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全天球カメラ(360度カメラ)のある日常を作る。ベクノス新プロダクト「IQUI」と「IQUISPIN」の技術的挑戦

9月16日、ベクノスの新プロダクト「ペン型全天球カメラ」(IQUI)のベールがついに剥がされた。代表の生方を中心に、RICOH時代から開発され続けてきた全天球カメラ。その技術の蓄積がもたらした、IQUIと全天球写真用スマホアプリ「IQUISPIN」が作り出す全く新しい体験とそれを可能にした技術に迫る。

写ルンですのように誰もが手に取り、TikTokのように誰もが遊べ、記憶に彩りを与えるプロダクト

“写ルンです×TikTok×彩り”。

開発本部長の寺尾は「ペン型全天球カメラ」の特徴をそう表現する。写ルンですのように誰でも使えるハードウェアとTikTokのように誰でも楽しめるソフトウェアを兼ね備え、画像のクオリティによって記憶を彩る存在を目指し、開発を進めてきた。

寺尾プロダクトを作る身としては、一人でも多くの人の手に渡って欲しい思いがあります。代表の生方も「もっとお客さんの裾野を広げたい」と話していたので、ようやくその第一歩を踏み出せたかな、と。

RICOH THETAの初期から全天球カメラの開発に携わってきた彼曰く、今回のペン型のようなスリムなデザインは、全天球カメラ開発当初からの悲願だった。

寺尾THETAを作り始める前からスリムな全天球カメラはずっと作りたいと生方と話していて、ようやく技術的にそれが可能になったんです。

(開発本部長の寺尾)

ハード面だけでなく、全天球カメラをもっと多くの人が楽しめるように、スマホアプリ「IQUISPIN」の開発にも力を入れた。このソフトウェアを使うと、IQUIや他の全天球カメラで撮影した全天球写真はタップ一つで画像の加工ができる。

寺尾全天球カメラで撮った写真には、まだまだ遊べる余白がある。画像加工の敷居を下げられれば、もっと多くの人が楽しんで使えると思い、ソフトウェア開発にもかなり力を入れましたね。

彼の言うハードとソフト、双方のこだわりについて、もう少し詳しく見てみよう。

「一眼レフの設計者が見たら”馬鹿じゃないの”って言われると思います(笑)」

ハードウェア面の開発をリードしたのは、プロダクト開発部長の小崎だ。一番の技術的チャレンジは直径19mmのレンズ窓の中に4眼のレンズを収めること。デザインの美しさを保つために、過去に採用していた魚眼型のレンズではなく、ゼロイチで新しい光学系を開発した。

小崎正直、最初は無理だと思いましたね。今のレイアウトに落とし込むまでに三ヶ月はかかりました。何パターン作ったかはもうわかりません。販売後に分解する方も出てくると思いますが、とんでもないことをやっているので、驚くと思いますよ。多分、一眼レフなどのカメラの設計者が見たら「馬鹿じゃないの」って言うと思います(笑)

(プロダクト開発部長の小崎)

小崎は技術的な難易度の高さを、5坪の土地に4LDKをつくるようなものだとたとえる。

ハードウェア同様、ソフトウェアでも技術的チャレンジがあった。ソフトウェア開発をリードしたのは開発マネージャーの大杉、設樂だ。このソフトウェアは、IQUIに限らず、あらゆる全天球カメラで使用可能で、全天球の映像世界をより魅力的なものとして世の中に広めるという役割を担っている。

二次元上の画面で、3Dならではのエフェクトを出すために、重力が働いているようなエフェクトを織り込んだ。

さらに、TikTokやInstagramのように直感的に画像加工ができるよう、UX面にも力を入れている。

設樂いきなり全天球写真を自由に撮って加工してください、と言われてもユーザーは困ってしまいますよね。だから、AIで写真の構成をアシストしたり、サンプルの加工画像を沢山用意して、見よう見まねでも加工が楽しめるような工夫をしています。

スピーディにワイルドサイドを突き進むチーム

技術的な挑戦を乗り越えるためには、各機能開発のプロフェッショナルが思い切り働ける環境が大切だ。ソフトウェア開発のチームマネジメントを担当する大杉は「出来るだけ自分が介在しないようにした」という。

(開発マネージャーの大杉)

大杉専門外の人から「あれやれ、これやれ」と指示が来るのってモチベーションが下がるじゃないですか。重要な意思決定の部分だけ自分が入るようにして、基本的にはメンバーが何をやりたいかを尊重していました。

メンバーの意思を尊重する自律的な組織であることは、チーム間で目標に対する意識のズレが起こる可能性もある。しかし、ベクノスでは各々が難しい課題に自主的に挑んでいる。納期との勝負もある中、常に技術的に難易度の高い道を選んできたのは、「それがベクノスらしさだから」と話す。

小崎もちろん納期は守らなければいけないけれど、ギリギリまでリスクを背負いながら少しでもユーザーにとって良い体験を届けられるようチャレンジを続けました。それは生方のパーソナリティが生み出しているモノだと思います。普通であればリスクが高い案でも、彼は「まずやってみよう」と後押ししてくれる。その結果、誰も作り出せなかったものを実現出来たと思います。

SXSWが行われる予定だった2月ではIQUIは設計試作段階。約半年で量産ができるまでプロダクトを詰め切ったスピードを出せたのは、「まず動くモノを作る」ことを大事にしてきたからだ。

大杉とにかく作ってみて、ダメならリーンに改善する。前向きな失敗は誰も責めない文化のため、本当に開発スピードが速いんです。これも一つのベクノスらしさだと思います

写真の外の人が取り残されない世界に

満を持して世に解き放たれたIQUIを通じて、ベクノスのメンバーたちはどんな世界を作ろうと思っているのか。設樂は全天球カメラに携わった中で出会った印象的なエピソードを紹介してくれた。

(開発マネージャーの設樂)

設樂「全天球カメラは撮影する人もされる人も一緒の場所にいたって記録されるのはとても嬉しい」とあるご家庭のお父さんが言っていたエピソードがあって。それを聞いたとき、これまでは写真や映像の外にいた人も、一緒に記録に残り続けるのが当たり前の世界を作りたいと思いました。

寺尾繰り返しになりますが、全天球カメラを使う日常がスマホを使うのと同じくらい当たり前にしたいですね。平面の写真と同じように、3Dの写真の存在が当たり前になったら、社会のいろいろなところで変化が起きそうな気がしています。

それでは、こうした世界を一緒に作っていくエンジニアはどのような資質を求めているのか。

小崎壁にぶつかってもそれを乗り越えようと思考をめぐらせ、口だけで無く手も動かせる人。うちって、絶対ダメだろうってこと以外は、結構なんでもやらせてくれんです。「あ、これもやっていいんですか」とこっちが拍子抜けするくらい。だから、積極的に手を挙げられる人の方が楽しいし、活躍できると思います。

大杉:何でもやれる、という観点で言えば、企画やマーケティングもやりながら開発が出来るので、自分の作ったモノを最後まで見届けられるのはエンジニア冥利につきると思います。自分の手が届く範囲を超えて、何でもチャレンジしたいと思う人は、是非一度お話ししたいですね。

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