こんにちは、明治大学文学部3年のY.Mです。
私は幼いころから小説、漫画問わず物語が大好きで、物語に支えられた瞬間がたくさんあります。辛いときにファンタジー小説に逃げ込んで夢をみたり、頑張らなきゃいけないときに青春漫画に背中を押してもらいました。中学生の時、私は部活に対して真剣に打ち込めずにいました。しかし、あるキャラクターの言葉と、それを受けた周りの人物の行動に心を打たれ、私も部活に真剣に打ち込むようになりました。頑張る理由は、結果ではなくて自分の誇り。これは今でも私の行動指針になっています。このように、物語は私の心を守り、育ててくれました。だからこそ今度は自分が物語を届ける側になりたいと思い、現在編集者を目指しています。
今回は、そんな私が漫画出版社ソラジマで参加した「漫画編集者サマーインターン」の様子をお伝えします!
目次
本気になるためには、本気になれる環境がいる
出版業界を志して就職活動を進めるうちに、私は不安になっていました。倍率が高い出版業界で周りと比べて自分はいったいどんな強みがあるのだろうか、と自信を持てなかったのです。そもそも、自分の個性って何だろう。そんな時にソラジマで開催するサマーインターンを知り「連載会議を突破するために本気で企画作りができる」という言葉に惹かれて、迷わず応募しました。
本気を出すって、簡単にある機会じゃないと思うんです。本気になるためには、本気になれる環境がいる。本気の環境に飛び込んで、自分の本気がどんなものなのか知りたいと思いました。
同時に、自分はその本気の環境に逃げずにいられるか、怖くもなりました。企画に対し、自分は案を出す力があるのか。厳しいフィードバックを受け止めてより良い作品を生み出す胆力があるのか。「このくらいで良いや」と妥協を絶対にしない、本気があるのか。自分の編集者としての力を確かめたくて、参加を決めました。
「好き」を「なぜ面白いか」に変えていく4日間
インターンを通して得られたものは、一言でいうと感覚や感情を言語化する姿勢でした。
事前課題:14作品の分析でわかった、縦読み漫画の"設計"
事前課題は、計14作品を分析し、そこから各プラットフォームの傾向を読み解くというものでした。私は縦読み漫画はあまり読まず、なかでも青年向けバトル漫画は読んだことすらありませんでした。しかし、編集者を目指す中で媒体やターゲット層が違えど、物語をつくることにおいて共通する部分があるはずだと考え、なんでも貪欲に吸収する気持ちでした。
そこでわかったことは、ターゲット層の違いは作品が押し出す面白さに直結することです。縦読み漫画と横読み漫画では、ターゲットの年齢層も違いますし、どんな欲求に働きかけるかも違います。この作品の面白さは、どんな人のどんな境遇に向けたものなのか、自分の感想ではなく、読んで面白いと感じた誰かの気持ちに立って考える。
正直、自分には面白さがわからない作品もありました。しかし、売れているということは誰かの心にささったということですから。「ここの設定は、今どういう状況にある人が感情移入できるのか」自分の視点ではなく、他者の視点を通して作品を読むことは初めてで苦戦しましたが、同時に初めて”分析”したのだと思います。すると、縦読み漫画は性別や年齢を超えて、いま読者が抱えている不満にまで踏み込んで設計されていることに気づきました。
Day1:私は読者を想像し、編集者は"売れる理由"を分解していた
Day1からは、この事前課題にたいするフィードバックをもとに作品の企画に取り組んでいきます。私は前日に少し企画を考えて臨んでいたのですが、話を聞くうちに自分の思考回路と実際の編集者の思考回路が全く違うことに気がつきました。
私が企画を考えるうえで最初に考えたのは読者です。ターゲットとなる20代から40代の人はどんな生活を送っているのか、そんな日常にささる主人公を想定し、作品を企画しました。一方で編集者の方は「なぜ売れているのか」を徹底的に分解し、別の作品でも機能する構造まで見極めることによって新しい物語を生み出していました。プラットフォームが変わらない、つまり読者層が同じ作品の売れる理由を用いれば、それは自分の作品が売れる根拠となります。その時に、自分がしていたのは読者の想定であって、都合の良い主観でしかないことに気づきました。
その時の気持ちは、舌を巻く、という表現が一番近いと思います。驚きと感嘆。それから湧き上がる、やってみたいという熱意。企画のベースが事実である、そこに編集者としての仕事を見せられた気がしました。その日の帰りには、ベンチマーク作品を一つ決めて、徹底的に面白さの分析を行いました。そして、その設定をなぞるように自分の企画書の骨組みを作っていきました。
Day2:骨組みをなぞっただけの企画は、すぐ見抜かれた
Day2でも、引き続き自分の企画に対するフィードバックをいただきました。Day1での反省として、売れている作品をベースにして自分の企画の根拠とすることを意識し、ある売れている作品をベンチマークとして企画を作ってきていましたが、その作品のうわべをなぞっただけだったため、設定の甘さを指摘されました。
