社会課題を解決する製品・サービスの早期実用化に向けて、産官学連携で挑む【会員企業紹介/京セラ株式会社】
中四国地域最大規模の“次世代型DXオープンイノベーションプラットフォーム”である『ひろしま好きじゃけんコンソーシアム』。デジタルコミュニケーションツール「Slack」を通して産学官金が連携し、簡単・迅速にお互いの課題を解決できるエコシステムです。2021年10月の発足から1周年を迎え、会員企業数は70社以上、会員数は200名を突破。これまでは難しかったようなイノベーションの創出と地域経済の活性化が日々進められています。
今回は『ひろしま好きじゃけんコンソーシアム』のゴールド会員である京セラ株式会社にインタビューを行いました。参画した背景と目的、実際にコンソーシアムを利用して進めたプロジェクトやその効果、今後の展開についてお聞きしています。
京セラ株式会社
ブラウン管テレビの絶縁用ファインセラミック部品から始まった京セラは、1959年の設立以来、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念のもと、素材から部品、デバイス、機器、サービスやネットワークまで、多岐にわたる事業を展開しています。現在は、これまで培ってきた技術やノウハウといった強みを生かして、「情報通信」「モビリティ」「環境・エネルギー」「医療・ヘルスケア」の市場を中心に、事業活動を推進。世界を取り巻くさまざまな社会課題の解決に向けた挑戦をしています。
<会社概要>
HP:https://www.kyocera.co.jp/
本社:京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地
設立:1959年4月 資本金:1157億300万円 グループ従業員数:83,001名
研究開発本部
社会実装開発センター
新規事業開発部 BS開発1課 責任者
岸田 岳(きしだ たかし)
京セラ株式会社に入社後は、生産技術のIE(インダストリアル・エンジニアリング)として事業部やR&Dの生産性の改善や事業化を支援する部門に所属。新規事業の立ち上げにも携わる。その後、燃料電池やLED照明、EMS(エネルギー管理システム)などの営業・マーケティング職を経験。事業部のコア技術を新用途に展開する事業開発に従事する。2022年4月、社会実装開発センター設立と同時にセンターに赴任。R&Dが手がける研究開発の事業化を計画・検証する責任者として、様々なプロジェクトを推進している。
研究開発本部
社会実装開発センター
新規事業開発部 BS開発1課
西中 紗也香(にしなか さやか)
前職は製薬会社でMR職や営業企画職を経験し、2019年に京セラ株式会社に中途入社する。入社後はプリンティングデバイス事業本部に所属し、さまざまな新規事業開発に携わる。2022年4月からは、社会実装開発センターのメンバーとして活躍。「ひろしま好きじゃけんコンソーシアム」を活用して、「医療・ヘルスケア」分野での新製品・サービスの開発・実用化を進めている。
ミッションは、京セラが進める研究開発テーマを早期に実用化すること。
ーー現在所属されている「社会実装開発センター」について、教えてください。
岸田さん:
京セラは一言では言い表せないような多岐にわたる事業を手がけている企業であり、約300社に及ぶ京セラグループのシナジーを高めることで、社会課題の解決に向けて4つの市場に注力しています。4つの市場とは、「情報通信」「モビリティ」「環境・エネルギー」「医療・ヘルスケア」。各分野で社会課題を解決することを目的とした新規性の高い研究開発が行われているのですが、いくつかの課題がありました。それは、研究開発の結果を踏まえて新規に事業化を進めていく際に、リリースまでに時間がかかってしまうことや、開発がなかなかうまくいかないこともあったのです。そこで2022年4月に新設されたのが、社会実装開発センターです。新奇性の高い研究開発テーマをアジャイルに価値判断し、事業として成立するかどうかをスピーディーに計画したり、製品・サービスとしてのマーケティング活動や仮説・概念検証をしたり、販売方法を考えたりする部門です。京セラの新規研究開発テーマを製品・サービスとして早期に実用化し、社会課題を解決していくことがミッションとなります。
ーーひろしま好きじゃけんコンソーシアムに参画したのは、どんなきっかけですか?
岸田さん:
2018年には、ライフサイエンス分野における検査・分析作業の前工程を自動化する「細胞分離・濃度計測デバイス」の開発プロジェクトを、テロメア研究の第一人者である広島大学の田原教授と進めてきました。そのご縁がきっかけとなって、2022年5月にひろしま好きじゃけんコンソーシアムに参画しました。
ーー参画することで、どんな狙いがあったのですか?
岸田さん:
ひろしま好きじゃけんコンソーシアムに参画することで、特に当社が重点市場として挙げている「医療・ヘルスケア」分野で何かできないかと考えていました。
医療・ヘルスケアと言っても課題解決すべきテーマは非常に多く、複雑化・高度化しています。そのため、京セラ単独で全てを完結するのはなかなか難しく、特に今はスピードの速さも求められる時代。これまで以上に広い視野で、社会課題を深く掘り下げるスピーディーなアプローチが重要となっています。そのためには、グループ内だけでの完結ではなく、社外の専門企業やアカデミアとの連携も重要。そこで、多数の企業が参画しており、産官学連携での取り組みができるコンソーシアムに参画したのです。
企業や自治体とスピーディーに連携し、試作品の実証実験も実施。
ーー「ひろしま好きじゃけんコンソーシアム」をどう活用されましたか?
