2025年上半期、ライブ配信サービスを提供する17LIVEはシンガポール市場上場後、初の増収を達成し、大きな転換点を迎えました。その原動力となったのが、2024年8月にCEOに就任したジャン・ホンフイ通称Jackさんが推し進めたさまざまな改革でした。
この記事では17LIVEはなぜ、この1年で躍進を遂げたのか、ライバーファーストの取り組み、今後の展望などについてインタビューしました!
ジャン・ホンフイ
17LIVE Group Limited 取締役 兼 CEO /17LIVE株式会社 代表取締役
ベンチャーキャピタル投資において12年以上の経験を有し、Vertexグループには7年以上在籍。2023年12月、シンガポール取引所(SGX)に上場した初のSPACであるVertex Technology Acquisition Corporation Ltd.の取締役兼CEOを務め、17LIVE Incとの経営統合を成功へと導く。2024年4月より17LIVEグループに出向し、チームと緊密に連携し、事業改善や多岐にわたる戦略的イニシアチブを推進。同年8月CEO就任。
ー2025年の上半期における17LIVEの事業について、どのような半年間だったか教えてください。
2025年の上半期は17LIVEにとって、非常に重要な期間だったと思います。特にシンガポール市場上場後、初めて四半期売上が増加に転じたことは、大きな意味を持つ転換点でした。単なる数字上の増加ではなく、上場後1年以上にわたり取り組んできた戦略的投資や施策の成果が具体的に表れた点に価値があります。
ー戦略的投資や施策とは、具体的にはどのようなものでしょうか。
まずは、上場企業としてのコスト管理です。これにより、売上拡大と利益・利益率の改善を両立できる体制を整えました。
サービス面では、17LIVEというプラットフォームをライバーにとって「来たくなるプラットフォーム」になるよう注力しました。具体策の1つが、レベニューシェア(収益分配)の見直しです。他のプラットフォームと比べても競争力のあるレートを提示できるようにしました。
さらに、契約形態を専属からオープンへと改め、他プラットフォームでの配信も可能にしました。「ドア・イズ・オープン」、つまり「うちの門戸はいつも開いています」という姿勢を明確にし、17LIVEの魅力を高めたのです。
そのうえで、当社本来の強みである外部パートナーとのパートナーシップとイベント企画を一段と強化しました。
17LIVEの魅力をさらに強化した5つの取り組み
ーパートナーシップとイベントについて具体的に教えてください。
1つ目は、運営主導のイベントです。その年、一番の輝きを放つ“一番星”のライバーを決める「シャイニングスター」や、戦国時代をテーマに和”の要素をふんだんに取り入れた「戦国時代」、クリスマスやハロウィーンなど多彩なイベントを展開しています。
2つ目は外部パートナーとの協業による露出機会の創出です。例えば関西コレクションや雑誌への掲載、渋谷でのイベントなど、外部パートナーと組みながら、ライバーが外部に露出できる機会を作っています。
3つ目は音楽領域です。ライブハウスやコンサートなどでライバーがパフォーマンスできる機会を提供しています。例えばBillboard JAPANの大規模ステージに登場する事例も出ています。
4つ目はブランドとの連携です。コスメブランドやファミリーマートなど、さまざまなブランドがイベントや広告で当社のライバーを起用しています。
5つ目は、今年特に力を入れているスポーツとの連携です。例えば野球では阪神タイガースや福岡ソフトバンクホークス、東京ヤクルトスワローズなどの始球式にライバーが登場しています。
ーライバーがプラットフォームの外でも活躍する姿が増えていますね。
はい。イベントを通じた露出が社会的認知の向上と自己実現につながっています。このような機会を提供できるのは、他のプラットフォームにはない17LIVEの強みです。17LIVEは「ライバーファースト」「ライバーグロース」をミッションに掲げ、ライバーへのリスペクトを大切にしています。こうした運営サイドの考え方が、先ほど申し上げた報酬や契約のオープン化といった施策と相まって、ライバーを惹き付ける力になっているのです。
17LIVEのインタラクティブ性は他にはない独自の価値
ー機能面のアップデートも進んでいますよね。
そうですね。我々のミッションである「人と人のつながり」を強化するため、以前よりもジャンルやコミュニティの種類を大幅に拡充しました。もともと17LIVEは雑談や音楽が中心でしたが、現在はスポーツなど新たなコミュニティが生まれており、経験者も初心者もより広く深い関係性を築いています。
また、プロダクト自体の機能や使いやすさも拡充しています。最近ではAIによる配信サポート機能や、Vライバー向けの新技術などを実装しました。これらの取り組みの結果、第1四半期(4,010万米ドル)から第2四半期は4,100万米ドルへと伸び、上場後初めて前期比での増収を記録しました。
―改めて、17LIVEの魅力はどこにあるとお考えでしょうか。
