日本年金機構という、誰もが認める公的な組織での安定したキャリア。そこで9年間を歩んできた前田さんが選んだ次のステージは、名古屋を拠点に福祉事業を展開するベンチャー企業「IMOM(イムオム)」でした。
「この先もずっと、決められたことを粛々と続けていくことが、自分にとって本当にいいことなのだろうか」
そんな疑問を抱えながらも、なかなか動き出せずにいたある日、前田さんは体調を崩して働けなくなります。皮肉にも、それが自分の人生を見つめ直す時間になりました。
入社からわずか9ヶ月で「イムオム長久手」の拠点長に抜擢され、今はエリア長として拠点の枠を超えた動きを担う前田さん。彼が手に入れたのは、単なる役職ではなく、「自分で考え、工夫し、現場を動かしていく」という日々の確かな実感でした。
「ベンチャーは若者の場所」というイメージを抱きつつも、30代で新たな挑戦を始めた前田さんの歩みを紐解きます。
9年間の「安泰」の中で、消えていった自分の意見
── まずは、前職での歩みからお聞かせください。日本年金機構での9年間、どのような想いで働かれていたのでしょうか。
新卒で入社し、年金事務所で約9年間勤めました。国民年金の窓口業務からセミナーの運営、そして徴収業務まで、さまざまな部署を約3年ごとのローテーションで経験しました。元々大学が福祉系の学部学科で、広く社会を支える公的制度に興味があって入ったんです。
── 「公的機関の職員」として、当時は将来のキャリアをどうイメージしていましたか?
正直なところ、あまり具体的な「こうなりたい」というキャリア像を持っていたわけではありませんでした。目の前の業務をしっかりこなしていけば、チーフになり、課長になり……と、順位を追ってステップアップしていく道筋が、ある種決められたレールとして存在する環境でしたから。
でも、日々仕事に向き合う中で、ふと感じることがあったんです。年金機構という大きな組織では、すべての業務が法律やマニュアルで厳格に決まっています。求められるのは「決められたことを粛々と、正確に遂行すること。」自分の意見や考えを反映させる余地は、どうしても少ない環境でした。
── 「自分で工夫して変えていく」という経験は、やはり難しかったのでしょうか。
そうですね。何かを変えようと思ったら決裁書を作り、課長、所長と何段階もの承認を得る必要があります。しかも、その末に変わるのは、例えば送付する一斉通知の封筒の色を変えるといった、ごくわずかな改善に留まることがほとんどでした。
公的機関として正確性は最優先ですし、もちろんやりがいはありますが、この先10年、20年と、決められたことを粛々とやり続けていくのが自分にとってどうなのかな、と考えるようになったんです。
立ち止まらざるを得なかった日々
── そんな小さな疑問が、いつどんなかたちで前田さんの中で決定的なものに変わったのでしょうか。
決定的だったのは、一度体調を崩して休んだことです。「疑問はあるけれど、とりあえず今のまま続けよう」と自分に言い聞かせながら働いていたんですが、ある時それが限界を迎えて、働くこと自体ができなくなってしまったんです。
── その期間、どのように過ごされていたのですか。
強制的に足を止められた、という感覚でした。それまでは目の前の業務に追われて考える余裕もなかったんですが、休んでいる間は嫌でも自分の人生と向き合う時間になりました。
「また同じ場所に戻って、同じように頑張っていくのか。それとも、場所を変えてみるのか」。その二択を、ずっと自分に問い続けていましたね。
正直、日によって気持ちは全然違いました。「いけるだろう」と前向きに思える日もあれば、「やっぱりちょっと難しいかもしれない」と弱気になる日もある。そのくらい、揺れながら過ごした時間でした。
── 安定した環境を離れることに、不安はなかったですか。
もちろんありました。公的機関という後ろ盾がなくなる不安、次の場所でやっていけるのかという不安。ただ、休んでいる間にその不安以上に「何か他のこともやってみたい」という気持ちが少しずつ強くなっていったんです。休養がなければ、たぶん今でも「疑問を抱えたまま、なんとなく続ける」を選んでいたと思います。
数ある福祉ベンチャーの中で、なぜ「IMOM」だったのか
── 福祉に関わりたいという思いがあったにしても、福祉ベンチャーは他にも選択肢があったと思います。その中でIMOMに決めた理由を教えてください。
一番大きかったのは、面接のときの体験です。1次面接のあと、実際に現場でコワーカーさん(利用者さん)が働く様子を見学させてもらったんですが、そこで皆さんが本当に真剣に仕事に取り組んでいる姿を目にしたんです。
「福祉施設だから優しく見守る」というようなイメージとは違う、事業としてしっかり成果に向き合っている現場だと感じました。
── 他の福祉ベンチャーと比較して、IMOM特有だと感じた違いはありますか。
マイルストーンの中に「上場」を掲げていることです。そこから逆算して「じゃあ今何をすべきか」を社内で常に考え、変化し続けている。
数字が伸び悩んだときも、感覚論で片付けずに「なぜ伸びていないのか」を根拠を持って深掘りする文化があります。福祉の領域は、どうしても数字よりも情緒が優先されがちな業界だと思うんですが、IMOMはそこに事業としての強さを持ち込もうとしている。そのバランス感覚に惹かれました。
── 理念面ではいかがでしたか。
会長や社長が語る「誰もが生きやすい、寛容な社会をつくる」という言葉にも共感しました。ただ、決め手として大きかったのは、その理念が掛け声で終わらず、上場という具体的な目標と結びついて言語化されていたことです。
「寛容な社会を目指す」だけなら他の会社でも言えると思うんですが、それを実現するために事業としてどう成長するかまでセットで語られていたのが、IMOMならではだと感じました。
入社9ヶ月での拠点長抜擢、そして8月からはエリア長へ
── 実際に入社してみて、IMOMらしいなと感じる部分はどこですか?
