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【代表インタビュー 〜前編〜】「福岡から全国へ、日本から世界へ!水産業界のリーディングカンパニーになる。」

プロフィール

株式会社ベンナーズ代表取締役社長 井口 剛志(29)
1995年に長崎生まれ、福岡育ち。一児の父。趣味は「食べ歩き」「ドライブ」。
高校一年終了時に日本の高校を中退し単身渡米。Boston Universityへ進学し、起業学を専攻。学卒後、日本の食と漁業を守ることをビジョンとし2018年4月に株式会社ベンナーズを創業。

ベンナーズとはエジプト神話にでてくる“不死の霊鳥(ベンヌ)”が由来。=決してあきらめないという意味を込めている。

 

起業のきっかけ

実はあまり取材などでも口にしたことはなかったのですが...ぶっちゃけたお話しをします。

元々は就職するつもりで、大学3年の時、総合商社の投資部門の内定を頂きました。投資家の視点で様々な業界を見ることができるので、いつか自分で起業した時に役立つスキルや経験を、お金をもらいながら学べるということで、とてもワクワクしていました。

人生プランとしては30歳くらいで下積み後、父親の会社をつごうと思っていたのです。

 ですが、転機となったのが大学3年の二学期。

父の会社が倒産してしまいまして。実家や家財道具まで銀行に差し押さえされたのです...

私はアメリカ留学中でしたが、その状況になるまで親は私に心配をかけるからと、何も言わずに耐えてくれていたのです。

元々自分は何一つ不自由な思いをすることなく育ててもらっていたので、家業が危機的状況にあることに倒産するまで気づけませんでした。そのやるせない事象に対して本当に悔しかった。

自分は何ひとつ苦労していないのに、、、と親に対して申し訳ない気持ちでいっぱいでした。そこでしっかり稼いで、差し押さえられた家を買い戻したいと思いました。

しかしその会社に就職してその家を買えるようになるまでにかかるであろう年数や、数千人いる社員の中で自分が役員になれる可能性など、総合的に考えて今起業するしかないという結論に至りました。

今となっては両親は不自由なく暮らせていて、私自身も自分の仕事に対して誇りを持って働けているのでハッピーエンドなのですが、最初はそういう生々しい動機でしたw

 

なぜ水産業界へ?



私は祖父が水産加工業、父親が魚の卸業を営む水産一家で生まれ育ちましたので、この業界がそもそも馴染み深かったのもあります。小さい時に祖父と港を散歩したり、市場を練り歩いたのは今も覚えていて、食卓に魚が登場する頻度も多かったので魚が大好きです。日本は豊かな海に囲まれた国で、元々水産業はとても盛んな産業でした。マルハニチロがトヨタよりも時価総額が大きい時があったほど。

しかし現在水産業界は完全に衰退産業と言われる業界になっています。水産資源の減少や漁業者の減少・高齢化、若者の魚離れなど課題は山積み。しかもそれぞれの課題が複雑に絡み合って更なる負のスパイラルを生み出しています。

祖父の会社も過剰な設備投資により私が小さい時に倒産、父の会社も私が大学3年の時に倒産するなどこの業界の厳しさも自らの目で目の当たりしました。

 だからこそ私はこの業界で起業することを決意しました。

 アントレプレナーシップ101という起業学を専攻する上で一番最初に受講する講義で、起業する上で最も大事な考え方は”誰の何をどのように解決するか”という事を学びました。そしてその解決する課題が大きいほど社会に与えるインパクトも大きいということも学びました。

 そういった意味では水産業界は課題だらけの業界なので、逆にそこに可能性を感じました。この山積みの課題を解決できた時、どんな素晴らしい世界になるのだろうと。ただのどMではありません。w


事業立ち上げの背景

さぁ起業するぞ!と言っても何をするか?と考えた時、プラットフォーム型のビジネスモデルが当時ブームでした。

プラットフォーム戦略という講義を大学でも学んでいたのでビジネスモデルにとても可能性を感じていました。そこで、当時の仲間たちと立ち上げた事業は、魚の売り手と買い手をオンラインで繋ぐプラットフォーム「マリニティ」です。

水産物の流通構造は非効率な部分が多いと以前から知っていました。その複雑すぎる流通網に新しい選択肢を提案することで、業界全体の構造を変えたいと考えました。

VCからもプレシードで資金調達もし、徐々に産地の方々ともバイヤーの方々とも関係性が作れていって点と点が徐々に繋がりはじめていきました。

ただどうも自分が思ったようには事が進んでいかない。社会人経験も業界経験もない、ビジネスのイロハも知らぬままの起業だったということもありますが、このビジネスモデルの業界に対するフィット感をどうにも感じれない。ロジカルに考えるとうまくいくはずなんだけど、なぜかウケない。

コロナもあり、今でこそ市場外流通も広がりつつありますが、良くも悪くも超属人的かつ義理と人情が大事な世界で(私は好きなんですが)、真新しいしかも横文字のこのサービスはもしかしたらあまり浸透しないかもしれないなという不安に陥ってました。

 そんな矢先、世界を大混乱に陥れたコロナが爆発的に蔓延しはじめました。我々のお客様に当たる買い手側の外食企業の中には倒産してしまった会社もあって、我々の売上も90%程減少しました。外食という受け皿が失われる事で、全国の浜で行き場を失ってしまった魚が大量に発生しました。

