こんにちは!AGE technologies広報担当です。
今回はAGE technologiesが掲げる「高齢社会にテクノロジー革命を起こす」というミッションについて、どういったプロセスで策定されたのか、またどのような背景があるのか、CEOの塩原さんに直接ヒアリングしてみました。
―なぜこのタイミングでミッションを策定されたのですか?
はい、少し前提からお話しする必要があります。
弊社は創業が2018年3月、ミッションを発表したのが2021年6月なので、創業から約3年経ったタイミングで策定したことになります。一見成し遂げられないような大きなミッション(やビジョン)を掲げ、その共通ゴールに向かって走っていくのがスタートアップだと思うので、創業から3年間ミッションが無かったというのは、少し特殊かも知れません。
この背景には私の2つの考えが影響していました。1つ目は「いずれ集まる創業メンバーと一緒に決めよう」と思っていたこと。2つ目は「創業期にミッションは不要」と思っていたことです。
―なるほど、それぞれ詳しくお聞かせください。
まず「いずれ集まる創業メンバーと一緒に決めよう」ですが、弊社は創業から3年目までは、コアメンバーは私を入れて4名だけでした。最初の10人目くらいまでは”創業メンバー”と呼んでもいいのかなと思っていたので、まだ創業メンバーすら集まりきっていないという認識を持っていました。
初期スタートアップの「最初の10人」に入りたがる人って、良い意味でクレイジーな方が多いじゃないですか。そういう方々って、何か決まったものに対して従うよりも、自分たちでゼロから決めていく方が魅力的に感じてもらえるんじゃないかなと思っていたんです。
つまり、ミッションも何も決まっていない、まだこの会社はゼロの状態で、これから皆んなで創っていこう、と訴求した方が「クレイジーな人たち」に興味を持ってもらえるんじゃないかと思っていたんです。
次に「創業期にミッションは不要」ですが、ある会社のCEOの方のTwitterで「今はミッションなんて考えるな、暇な会社ほどそういうことをする、と昔に株主から言われた」と書いている一連のツイートを読んだんです。
僕は数年前にいわゆるシードスタートアップで働いていたのですが、その当時の経験から、このツイートにはとても共感しました。プロダクトもない、売上もない、そんな状態の会社にミッションなんて必要か?決めることになんの意味があるのか?「自分はそんないきなりビジョナリーにはなれないな〜」と思っていました。
―結果的には、今年6月にミッションが公開されましたが、考えに変化があったのですか?
はい、これもそれぞれ理由があります。
創業者には、会社の未来を語る義務がある
「いずれ集まる創業メンバーと一緒に決めよう」については、完全に間違いだったからです(笑)
いや、正確には「決まったものに従うだけでなく、自分たちでゼロから創っていく」という思想は大事にしていますが、ミッションはその類のものではないと。
例えば、ワンピースのルフィって、物語の最初から「俺は海賊王になる」って言ってるじゃないですか、あれはかなり個人に寄ったものですが、分かりやすく言うとアレなんですよね(笑)。もしルフィが「まだ色々決まっていないんだけど、とりあえず一緒に船乗らない?」という曖昧な誘い方をしていたら、多分誰も船に乗らない。
ミッションは会社が目指す未来そのものです。自分たちの山の頂上はどこにあるのか、何を成し遂げたいのか、それを語ることができなければ仲間も集まらないし、それは創業者の義務である、急にそんな感覚が生まれました。
いま考えると至極当然のことなのですが、なぜか起業前はそこを軽視していました(なので、ミッションがない状態で集まってくれた創業初期の仲間には感謝しかありません)。
会社に漂う空気から「決めるならいま」だと判断した
「創業期にミッションは不要」についてですが、それを決めるタイミングについては必ずしもDay1である必要はないと、今でも思っています。それは会社ごとに異なると思っています。しかし、自分たちにとってはそのタイミングがまさに「いま」でした。
3年もスタートアップをやっていると、必ず閉塞感というか、組織としてのモチベーションが落ちる時期があるんですよね。そういった空気の変化みたいなものには常に気を張っていて、これまでもそういうタイミングを見計らって、アクセラレータープログラムに参加したり、オフィスを移転したり、自分たちで意図的にプラスに持っていくようなイベントを起こしていました。
昨年の秋頃、僕が資金調達に走ることを決めて事業を既存メンバーに託した際、事業は伸びているし毎日とても忙しいし充実感はあるけど、これからどうなっていくんだろうという漠然とした空気をメンバーから感じることがありました。特に弊社の事業領域は、アナログなタスクが発生することも多く、今では流石に無くなりましたが、昔は仕事の中で「エンジニアが封筒に切手を貼る」みたいなシーンも起こっていました。彼らは切手を貼るためにスタートアップにジョインした訳ではないので、そうなるとより「どこに向かっているんだろう」という気持ちや不安が生まれてくるんですよね。
幸いにも事業は伸びていた、かつ資金調達も成功が見えかけていた、ので大問題になることは無かったですが、しかしもう限界だなと。こうした会社の空気を変えるため、2021年の春に照準を当てて、会社の未来を決めるミッションを策定しようと決断しました。
―具体的にどういったプロセスを経て、決まったのですか?
