F&Pジャパン(株) 代表による社内報を公開する「オープン朝礼」記事です。
この記事は、2023年4月にF&Pジャパン社内向けに発信された内容をもとに編集を加えて公開しています。
変化よりも、変数を捉える
「コロナのおかげで商売は上がったりだよ」
「インバウンドが戻って、ようやくこの辺も賑わってきたな」
こんな日常的なやりとりにも表れるように、
「景気」というのは「自分ではコントロールすることができない」
「その結果に従うしかない」ものとして扱われます。
自ら事業を起こすような起業家は多分みんな、
「景気なんて、俺が作ってやるよ」くらいに思って日々の事業をやっていると思うんですが、
まあそんな気概はさておき、世の中全体の大きな流れにはつまるところ抗うことは難しく、その風をうまく読む人が結局商売のうまい人だったりします。
かつての大阪商人の間のお決まりのやりとりで、
「儲かりまっか?」「ぼちぼちでんなあ」
というのがありますが、
この「儲かりまっか?」はそこまで深い意味はなくて
「How are you?」 みたいなもんで、
「ぼちぼちでんな」はその返しで「Doing well.」みたいなもんでしょう。
それでもコロナ禍という大厄災があった3年間は、
「儲かりまっか?」と言ったら、ともすれば相手の琴線に触れてしまいかねない、
けっこう笑えないリスキーな挨拶だったように思います。
さて、ではその「世の中の無視できない潮流」の正体はなんなのかというのを説明するのに、ちょっと巷のフレームワークを借りてくるとすると、有名なところで「PEST」というのがありますね。
P (Political): 政治的要因
E (Economic): 経済的要因
S (Social): 社会的要因
T (Technological): 技術的要因
例えば・・・
政治的要因として、
法改正や増税によって市場ルールが変わると事業に影響します。
経済的要因として、
為替の変動、物価の高騰によって仕入コストにも影響が出ます。
社会的要因として、
少子高齢化、環境世論によって需要構造やトレンドは変化します。
技術的要因として、
AI, ロボティクス, DX… 技術の進歩によって競争の要因は目まぐるしく変わります。
こういった、いわゆる「外部影響要因」というものは自分ではコントロールができないので、変化が起きた時のリスク/チャンスを読んで対応するしかありません。
しかし僕はこれだけでは「ビジネスに影響する要因」の説明としては足りないと思っていて、この10年間、日々店舗を営業する中で思うのは、
もっともっとミクロな範囲で身近に目に見えて強い影響力を持っている要素があるはずだということ。
たとえば、雨が降ってしまうと売上が約半分になる現象。
年間で見たときの「季節変動」とか、
週間で見たときの「気温変動」とか、
天候・気温・日照時間ほど、あからさまに売上に影響するものはない。
それから、小売・サービス・外食の業界で、売上予測やシフト作成は経験や勘に頼っている場合がほとんどじゃないでしょうか。
僕が高校生の時アルバイトをしていたファミレスでは、カレンダーの六曜を見て近くのお寺の法要需要を予想したり、周辺の小学校の年間カレンダーをゲットして運動会や参観日の情報を掴んだりして、繁忙日を予測して発注コントロールやシフトを組んでいました。
つまり、ミクロな地域に密着する小売・サービス・飲食業において最も影響力の大きい要素、それはそのエリアの「人口の増減」ではないかと思います。
雨が降ったら道を歩く人口が減る
イベントがあったら人が流れてくる
市場自体が、こういう外部環境を受けて大きくなったり小さくなったりしているわけです。
このように、PESTみたいなマクロな外部環境の変化は、対策をしたとしてもデータがないので結果を予測することはできませんが、
「人口の増減」みたいなミクロな外部環境は、データに基づいて予測を立てることができます。
これは「変化」ではなく、「変数」と捉えるべきです。
たとえばスムージーだったら、
日中気温が20度になったところから需要が大きくなり始め、
28度になった時に最大化します。
10度を切ると、HOTの注文率が上がります。
青山店前の交通量は、雨が降った時は約2分の1になり、
人口が最大になるのは、毎年5月と11月のファーマーズマーケットのパン祭りの日です。
ちなみに、この分野の先進的な取り組みの事例としては、セブンイレブンのAI発注支援システムなどがあります。
AIが 需要予測・自動発注・在庫最適化 をまとめてやってくれるので、
フランチャイズ店舗の作業効率化やロス対策に役立っています。
太古の時代から豊作を願う農民は雨が降るようにお祈りをしてきましたが、
何千年も経った現代でも、繁盛を願って雨が降らないよう神頼みをしているのが僕らです。
雨を降らさないようすることはできませんが、
雨が降るときにその変数を管理して、需要予測を立てて内部的な対策を打つことはできます。
一見すると従うしかなさそうな外部影響要因ですが、
変数を読んで必要な打ち手を選択することが、せめても抗うことになるのではないでしょうか。
あと、さらに、気温が下がっても人口が減っても売上が下がらないサービスもあると思っていて、その話はまた今度お話ししたいと思います💡
(この記事は、2023年4月にF&Pジャパン社内向けに発信された内容をもとに編集を加えて公開しています。)