このnote記事は、新規ブランド事業づくりのリアルを伝えるため、社内で実際に行われたミーティング内容をほぼありのまま公開するものです。
今まさにV inc.で準備している新規ブランドの立ち上げ責任者が、実際に悩んでいることに僕が答えています。
「ノウハウ」ではなく「現場のリアリティ」を伝えたかったので、今回はこのような形式にしてみました。
僕達も新たな価値を創るために、日々悩みながら進んでいます。新規ブランドの立ち上げをしている責任者、事業開発担当者や経営者の方の参考になると嬉しいです。
【登場人物】
清:僕です。V inc.の代表としてブランドを創り育てる事業をやっています。
ギャル社員:マーケ畑出身のV inc.社員。新規ブランドの立ち上げ責任者として頑張ってくれています。※とあるディレクター(以下:Mちゃん)を世界観をつくるブランドディレクターとして起用した新規ブランド事業です。
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■ 事業のセンターピンの置き方は?
ギャル社員:
じゃあ早速、ガチの悩み相談いいですか?
まず最初に、事業の立ち上げ初期って「何が分からないかが分からない」状態に陥ること多いじゃないですか。でも、絶対に外しちゃいけない「センターピン」みたいなのがあると思うんですよ。それがブレちゃうのが怖いなって。
初期の事業戦略のセンターピンってどこにどう置いたらいいんですか?
清:
昨日のMTGであった、事業を進めていく中で根本の戦略を見失う、みたいなのを起こしたくないってことだよね。
大前提として、事業に完全な汎用性とか再現性なんてそもそもないと思ってて。でも…共通して重要なのは「自分たちが持ってる「自社の強み」「アセット」を起点にして、今ある機会をどう最大化させるか。」
これが事業の勝ち筋としての設計、センターピンになるべきだと思っているのだよね。
相談された1つ目は事業のセンターピンについて、というのは素晴らしい問いで嬉しい。
ギャル社員:
自分たちの武器がどこにあるか・それをどう活かすか、ってことですね。
清:
そう。ビジネスにおける手札って全員に平等に渡されてるものじゃないので。
V inc.でいうと「ブランドづくりに必要な各機能」がある。そして今回の件で言うと、Mちゃんという「世界観づくりに長けたディレクター」が機会としてあるわけですよね。
ーー持っている武器をみて「どう組み合わせたら勝てるか?」の仮説を立てるのが勝ち筋づくりの初期で行いたいこと。
例えばMちゃんってデザイナー出身でもないし、ファッションで有名になった子ではないよね?
ギャル社員:
はい、違いますね。ライフスタイルやインテリアなどを掛け合わせた世界観が強みだと思ってます。
清:
そう。にもかかわらず、前回はファッションブランドとして真正面から勝とうとしてます、という提案に変わっちゃってたよね。
「こんなロードマップでライフスタイルブランドとして成長させる」という具体戦略が描けているならまだ理解はできつつ、「強みアセットではないファッション領域で、ファッションブランドという顔つきでデビューさせます」っていうのは、僕からすると「中華料理人がイタリアンのお店出します」みたいに聞こえてしまうよね。
(お客様のインサイトが異なるカテゴリーなのに勝てると思ってしまっている)
ギャル社員:
あー……確かに(笑)。そうですよね。若手の中華料理人が一店舗名でイタリアン始めても…って話ですもんね。
清:
うん。もちろん、中にはすごい人がいて、圧倒的な熱量と努力で成功させちゃう場合もあるけど、それはその熱量が武器の1つになるくらい強いものだった場合であり稀だよね。
「絶対にこれをやりたい!」っていう狂気的な熱量。それも立派な「独自のアセット」で、立派な武器ではあるけど。
ギャル社員:
なるほど。そういう意味ではMちゃんはファッションに対しての熱量があるわけではないし、あっでもそれは表現方法の1つですね。
清:
そうだね。強みを活かして、独自性を生み出す、それを事業化してレバレッジかけるのがビジネスなのに、強みじゃないところで戦おうとする、難易度の高いところにあえて突っ込みにいってしまう って話になってしまっていたよね。
なので、初期仮説は、「僕らが独自に持っている武器をどう料理したら(事業として仕立てたら強くなるか」ということを一丁目一番地として検討を始めるべきだと思う。
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■「センス」と「データ」のバランスをどう取るか?
