手に職を持ち、誰もが知る大手企業で働くこと、これが世間でいう成功ルートに乗るひとつの手法でもあります。
でも、だからこそ未知の世界に挑戦するおもしろさに気づかせてくれるのが、山田さんのキャリアだ。一級建築士である山田さんが、なぜ大手企業ではない、地方にある中小企業での挑戦を選んだのか。そこには、静かに燃える信念がありました。
山田 将州 / 一級建築士
中学卒業後、高専に入学。5年間建築を学ぶ。新卒でゼネコン大手に入社。その後、ビルなどの大規模建築ではなく、住宅の仕事を志し、川崎重工の子会社に就職。リフォームを主に行い、新築の設計・工事管理まで、現場を毎年何十件も担務。その後、34歳の時に一条工務店に転職。10年弱で300棟の設計を行う。より設計や内装において木材にこだわりたいと考え、現在の会社に共感し転職。
建築業界のあらゆる仕事を経験。一級建築士の資格を得て見えた、自分がやりたいこと。
ーー昔から建築家を目指していたのでしょうか?山田さんのキャリアを簡単に教えてください。
中学を卒業後、高専に通い5年間建築の勉強をしていました。元はといえば、子どもの頃、実家を改修している様子を母親とよく見に行っていたので、その影響が大きいですね。高専を卒業してから、大手ゼネコン会社でマンションの工事管理を担当していました。その後、川崎重工の小会社で住宅関連の現場監督を行い、34歳で一条工務店にて10年弱で300棟の設計を経験し今に至ります。
ーー転職を決めたきっかけなどはあったのでしょうか。
大手ゼネコン会社では、実際に住人と話すことがなく、段取りがメインだったので、モノづくり感が無かったんです。その点に違和感を感じはじめて、住宅関連の現場監督を行いました。2社目では、ゼロからお客様と話ながら現場の寸法や作りを考えていくため、自分の提案力も身に付きましたね。ちょうど仕事の関係もあり、一級建築士の資格を独学で取得しました。
ーー2社目のキャリアが10年以上ということで、今に続く学びも多そうです。
年間60~80件、大小規模問わず網戸の張替えから新築関連の仕事まで幅広く数多く施工していました。携わる相手もいわゆるエンドユーザーだけでなく、下請け業者さんや職人さん、現場監督の仕事も行っていたため、幅広い業種・立場の方々にお世話になりました。自分の中では、この経験が大きな財産になっています。
ーーその後、一条工務店に転職された理由を教えてください。
実は2社目の時、仕事で1度競合したことがあったんです。その際に、敵を知らんといかんなということで会社を調べた所、建てている建物や考え方が、とても良いなと思ったのがそもそものきっかけでした。柱や梁という、いわゆる構造の材料に無垢材を活用していましたし、値引きも一切しないスタイル。耐震性能や耐久性に定評があったメーカーで、会社としてのスタンスと技術に惚れました。
ーー300棟という膨大な数の住宅設計ですが、もっとも大切にしていたことや考え方などはあるのでしょうか。
そうですね、やっぱり構造が頑丈な家を作ることですかね。衣食住の住は、住んでいる人の命と財産を守ることだと思っています。どんなにおしゃれでも地震で潰れたら意味がないので。そこだけはぶれたくないですね。あとは、相手の実現したいことと実現可能性の折り合いを大切にしていました。必ず希望ばかり膨らむので、期待値を下げずにお客様をいかに納得させるか、といった点です。
ーー住宅のこととなると説得するにも大変そうです。
お客様の要望で、例えばAのアイディアとBのアイディア、どちらも実現したいと言われても、どちらか選ばないといけない場合があります。その時には、メリットやデメリットをしっかりと説明しながら、丁度良いバランスを取れるように、さらに楽しく進められるかどうかを心がけていました。
山田さんがこれまでに設計してきたお家の一部
ーー本当の意味で、お客様ファーストですね。
実際、引き渡しから2か月後くらいにお客様のところへお伺いすることが多いのですが、「山田さんが言っとった通りでした!」と言っていただくことがうれしかったです。自分が提案した内容をお客様の方が覚えてくれている。提案がカタチになって、お客様に喜んでいただける喜びを知りました。
現場にも出る、一級建築士。新たなモノづくりのワクワク。
ーー 一級建築士の資格取得、これまでの豊富な経験を持っていながら、フォレスト・ドアグループに転職した理由を教えてください。
これまでの会社だと、ある程度の条件や制約の中で設計をする必要があったことがひとつ大きな理由としてありました。技術的には全然できる構造でも、社内ルール上出来ないことも多かったんです。そこから、より自由度の高い住宅設計ができる転職先を探していました。
フォレスト・ドアグループを選んだ理由は、自由度の高い設計ができてなおかつ、「地産地消 / 森林の6次産業化」というコンセプトがはっきりしている点が非常に魅力的でした。正直、なんでもやります!といった会社はたくさんあり、何を大切にしているのか?という観点を忘れてしまいます。そのような提案の幅の広さやしっかりとした会社としてのスタンスが入社理由となります。
ーー現在の業務内容を教えてください。設計だけでなく、現場にも出られているんですよね。
そうですね。宿泊施設の建設を進めている大きなプロジェクトの中に、サウナの設計もあるのですが、それを担当しながら様々な住宅設計の仕事を担務しています。ただ、営業から入ることがあるため、いろんな仕事を設計の視点から、様々な部署に波及できたらいいなと思って仕事をしていますね。これまでとは違い、設計~現場など一連の流れを担務しています。営業さんがお客様との商談の時点で提案するのであれば図面を書いたり同席したり、現場で人手が足りない様であれば現場に足を運んでいます。
これまでフォレスト・ドアグループが手掛けてきたものの一部
ーー多岐に渡る業務があって、おもしろそうです。それに加え、サウナ設計も。
現在はサウナ設計にあたって外部デザイナーと連携、設計を進めています。必要であれば法律を調べる業務も行ったりしていますね。大企業で働いていたときと比べて、中小企業ならではの様々な業務を自分で実施するといった仕事もおもしろいですね。今までは住宅設計しかやっていなかったので、全く実践したことのない仕事ができることは、すごく新鮮です。他にはログハウスの設計もさせていただいているのですが、これもまた未経験のことなので非常におもしろみを感じています。
ーー地方で働くことの面白みがあれば教えてください。
人との繋がりの深さには驚きました。お客様同士、業者さん同士の繋がりだとか。それが煩わしいなと思うところも人によってはあるとは思うんですけれども、私はそのようなあたたかさが好きなので良い影響となっています。
ーー加えて、フォレスト・ドアグループで働くやりがいがあれば教えてください。
やはり材木を活用することによる設計の幅広さはおもしろいですね。今まで体験したことのない仕事へ挑戦出来るワクワク感も常にあります。さらに、自分の仕事が里山の循環(生産から消費までの循環)に繋がっている、森林問題に貢献していることが実感できることがうれしいです。今後は森林の6次産業化を実現、建築士として良い材木で建築ができるおもしろさをより実感したいです。