「他社より優れた機能を持っているのに、なぜか買われない」
「成分にめちゃくちゃこだわったのに、なぜかリピートされない」
こういった悩みを持つ事業者の方と話す機会が、とても多くなってきました。これは個別のブランドの問題ではなく、業界全体が直面している構造的な変化だと思います。
"機能的価値だけで戦える時代"は、もう終わりました。
今日はこのテーマについて深堀ってお話します。
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■「ブランドエクイティ」とは何か——作り手が定義し、顧客が完成させるもの
最初に大切なキーワード「ブランドエクイティ」についてお話させてください。
ブランドエクイティとは「ブランドが持つ資産価値」。顧客の信頼や認知度、愛着など、目に見えない無形資産がブランド力として売上や差別化をもたらすという考え方のことです。BSに乗るような有形資産とは違い、これは「顧客がそのブランドに対して抱く認識や感情」に近いものです。
ブランドエクイティは、基本的には作り手側が定義するものです。でも、最終的に重要なのは「届けたい顧客が、それをどう感じ取ってくれるか」です。作り手がどれだけ丁寧に定義しても、顧客に伝わらなければ意味がありません。一方で、媒体ハックを通じて顧客に届けることだけを意識しすぎると、ブレた軸のないブランドになってしまいます。この両方を意識しながら育てていくものが、ブランドエクイティだと考えています。
もう一つ強調しておきたいのは、これはハイエンドなブランドやラグジュアリー領域だけの話ではないということです。例えばドン・キホーテは「激安の殿堂」の名の通り、「とにかく安く、日用品がなんでも揃う」というブランドパーセプション(顧客からブランドがどう認知されているか)を持っています。高級品というカテゴリではないですが、ブレない提供便益があるからこそのブランド資産が積み上がっているのではないでしょうか。
見たらわかるドンキらしさ
ライフスタイルブランド、D2C、サービス業、どんな事業形態であっても、「このサービスは誰に対して何を提供するのか」という普遍的な軸を持つことが、ブランドの本質だと思います。
そして、
①「誰に届けるのか(WHO)」
②「何の価値を提供するのか(WHAT)」
の軸を持つことが、ブランドエクイティを育てていく上での土台になります。
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■機能的価値と情緒的価値——2つを整理する
ブランドとしての提供価値には、大きく2つの軸があります。
①機能的価値
これはカタログに書けるもの、合理的に説明できる価値です。
商品スペックや成分、使い心地、費用対効果の高さ。
「保湿力が高いのは、こんな成分が入っているからです」と説明できるもの。
②情緒的価値
これはカタログに書けないもの、言語化しづらい価値です。
例えば、洗面台に高級スキンケアを並べているときの「なんか丁寧な暮らしをしている感じ」。あるブランドのアイテムを持ち歩いていることで感じる「自分がちょっとレベルアップしたと感じる感覚」。
論理ではなく、顧客の感情に紐づいています。それをデザインすること、それが情緒的価値創りです。
わかりやすい例として、車ならこんな感じ
ーーでは実際のブランド経営で、どちらを優先すべきなのか?
当然ですが、長く続いているブランド、スケールしているブランドは機能的価値・情緒的価値どちらも持ち合わせています。「機能」か「情緒」の二者択一ではなく、どちらの軸で差別化するかの軸を、事業フェーズによって強めていく軸を決めていく、という考え方が正しいと思っています。
例えば
・世界観よりも機能的価値を前面に訴求して「モノづくりブランド」としての地位を確立するパターン。
・機能は他社と同等レベルを確保しつつ、クリエイティブに圧倒的な力を入れることで「同じスペックなのに、なんかこっちの方が好き」と思わせるパターン。
・初期はキャッシュエンジンとして販売に直結しやすい機能的価値を差別化ポイントとして訴求し、事業を垂直立ち上げし、そこから情緒的価値を生み出すために事業投資をしていくパターン
どの戦略を築くかは、競合環境、自社の強み、時代性や積み上げたいブランドエクイティによって変わっていきますし、どれが正解である、という断定的な話でもないと思っています。
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■情緒的価値の「手本」から学ぶ
情緒的価値を徹底的に作り上げているブランドの例として、韓国のGENTLE MONSTERがあります。
僕のnoteでも何度も取り上げているGENTLE MONSTER
GENTLE MONSTERの店舗に入ると、まず「あれ、美術館に来たのかな?」という感覚に陥ります。壮大なアート作品が並んでいて、むしろサングラスが売られているのがサブなのでは?いうくらいです。機能的なアイウェアとしての説明はほとんどなく、「世界観への没入」を軸としたブランド戦略で勝負しているブランド。熱狂度の高いファンを作ることに特化した、情緒的価値に振り切った例といえます。
一方でAesop。
本場オーストラリアのAesop
Aesopの直営店舗もまた、「その空間にいる自分が好き」という感覚を徹底的に設計しています。どの店舗も世界観が統一されていて、洗練された空気があります。「Aesop=おしゃれ」というブランドパーセプションは、長年にわたってタッチポイントごとに積み重ねてきた事業投資の結果とも言えるでしょう。
有名なAppleも同様です。
日本国内でも直営店が11店舗まで拡大しました。言わずもがな、機能的価値も素晴らしい。でもそれと同等以上に、Appleを使っているという事実が持つ「自分が洗練されたものを持っている感じ」「時代の先を行っている感覚」
——これはまさに情緒的価値です。
