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117兆円の食産業のコミュニティ化──グッドイートカンパニーが目指す、「おいしい未来」の創造

この記事は2022年7月14日に弊社noteに掲載した内容となっております。

日本の食を愛する、すべての人の思い・体験・技術を未来につなぎ、世界中へ拡げる──そんなビジョンのもと、2021年1⽉に始動したのがグッドイートカンパニーです。同社を率いるのが、「WIRED CAFE」をはじめとするカフェの企画・運営や商業施設などのプロデュースを手がけるカフェ・カンパニー代表の楠本修二郎です。

20年以上にわたって、外食産業に関わり続けてきた楠本がなぜ、新たに会社を立ち上げることにしたのか。またグッドイートカンパニーが掲げる「愛すべき食を未来へつなぐ」とは具体的にどういうことなのか。新会社に懸ける思いを楠本が語ります。

▼目次

  • 学生時代に見出した「コミュニティ」の面白さ
  • 心に残っていた「時代によってコミュニティは変わる」という言葉
  • 「東の食の会」で感じた、食産業のコミュニティ化の可能性
  • グッドイートカンパニーで目指す、117兆円の食産業全体のコミュニティ化

学生時代に見出した「コミュニティ」の面白さ

なぜ、グッドイートカンパニーを立ち上げようと思ったのか──その理由を語るにあたって欠かせないキーワードが「コミュニティ」です。テクノロジーが普及した今の時代に合ったコミュニティをつくる手段のひとつとして、グッドイートカンパニーの立ち上げがありました。具体的にどういうことなのか、ここから説明していきたいと思います。

私がコミュニティ、いわゆる“場の可能性”に魅せられたのは大学生の頃です。当時は1980年代半ば、六本木にも特徴のあるお店がたくさんありました。

そんな時代に人が集まる場所をつくりたいと思うようになったのは、私が師事していた“とある社長”の取り組みに興味を持ったからです。その社長は新宿の花園神社の境内近くに「第三倉庫」という、現在のクラブのような箱をつくっていました。

当時、SNSはありませんでした。そのため、知る人しか知らない空間だったのですが、海外の人たちがたくさん集まっていました。その光景を見て、素晴らしいコンテンツと素晴らしい空間があれば、世界中から人を集めることができるんだ、と感動したんです。

そこから不動産の勉強を始め、いつかは自分で人が集まる場所を作ろうと思いました。90年代に入り、周りがインターネットを活用したビジネスに興味を持つようになっていたのですが、私はインターネットが普及するほど“リアルの場”が求められるようになるはずだ、と考えていたんです。それから10年ほどが経った頃に“ビットバレー”という言葉が生まれ、世の中はインターネットビジネスが盛り上がりを見せる時代になりました。

そんな2001年に、私はそれまでに立ち上げていたコミュニティ・アンド・ストアーズとスタイル・ディベロップという会社を融合させて、カフェ・カンパニーを立ち上げました。掲げたコンセプトは「Style makes your Community(スタイルあるものにコミュニティが生まれる)」です。スタイル、いわば“風景”をつくることで、コミュニティが生まれるだろう、と。そして、その風景が私にとってはカフェだったんです。

心に残っていた「時代によってコミュニティは変わる」という言葉

「CAFE = Community Access For Everyone(誰もが集えるコミュニティの場)」をつくる会社ということで、カフェ・カンパニーという社名にしました。また、私はミーハーでもあるので、一業態、一業種にしたら飽きると思ったので、ライフスタイルの編集を事業の軸にしました。

カフェを筆頭に、レストランや居酒屋、ホテルなどさまざまな業態を展開してきました。私としては「食とコミュニティ」をテーマにした社会実験のようなイメージで、「場をつくりたい」というニーズに応えるような場のプロデュースをやってきました。

私がカフェ・カンパニーを立ち上げた頃はSNSもなかったので、カフェがメディア、コミュニティになると思っていましたし、なったと思います。ただ時は流れて、iPhoneが登場し、SNSも普及したことで求められるコミュニティの形は変わっているはずだ、という思いもあったんです。


            グッドイートカンパニー代表取締役CEOの楠本修二郎

過去にEY Japanが開催する「EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」に出場したことがあるのですが、その審査で元日本IBM社長の北城恪太郎さんに「君はコミュニティをつくるのが仕事なんだね。時代、時代で求められるコミュニティは変わるから、時代ごとにあなたがつくるコミュニティは変わるんだね」と言われました。そのときの未来予測として、カフェ・カンパニーはカフェ屋ではなくなるだろう、と思っていたんです。

ただ、「新しいブランドを出店してください」と言われたら、その気持ちに応えたい思いもあるので、10年以上もコミュニティのスタイルを変えずにお店を出し続けていました。そんな状態に対するジレンマも抱えていたんです。時代に合わせたコミュニティを作らないと、と。

