やチームワークがより事業に影響を与える」と回答している。今回のコロナ禍は、今まで会社が行ってきた人材育成・教育の答え合わせだった。コロナ禍に直面し、人材の力が無い会社は弱っていき、逆に人材個々が主体的に困難に立ち向かって行った会社は、前に進んでいるという結果になっている。

不況が訪れる(または訪れることが予測される)と、企業は、教育研修予算を削減する方向に舵を切ることが多いようだ。採用人数減(時として採用の見送り)も同様の理由からであろう。

仕事の意味、仕事の仕方が変わろうとしている(コロナによって強制的、外圧として変わらざるを得ない)状況では、これまでの考え、不況=業績悪化=教育研修予算・人員の削減という公式は成り立つのだろうか。

コロナによる不況は、これまでの不況とは違う。一時期を耐えれば、乗り越えればその先に復調の兆しが見えてくるはずという対応ができないのが、コロナ禍による不況である。

これまでの教育研修に、見通しが利かない、誰も予測できない、いつまで続くかわからない困難を乗り越えていく力を育成するというところが加わったのである。

これまで活躍できていたような人材が影を潜め、これまで陽の当たらなかったような人材が飛躍する。そんな風景が日常になりつつある。それは、偶然の出来事ではなく、“既成概念”を捨てきれない、環境変化に柔軟に対応できないものは生き残れないという厳しい現実を突きつけられている。

共通言語の獲得

対面・集合を避け、様々なビジネスがオンラインに移行したが、今までとは違う形で、さらに今まで以上に「共通言語」の獲得が求められる。対面によるコミュニケーションが減った分、これまで以上に明確に言葉、文章に表現することが求められる。特に感情の部分、内にある気持ち、思い、意思など、これまでは非言語、視覚情報を伴って伝播していたものが、オンラインでは伝わらず、相互理解の不足、トラブル、すれ違いが起こる。webを通過した画像の範囲外で起こっている非言語、視覚情報はオンラインによって制限されることになる。それが発する側、受け取る側の“不安”となって、蓄積されていくと、取り返しのつかないカタチで噴出することになる。

それを回避するために、コミュニケーションの構造、成長の仕組みを社員一人ひとりが理解することが求められる。上席社員には、新人・若手社員との関係性において特に、重要だと思われる。【図3:エッセンシャルエデュケーターモデル】

対面のコミュニケーションでは、どうしても、結果や行動など“目に見える領域”に頼ったコミュニケーションをとりがちになる。上司、部下の関係においては、“目に見える領域”による評価が主になる。しかし、見るべきは、それぞれの考えであったり、思いであったり、“目に見えない領域”である。前にも述べたが、オンライン環境下では、非言語、視覚情報が極端に制限され、“目に見えない領域”が今まで以上に見えなくなってしまう。

「共通言語」の獲得とは、単にコミュニケーションが効率的になるための、特殊な用語の理解ということに留まず、社風、組織風土を形成することにつながる。全社的に共通言語が獲得されない場合、風通しの良い組織にはならず、社員それぞれの所属欲求が満たされない、相互の信頼感が醸成されない。それが社内に収まらず、体外的な信用・信頼の低下にもつながりかねない。

多様性の自認と承認

これまでとは違い、2020年ほど“多様性”の大切さに気付かされた年はないだろう。近年、気候変動とも捉えられる大規模災害が、世界各地で起こっている。しかも遠い国の出来事ではなく、身近なところで起こっている感覚が共有されつつある。2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsも、身近に感じられるようになった。

企業におけるSDGsへの取り組みが加速している。そして、SDGsの17のゴールには直接掲げられてはいないが、SDGsを統合する一つの軸として、17のゴールに近づくための視点として「多様性(ダイバーシティ)」が重要視されている。

1980年代、競争力を高める戦略として多様な人材を採用する‟ダイバーシティ”の考えが広がったとされている。もう一つ、自然科学分野において、生物種が環境変化に対応して生き延びていくには、多様性を持った集団のほうが有利、多様であることには大きなメリットがあり、保護・保全されるべきだと考える「生物多様性」の考え方も、社会に大きく影響している。

“多様性”というと、マイノリティの保護・保全といった捉え方をしがちだが、これまで普通、当たり前と考えられてきたものがことごとく覆された今、普通、当たり前は、人それぞれに違うという“多様性”の原点に立ち返えるべきであると思う。

多様性を知る、活かすという観点で、プロファイルツールの導入を強く勧めたい。弊社では、「エマジェネティックス®」と「クリフトンストレングス®」という、プロファイルツールを導入している。「エマジェネティックス®」に関しては、社内で導入しているだけではなく、エマジェネティックス®セミナーを主催し、導入・活用を支援している。

ちなみに「クリフトンストレングス®」で分類されている資質は34個あり、そのうち上位5つが、その人の思考・行動、人間関係を規定する傾向にあると言われている。その組み合わせの数は、順番も含めると3,300万通りにもなる。

それぞれのプロファイルツールの詳細な説明は、誌面の制約上、割愛するが、プロファイルの結果は、その人が思考したり、行動したりする時の普通、当たり前であり「特性・才能」である。自身で自分の「特性・才能」を自認することによって、自己理解が深まる。さらに、社員一人ひとりの「特性・才能」を社内で共有できれば、相互の理解が深まる。

これまでの普通、当たり前がコロナによって、覆された、今一度見直す機会を与えられた今、多様性を理解し、それを活用した仕事、人材育成、組織開発・組織運営、ビジネス展開がこれからの普通、当たり前になっていくと予測される。

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