プレゼンテーション、動画クリエイティブ、商品ページ、全てのタッチポイントから「情緒的な価値の伝達」がなされています。これらのブランドに共通しているのは、「情緒的価値に対してあらゆる面で継続的に投資し続けてきた」という事実です。
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■機能的価値はコモディティ化する——だからこそ情緒が問われる
化粧品、ファッション、健康食品、ライフスタイル雑貨
——これらの領域において、機能的価値はコモディティ化が進んでいます。
スキンケアでは、「成分で選ぶ」というトレンドが少し前にありましたよね。でも、「成分だけで選ばれ続けるブランドになれたか?」というと、多くの場合そうではなかったと思います。成分で得られるベネフィットをどれだけお客さんに伝えられたか。
ベネフィットとは
ーー顧客が商品やサービスを利用した際に得られる利益や恩恵のこと。
機能的価値だけでの戦い方は、短期的には売れるかもしれない。でも長く愛されるブランドには、どうしてもなりづらいです。だからこそ、情緒的価値である”顧客が「このブランドだから好き」と感じてくれる何か”を積み上げることが、今の時代に必要なことになっています。
ただ、ここで多くの方がつまずくのが「じゃあ情緒的価値をどうやって作ればいいの?」という問いです。正直なところ、これは単純に答えが出るものではありません。「世界観を作ろう」「体験価値を作ろう」という言葉はよく聞くようになりましたが、「じゃあ具体的に何をすればいいのか」の手前でつまずいている方が多いと感じています。
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■情緒的価値を作る具体的な第一歩
「世界観を体験してもらうために、大きな店舗投資が必要」
「魅力を伝えるために、撮影やビジュアルに何百万円もかけなきゃいけない」
という話かというと、必ずしもそうではありません。
1つ目
ーー「ロジックをクリエイティブにジャンプさせること」
難しいですよね。わかりやすく言うと「うちのブランドはあなたに〇〇を提供します」ということを感情が動く体験として届けるにはどう表現すればいいか。このクリエイティブジャンプの能力は、右脳的な感性が問われます。自社にアセットがなければ、クリエイティブディレクターやアートディレクターと協業するという選択肢もあります。
BUDDICAの中野さんも、より強固なブランドにするために石川涼さんにCCOをお願いしています。ブランドとしての価値定義を言語化した上で、それを非言語的な表現に変換する。この組み合わせが、情緒的価値の構築を加速させます。
2つ目
ーー「予算配分を直接的な投資対効果で図れるものから間接寄与度の高い施策へ少しずつ変えてみること」
以前は多くのブランドが広告費をかけてCPAを下げて、お客さんを増やすことに集中していた時代がありました。費用対効果がわかりやすく、ビジネスとしてシンプルでした。しかし、今は、すぐに効果のわかる広告だけでお客さんを獲得し続けることは、以前よりずっと難しくなっています。
こんな単純な計算式でビジネスを考える時代もありました
特にEC・D2C・店舗ビジネスをやっている方は感じているはずです。だからこそ、これまで広告費に使っていたお金の一部を、
・物づくりのコスト
・容器やパッケージのクオリティ
・体験設計 etc..
にかけてみることを考えてほしいと思います。
開封体験を少し工夫するだけで、顧客の感情は動きます。「この箱を開けた瞬間に嬉しくなった」という体験は、そのままSNSで発信されるかもしれない。先日、VのPodcastで共演した、Goyemonの武内くんのnoteにもこのこだわりや理念が記載されています。広告で100人に届けるより、1人の熱狂度を高める体験設計に投資することが、今の時代に合った戦い方だと思います。
そして何より大切なのは、お客さんのことを想像しまくることです。「お店に来た時、商品が届いた時、使うとき、どう思うだろう?」この問いを繰り返しながら、限られた資源の中でできることを試し続ける。それが、情緒的価値を作るための第一歩だと考えています。
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■結論:正解はないが、積み上げることが武器になる
ブランドやマーケティングに関する「正解論」は世の中に溢れています。でも正直、僕はそれらを全て正解だとは思っていません。当たり前ですが、ブランドやタイミングによって前提条件が違いすぎるからです。
3年前に正解だったことが、1年後には全然違うかもしれない。あなたの競合環境と、隣の業界の競合環境は、全く異なります。だからこそ、1つ1つの状況を読み取りながら意思決定し続けることが大事なんです。
一方で、変わらないことが一つあります。それは「ブランドエクイティは時間をかけて積み上がるもの」だということ。広告施策のように短期で回収するものではなく、長期のアセットとして積み上がっていくもの。
今日の開封体験の工夫が、明日すぐに売上に返ってくることはないかもしれない。でも積み上げた先に「このブランドだから好き」と言ってくれる顧客が生まれます。そのコミットメントを持ち続けることが、情緒的価値の作り手に求められる最も大事なマインドだと思います。
「広告を回せばお客さんが来る」だけの時代は終わりました。次のフェーズを模索している方にとって、ここが一つの転換点になるのかもしれない。もちろん、正解はありませんが、脳みそに汗をかきながら積み上げ続けたブランドだけが、次の時代を作れると信じています。
もちろん僕たちV inc.も仕掛けていきます。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました✌️
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この記事は、V inc.のnoteから転載しています。
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