「東の食の会」で感じた、食産業のコミュニティ化の可能性

私にとっては2011年の東日本大震災も考え方を変えるきっかけになりました。2011年6月に、オイシックス・ラ・大地代表取締役社長の高島宏平さんや公益社団法人MORIUMIUS代表理事の立花貴さん、NPO法人「ETIC.」創業者の宮城治男さんなどと一緒に、東日本の食の復興と創造を長期的に促進することを目的にした一般社団法人「東の食の会」を立ち上げました。なぜ「東の食の会」にしたのか。

それは東日本の食産業をコミュニティの力を通して連帯させてひとつのブランドにしたら、より強い産業になると思ったからです。実際、コミュニティ内で各地域のメンバーたちが連携することで「フィッシャーマンズ・リーグ」や「おっかちゃんのだいどころ」といったブランドなどが新たに立ち上がっています。これはすごい地殻変動だと思いました。

こうしたコミュニティがカフェ・カンパニーで作れているかと言えば、創業から今まで作れていませんでした。北城さんから言われた言葉はずっと自分の中にあって、時代に合わせてコミュニティの形は変えていかなければいけない、と思っていたんです。

それで4年前の2018年ごろから準備を始めていました。8つの事業領域で新しいビジネスモデルを創造していこうと考えていて。その中のひとつに「フードテックの領域」があり、当時からカンカク代表の松本龍祐さんとはいろんな話をしていました。

2019年の年末くらいになり、「さぁ新しい動きを始めていくぞ」と思ったら、コロナ禍がやってきました。当初は5年、10年の時間をかけて自前で新しいビジネスモデルを創造していこうと思っていたのですが、すべてを自前主義でやるのは難しいな、と。それで昔から知り合いだったNTTドコモの忍足大介さんに話をしたら、「ぜひ一緒にやりましょう」となったんです。そこにカンカクが加わり、グッドイートカンパニーが立ち上がりました。

グッドイートカンパニーで目指す、117兆円の食産業全体のコミュニティ化

グッドイートカンパニーで実現したいことは、117兆円ある食産業全体をコミュニティ化し、食のエコシステムを構築することです。日本の食産業は農業・漁業、流通、食品、小売、外食といったように縦割り構造になっており、サプライチェーンとしては完璧で効率的なのですが、コミュニティとして機能していませんでした。

そこをコミュニティとして活性化させるためには、「東の食の会」のように横で繋げていくしかないと思ったんです。「東の食の会」のような取り組みを全国に広げること、人とノウハウを流動化させることで、日本の食産業が変わっていくはずだと思いました。

食産業全体を“村”のように考えて、その村の中でいろんなコミュニティ、プロジェクトが作り出されていく。そのための手段として、食のコミュニティ型EC「GOOD EAT CLUB」があり、東京・代々木上原に食の複合施設「GOOD EAT VILLAGE」をオープンしました。


               食の複合施設「GOOD EAT VILLAGE」

ECは“販売場所”という出口でもあるのですが、グッドイート(おいしいもの)をつくっている人たちが連帯してひとつの商品をつくっていくこともできる。GOOD EAT CLUBでは日本中の愛すべき食を集めていますが、農業や漁業等に従事する生産者・加工業者・シェフといった食産業に関わる人たちと一緒になってGOOD EAT CLUBのオリジナル商品の開発も加速させて行く予定です。

また、オフラインの店舗も立ち上げていき、GOOD EAT CLUBとの融合も図っていきます。そのためには新しいインフラも必要になります。そこはテクノロジーに強みを持つカンカクのメンバーと一緒になって仕込んでいるところです。

世の中には代替肉や培養肉、ロボティクス、DXなど便利にするテクノロジーはたくさんありますが、まだおいしくするテクノロジーはない。おいしさを維持・向上するテクノロジーは見たことがないので、そこはグッドイートカンパニーが実現したいと思っています。おいしい未来をつくるためのソリューションをどれだけ持てるか。これが、今後の組織のKPIになっていくと思います。

そんな世界を実現するには、まだまだ組織も大きくしていかなければと思っています。グッドイートカンパニーの組織はさまざまなバックグラウンドの人が集まっているからこそ、多様性を大事にしています。お互いの違いをリスペクトする。目指す方向が同じであれば、一緒に力を合わせて突き進んでいく。いろんな違いのある人たちがひとつの方向を向いて力を合わせれば、大きなムーブメントとなり、時代を突き動かしていくと思います。

そして、30年後の2050年の日本はどうなっているでしょうか。人口は今より3000万人減り、約9300万人になっていると想定される未来に対して、きちんとハラハラしながらも、ワクワク感を持って課題に対処する。そんな人と一緒に働きたいですね。日本の食を愛する、すべての人の思い・体験・技術を未来につなぎ、世界中へ拡げるための挑戦はまだ始まったばかりです。ぜひ、食の未来に興味のある人はグッドイートカンパニーで一緒に働きましょう。


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