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エンジニアのいないスタートアップ企業が創業エンジニアを採用するためには|株式会社shizai 取締役 油谷 大希氏|NEXT UNICORN RECRUITING #9

※こちらの内容は2021年にWantedly HirinGeek編集部よりインタビューを受けた内容を転記したものです。

スタートアップにインタビューを行い、採用や組織づくりといったHR領域を中心に、各種戦略を紹介する本企画。8回目は梱包資材サービスを手がけるshizaiの取締役、油谷大希氏です。同社の創業は2020年の10月。「まだまだシード期です」と謙遜されますが、すでに総額約1億2000万円の資金調達を終え、これからの成長が期待できます。そんな同社の創業期ならびに、今後の成長フェーズを見据えた組織・プロダクトづくりに対する戦略や実際の施策などをお聞きしました。

株式会社shizai
Co-founder 取締役 油谷 大希氏
1989年生まれ。学習院大学を卒業後、新卒で株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に⼊社し、法⼈営業部⾨のゼネラルマネージャーを経験後、ライドシェアベンチャーである株式会社Azit(CREW)にて⼈事責任者及び事業開発を担当。2020年10月に株式会社shizaiを創業し、EC/D2C向けの資材パッケージプラットフォーム事業を運営。
▼Wantedly_Profile
https://www.wantedly.com/id/taiki_aburaya

梱包資材に関するサービスを、スピーディー、リーズナブル、ワンストップで提供

――本日はよろしくお願いします。まずは、貴社のサービスについてご紹介ください。

「shizai(シザイ)」という、オリジナルパッケージ(包装資材)制作から倉庫選定まで一気通貫でサポートするプラットフォームを開発・運営しています。

これまで梱包資材を注文する際には、大きさ、デザインといった要件や仕様を決め、その後、見積もりや発注といったフローに移るのが一般的な流れでした。しかし、多重引受構造の業界であったため、発注者から1次製造工場のあいだには、代理店など複数の会社が入っていました。そのためコストも時間もかなりかかっている課題があったんです。

――shizaiさんの場合は、1次製造工場と直接やり取りしているため、およそ20%のコストカットを実現したんですよね。

ええ。全国各地の梱包資材の1次製造工場400社以上と、直接お取り引きさせていただいております。そのためお客様の地域や注文内容に対し、最安かつスピーディーに対応できる1次製造工場はどこかを、瞬時に判別できる体制が整っています。

また多くの1次製造工場とやり取りさせていただいたことで、製造工程のさらなる効率化が可能なことにも気づきました。そして実際、1次製造工場に提案。このような理由により、従来と比べ約20%ものコスト削減を実現しています。

――製造・発注以外のサービスも行っていると聞きました。

梱包資材の注文を受けていると、配送や倉庫といったフローで課題を持つお客様も多いことが分かってきました。そこで梱包資材を提供するだけではなく、関連サービス全般を提供。物流・倉庫会社などとも直接契約し、運送費用の効率化や倉庫活用の最適化といったサポートなど、周辺サービスもできる限りサポートしています。

――サポート面に加え、最短60秒で注文が完了するスピード感も特徴と伺っています。

プラットフォーム上にあるお客様からご要望の多いパッケージであれば、画面をクリックするだけで注文は完了しますからね。一方、オリジナルデザインや配送・倉庫に関するご相談などは、チャットやメール、直接お会いするなどしてじっくりとサポートしています。

設立してからまだ7カ月ほどですが、EC、D2Cビジネスを展開する多くのお客様と取引しており、そのなかでリピーターとなってくださるお客様もいます。お問い合わせ数も含めるとクライアントは200社以上におよび、百貨店や大手メーカーもあります。コロナ禍の影響なのか、幅広いお客様からお問い合わせいただいている嬉しい状況が続いています。

優秀な創業エンジニアを迎え入れることができた秘訣

――創業時に掲げた組織づくりの戦略や、実際に迎え入れたメンバーについて聞かせてください。

共同創業者の鈴木とじっくりと話し合い、創業期は、任された領域を一人ひとりが責任を持って行える、任せられるだけのスキルやキャリアを持つ人材が必要との考えに至りました。そのような人材が揃った組織であれば、最速で事業が進むと考えたからです。

ただし、今の話とは矛盾しますが、さまざまな業務にも対応できる、ゼネラリストであることも重要でした。どうしても創業期は、専門領域以外の業務負担も増えるからです。実際、私も鈴木も、人事、BtoBビジネスとの得意分野を持ちながらも、前に働いていたスタートアップで事業成長に合わせて必要なスキルを身につけていました。