元々プラットフォームを構築していく上で、そもそも消費者が魚をあまり食べなくなってきている事が、かなり根本的な問題のように感じていたのもあります。魚は肉に比べて料理のレパートリーが限られるとか、骨が多くて食べづらい、調理した後の処理がめんどくさいなど、魚に対するネガティブなイメージが時代と共に拡大してしまったのが、消費者の魚離れの背景にあります。

どれだけ流通構造が整ったところで、末端の消費者が魚を食べてくれないと元も子もないですよね。

 魚は外食する際に食べるものだったのがコロナで外食できない分、家で美味しい魚も食べたいというニーズが生まれるのでは考えました。

幸いコロナの制度融資で資金を調達することもできたので、思い切って自らがメーカーとなり、行き場を失ってしまっている未利用魚を有効活用して、誰でも簡単に魚を家庭で楽しめるようなサービスを作ろうとして誕生したのがフィシュルです。

 そこからはもうゼロベースで、自分達でECサイトを作り、魚を仕入れて、捌いて、梱包、お客様への配送まで全ての作業をしていました。仕入れから商品の開発、製造、販売まで全ての工程を自分達でこなしてきたのは今の自分達の競合優位性にも繋がっているので、やって良かったなと思いつつ、当時は結構体力勝負でした。w


その諦めない姿勢はどこから?

諦めない姿勢はおそらく、父譲りですね。
父も最後に会社が倒産し、60歳近くで家を失ってからもまだ懲りずに商売をやっています。

 ピンチはチャンスという考えは本能的なものだと自負しています。諦めない限り、必ず勝機はどこかにあると。逆にあの時コロナの制度融資で調達した資金を、プラットフォーム事業の存続の為に使っていたとしたら、今頃資金は枯渇し、今いる優秀なメンバー達もジョインしてくれてなかったと思うので、恐らく潰れていたと思います。


 未知だから食べてみたい、お魚のミールパック 「フィシュル!」とは?未利用魚とは?

まず、”未利用魚”とは、味に影響はない理由(マイナーすぎてあまり知られていない、魚体に傷があって出荷できない、捌くのに手間がかかる、足が早い)といった理由で流通に乗らないお魚です。

日本の漁業の総水揚げ量のうち約30%がこの未利用魚になってしまっていると言われてます。また日本近海の約3,800種の魚種の中で私たちが実際に食しているのは20種類程度と言われています。

“フィシュル!”は、この未利用魚を有効活用して作られた冷凍のミールパックを全国の個人宅へ定期的にお届けするものです。現在は累計会員数4万2千人を突破しました!サービスに関わる全ての方のお陰です...!

 余分な添加物を一才使用しておらず、下味がついた状態で瞬間冷凍されているので、解凍後すぐに食べることができます。加熱用商品も解凍後焼くだけ、もしくは耐熱容器に移してレンチンするだけですぐに食べれます。

また、加熱用の商品も含め、生で食べられる鮮度の良い魚しか使用していません。魚嫌いの方の多くは、幼少期に美味しくない魚を食べた嫌な記憶が残っているのではないかと思います。魚嫌いの方をなるべく増やさないためにも、新鮮で美味しい魚を提供していきたいと考えています。

2021年3月の立ち上げ当初の苦労は、肉体的疲労はあったものの仲間たちと現場で切磋琢磨にひたすら日々の作業に励んでいて、それも楽しんでいました。

このタイミングでCOOの長谷川ルークもジョインしてくれました。

売り上げや会員数もゆるやかに成長して行き、1年かけて最初の1,000人のお客様を獲得。

22年の1月にはエクイティでの資金調達も実施。イベント出店などの販促やデジタルマーケティングなども行いそこから会員獲得の加速度が増していきます。 

しかし22年の夏に大きな災難に見舞われました。大きなメディアに出たことをきっかけに一気に会員数が一月で3倍に。それはとてもグッドニュースなんですが、同タイミングで過去最大級の台風が福岡を直撃。原料となる肝心の魚が獲れないので商品の供給が追いつかないし、製造チームのキャパシティも全然足りませんでした。一気に人を増やした事で社内にハレーションが生まれ、異物混入事件も発生。ちょうど資金調達を実施していたのですが、それも予定通りことは進まず資金繰りも火の車でした。プライベートでは父になったばかりで、我が子の顔をみながら毎日焦る日々を過ごしていました。

当時はなんでこんなにハプニングは連続して起こるんだと、笑いが出るぐらい大変でしたが、今思えばこの一連のトラブルが我々を強くし、基礎を固めてくれたと思っています。

23年は現在の主要メンバーとなる人たちも会社に加わり、更に大きく成長する事ができました。このタイミングで協力工場(OEM先)での商品の委託製造も開始。現在では北は青森の八戸、南は鹿児島まで全国の浜でフィシュルを製造しています。

他社企業様とのコラボ案件や青学初頭部での食育活動などフィシュルを入り口に活動範囲も広がり、メディアでもご紹介いただく機会が格段に増えていきました。

お客様からは、「冷蔵庫にあると安心」「食べたことがない魚に出会えるのでワクワクする」「自分では作らないような味付けで、料理のレパートリーが増えた」といったありがたいお声をいただいています。

そんなフィシュルは来年で4周年を迎えようとしています。

( 今後の展開や会社カルチャーについては、〜後編〜に続く )

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