自分としては、すでに面白い作品を骨組みにしているため、自分の作品も面白いと思っていたのです。最初にあった気持ちは、困惑。しかし、考えるうちに納得に変わっていきました。大切なことはなぜ骨組みをその材質にしたのか。面白い作品と同じ形にするだけでは足りず、なぜその作品でその設定が用いられているのか、自分の作品にその設定を用いることで生まれる面白さは何か、企画のすべての理由が説明できなければなりません。詰めの甘さを実感した1日でした。そのため、帰宅後はなぜ自分の企画にその設定を用いるのか、ログラインの見直しを行いました。設定と報酬がつながっているか、固めることを意識しました。
Day3:創作の速さだけでなく、判断と対話の速さも問われる
Day3の午前中は、事前に読み込んだ脚本やネームについて、クリエイターさんからのご質問に答える対応体験がありましたが、私は確認に時間を使いすぎてしまい、時間内に回答することができませんでした。
二日間、企画書を作るために努力したからこそ、こだわりたい気持ちがわかる。その気持ちに対して中途半端な返事は絶対に返してはいけない。しっかりとした根拠を持って、意見をお伝えするべきだ。その気持ちは今でも変わりありません。ただ、企画書は自分が納得するまで好きなだけ考えられる一方で、他者と意見を擦り合わせる作業には必ずタイムリミットが存在します。時間をかけるべきは確認ではなく意見を交わすことでしたが、私はそれができませんでした。良い作品を期限内に届けるため、創作と同時に判断と対話の速さも求められる仕事だと痛感しました。2日間で見えたものと、それに固執した考え。考えを更新し続けなければいけないと身の引き締まる思いがしました。
午後は引き続き、企画書へのフィードバックの時間です。午前に読んだ脚本とキャラクターシートを見て、「自分の企画書からこれが作れなきゃいけないんだ」と感じ、セリフが書ける状態まで登場人物を深掘りしました。
先日のフィードバックから設定の一貫性もあり、企画書から物語が想像できる。自信を持って見せにいったところ、「このキャラは主人公の役に立ちますか?」と聞かれ、私は答えることができませんでした。かわいい。かっこいい。それは、自分の好きなキャラクターを世界観に当てはめて並べただけです。役割を考えることは、キャラクター作成における核心であり、私の盲点でした。
企画のすべてを説明できなければいけない、それはキャラクターについても同じで、存在理由が必要です。かわいいから、かっこいいからは主観でしかなく、読者がそう感じるためには活躍しなければなりません。編集者の見方はずっと客観的で、私はフィードバックを受けるたびに言語化できていない自分に悔しさをかかえて企画書を練りなおしました。私の考えているすべてが、企画書から伝わるのか。売れると説明するために、足りない情報はなにか。そんな思いで、企画書を作り上げていきました。
Day4:模擬連載会議の結果は「通過」。でも、ゴールじゃなかった
最終日のDay4の朝。前日真夜中まで企画書を書き、これで提出できると考えたうえで寝たものの、早くに起きて修正や加筆をしました。最後に書き加えたのは、無料で読める4話までの展開です。4話までに面白いと思わせられるか、5話からの続きが気になるか。物語が企画書から想像できるかを考えて、企画書を提出しました。自分の企画に対し、「行ってこい!」という気持ちでエンターキーを押しました。
終わった瞬間に感じたのは、自分がやり遂げたという達成感です。自分のいまの能力でできることはすべてやった、通過しなかったらいまの自分の能力が足りなかったということだから、また頑張ればいいや。とはいえ、模擬連載会議の時間まで、私は緊張で胃が正しい位置に収まっていないような感覚でした。全力でやったからこそ、それがどう評価されるのか不安でした。そして沈鬱な面持ちで迎えた結果は、「通過」。聞いた瞬間はあまり実感がなく、通過したんだ、全力が実ったんだ、と安心する気持ちが強かった気がします。感想を聞かれて、やっと嬉しい気持ちと実感がこみあげ、涙がこぼれました。
しかし、喜んでいたのもつかの間、ほかの参加者が「通過した企画としなかった企画の違いはなんですか」と聞き、背筋がのびました。「まだまだここから」そんな気持ちを感じとり、ゴールではないと突きつけられました。絶対に悔しいはずなのに、自分の感情ではなく企画に対して正直に向き合う姿勢に、尊敬と悔しさが込み上げました。
自分が同じ状況になったとき、自分は同じ行動をとれるだろうか。彼らは私よりずっと先を見据えていて、うかうかしてたらすぐに追い越される。私が評価していただけたのは、売れる理由がベンチマークに裏づけられていたこと、物語を展開していく上で新しさを組み込めていたことです。しかし、私が物語の展開を考えることに時間を使えたのは、周りより少しだけ早く、固める案を思いつくことができたからです。運よく、順調に企画作りを進められただけ。勝って兜の緒を締めよ、そんな気持ちにさせてくれる、切磋琢磨できる仲間に出会えたことに、本当に感謝しています。