このような想いから迎え入れたのが、3人目のメンバーの大木です。大木も私たちと同じくゼネラリストでありながら、データ、プロダクトマネジメント(PdM)といった得意領域を持っていました。

――創業エンジニアの採用に関してはどのように進めたのですか。

正直、一番の肝であり課題でした。私も鈴木もエンジニアではありませんから。しかも、エンジニアの知人もいませんでした。資金調達もしていない状況でしたから、採用にお金をかけることもできない。

結論としては、とにかく手数を打つしかない、と思い至りました。優秀なエンジニアが多く集まるイベントのメンバーリストを洗い出し、Twitterで候補になりそうな人にDMしたり。同じくTwitterを使って、エンジニアを探していることを知人にDMしたりもしましたね。

――まさに、手数を打っていったわけですね。

はい(笑)。鈴木と2人で「今日は必ず2時間、TwitterでDMを送る」といったタスクを課したりもしていました。そうしてコンタクトが取れたエンジニアと、やり取りしていきました。

――スキル的には、どの程度のレベルのエンジニアを求めたのですか。

先程触れましたように、私と鈴木はビジネスにおけるエンジニアリングの実践知がありませんでした。言語選定や技術スタックの選定について最低限学び、意思決定できるようにしていきましたが、今度組織がスケールしていくことを考えると、エンジニアリングの実践知、エンジニア組織の基盤づくりまでできるスキルを備えた方を採用することが望ましいと考えました。

ーー創業メンバーにエンジニアがいない中で、エンジニアのスキルをどのように見極めたのでしょうか。

外部の信頼できるエンジニアにPdMとしてジョインしてもらっていたので、その方に候補者のスキルチェックをお願いしていました。Twitterなどで気になるエンジニアを見つけたら、アカウントを共有、公開しているレジュメやGitHubのソースコードなどを確認してもらいました。

――それで実際、優秀なエンジニアの採用に至るんですよね。どのようなアプローチをされたのか気になります。

はい。私たちが掲げたビジネスを手助けしてくれないか、あなたが持つエンジニアリングスキルによって具現化してほしい。DMでの「教えてくれませんか」「手伝いますよ」。このようなアプローチややり取りで、実際に4名のエンジニアを集めることに成功しました。

ただ、そこから先も課題がありました。採用形態です。私たちとしては正社員として迎え入れ、100%事業にコミットしてほしいと思っていました。しかし、現時点であるのはビジネスアイデアだけ。実績はもちろん、お金もありません。

エンジニアの方々はそれなりの企業やポジションでバリバリ働いている方でしたから、そのような環境を捨てて当社にジョインするのは、ハードルが高い状況でした。ご家族やお子さんがいる方もおられましたしね。

――それで、どのような採用形態にしたのですか。

お互い話し合った結果、先のPdMと同様、副業としてジョインする方向でまとまりました。エンジニアの方々としても、事業の可能性は感じるけれど、実際にプロダクト開発をしてみないとわからないことも多い。また技術面以外、価値観やビジネスの進め方などもフィットするかどうか、お互い未知数だったからです。

――でもそのような不安は杞憂に終わり、あらためて正社員としてジョインされることが決まったと聞いています。

はい。副業のまま進める案もありましたが、やはり私たちと同じ立ち位置、創業メンバー、創業エンジニアとして、事業にフルコミットしてもらいたいとずっと思っていました。

ですからエンジニアメンバーが副業でジョインしてくれた後も、ずっと熱意は伝えていました。一緒に働いてみて、技術はもちろん人として素晴らしいと感じていたことも大きかったですね。

――熱意は具体的にどのようにして伝えていたんですか。

2週間に一度、1on1を行っていました。といっても畏まった雰囲気ではなく、カジュアルな雰囲気ですが、その席であらためてジョインしてほしいと熱意を伝えるとともに、私たちがなぜ今の事業にコミットしているのか。想いやビジョンについても、繰り返し伝えていました。

ソフトウェアの力で世界を変えたい。その一助に、自分たちがなりたい、なれるのではないか、との想いです。実際、創業前に事業アイデアが出たあと、梱包資材の1次製造工場に足を運んでいると、その想いは強くなりました。私たちが開発したプロダクトを活用すれば、梱包資材業界が大きく変わる、より良くなると感じたからです。人ではなく、プロダクトに置き換えることで、大きなレバレッジを生むのではないか、そのような期待感もありました。

