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SDGsは未来を変えるか(後半)

シナモンAI取締役会長にして、鎌倉市の参与も務めておられる加治慶光さんに伺う、「SDGsは未来を変えるか」の後半です。前半では、 ESGやSRI(Socially Responsible Investment)、サーキュラー・エコノミーと、様々な言葉で語られていた未来像が、SDGs というゴールにまとまっていった経緯や日本企業のマインドセットについて語っていただきました。後半は、バックキャスティングとフォアキャスティングの間を埋めるイノベーションについて、どのような特性を持った人が求められるのかといった具体論を伺いました。

<イノベーションは技術革新ではない>

竹内:温暖化の世界などでは、イノベーションの必要性を言うと、「イノベーションに逃げるな」と言われたりするんですよ。

加治:それはどういう意味で言われているのでしょうか?

竹内:イノベーションと言うのを、すごく狭く考えているんじゃないかと思うんです。「イノベーション」を、今人類が見たことも聞いたこともない何かを生み出すという意味でとらえたら、「あったらいいな」のドラえもん頼みのように聞こえるのかもしれません。でもジョゼフ・シュンペーターが挙げるイノベーションの具体的な内容には、新しい生産方法や新しい組織といったことも含まれています。技術革新という日本語訳が間違っているのであって、経営革新と考えるべきという指摘もありますが、U3イノベーションズでも、足元でできるイノベーションを積み重ねていきたいと思っています。

加治:イノベーションという言葉を技術革新と訳したのは1956年の経済白書だったと言われています。わが国の高度成長の幕開けではあったわけで、日本の企業はこれまで技術革新を追求するというイノベーションを起こすことに成功し、高度成長期を実現してきたのだと思います。でも仰る通り、イノベーションの本来の意味は、新結合、新機軸、新しい切り口です。これからは、出会う知と知の距離が離れていなければならない、離れたところの知と知を結び付けるからこそ、大きな変化を手に入れることができるわけです。これがいま、日本企業がダイバーシティを必要としていることの背景だと言えるでしょう。

クリステンセンがまとめた、イノベーティブなアイディアを生み出せる人の特徴というのが面白いんですよ。こういう行動特性を持った人が、Posse(ポッセ)と呼ばれる信頼できる同志で議論したり、ビックアイディアクラウドと呼ばれる大きな輪でアイディアの種を見つけ出したりすることで、イノベーションが生まれるとされています。我々なども、Posseの一つかもしれませんよね。

竹内:ありがとうございます(笑)。イノベーションの必要性は誰もが認識しているところですし、気候変動について言えばパリ協定にも認められているくらいです。イノベーションに逃げずに取り組む仲間を増やしたいと思っています。エネルギーの世界はスタートアップの参画が少ないんですよ。

加治:それは何とかしないと。エネルギー分野の変革が無ければSociety5.0は実現しませんから、ぜひこの業界を変えるような強力なスタートアップがたくさん出てきてほしいですね。エネルギ―分野において、国の根幹をになう監督省庁やインフラを扱う重厚長大企業とスタートアップという距離のある知と知を結び付けられる唯一無二の存在として御社の果たす役割は大変重要だと思います。。

竹内:はい、頑張ります(笑)。加治さんはビジネスの最前線でのSDGsを考えておられたお立場から、鎌倉市の参与になり、地方自治体の視点からSDGsと関わろうとしておられますよね。私たちも、2050年のエネルギーを考える中で、「地域」というのが大きなキーワードだと思っているのですが、なぜ地域社会に注目されたのでしょうか。

加治:SDGsが「こんな世の中にすべき」を具体的に描いた目標群だとすると、これを社会の姿として描いたのがSociety5.0。それを街の姿にブレークダウンしたのがスマートシティですよね。実現すべき瞬間になると、現場で市民の皆さんとの協業などを動かしていく地方自治体が果たすべき役割がどんどん大きくなるというのは世界的な共通認識だと思います。政府がマクロな事象、例えば人口減少や気候変動問題などを考えて長期的総合的なビジョンを掲げ政策や制度を整える、地域がそれを具体的に実現していく、というそれぞれの役割分担と連携を実現することができれば、日本はまだまだ元気になれると思うんです。

竹内:私は日本人が古来から持つ八百万の神を敬う姿勢や、他の宗教にも寛容な精神性が、SDGsの実現に必ずや力となると思っています。課題先進国ともいわれますが、課題先進国はソリューション先進国にもなり得るわけです。後に諸外国から「日本モデル」と言われるソリューションを、日本の地方から作り上げていきたいですね。

加治:そうですね。2050年の世界をどうすべきかというと、議論が拡散してしまいがちですが、自分たちの住むコミュニティをどうしたいかという視点で議論すればソリューションが生まれてきます。例えば大阪・関西万博が2025年に開催される予定です。1970年に開催された前回の万博では「太陽の塔」という中心がありましたが、今回はそういった中心が無いとうかががっています。分散型の都市設計が意識されています。大阪・関西万博は自治体と経済産業省がタグを組んで進めていますが、SDGsやスマートシティ実現のレベルで地方自治体に委ねられつつあるのだと思います。立場は関係なく、こうした動きをこれからもできることで貢献できたらと考えています。

竹内:エネルギーインフラのあり方などもぜひ議論させてください。今日はありがとうございました。

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