意思決定と変化のスピードが早いのはもちろんですが、それが単なる「勢い」ではなく、数字や根拠に基づいて動いている点が印象的です。
現場で「こうしようかな」と思ったことが、数日後には試しに展開されている。ただそれも、なんとなくではなく、面接のときに感じた「逆算して考える」文化がベースにあるからこそのスピードだと感じています。
経営陣との距離感も驚きでした。前職では役員や理事と話す機会なんてまずありませんでしたが、今は社長の方針や、なぜその舵取りをしたのかという背景を、社長自身の言葉で直接聞くことができます。方針の裏にある「熱量」と、それを支える数字の話を同時に聞けるのは、すごく新鮮です。
── 拠点長になってから、ご自身で決断することも増えましたか?
そうですね。拠点長時代は、拠点の運営だけでなく、LINEの仕事など、さまざまな業務に携わらせてもらっていました。前職は「マニュアル通り」が基本でしたが、拠点内の体制をどうするか、コワーカーさんへの支援をどう進めるか、自分で決めるべき立場になったんです。
もちろん独断ではなく、エリアマネージャーの方とフラットに話し合い、自分の意見を聞いてもらえる環境がありました。「こうしたい」という提案がちゃんと受け止められて形になっていく。そのプロセスは、前職にはなかった面白さでしたね。
そして2026年8月1日付で、拠点長からエリア長に昇格しました。1つの拠点の運営を任される立場から、複数の拠点やエリア全体を見て動く立場に変わり、決断の範囲もさらに広がったと感じています。
前職での「説明する力」が、支援の現場で生きる
── 日本年金機構での経験が、今の仕事に活きていると感じることはありますか?
徴収業務などで培った「相手と対話する力」は、今の支援の現場で役に立っていると思います。
徴収の仕事では、未納の方に対して法律を振りかざすだけでは納得してもらえません。なぜ納付が必要なのか、制度の背景を説明しつつ、相手の事情を汲み取る。この「相手の状況に合わせて言葉を砕いて説明し、理解を得る」という経験は、今のコワーカーさんへの支援と全く同じなんです。
── 具体的には、どのような工夫をされているのでしょうか。
長久手拠点では、情報を「見える化」することを大切にしています。例えば、新しい施設外のお仕事を紹介する時、口頭で「ここに行ってください」と言うだけでは、不安を感じて足が止まってしまう方も多いんです。
そこで、現地の写真を撮ってきて「こういう場所ですよ」と見てもらう。すると「これなら行けそう」と安心し、一歩踏み出せたりする。また、利用回数をカレンダーに書き込んで「これだけ来ているから、次はこのステップに挑戦してみよう」と視覚的に伝える。
難しい用語を使わずに「相手のわかる言葉」で伝える姿勢は、前職で培ったものだと思います。
エリア長として、これからつくりたい組織
── 現在はエリア長として、拠点を超えた視点で動かれています。どんな組織をつくっていきたいと考えていますか。
IMOMは変化のスピードが速い会社です。それ自体はすごく面白いことなんですが、変化が多いと不安に感じる職員やコワーカーさんもいると思うんです。だからこそ、変化がある中でも、それを前向きに捉えて安心して働ける組織にしたいと思っています。
もう一つは、挑戦を応援できる組織であること。「自分にも何かできる」と心から思える環境をつくりたいんです。これは、自分自身が転職前に感じていた「決められたことしかできない」という感覚の裏返しでもあります。自分が味わった手応えを、拠点のメンバーやコワーカーさんにも感じてもらいたいなと。
長久手拠点は隣にカフェがあるので、飲食事業部との連携ももっと強めていきたいです。コワーカーさんの仕事と飲食の仕事をダイレクトに繋げることで、「自分が作ったものが誰かの役に立っている」という実感をより強く持ってもらえる仕組みを作りたいと考えています。
エリア長になった今だからこそ、拠点のことだけじゃなく、エリア全体、会社全体のことまで考えて発信していきたい。まだ漠然としていますが、自分の拠点の成功事例を横に広げていけるような動きをしていきたいです。
一歩踏み出せないでいる方へ
── 最後に、かつての前田さんのように「安定」と「挑戦」の間で迷っている方へメッセージをお願いします。
「意外と、何とかなりますよ」ということをお伝えしたいです。
私自身、転職を決めた時は不安もありましたし、自分に何ができるか悩むこともありました。体調を崩して初めて立ち止まれた、というくらい、なかなか自分から動けなかったタイプです。でも、勇気を出して飛び込んでみれば、IMOMには助けてくれる仲間がたくさんいます。
IMOMは、変化の速さと、それを裏付ける数字への向き合い方の両方が強い組織です。自分の考えを形にしたい人、変化を楽しみたい人には、すごく面白い環境だと思います。
── ベンチャーに入って、よかったなと思いますか?
はい、思います。自分の意見が言えて、時には思ってもみなかったような仕事に関われる。毎日が試行錯誤の連続ですが、それがすごく面白いなと感じています。
編集後記:IMOMで働くことに興味を持ってくださった方へ
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
IMOMでは、スキルや経験よりも「誰もが生きやすい、寛容な社会をつくる」という想いを大切にしています。もし、今回の記事を読んで「自分も等身大で働いてみたい」と感じていただけたなら、それは私たちが最も求めている出会いです。
少しでも心が動いたなら、まずは一度お話ししませんか。