合宿を行いました。私含めた創業メンバー4名と、当時副業でジョインしていたメンバー(現内定者)を合わせて、5名で実施しました。
合宿の内容については、別の記事で公開する予定と聞いているのでここでは割愛しますが(笑)、基本的には創業者である自分がミッションとバリューを策定するための軸を1人で考えて作りました。合宿ではその軸に従って、メンバー全員が自分の意見を述べる形で実施し、最終的に1つの答えを導きました。
―ずばり「高齢社会にテクノロジー革命を起こす」にはどんな意味が込められているのでしょうか?
読んで字の如くなのですが、超高齢社会に突入している日本において、現在または今後起こるあらゆる課題に対して、テクノロジーを使った解決に挑戦する、という野心的な想いが込められています。
ミッション策定にあたり2つの条件を置いていた
少し策定の背景を話しますが、ミッションを決めるに当たって、①どのドメインに取り組んでいるかを具体的に示すこと ②ドメインに制限されない抽象度を保つこと、の2つを条件として考えていました。一見相反する2つの条件なので、これを満たす道を探すことがとても難しかったです。
かつ、ミッションって会社の軸というか、そのものじゃないですか。つまり簡単には変えられない。ミッションを変えることは、別の会社になることとほぼ同じだと思っています。それだけ重要なものと捉えていたので、「簡単に決められない」とかなり悩みました。
自分たちが中長期で取り組む領域は”Age Tech”だと気付いた
転機だったのは「Age Tech(エイジテック)」というトレンドを知ったことです。
当時、株主であるVCの担当者と欧米などで同じような領域で成功しているスタートアップについてディスカッションをしていました。そんな中、色んな会社の事業をリサーチしているうちに、高齢者×テクノロジーの領域を、Age Techと表現するということを知りました。「Age」という言葉は、年齢という意味のほか、老齢、寿命、一生などの意味も持つ、また高齢社会のことを「Aged society」と訳す、だから「Age Tech」だと知って、コレだと思いました。
過去には「僕らが取り組む領域は、FinTech(金融)とReTech(不動産)GovTech(行政)のちょうど間にある領域です」と謎の説明していたこともありますが、正直1ミリもピンときてなくて(笑)
先の10年、20年を見据えて「相続だけ」の会社にはしたくなかった
それまでは、現在取り組んでいる「相続」という領域において、自分たちが何を成し遂げたいのか、ゴールをどこに置くんだという視点で考えていました。もちろんそこにはたくさんの課題があり、大きなマーケットがあるのですが、自分たちの会社が「相続専門会社」になることには、躊躇していました。
「相続」というイベントはあくまでも高齢社会で起こる1つのトピックに過ぎず、数年で会社を畳むのであればまだしも、今後10年、20年先も会社を経営していくにあたっては、少し小さいかなと感じていました。
まずは相続領域をやり切る、そしてその先の大きなマーケットへ
「高齢社会にテクノロジー革命を起こす」というミッションにはとても腹落ち感がありますし、社名や取り組む事業との一貫性についても、強い納得感があります。また、社内においても統一感が生まれたというか、「自分たちはAgeTechのど真ん中に挑戦するんだ」という使命感や責任感みたいな空気まで漂うようになりました。
「高齢者×テクノロジー」という言葉はかなり抽象的で、それが指す範囲も広いです。でも、確実にマーケットはあって、しかも日本における課題が明確で深い。日本にはまだこの領域に真正面から取り組むスタートアップが少ないので、いまチャレンジしてる企業全体で、日本におけるAgeTechの正解を見つけていけたらと思っています。
過去に参考にした記事:
「Age-Tech」の衝撃 - このままでは日本は世界1の高齢者先進国じゃなくなる(2019.6.4 Nao Yanagisawaさん)
高齢化社会を支える世界のスタートアップ (3)高齢者向けFintech編(2019.12.10 Coral Capitalさん)