もしかしたら、ビジネスを進める上での根幹にある、このような想いも共感してくれたから正式にジョインしてくれたのだと思っています。

創業期の採用はWillや価値観が重要

――その後はWantedly経由でも創業エンジニアを採用しています。どのような理由から、採用サービスを利用しようと思われたのでしょう。

正確には、今は採用サービスはほぼ使っていません。Wantedlyを利用したのは、出資してくださったVCからのご紹介で、無料で利用できるキャンペーンだったからです。でもありがたいことに募集を出すと数十名の応募があり、そのうちの1人を採用できました。

――採用フローについても聞かせてもらえますか。

採用サービスはほとんど使っていませんので、とくにフローを整備したとの感覚はありません。前職も含めたこれまでの人事畑で培ってきたフローを踏襲しているだけです。まずは私が求職者とコンタクトを取り、カジュアル面談などを行います。エンジニアであれば先ほど話した外部の副業人材に、スキルチェックを打診。その後、鈴木と会って面接する流れです。

――先の4名のエンジニア採用も含め、スキル以外で、エンジニアを迎え入れる際に意識していること、重きを置いている点はどのあたりですか。

まずは先ほど話した想いやビジョンを伝え、共感してもらえるかどうか。次に、なぜシード期のスタートアップにジョインしたいのか。求職者が求めているものや価値、これからのWillを重要視しています。

求職者の価値やWillを知った上で、私たちが提供できるものと合致していたらウェルカム、といった感じです。前職のスタートアップ時代での採用で、この合致がズレていたために採用で失敗した経験があり、そこから学んだことです。

――ただ数回の面接だけでは、その方が本当に望んでいるWillを見定めるのは難しいのではありませんか。

おっしゃるとおりです。そこで代表の鈴木が幼少期のエピソードなどを聞き、本人も気づいていないような根源的な価値観やWillを聞き出すことを意識しながら面接を進めるようにしています。

いよいよ成長フェーズ。仮説検証を徹底的に行った後一気にドライブをかける

――お話をお聞きしていると人材の採用も含め、これから一気にドライブしていくフェーズなのではないかと感じました。

そのようなフェーズは、もう少し先だと考えています。いま重要なのは、サービスを徹底的に磨くことだと考えているからです。先の創業理念に近いですが、オペレーションをどこまでソフトウェアで置き換えるべきか。逆に、人がオペレーションしたほうがよい場合などもあるからです。このようなオペレーションの最適配分を、メンバー全員で喧々囂々と議論している最中です。

これから、採用も本格化していこうと準備しています。

――利用者は着々と増えていますよね。CS(カスタマーサービス)の充実は必要ではないでしょうか。

そのあたりの判断も議論している最中です。もっと言えば、プロダクトの機能追加も含めた今後の仕様など、すべての領域で投資家も含め意見を出し合いながら仮説検証を繰り返し、何がベストなのか。その答え探っている段階です。

というのも安易に人を増やすと、採用コストはもちろんですが、伝達コストも高まるからです。最小限のアセットで、最大限の効果を出すにはどうすればよいのか。繰り返しになりますが、議論を重ねている段階です。

ただ数カ月後には議論がまとまると思いますので、そこからはおっしゃるとおり、一気にドライブをかけていく予定です。

メンバーの「取扱説明書」を作成し、相互理解を深める

――あらためてさいごに、読者である経営者や人事担当者にメッセージをいただけますか。

大きく2つあります。ひとつは、前職の人事時代に学んだことですが、研修や評価といった各種人事施策は、導入するフェーズやタイミングが重要です。10人の組織と100人の組織では、それぞれ必要としている施策が異なるからです。

もうひとつは私たちと同じく、シード期のスタートアップの方にお伝えしたいメッセージです。いろいろな考えがあるので一概には言えませんが、崇高なビジョンやバリューなどの策定に注力するよりも、メンバー同士の相互理解を高めることに注力すべきとの考えです。実際、施策も行っています。

メンバーがそれぞれ自分の「取扱説明書」を作成し、全メンバーで共有しています。内容は何でも構いません。朝は得意だとか。フィードバック、コミュニケーション、雑談はいつでもウェルカム。好きなもの、苦手なものなど。個人の特徴やユニークネス、コミュニケーションする際に役立つことを書き綴っています。

これらは、米スタートアップ「Stripe」の創業者が行っている施策を参考にしたものですが、私たちも実際に行ってみると、長年一緒にいた鈴木でさえ、まだ知らなかった一面を知ることができるなど、言語化、文字化することの重要性をあらためて感じています。

▼米国決済サービス大手「Stripe」COOに習って、創業メンバー取扱説明書を作った話
https://note.com/abu_employee_x/n/n110bb2cd1279

――今後も多くの方々に注目されるサービス・組織になりそうですね。本日はありがとうございました。

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