ある日、父親がぽろっと言った。
「新しいマシニング欲しいな」
正直、思った。
いや、そんな金あるのか?と。
マシニングと言えば最新式ので2000万円はくだらない。
現場を見ていても、余裕なんて感じたことは一度もなかった。
新しい工具を買うにも大騒ぎで、古い工具を使いまわしていた。
自分の給料も、手取りで15万円くらい。
しかも、周りの社員より低い。
理由を聞いたら、「お前は仕事ができないから当然だ」と。
マジかよ、と思った。
でも、その言葉よりも引っかかったのは別のところだった。
この状態で、新しい機械を買おうとしていること。
本当に大丈夫なのか。
誰もちゃんと考えていないんじゃないか。
そう思った。
だったら、自分で調べるしかない。
その時に見つけたのが、「ものづくり補助金」だった。
しかも、第1回目。行政としてもほぼ初のタイミング。
これしかないと思った。
ただ、やり方が全く分からない。
申請って何?
計画書ってどう書くの?
そこで初めて、中小企業診断士の小泉先生に出会った。
今思うと、ここが一つの分岐点だった。
小泉先生に、いろいろ教えてもらった。
事業計画の作り方。
考え方。
そして、決算書の見方。
BS?PL?
正直、そのレベルだった。
そこから一つずつ教えてもらって、初めてちゃんと数字を見ることになった。
そして、BSを見た瞬間に固まった。
「タイムチャーカーですね」
と言われた。
は?タイムチャーカー?
意味が分からなかった。
でも、説明を聞いてすぐに理解した。
ああ、これ、終わってるなと。
想像以上だった。
かなりの大赤字。
感覚で「やばい」と思っていたけど、
数字で見ると、その比じゃなかった。
この会社、普通にやってたら確実に潰れる。
そう確信した。
ここで、ようやくスタートラインに立った気がした。
現場でもなく、感覚でもなく、
初めて「現実」を理解した瞬間だった。