西中さん:
社会実装開発センターで進めている“女性の健康サポートに関するサービス”に対して、コンソーシアムに参画されている企業に相談し、試作品を実際に触っていただく機会をいただきました。その企業は女性社員が多く、とても参考になる声をいただけました。
まだ研究開発段階のため、情報開示がほとんどできないのですが、医療・ヘルスケア分野に関する「検査サービス」みたいなものができないかと考えています。実際に、その企業にご協力いただき、構想段階の製品を多くの方に触っていただき、使用感や使いにくい点などの意見を収集し、製品開発のブラッシュアップに繋げています。
普段から研究開発に携わっている私たちには一般的な用語であったり使用方法であっても、一般の人たちには分かりにくかったり、優しくなかったりすることも多い。試作段階の仮説として、そのような反応は想定していたのですが、実際に目の前で使用してもらうことで生の声だったりリアクションだったりを直に確認できたことは大きな収穫だったと思います。
ーーコンソーシアムのネットワークを活用されて、すぐに収穫があったのは凄いですね。
西中さん:
コンソーシアムではSlackでのコミュニケーションが活発なのですが、「こんなことに悩んでいて…」と相談すれば、すぐに反応が来るのが良かったですね。コンソーシアムの事務局の方がとても親身になってくださる点も、大きな特徴だと思います。
先日も、社会実装開発センターで進めている研究テーマについて、事務局に相談させていただいたところ、「東広島市と連携して進めていくのはいかがですか?」とアドバイスをいただき、東広島市役所のご担当の方を紹介いただきました。そして、すぐに「一緒に取り組んでいきましょう!」という話になり、女性職員約50名に対して、私たちが進めている“女性の健康サポートに関するサービス”を体験していただくセミナーを開催することができました。
私たちが開発を進める製品・サービスについて、「1人の女性としてどう思うか?」「自治体の職員として、これを市民の方に広めたいと思うか?」といった観点から、アンケートにも答えてもらったのですが、その回答率がとても高いことにも驚きました。記述式の回答が多いアンケートだったのですが、みなさん親身になって答えてくださってとても嬉しかったです。
ーー事務局への相談から企画の実施まで、時間はかかったのでしょうか?
それが全くかかりませんでした。企画から実施までのスピードの速さは、1ヶ月間ほど。普通に考えて、地方自治体を巻き込んで何かをやっていくには、コネクションもないのが当たり前で、調整に時間も日数もかかってしまうのが普通だと思います。しかし今回は、コンソーシアムからの紹介ということもあり、ダイレクトに関係部署に繋いでいただき、事務局も積極的にサポートしてくださり、とてもスピーディーに進んでいきました。
この展開の速さには、とても驚きました(笑)。おそらくコンソーシアムの事務局側でも普段から自治体の課題を認識していて、私たちが解決したいと考えるテーマと合致している点を知り、スピーディーなマッチングが実現したのだと思います。
今回の件がきっかけで、東広島市とは今後も継続して取り組んでいこうという話になっています。これは、もちろんコンソーシアムを通じてじゃなければ出会えないご縁でした。
リアルとオンラインの併用で、スピーディーな産官学連携を実現。
ーー「ひろしま好きじゃけんコンソーシアム」に参画するメリットは何でしょうか。
岸田さん:
私たちが所属する社会実装開発センターは、短期間でさまざまな検証をしなければいけない組織であり、今回の取り組みのようにスピーディーに産官学で連携ができた点はとても大きな利点だと思っています。特にここ数年はコロナ禍で、商談やミーティングなどがオンラインで済まされることが当たり前になりました。しかし、ひろしま好きじゃけんコンソーシアムは、リアルとオンラインの併用がとても上手にされていて、これが“スピーディーな共創”を生み出す理由なんじゃないかと考えています。
いろんなことをオンラインで済ませることが多くなった世の中ですが、オンラインだけではなかなか関係性をつくるのは難しいんですよね。その点、コンソーシアムではSlackを使用して気軽なコミュニケーションを行いながら、重要な場面ではリアルで会って話を進める機会が多いです。今回私たちがコンソーシアムに参画されている企業や自治体と短期間で連携できたのも、Slackとリアルの併用があったからこそだと思っています。
西中さん:
あと、コンソーシアム事務局の手厚いフォローはとてもありがたかったです。何か困ったことがあってもSlackで相談したら、すぐに返事をいただけるのは非常に心強いですね。広島に拠点がなくても参画できるオープンなコンソーシアムですし、今後はもっといろんな企業が参画することで、今以上にネットワークが活性化されていくと協業の機会も増えますし、嬉しいですね。
岸田さん:
私たちだけでなく、どんな企業であっても、新しいことを一から生み出すには自社だけで完結させるのは難しいんじゃないかと思っています。今後もコンソーシアムに参画されている企業と連携しながらいろんなことに挑戦し、スピード感を持って社会課題の解決に挑んでいければと思います。
『ひろしま好きじゃけんコンソーシアム』では、一緒に盛り上げてくれる会員企業を募集しています!!
産学官金が連携した、中四国地域最大規模の"次世代型DXオープンイノベーションプラットフォーム”で、貴社が抱える課題の解決や、新たな事業を創出してみませんか。
▼お問合せ先
広島大学 ひろしま好きじゃけんコンソーシアム事務局
HP:https://www.sukijyaken.jp/contact
Mail:sukijyaken@ml.hiroshima-u.ac.jp
TEL:070-1542-7123