※こちらの内容は2022年にECのミカタ編集部よりインタビューを受けた内容を転記したものです。
UGCが商品購入のきっかけをつくる今、梱包資材は商品を保護するという役割にとどまらず、ブランディングや消費者の購買を喚起する重要な役割を担うようになってきた。オリジナルパッケージの製造に最適な工場を選び、低コストで提供する株式会社shizaiの油谷大希取締役に、同社のサービス内容と梱包資材領域のDX化への取り組みを伺った。
梱包は単なる配送手段から購入者の感動を呼ぶ役割へ
―ECが広がる中、オリジナルパッケージの重要性をどのように見ていますか。
梱包資材は、単にモノを運ぶ役割から購入者が喜ぶ体験の提供に変わってきていて、パッケージのおしゃれさやカッコよさが購買に寄与する状況が生まれています。インスタに上げた商品を見てパッと買うようなUGCによる購買が広がる中では、パッケージも感動やブランドイメージを伝える要素として重要になっています。
―ただし、制作するにはハードルが高そうです。
これまでEC事業者がオリジナルパッケージを作りたいと思ったら、製造工場1社1社に問い合わせて見積もりを取らなければいけない状況がありました。しかも、見積もりの内容は各社ばらばらで、適正価格がよく分からない。また、おしゃれなパッケージで顧客に良質な購買体験を届けたいというEC事業者の想いを、製造工場とすり合わせて形にする難しさもありました。これらの理由でオリジナルパッケージを諦めるという企業様も多かったです。
開発したプラットフォームで500の工場から製造先を選定
―そうした課題を解決するのがshizaiのサービスなのでしょうか。
当社が開発し、2021年4月から運営を始めたオリジナルパッケージ制作プラットフォームのshizaiは、どの梱包資材業者に頼めばよいか分からないといった利用者の課題を解決し、希望するパッケージを最適なコストで製造するサービスです。それを可能にしたのが、段ボールや紙袋などを生産する全国約500の製造工場との提携、ネットワーク化です。お客様の要望に応えられる工場を独自のアルゴリズムと知見で選定し、製造します。従来は見積もりから納品まで約半年かかった工程を2週間~3カ月程度に短縮できるようになり、数量も500個から製造できます。他社の梱包事例やUGCを生み出すデザインの知恵なども併せて提供しています。
―500もの製造工場とよく提携できましたね。
一つ一つの製造工場に挨拶に伺い、工場内を見学することから始めました。実際に製造工程を見ると、お客様の要望をどう形にできるか、コストはどれくらいかかるかが見えてきます。段ボール業界の皆さんに教えていただいたことで、お客様に提案できるまでの知見を身に付けることができました。
―工場を知り、ネットワーク化した点が強みですね。
機械でできることや作業工程にかかる費用が分かっていればお客様に提案できます。例えば、製造機械の構造から、初期費用はかかるけれど最初に型を二つ作った方が生産量を考えると単価は安くなるとか、組み立てに時間がかかる形状の箱だと倉庫で1個15円の作業費が発生するが、ワンタッチで組み上がる箱にすれば作業費がいらないといった説明ができます。
配送料に関しても、ある酒類メーカーのお客様が当初作られたパッケージは3辺合計で65センチでしたが、60サイズに抑えれば配送料は200円ほど下がる。配送料を考えた箱の仕様を提案できるのが当社の付加価値だと考えています。パッケージ制作にとどまらず、ECのバックエンドを最適化していきたいという想いで始めた事業なので、物流全般にも視野を広げた提案に努めています。
中間業者を排除、運送費も抑え、30%のコストダウンも
―オリジナルで梱包を作るとなると、気になるのはコストです。
そこが500の工場と提携した強みを示せるポイントです。工場ごとに得手不得手があり、同じ作りでも製造費に差が出ます。当社はそこを踏まえて選定し、最適なコストの工場に直接発注します。依頼した工場に製造設備がなく、協力会社に再委託して中間マージンが発生するケースはよくあるのですが、業界内のそうした慣習を排除してコストを抑えています。加えて、納品場所になるべく近い工場を選んで配送費も抑えます。工場の設備や配送まで考慮した工場選びで、従来の製造費より20%、30%のコストダウンが図れたケースもあります。
―こうしたビジネスに着目したきっかけは何ですか。
ファウンダーの一人の鈴木(暢之代表)と私で事業アイデアを考えていたときに、新型コロナウイルス感染が拡大して、最初の緊急事態宣言が出たんです。外出が難しい状況になればECでの購買が加速する。ECを発展させていくための事業を何かつくれないかと考えて、関係者にヒアリングしたところ、梱包資材の制作が結構手間で、テクノロジーの活用が進んでいないアナログな領域であることが分かって始めました。
―バックエンドの最適化という観点からさらにサービスを拡張されていますね。
2022年1月から、提携倉庫でのアッセンブリから発送管理までの包括サービスを始めました。顧客の開封体験にこだわって、オリジナルTシャツをおしゃれな箱で届けたいというお客様から、配送作業までの業務を受けたことがきっかけで、そうしたニーズに広く応えられる体制を整えました。
今後は梱包資材DX化のノウハウの提供も
―shizaiのサービスはどういう事業者が利用していますか。
現状で約300社が利用されていますが、EC化率の高いコスメやアパレル、食品関係が多いです。顧客が増えてきてブランド強化でオリジナルの梱包の導入を考えたり、配送量が増えてきてコストを見直したりするケースでご相談をいただきます。当初想定していなかったユーチューバーやインスタグラマーといったP2Cの物販も増えました。ファンに向けたメッセージを入れてSNS映えにこだわったパッケージを作られています。
―DX化が遅れていた領域で今後どんな展開を考えていますか。
大きく二つあります。一つは、この安く速く最適な梱包資材を制作するノウハウなどをソフトウエア化し、サプライチェーンマネジメントの課題解決に寄与すること。もう一つはSDGsの流れを受けたサスティナブルな資材を開発することです。資材の二次利用や回収
システムができないかなども検討しています。
お客様を対象に顧客満足度調査をしたところ、95%が満足と回答されました。事前の想定ではコスト削減による便益が一番かと思っていたのですが、実は一番多かったのは営業担当者とのやり取りのスピーディーさ、提案の納得感や信頼感でした。これからもお客様に伴走しながら、事業にとって最適なパッケージのご提案をし続けたいと思います。