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離島だからこそ挑戦できるキャリアと「地球に溶ける」ライフスタイル

連載:わたしの離島Life①

日本海に浮かぶ隠岐諸島に位置する島、海士町。
人口約2300人のこの離島には、なにかの引力がはたらいているかのように、
多様なバックグラウンドを持つ人々が引き寄せられ、生活をしています。

日本のどことも異なる離島の営みを紹介していく連載「わたしの離島Life」の第一弾は1年前に東京から縁もゆかりもない海士町へ移住をした永峯さん。いつも和やかな雰囲気を醸し出し、温かい言葉を同僚に投げかける彼女は今やEntôダイニングのチームリーダーとして活躍しています。そんな彼女の離島Lifeに迫りました。

■プロフィール
永峯 梨香:1994年生まれ。青森出身。高校卒業後に上京後、大手小売で7年間の勤務を経て海士町へ移住。現在Entôではホールのサービス業務を中心に調理、仕入れ、ダイニングの予約管理など多方面で力を発揮している。

憧れの東京ライフを経て、出会う離島の日々

--まず学生時代のことを教えてください。

青森の東北町という場所で生まれ育ちました。家の裏には鹿がいる山があるなど自然がたくさんあったり、工事現場に勝手に入って遊ぶみたいな、田舎ならではの自由な感じの子供時代でした。中学校は同級生が15人しかいなかったため、部活は一択で、夏は陸上、冬はクロスカントリー。高校ではタイピングを競うというマイナーだけれど、なぜか体育会の文化があるワープロ部に入り、全国2位になりました。そして高校卒業後は高校の先生から紹介を受け、東京の成城石井へ就職しました。

--東京へはもともと行きたかったんですか?

青森の小さい町で育った自分にとって、東京はテレビでしか見ない場所であり、なんなら架空の存在くらい遠くて、でも憧れる場所だったんです。とりあえず行ってそこで生活したいという思いがとにかく強かったです。

--そんな憧れの東京生活はどうでしたか?

最初はすごく楽しかったです。話題のお店にはすぐ行けるし、行きたいライブやコンサートにもすぐ行ける。とにかく暇をすることがなく、動き回っていました。でもだんだん慣れてそれが当たり前になってくると情報がありすぎて、自分が埋もれる感覚になったり、周りのことをすごく気にするようになったんです。

--埋もれる感覚ですか?

はい、街を歩いているだけで、売られているもの、広告や看板、おしゃれな人、仕事をバリバリしていそうな人など勝手にたくさんの情報が入ってきて、「あんなブランド着てていいな」とか「あんなふうに働きたいな」とか思うようになりました。そうした目に入る情報から勝手に劣等感を持ってしまったりとかもして、まちを歩いているだけなのに疲れてしまうようになったんです。そのころから休日は東京らしいところを離れて奥多摩とか郊外に緑を見に行くようになりました。

そんな矢先に当時住んでいたアパートの大家さんの事情で、そのアパートも古かったので、取り壊すから、半年以内に出ていってほしいという通達を受けました。ちょうど東京の生活に疲れていたこともあって、何かのお告げだと受け取りました。「東京から出ろ」と。(笑)

-それはお告げですね(笑)。では海士町との出会いを教えてください。

そこから東京ではないどこかに行こうと思っていたのですが、なんとなく故郷に戻るのは違うかなと思っていて、最初仙台に行こうかと思ったりもしたのですが、ふとネットで見た海士町で暮らす今Entoのマネージャーでもある笠原さんのインタビューにたどり着いて「休みの日は農家さんのお手伝いをしている」という文章を見たんです。その時にこんな生活いいなと思って、直感ですぐに応募しました。

その後2回のオンライン面談を経て、「一度海士町に来て自分の目で見てみたら?」というふうに言っていただき、東京から足を運びました。そのときに今も一緒に働く本田さんが軽トラで島を回りながら島のいろんなことを教えてくれたり、代表の青山さんやいろんな人と話しました。入社の選考を受けるのは、高校の時の就職面接以来で緊張していたんですが、リラックスして話せて、みなさんいい人だなと感じ、海士町への移住と(株)海士で働くことを決めました。

”地球に溶ける”を味わう島の生活

-海士町へ移住してみての生活はどうですか?

