「AIに仕事を奪われる」と、よく言われます。
だから、AIを使いこなすスキルを身につけよう、と考える人は多いはずです。ツールに詳しくなれば、生き残れる ────
でも、伊藤さんの見方は少し違いました。
ツールを使いこなすだけでは、淘汰される側からは抜け出せない。本当に問われるのは、もっと別のところにある。
広告代理事業部の部長として現場を率いる伊藤さんに、AI時代の広告運用について聞きました。
どこまで、AIに代替されるのか
まず聞いたのは、いまの広告運用がどこまでAIに任せられるのか、ということです。
「設定さえできれば、8割くらいは代替できると思っています」
GoogleもMetaも、いまや裏側でAIが走っている時代だと伊藤さんは言います。膨大なデータをAIが集約し、人間だと時間のかかる分析を、さまざまなシグナルをもとに自動でこなしていく。それが、いまの運用の前提です。
その変化が象徴的にあらわれているのが、検索広告のキーワードの指定方法です。
かつては「転職」と検索した人にだけ広告を出す、完全一致が中心でした。そこから「転職 おすすめ」のように、その言葉を含む検索に出すフレーズ一致へと広がり、いまはユーザーの検索意図をAIが汲み取って、関連しそうな検索にまで自動で届ける形が主流になりつつあります。
「誰に広告を届けるか」を人が一つひとつ指定する時代から、AIが意図を読んで広げる時代へ。配信を広げる作業そのものは、もうかなりの部分をAIが担えるようになっています。
人間にしかできないこととは
では、残りの2割 ──── 人にしかできないことは、何なのか。
伊藤さんが挙げたのは、ふたつでした。どんなデータをAIに学習させるかを見極めること。そして、仮説を立てることです。
「分析の手法や、データの整理そのものは、AIやツールのほうが早い。そういう作業的なところは、どんどんAIに任せていくべきだと思っています」
一方で、そもそも何をAIに見せるのか。どんなユーザーのデータを学習に使い、いまあるデータをどう整理するのか。その入り口を決めるのは、まだ人間の仕事だと言います。
数値は、ウソをつかない
広告運用の現場には、毎日膨大な量の数値が流れてきます。
「数値はウソをつかないんです。昨日と今日を比べれば、必ずどこかに差分が出てくる」
なぜ、その差分が生まれたのか。どこに課題があり、何を改善すべきなのか。仮説を立てて検証し、課題にたどり着く。それが運用者の仕事です。
ここで、AIとの差が出ると伊藤さんは言います。
「差分がどこにあるかは、AIも出せます。でも、その中でどれが重要か、優先順位をつけるところは、今のAIだとまだ弱い」
変化を検出することはできる。けれど、その変化の意味を読み解き、「何から手をつけるべきか」を決めるのは、人間の仕事。ここが、運用者の腕の見せどころです。
No.の武器は、データを「つなぐ」こと
仮説を立てるとは、具体的にどういうことか。伊藤さんは、転職サービスの広告運用を例に説明してくれました。
たとえば、ある転職サービスの広告を運用するとします。ふつうは「1人の登録を、いくらで獲得できたか」を目標に置きます。登録1件あたり1万円以内、というように。
でも、それだけでは足りない、と伊藤さんは言います。
転職サービスがお金を得るのは、登録した人が実際に転職し、入社が決まったとき。だとすれば、企業が本当に増やしたいのは「登録した人」ではなく「入社まで進む人」のはずです。
ここで効いてくるのが、データを「つなぐ」という発想です。
Googleが知っているのは、広告をクリックして「登録した」ところまで。その人がその後どうなったかは、Google側には残りません。一方、登録した人が実際に入社したかどうかは、自社のデータが持っています。
この2つをつなぐと、何が見えてくるか。「入社まで進む人」が、どんな属性の人なのかがわかってきます。
「どの項目にチェックを入れている人が、入社率が高いのか。そういう相関を出していくのも、ひとつの仮説です」
入社につながりやすい人の属性を分解し、そのデータを学習に回していく。すると、Googleに対して「こういう人を、もっと採ってきてほしい」と精度の高い働きかけができるようになります。登録の数ではなく、その先の成果で運用を最適化していく ────
「AI時代に、ほかの会社との差別化要素として、後工程をどれだけ意識してお客様に価値提供できるか。そこが大事だと思っています」
広告運用者の未来は、二極化していく
最後に、広告運用者の未来について聞きました。
「正直、なくならないと思っています」
ただし、これから代理店は二極化するのではないか、と伊藤さんは言います。
ひとつは、自動化で回せる運用を担う代理店。少額で回したい、仕組みで完結する案件は、外注のままが合理的だからです。
もうひとつは、戦略から踏み込む運用を担う代理店。ただ、こちらには内製化の波が来ています。人件費を考えれば、自社でマーケティング部を持ったほうが安い、と考える企業は増えていく。
しかし、内製化がうまくいくとは限りません。
「自動学習で回すモデルなら、自社でも成り立つ。でも、後工程まで意識したコンサル型の領域には、踏み込めない」
自動化で回る運用は、企業が自前で抱えるようになる。でも、その先まで踏み込む代理店は、替えがきかない。No.が立とうとしているのは、その替えのきかない側です。
「じゃあ、No.は残りますね」。そう投げかけると、伊藤さんは笑って答えました。
「もちろん。残らないと思って、やってないですよ」
あとがき|考える人が、価値を生み出す
AIに任せれば、たいていの運用は回ってしまう時代です。
膨大な数字の中から、変化を見つけ出す。それくらいのことは、もうAIが一瞬でやってくれます。
だからこそ、最後に残るのは「考える」という仕事です。
その変化のうち、どれが重要なのか。
クライアントが本当に求めるものに辿り着くには、どうすればよいのか。
そこに向き合い続けられる人のところに、価値は残っていく。
AIを活用しながら、運用者としてもっと考えたい。
目先の数値だけでなく、クライアントの事業成果に向き合いたい。
そんな人にとって、No.は面白い環境だと思います。
少しでも気になった方は、ぜひお話ししましょう。
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