ギフティング(投げ銭)モデル自体は目新しさが薄れましたが、ライブ配信を核とした17LIVEのインタラクティブ性という価値は今もユニークです。例えば2025年初頭に実施したソフトバンクホークス・近藤選手の自主トレ配信は、ファンとの交流を通じてライブ配信の面白さを体現しました。こうしたインタラクティブなコンテンツを今後も提供していくことで、ライバーやリスナーと共に成長していきます。
17LIVEを1年で改革した3つのポイント
―CEOに就任されて1年が経ちました。この1年を振り返っていかがですか。
たくさんの取り組みを行ってきました。要点は3つです。1つ目に長期的な戦略の構築。核となるのは「中核事業の強化」「収益の多様化」「戦略的パートナーシップ」です。これは私の独断ではなく、ライバーやリスナーとの対話を重ねて練り上げました。実は私はCEOに就任する4ヵ月前から日本に滞在し、戦略策定に取り組んでいました。
2つ目は人材。どんなに良い戦略があっても、それを遂行するのは人です。優秀な人材がいなければ、目指す場所にたどり着けないのです。人材面で注力したのは、新規採用に加えて社内の優秀な人材の適材適所を進めること。例えば、日本のカントリーマネージャーとして楽天、アマゾンジャパン、Bytedance、ディー・エヌ・エーなど、国内外のIT企業で部長・本部長・執行役員を歴任してきた浅見周平氏に参画いただき、改革の重要な役割を担ってもらっています。
3つ目は実行力。戦略と人材があっても、実行できなければ意味がありません。木を植えるように、日々の積み重ねと、ステークホルダーからのフィードバックを踏まえた継続的な調整が不可欠です。
―日本市場での気づきはありますか。
たくさんあります。まずコミュニケーションの重要性です。日本では常にコミュニケーション、コミュニケーション、コミュニケーション……そしてたまには“飲みニケーション”と呼ばれる場も大切とされていますよね。コミュニケーションを重ね、相手の話を聞き、合意形成を経て業務を進める。このプロセスを欠くと良い結果につながりません。当社のコアバリューである「リスペクト」を実現するうえでも不可欠です。次に長期的かつ強固なパートナーシップ。短期的に数字を上げることもできますが、それでは長期的な成果にはつながりません。時間をかけてWin-Winの関係を築くことが重要だと学びました。
コアビジネスであるライブ配信だけでなく、新規事業にも注力
―ベンチャーキャピタルでの経験は、現在の経営にどのように活かされていますか。
ベンチャーキャピタルでは、長期的なメガトレンドの中で成長機会を見極めることが求められます。この経験は、17LIVEの経営においても非常に活きていると感じます。
例えばAIは早期から注目してきましたが、当社では議論の末、AIが主体となる「AIライバー」は開発せず、人の配信を支えるAI機能として実装する方針を取りました。
これは、今後のメガトレンドと、17LIVEのミッションである「人と人のつながり」のどちらにも合った判断だったと考えています。
―2025年下半期、そして2026年に向けて、どのような領域や事業に注力していくのでしょうか。
1つ目は、中核事業であるライブ配信の成長に集中して取り組むこと。2つ目は、新しいビジネスをつくり出すことです。具体的には、Vライバーとライブコマースの2つを新規事業としてスタートしています。
特にライブコマースについては、日本における買い物体験を根本的に変革する可能性があると考えています。そうしたトレンドを見据えて、今年の初めにライブコマーストータルソリューションという新サービスをローンチしました。
―新規事業に対する期待感を教えてください。
グループ全体で売上の10%を1つの目安としています。ライブコマーストータルソリューションは、その規模を十分に狙えるポテンシャルがあると考えています。新規事業である以上は不確実性が高いので、PDCAを回しながら挑戦や修正を繰り返していきます。
―さまざまなパートナーシップを組まれていますが、それだけ17LIVEに対する期待も大きいのでしょうか。
パートナー企業からは非常に良いフィードバックを受けています。例えば野球チームとの提携では、野球コミュニティから注目されたことで、新規のお問い合わせも増えています。来場やグッズ購入に加え、ライブ配信で応援するという新しい楽しみ方が根づきつつあります。球団の背後にいる大手企業からの認知も進み、新たなコラボレーションが生まれています。
―シンガポール取引所(SGX)の上場企業として、今後のパートナーシップや経営戦略についてどのようにお考えですか。
日本とシンガポールは、政治・ビジネスの両面で強固な関係があります。シンガポールの上場企業としてのプレゼンス強化は、日本でのビジネスパートナーシップにとっても間違いなくプラスに働くでしょう。シンガポール上場企業である17LIVEが日本で価値を創出し、その成果が上場企業としての価値を高めるという好循環が期待できます。私自身、両国をつなぐ役割を担っていきたいと思います。
―Jackさん、ありがとうございました!