身振りが大きいギャル社員。
ギャル社員:
ただ、そうは言っても新規事業って不確実性が高いじゃないですか。右脳的な「センス」や「クリエイティブに対しての価値観」が我々の強みだと思いつつ、やっぱり人を巻き込んで事業をやる以上もちろん「データ」や「ロジック」の左脳要素も重要ですよね。
このバランス感覚がすごい難しいなと思います。不確実性の高い仮説をどう一つずつ検証していくか、どう折り合いをつけるのか。
清:
その悩みが出る根本の原因は「事業の方向性」が自分の中で定義できていないからだと思う。つまり、「マーケットイン」と「プロダクトアウト」どちらで勝つのか?これによって全然違う。
今回はクリエイティブや世界観を重視したいという意向から、一見「プロダクトアウト」に見えるんだけど、実は違うと思うよ。
ギャル社員:
プロダクトアウトだと思ってた!(笑)一旦それぞれ聞いてもいいですか?
清:
マーケットイン思想の場合、まずは競合分析。
すでに顧客ニーズが顕在化していて、既存プレイヤーがいる市場に対して、「どのチャネルで、どの商品が、どれくらい売れてるか」のファクトを集める。その中で1つ以上「ずらし」の要素をいれて差別化して、シェアを奪う戦い方で検証するケースが一つの手法としてあるよね。
例えば、特定の成分の化粧品市場で「独自性の高い容器にして価格を変えて出す」とか。それで最大10%のシェアを取る売上を目指したい、という算段で事業計画を立てることもあったりする。
これは「4P」でいう「Product」と「Price」をずらした例だけど、他にも「訴求軸での差別化」や「販路をずらした戦い方」とか。既存のプレイヤーからシェアを奪うという後発プレーヤーとしての戦略は、マーケットイン思想だからこそできる戦い方として多くの人が取り入れているやり方だと思う。
ギャル社員:
うんうん。プレイヤーの多いレッドオーシャンでも「ずらし(差別化)」で戦って勝ってる企業ありますね。
清:
逆に言うと、ブルーオーシャンのビジネスや、新たな市場を創造できるケースはとても稀であり、勝機となる機会が少なかったりするとも思ってて。
僕らがスティーブ・ジョブズ級であれば、世の中にイノベーションを生み出す画期的なプロダクトを開発できると思うけど、(もちろんやれたらすごいことだけど)、まあ稀の中の稀だと思う。(やってみたいという思いはあるけど)
だから、多くの事業者が0→1を作る時は、マーケットインの思想で堅実にシェアを取りに行くケースが多いと思う。
書きながら説明することが多かったりします
(字が汚くて理解されないことが多いのが悩みです)
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■ プロダクトアウトの罠とリーンに検証する重要性
ギャル社員:
でも、今回のプロジェクトって完全なマーケットイン思想ではない、かといって「感性一本」で事業作れるわけでもない。
社内で決裁取る時に「これ、たぶんイケそうなんで!」だけじゃさすがに通らないですよね(笑)。
「なんでイケると思う?」って聞かれた時に、感性だけじゃ説明がつかない…最終的に納得させるための要素ってどこなんだろう?