まず何よりは早く来ればよかったという思いがすごく強いです。東京から出たいけど悩んでいた時間がもったいなかったなと。もちろん美容院にすぐ行けなかったり、物価が高いなど離島ならではの不便さなどはありますが、近くに海があって山があって、住んでいるシェアハウスの目の前に緑がある。それだけで幸せだなと思います。

-島でのお気に入りの過ごし方を教えてください。

そうですね。少し話が逸れるんですが、まだわたしが小さかった頃、実家の近くに野原があって、よくそこに寝転んで空をただただ見上げていました。雲が流れていくんですが、「あ、あの雲怪獣みたいな形だな」とか思いながら。そうやってボーとしていると、なんか地球に溶けていると感じるんです。自然の中にいる、植物と一緒にいる、みたいな。その時間や感覚が昔はすごく好きでした。

そして海士町に移住してからは、久しぶりにその感覚を思い出し、それをいつでも味わうことができるようになりました。手つかずの自然がたくさん残っていて、散歩しているだけで幸せを感じることができるし、ポカポカしている日は「マジ最高!」と思います。また、さっき話した感覚って東京では「変なやつ」と思われそうで誰にも話してこなかったんですが、海士町では周囲の人に「受け入れてもらえる」「笑ってもらえる」ような気がして周囲に話せるようになったのも不思議です。

チームで同じ体験を共有する働き方への挑戦

--仕事はどんなことをしているんですか?

(株)海士の運営するEntôというホテルにあるダイニング、「Entô Dining」という場所で働いています。普通のレストランだとキッチン担当とホールの担当が分かれていると思うんですが、Entô Diningではその垣根を壊し、みんなで仕込みをして、みんなでサーブをしています。

以前はきっちりと担当が分かれていたのですが、担当が分かれているとみんなが何をやっているかちゃんとわからないから意思疎通が図りづらい部分があったんです。でも実際に今は自分でも仕込みや料理に関わるなかで料理ってこんなに大変だったんだということがわかるようになりました。チームでお互いやっていることの理解が進んで連携がしやすくなってきていると感じています。

またEntô Diningでは、島の食材を生産者さんが作ったものや自分たちで採ってきたものを使うことを大切にしています。今は中山さんがメインで仕入れを行っているのですが、たまにみんなで野草や飾りの花を摘みに行ったり、魚や牡蠣を買いに行ったりして同じ体験を共有するようにしています。

--仕事で好きな瞬間やこれからやりたいことをお聞きしてもいいですか?

やはり繁忙期には連日すごく忙しくなるのですが、仕事終わりの「チームで今日乗り切った」という瞬間をチームで共有しているときが好きでその時間をめざして頑張っています。

また今年に入って富山のガストロノミーL`evoや大分のレストランに会社の視察として連れて行っていただいたのですが、そこは空間全部が完璧でした。料理自体はもちろん、BGMや食事をするスペースから見える料理人の方々の雰囲気やその関係性などその場のすべてが料理や体験に影響を与えるということを実感しました。Entô Dinningの課題にも気づけたので、すこしづつ良くしていきたいと思います。


--ありがとうございます。最後に今移住や転職を検討している方にメッセージをいただけますか?

これは実際私がこの島に来たときにいろんな人に言われたことなんですが、「1回来てみればいいんじゃない?」と伝えたいです(笑)。海士町自体、来る人をすごく歓迎して、送り出しもすごく盛大にやるのですが、いい意味で去る人に執着もなかったりします。田舎だし、離島だしということで来ることに少し迷った時期もあったのですが、「1回来てみればいい、合わなければ帰ればいい」という言葉をかけてくれて楽になりました。楽な気持ちで一回来てみてほしいと思います。


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