私たちAMI株式会社(以下、AMI)は、"急激な医療革新の実現"をミッションに掲げ、超聴診器※(心疾患診断アシスト機能付遠隔医療対応聴診器)の研究開発や、遠隔医療サービスの社会実装を目指す研究開発型スタートアップです。Wantedlyでは、皆さんに「AMIってこんな会社なんだ」と知ってもらえるように、イベント登壇や研究開発の取り組みの様子などを発信しています。
こんにちは。事業企画部の杉山です。
2022年4月某日、下甑手打診療所所長の齋藤学先生が、鹿児島本社に来社されました!
甑島のことから、離島医療、遠隔医療の未来のことまで幅広いお話を聞かせてもらい、AMI のメンバー全員胸が熱くなりましたので、こちらで紹介します。
齋藤先生「AMIの描く離島遠隔医療の未来に触れたい!」
今から6年前、代表の小川が下甑手打診療所の瀬戸上先生(Dr.コトー診療所のモデルになった先生)のところに離島医療の勉強に行ったのが、AMIと甑島のキッカケです。齋藤先生が下甑手打診療所に赴任してからもオンラインでの情報交換はしていましたが、コロナ禍で直接会うことなく月日が流れていきました。今回下甑手打診療所の非常勤臨床工学技士でもある石田氏からの紹介もあり、4月某日、AMI鹿児島本社で久しぶりに齋藤先生と対面でお話することになりました。
齋藤先生が勤務する下甑手打診療所は医師3名で下甑島全体をカバーしていますが、甑島での医療にはいくつか課題があります。例えば、専門の医師に相談したい場面で相談できる医師がいないであったり、地理的制約が大きいため集落へ向かうにも時間がかかってしまうなどが挙げられます。
このような課題を解決するために、医療リソースの限られた離島においてICT技術の進化に伴い発展した「遠隔医療」を離島医療に取り入れることはできないか、ということを齋藤先生は考え、AMIの遠隔医療と超聴診器を自身の目で確かめるため、はるばる鹿児島オフィスに足を運ばれました。
医師である齋藤先生は、合同会社ゲネプロとしての顔を持ち、「アントレドクター」と呼ばれています。
合同会社ゲネプロは離島・へき地医療に従事できる医師を育てるプロジェクトに取り組んでいる会社です。世界最先端のオーストラリアのへき地医療プログラムを取り入れた「日本版 離島・へき地プログラム:Rural Generalist Program Japan」を構築・提供し、へき地で戦える医師の育成に奔走されています。
齋藤先生は漫画「Dr.コト―診療所」の主人公のモデルとなった瀬戸上健二郎医師が所長を勤めていた下甑手打診療所の3代目として、2020年4月に着任しました。
齋藤先生が取り組んでいる離島医療とは
甑島の離島医療の現状
(齋藤先生がホワイトボードに甑島の地理や医療状況を解説している様子)
上甑・中甑・下甑の3島合わせて約4,000名の島民に対して、5つの診療所が医療を支えています。その中で、入院施設があるのは上甑の診療所と齋藤先生がいる下甑手打診療所の2箇所のみです。
甑島は平野部が少なく山間地域が大部分を占めており、山を隔てて集落が複数点在しています。住民にとっては通院するにも一苦労なため、医師が片道40分以上の出張診療を定期的に行っています。急変時や往診依頼があると、医師自身が車を走らせて直接家まで駆けつけることもあるようです。
私は甑島のこのような現状を見たときに、限られた医師の人数で島民の診療を全て行うことは、地理的にとても難しいと感じました。また、近くの医師に気軽に相談できるような環境でもないことから、常に現場は「孤軍奮闘」していると思います。
離島医療の課題は、限られた医療資源を如何に有効に活用するか、ということです。ところが、仕事を分担できる医師もいない、相談できる医師もいない、というなかで救急対応など含めて24時間365日医療を支えることは、医師の負担が非常に大きいため、そもそも論として離島医療に身を置こうという医師自体が少なくなってしまう問題に繋がります。
この「孤軍奮闘」の医師を支えるために遠隔医療で私たちが何を提供できるのか。ということを齋藤先生にお話ししました。
齋藤先生とAMIが実現したい遠隔医療の未来
いつでも、どこでも質の高い遠隔医療を
私たちAMIは「超聴診器」の開発の過程で、繊細な心音を壊さずに取得、伝送、出力する技術を磨き、心音を聴くだけでなく、心音を可視化する「聴いて、見て、送る」という遠隔聴診に取り組んできました。また、将来的には様々な診療科の専門医が集まり、24時間、365日診療ができる「クラウド総合病院」構想を立てています。
この構想が実現した暁には、いつでもどこでも医師同士が超聴診器などで取得した患者情報をリアルタイムで共有することで、医療の質が向上すると考えています。
甑島を一つの医療に
齋藤先生は、上甑の医師3名、下甑の医師3名をネットワークで繋ぐオンライン当直を実現したいと考えています。オンラインで診察を行い、対面の診察が必要と判断した場合のみ、その地域の医師が呼び出されるという仕組みができれば、一人一人の医師の負担を軽減できます。また、6人の医師がオンラインで繋がることができれば、当直回数の削減だけでなく当直医と主治医の連携も可能です。
齋藤先生は、是非甑島の遠隔医療の未来に向けて一緒になにかしたい、と熱く語ってくれました。
遠隔医療の未来へ、第一歩を踏み出してみよう
齋藤先生と様々なディスカッションをするうちに、私は甑島のためにぜひとも何か出来ないか、と考えるようになっていました。そこで、少し大胆ではありましたが、齋藤先生に「現地の通信環境や動線確認を含め、現地でトライアルを実施したいです。甑島に行かせてください!」と伝えたところ、是非ともいらしてください、と快諾をもらいました。
今後、AMIの技術を活用することで期待されることは、リモート環境下での出張診療が可能となることです。私たちの遠隔聴診技術を用いれば、各診療所と島内のコミュニティセンター・介護施設などをオンラインで繋いで診療に結び付けることができます。
さらに、遠隔聴診対応ビデオチャットシステムを用いたDtoDの遠隔医療サービスを用いて他のサポート医師を繋ぐことが出来れば、様々な診療科の専門的な知見を診断に役立てることもできます。
おわりに
今回の記事では、齋藤先生とのディスカッションやAMIの取り組みを紹介してきました。さて、論より証拠、事件は現場で起きている、ということで、早速現地へ向かうことになりました。
というわけで、次回は甑島からのデモリポート記事をお届けします。お楽しみに!
※ 超聴診器は医薬品医療機器等未承認のため、販売、授与できません。