清:
一つ一つ整理しよう。
まず「プロダクトアウトで成功すること」の定義は「市場をゼロから創出する」こと。
(「良いものを作れば売れる」という思想に基づき、「製品ありき」で販売戦略を立てる手法)
たとえば「男性用スキンケア市場を作る」みたいなケース。
「男性はスキンケアしない」という常識やそのものを変える必要があるから、習慣として根付いていただくために、啓発活動を積極的に行う必要があり、時間もお金も相当かかるという覚悟でそのやり方を取るべきだと思ってる。
よくある失敗が、「これ革新的だから!」「今までにないから!」という理由だけで突っ走ってしまうこと。
でも、市場にないのは「ニーズが顕在化していない」んじゃなくて、「そもそもニーズやお客様の習慣が存在していない」可能性もある。また、そこに何年何十年もお金と時間をかけ市場創造のための啓発活動をやりぬく覚悟があるのか?という話になる。
一番怖いのは、2〜3年もかけて「これぞ完璧!」というプロダクトを作って、満を持して世に出した瞬間に、お客様に響かないことなんだよね。
ギャル社員:
たしかに。それめっちゃ怖い(笑)
清:
だから、『初期フェーズほど「リーン」に動く』のが大事だと信じてる。お客さまの反応を細かく見ながら、小さくテストして、修正して…というサイクルを高速で回す。
ギャル社員:
なるほど。「センスが受けるかどうか」も、頭で考えるより出して検証したほうが早いですよね。
今回って、世界観やセンスが強みではあるけど、よく考えると市場自体は新しいわけじゃなくて、ファッションやインテリアの延長線上にある。だとすると、実はマーケットイン的に計画を立てる必要もありそうだなって思いました。
清:
そうだね。次に「関与者への合意形成を取るための説明」の論点にいくね。
得意としてるクリエイティブな部分、つまり「右脳」の部分を、口頭だけで説明しようとしてない?「こういうデザインが勝てるんです」って口で言うより(もちろん言語化することは大切だという大前提だけど)、見せたほうが早いじゃん、ってケースも多いと思うのだよね。
ギャル社員:
たしかに最初「いいじゃん!」ってなったときは、デザインとかムードボードとか、視覚情報で判断してますね。
清:
だよね。僕が代表を務めるブランドのYOBEKを例に出すと、YOBEKの容器って「ガラスに見えるプラ製容器」なんだよね。「洗練されているデザインを担保しつつ、新生児でも使えるブランドコンセプトとして、赤ちゃんいるご家庭でも安心してご使用いただける」っていう設計をしている。
それを言葉だけで「洗練されたデザインで〜」って説明しても伝わり切らない側面があるけど、実物見たら一発で「あ、イイじゃん」ってなってもらえるとも思っていて。
ギャル社員:
ですね。YOBEKを実際見たとき「イイじゃん♪」って思いました。
清:
(笑)
クリエイティブ領域は、言語化をする大切さもありつつも、実際見て共感を得るという手法も一つの合意形成をとるテクニック。だからこそ、レファレンスやモックを作って「こういう世界観です」と視覚で共有する。
リーンに作って、早く見せる。これが鉄則だね!
社員一人ひとり、ディスカッションの時間を設けるようにしています。
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■「イケてる」を「数字=PL」に翻訳せよ
ギャル社員:
あともうひとつ!この「イケそう」を事業計画とか数字に落とすのが難しくて。「勝ち筋を描け」って言われてますけど、ここのイメージがあまり湧いてないかも知れないです。
清:
たとえば「このTシャツのデザイン、イケてる」って話も、100枚売りたいのか、10,000枚売りたいのかで、評価の仕方はまったく変わります。
数字と結びついていない「イケてる」は、結局「感性がいい」「センスがある」って話で止まってしまって、事業視点が抜けてしまいがち。それだと、誰も Go / No Goの判断が難しい。そもそも、100%当たる意思決定なんて存在しなくて、みんな、「どれくらいの確度で当たりそうか」という確率論の中で意思決定している。
僕らがやっているディスカッションは、「当たる/外れる」を断言するためじゃなくて、当たる確率をどれだけ高められるかを考える作業であるよね。
ギャル社員:
その確率を高める作業が、リーンに検証するってことであってますか?
清:
そう!特に新規事業の立ち上げフェーズでは判断のための材料が少ないからこそ、どれだけ仮説を立て、それを早く意思決定に必要な材料を集められるかが大事で、このための仮説出し→検証をリーンに行うことが大切。
ホワイトボードはよく使います。
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■ 脳みそがパニック…複数の軸をどう処理する?
ギャル社員:
……すごいよくわかったんですけど。私すごく行き来が難しいです。右脳に行ったり左脳に行ったり。「数字と紐付けなきゃ」でも「センスも必要だよね」とか、クリエイティブ、マーケティング、PL、事業全体とか…
いろんな軸が絡み合ってて、脳みそがグチャグチャしちゃうんですよ。毎日パニックです!(笑)
清:
広告の管理画面だけ見て改善する等の単一的な視点じゃなく。求められてるのが多岐機能に横断するから、だよね。
ギャル社員:
そう!!!変数が多すぎるの。
清:
これは、結論から言うと「やるしかない」って話になっちゃうんだけど(笑)って言ったら終わっちゃうからちゃんと言語化してみるね。
事業って、生き物で、進めている中で常にどこかが変化する。たとえば、「ここをちょっと変えたい」と思ったとき。その変更って、
・在庫や資材の発注関連にはどう影響する?
