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段ボール9000個。広大な物流センターの荷物配置の最適化に携わる、東北大学工学部の4年生。

東北大学 工学部に在籍しながら、シグマアイで量子アニーリング技術を活用した、物流倉庫の最適化プロジェクトに携わっている鹿内さん。食品包装資材専門商社の大手企業「高速」様との協業では、3600平方メートル、9000個の段ボール箱が積まれる、広大な物流センターの配置の最適化に取り組んでいます。自身の仕事内容や、このプロジェクトで学んだこと、今後の展望を語ってくれました。

鹿内 怜央(しかない・れお)

シグマアイ:開発担当

東北大学 工学部 電気情報物理工学科 4年 在籍

研究室の先輩がシグマアイで働いていて、興味を持った

-まずは、シグマアイにアルバイトとして入社した経緯を教えてください。

大学3年生に進級したくらいから、量子アニーリングに興味を持ちはじめました。量子アニーリングの自主研究グループ「T-QARD」にジョインして、「この道を突き詰めてみよう」と思うように。そして、田中・大関研究室に入りました。

その後、シグマアイに興味を持ったのは、「T-QARD」の先輩で、同じ研究室の博士課程の丸山さんが、シグマアイで正社員として働いていたからです。「量子アニーリングの基礎研究を社会に実装できるよ」と話していたので、シグマアイという会社が、何となく気になっていました。そして、大関さんが募集を掛けていているのを聞いて、働いてみようと思いました。

物流センターのバーコードの出力時間を、1時間から5分に短縮

-2022年4月にジョインして、どのような仕事を担当しましたか?

すぐに食品包装資材専門商社の大手企業、高速様のプロジェクトにアサインされました。このプロジェクトは大関さんが主導で立ち上げました。千葉県柏市の広大な物流センターにおいて、量子アニーリング技術で荷物の配置を最適化するものです。当時、既にプロジェクトはスタートしていて、大関さんが開発したモデルで、最適化を実装するフェーズに入っていました。私が最初に担当した仕事は、モノの配置を指示する「作業票」を、バーコードで発行するためのプログラム開発でした。

こちらが実際の作業票です。1つの商品に対して、商品IDと移動先の2つのバーコードが必要になります。商品は3000種類に上り、このバーコードを6000通り出力しなければなりません。そして印刷して現場に配布して、バーコードリーダーで読み取りながら、指示通りに荷物を置いていただく形になります。

この作業票なのですが、見ての通りExcelで作られています。自動的にバーコードが出力されるように、当初はExcel上のコードで組んでいました。ただ、6000個分を出力するのは、かなりの負荷が掛かってしまいます。Excelの挙動が重くなって、1時間くらいの時間を要していたんですよ。フリーズすることもあったので、このままじゃダメだと。私がPythonでコードを書き直して、5分くらいで出力できるようになりました。

最適化に置いては、荷物の形状や重さよりも、「ペア」という概念を優先するべきだった

-1時間が5分になるとは、かなり改善されましたね。

改善されたのは良かったですが、難しい面もありました。私がプロジェクトにジョインして、初回の倉庫内の配置換えを行ったのですが、完璧には最適化を実現できませんでした。

私たちは机上の商品しか見ておらず、実際の倉庫事情を気にしていなかったのです。実は、商品毎に「シリーズ」があり、同じシリーズの商品は同じ場所に置いた方が都合が良いことが分かりました。また、スーパーの食品の包装を思い浮かべると分かるのですが、高速様の商品は「本体」と「蓋」で成り立っていて、それぞれを別の場所に置くことがNGなのです 。最適化において、形状や重さよりも、「シリーズ」や「ペア」という概念を優先するべきだったのです。 それに気づいて、大関さんは最適化モデルを組み直し、私はどの商品が同じシリーズでペアなのかを判別するプログラムを新たに作りました。

ただ、この作業が大変でした。どの商品がペアなのか、商品名を見るだけでは判別がつかないのです。高速様の担当者の方に、出力の見本を何度も提出してチェックしてもらいました。試行錯誤を重ねながら、何とか現場で使えるツールに仕上がったのです。先程の作業票にある3つの商品は同じシリーズで、商品名に「ミ」「フタ」とあるものがそれぞれペアになっています。最適化によって、バラバラの「元棚番」から同じ「新棚番」へ移動することが分かります。これらの修正により、無事、2回目の実装実験に移ることができました。現在は、倉庫内の配置を換えている最中でして、歩数計を活用しながら、倉庫での業務の最適化を検証しています。

クライアントの話を真摯に聞くことが、社会への貢献の第一歩

-こちらの高速様のプロジェクトは、どのようなメンバーで進めていますか?

大関さん、営業の藤倉さん、私の3名で進めています。人数は少ないですが、プロジェクトは着々と前に進んでいます。大関さんがコアな最適化モデルをプログラミングして、藤倉さんがお客様とのやりとりを担当してくださり、私は現場への実装をエンジニアとして担う。役割が明確化されているので、学生の自分も仕事はしやすいです。お二人とは年齢は離れていますが、いつもフラットな目線で接してくれています。私が動けば動くほど褒めてくれるので(笑)、躊躇せずに提案ができますね。

-この仕事を通じて、学んだことはありますか?

研究室で勉強に打ち込んでいるだけでは、社会の役に立つ実感が得ることは難しいです。シグマアイの高速様とのプロジェクトでは、社会への貢献を肌で感じることができています。先日、倉庫の作業員さんたちが作業票を携えながら、配置換えを行っている写真を藤倉さんが送ってくれました。それを見て、自分が手助けをしている実感を味わうことができて、嬉しかったですね。


▲鹿内さんが作成した、作業票が使われている現場の風景

相手の目線に合わせることの大切さも、学ぶことができました。作業票のプログラミングを行う中で、色々なことを高速様に確認しました。商品のコードは何を差しているのか、どのような形で出力すれば、現場の皆さんが使いやすいのか。自分の目線だけで開発していたのでは役に立つものは完成しない。相手の話を聞きながら、できる限り現場の目線に合わせることで、初めて貢献することができるんですよね。大学での研究は、深く突き詰めるあまり、周りが見えなくなることもあります。この仕事を通じて、研究者としての視野も広がりましたね。

シグマアイでの仕事も、大学での研究も、根っ子は変わらない

-今後の進路やキャリアは、どのように考えていますか?

2023年4月から大学院に進学して、そのまま同じ研究室に所属します。その先の博士後期課程に進むかどうか、正直、悩んでいますね。博士前期課程(修士課程)で研究に打ち込む中で、アカデミックな世界が自分に合っているのか、判断したいと思っています。

仮に博士課程に進学する場合は、先輩の丸山さんがシグマアイで正社員として働きながら、大学での研究活動も続けているので、そういうキャリアにも魅力を感じていますね。シグマアイでの仕事も、大学での研究も、根っ子の部分では変わらないと思っています。世の中で誰もやったことがないことを、形にしているわけですから。ビジネスと研究の双方に対して真剣に取り組むことで、それらが重なり合うところにもっと面白いことがあるかもしれない。それが何かを知りたい、という想いが芽生えはじめています。

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