漫画編集者の視線の先には、いつも読者がいる
「今日から4日間、皆さんは第二編集部の編集者です」この言葉通り、編集者の方々は私たちのことを編集者として見てくれました。企画のはじめは作品ではなくて市場分析であること。物語に一貫性を持たせたログラインがあること。キャラクターに役割があること。「こうしたら面白いんじゃない?」そのすべてに理由が必要でした。
理由を説明できるということは、主観が客観的に判断できるようになるということです。なぜこの設定にしたのか、なぜこのキャラがいるのかを聞いて、言語化しなければいけない部分を示してくれました。気づかされたことに歯がゆさを感じ、次はそんな部分がないようにして行くと、新しいフィードバックをいただきます。悔しさとともに、自分がアップデートされていく感覚がしました。こんな風に、作家さんとアップデートしあって作品を磨いていくのだろう。これは、作品の質を担保すると同時に、読者が面白いと思えるかどうかを確認する作業だったように感じます。
自分から切り離して読者を分析し、アプローチを行う。編集者の視線の先にはずっと、作品が読者の何に働きかけるのかがありました。また、私たちにフィードバックをする際、「例えばこの物語だとこうでしょ」や「似た設定に○○があるから、一回読んでみるといいよ」など、企画から似た本質の物語を連想し、その物語の良さを言語化して教えてくれました。とくに印象に残っているのは、「転生だったら、地位が得られる。回帰だったら、知識が得られる。その設定で、主人公は何を得るの?」という言葉です。設定は舞台を固定するだけじゃなくて、ゴールに対して必要なものを織り込まなければいけない。設定に対して「そういうもの」としてしか認識していなかった私に衝撃を与えました。
ソラジマ第二編集部の編集者の方々は、売れる要素の抽出・再構成・企画への落とし込みまで一気通貫で見ていました。 多くの分析のうえで成り立つ、本質を見極める力に、私はずっと感嘆するばかりでした。だからこそ、本質を説明したいと自身の企画を見つめ続けることができたのだと思います。
自分の中にあったものに、名前がついた
ソラジマのインターンを得られたのは、作品の見え方そのものの変化です。これまで私は、面白い作品に出会うと「好きだ」で完結していました。けれどいまは、なぜ自分がここで心を動かされたのか、その面白さはどの要素から生まれているのかを、無意識に言葉にしようとしています。インターンが終わってから読んだ漫画でも、気づけばそうやって読んでいる自分がいて、4日間で自分の中に確実に何かが残ったのだと感じます。1日目と4日目では、一番言語化の精度があがったと思います。
そしてそれは、ソラジマのすぐフィードバックをもらいに行きましょう、という姿勢のおかげでもありました。まずは出す、そうして編集者と話すことで、自分の考えていたけれど企画書に落とし込めていない部分や、まったくの盲点だったけれど言語化しなければならない部分がわかりました。選考でいただいた言葉から、自分がまだ何も持っていないことは分かっていたので、貪欲にやろうという気持ちは最初からありました。その上で、編集者の方々も私の思っていることを聞いて、本音で返してくれました。そんな、みんなが本気でぶつかる環境で、何度も奮起することができました。基準を引き上げ合い、未完成でも出して磨き合う。ソラジマではこの姿勢を「Bar Raise」(基準を引き上げる)と「Done Better」(まずは出す)と呼んでおり、その意味を4日間で学ぶことができました。
本気の環境で挑戦できることの価値は、本気の人こそ感じる
インターンを終えて、私のなかにある気持ちは「楽しかった!」です。もちろん、厳しいフィードバックをもらい落ち込むことも、周りの参加者と比べて焦ることもあります。しかし、本音でぶつかり、自分の企画を磨き上げる。企画が出来上がった時の達成感も、それが認められた喜びも、簡単には味わうことができないものです。
漫画編集者に必要なものは才能ではなく、どこまでも突き詰めて作品をより良くしていきたいという熱い想いからくる分析する力。胆力なんて自分の気持ち次第。編集者も参加者も熱く企画に向き合う環境に、悩んでいる暇なんてありませんでした。そして、自信をもって編集者を目指そうと決めることができました。
この体験記を読んでいる方は、本気で考えて、ソラジマのインターンに応募しようか悩んでいる方だと思います。そうやって迷ったり、たくさん考える気持ちがあるなら、まずはトライしてみてください。まずは出す、やってみる。すべてはそこから始まると私はもう知っています。本気のあなたを、本気の環境が待っています!