・外部への発注は?
・デザインはどうなる?
・マーケティングなどの販促は?ECサイトやSNSアカウントへの変化は?
などなど、一箇所の変化が、他のどこにどう影響するのかを一周ぐるっと考える必要がある。
ギャル社員:
(険しい顔)
清:
これをやるためには前提があって、「オペレーションの全体像」や「その影響範囲」が見えてないとそもそも意思決定できない。これを研ぎ澄ませていくと、事象の変化にすぐ対応できるようになるし、やるべきかやらないべきかの意思決定スピードが早くなる。
これができるようになると、いわゆる「事業責任者」としてのスキルセットが身についたと言えるよね。
ギャル社員:
こんなこと聞くのあれなんですけど(笑)その脳みその構造になる方法は?経験値ですか?頭ではわかっていても、実践が難しい。
清:
経験値もあるけど、「思考の癖」だと思うよ。タスクを単なるタスクとして見るんじゃなく「そのタスクは事業における何の位置づけなのか?それにより何が変化するのか?」という視点を常に持つことかな。
タスクをただこなすのは誰でもできるけど、事業責任者をやる以上、そういう広い視野でみる癖をつけるといいね。
彼女は考える時によくこのポーズをしています(笑)
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■ 自信を持って仕事に取り組むには?
ギャル社員:
あの、最後に精神論みたいなこと聞いていいですか?
新規事業って正解がないじゃないですか。その中で「これ絶対いける!」っていう確信とか自信の持ち方に方法ってあるんですかね。揺るがない軸というか。
清:
自信、大事だよね(笑)。
根拠のある自信が積み上げるのに重要なのは、結局「小さな成功体験の積み重ね」だと思う。
ギャル社員:
ですよね。今の私はどうしたらいいんでしょう?
清:
まだ成功体験が少ない初期フェーズで言うと「自分が納得するくらい考え抜いたか?」ってことだと思うよ。例えば僕にレビューを求める時も、僕よりも自分の方がこのブランドに向き合ってる時間は長いわけじゃん?
ギャル社員:
はい、ずっと考えてます。
清:
だからこそ、「俺の及ばないところまで考えてるじゃん」って思わせるくらい考え抜いて「こうです!」って言えると、それが自信になるんじゃないかな。繰り返しだけど、僕達が向き合っている事業は、誰かが正解を持っている、というわけではなく、すべてはお客様に喜んでもらえるか(対価としてお支払いしていただけるか)、が全てなので。
ギャル社員:
うわー確かに!
清:
あとね、僕よりずっと成功してる経営者の先輩たちと話すとよく言ってるのは、「最後は運」ってこと。
これはどういう意味かというと「ここまで考え抜いて、ここまで準備して、これまでやり切ってダメだったら、もう運が悪かったとしか言いようがない」くらい考え抜いてるってことなんだよね。「人事を尽くして天命を待つ」ってやつ。
凄みを感じる経営者って意外と「運」とか「気運」を大事にする人っているのは、そこの確率まで上げに行って勝率を上げにいこうとしてる、みたいな感じに見える。
ギャル社員:
それ、すごすぎますね。。
清:
まぁでも、僕達は今は練習中だから。子どもの自転車の練習と一緒で、最初は「補助輪」が必要じゃん?今回でいくと、僕の役割はそれだと思ってもらえると。
ギャル社員:
頼もしいっす!(笑)
清:
そうそう。今は横で支えてるけど、いつか補助輪が外れて、一人でスイスイ漕げるようになる時が来るので。それまでは何度でも同じこと言うし、何度でも壁打ち相手になるね。それが僕の役割であるので。
ギャル社員:
いつも本当にありがとうございます! 早く補助輪卒業できるように、めっちゃ頑張ります!
清:
その調子でよろしくね!
新規ブランドローンチまで、楽しみです。
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■ 最後に
いつものnoteと違いかなりラフな感じの記事になりました。新規事業やブランド事業に当事者として取り組んでいる人に共感いただける点があれば嬉しいです。
・ブランド事業の立ち上げや成長で壁を感じている方
・これから本気でブランドをつくりたい方
ぜひ一度お話しましょう。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました✌️
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この記事は、V inc.のnoteから転載しています。
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