【代表インタビューvol.1】スポーツ界の原石発掘や、業務負荷90%軽減実現も!社長が語る「スポーツ×データ」の可能性、“ALPHA”誕生秘話
Pestalozzi Technology株式会社(ペスタロッチテクノロジー)は、2024年で創業5年目を迎えました。「運動データを価値あるものに」というミッションの下、40名弱のメンバーで邁進中!
本記事は、Pestalozzi Technology株式会社のリアルをお伝えする全3篇のインタビュー企画。
第1回目の今回は、「事業編」をお届けします。
Pestalozzi Technology株式会社やメイン事業「ALPHA(アルファ)」はどのように誕生し、2024年現在に至るまでにどのような軌跡をたどってきたのか…。
代表の井上友綱(いのうえ ともつな)さんにインタビューしました。
▼NFL挑戦が、Pestalozzi Technology 誕生のきっかけに。
–Pestalozzi Technology株式会社(※以下 ペスタロッチ)は2019年に設立されましたよね。
起業についてはいつ頃から考えられていたんですか?
ペスタロッチを起業しようと思ったのは2018年頃、私が32歳の時でした。
–創業の1年前から考えられていたんですね!
きっかけは何だったんですか?
NFL選手になる夢を追っていた時に、「Combine」というスポーツテストに出会ったことがきっかけですね。私は高校からアメリカンフットボールを始めて、早稲田大学でもアメリカンフットボール部(正式名:米式蹴球部!)に所属していました。「NFL(※ナショナル・フットボール・リーグ)選手になりたい!」と、夢を抱いて、大学卒業後、単身渡米。NFLへのチャレンジを開始したんです。
そのチャレンジ中に出会ったのが、アメフト競技に特化したスポーツテスト、「Combine」です。とても良く出来た仕組みで、アメリカでは、プロを目指す選手をはじめ、高校生も同じ内容のスポーツテストを実施しています。Combineには、競技力を競い合うサービスがありました。各テストの結果を専用のモバイルアプリに記録すると、全米内での自分の順位がわかったり、テスト毎・年代別でランキングが出たりするんです!
–国内での自分の位置が分かるなんてすごいです!
様々な絞り方で、自分の運動能力を可視化できるんですね。
「あ、これは面白い!」と、当時も思っていたのですが、その時はNFL選手になるのが自分の夢だったので、すぐにビジネス化というのは考えていなかったです。
NFLへの挑戦を終えて、帰国後に1社目の起業。その後、ヘルスケアの仕事やパラスポーツの仕事、スポーツ関連のプロジェクトなどをしていました。でも、頭の片隅には「Combineの仕組みは面白かったなー」とずっと残っていましたね。
(Combineの40yard走を走る友綱さん)
ーNFL選手になるチャレンジ中のアメリカでの体験が、
ペスタロッチの事業の根幹になっているんですね。その後、どのように事業をスタートしたのですか?
前述の通り、Pestalozzi Technology株式会社は、2社目の創業になります。帰国後にすぐ起業した1社目の会社は、元陸上選手の為末大(ためすえ だい)さんとの共同経営での起業でした。
事業内容は、「国内外で活躍するアスリートが、スキル面だけでなく、“キャリアモデルとなるようアドバイスをする”機会の創出」でした。あらゆるスポーツ分野の次世代ジュニアアスリートを対象に、そうした機会創出を行っていました。
例えば、
・宿泊型のイベント「スポーツキャンプ」の企画運営
・スポーツイベントを企画し、スキルだけでなく海外挑戦や栄養学の講座開催
などですね。
この会社は、のちにヘルスケア系の企業へ売却しましたが、この経験を活かしてペスタロッチを2019年に創業しました。
ー1社目の事業内容もスポーツ領域の事業ということで、ペスタロッチとの共通性があるんですね。
2024年現在の主力事業「ALPHA(アルファ)」誕生のきっかけについても教えていただけますか?
“ALPHA”は、先ほどお話しした「Combine」の仕組みから発想を得ました。
Combineの大きな特徴は、「あらゆる世代が同じスポーツテストを受け、結果がランキング表示される」ことです。
もう一つの特徴として、「スポーツテストの結果を大学のリクルーターが閲覧できる」ことがあります。これはつまり「試合では活躍していないけれど、実は秀でた身体能力がある選手の発掘」ができることを意味しています。そのために、スポーツテストの結果が活用されていたんです。
大学側もこのサービスに大きな価値を感じ、お金を払う。Combineは、そうして成り立っているビジネスモデルだと知りました。これは私が実現したいと思っていた、“スポーツ選手のタレント発掘”に繋がっている価値のあるサービスだと感じました。
これをきっかけに、日本の体力テストについて気になって調べてみたら、行われ始めたのは、1964年から。もっと調べていくと、私の学生時代から現在においてずっと、記録の集計を「紙」で行っていることもわかりました。
そこから生まれたALPHAの最初の構想は、こんな形でした。
「デジタルネイティブ世代」の子どもたちが自身の体力テストの記録をアプリケーションを使って自分で管理していくこと。それから、全国的な体力テストデータを長期的に蓄積し、活用していくこと。これが、社会にとって非常に大きな価値があるのではないかと思ったのが、ALPHA誕生のきっかけでしたね。
▼業務負荷軽減率、驚異の90%!?
“データ化”によって生まれる2方向への大きなメリット
ー単なる記録集計だけでなく、集計データを活用し新たな才能を発掘する。
「データ化」するからこそできることですね。
友綱さんは代表として、“ALPHA”の可能性をどのように見ていますか?
ALPHAは、学校で行われる体力テストの「デジタル集計システム」です。
体力テストの集計を紙→デジタル化することで、「児童生徒」「教職員」それぞれに大きな価値提供ができると考えています。
前提として、ALPHAはアプリのインストールは必要ありません。Webブラウザ(Google Chromeなど)から、自身のアカウントにログインして使用します。
記録登録や結果閲覧はもちろん、個別最適化された運動コンテンツなどが視聴ができる仕様になっているんです。
まず、生徒たちにとっては次のようなメリットがあります。
①「結果の即時返却」
→紙集計の業者だと2~3か月ほどかかっている結果返却が、即時返却に。
②「個別最適化された運動コンテンツの視聴」
→結果を基に自分でレベルを決め、「どのような運動をすれば自分の運動能力が効率的に高められるか」が分かる。
③「経年での結果データ蓄積」
→自身の結果がグラフや表などを含むデータで保管可能。
教員の方々にとっては業務負荷の削減が可能です。
①「大幅な業務時間の削減」
→紙集計を行っていた時と比較し、約90%の業務時間削減を実現。
②「データ管理負担の削減」
→記録の管理・配布業務における煩雑さの軽減。
▼ALPHAに訪れた2つの“壁”と“ターニングポイント”
ー毎年の結果を見比べて成長を実感したら、子供たちのモチベーションも上がりそうですね!
2024年現在、ALPHAは160万人が使うシステムに成長していますが、
ローンチされてから苦労したことはありませんでしたか?
もちろんあります。
大きな課題にぶつかったタイミングは、2度ありました。
1度目は「Webアプリケーション開発」のタイミングです。
私はスポーツやビジネスに関する知見はありましたが、Webアプリケーションの開発に関しては全くの素人でした。
私の中でのアプリケーションはアメリカで見てきた記憶に基づくもので、“モバイルアプリ”でスマートフォンを使って利用するもの。その記憶から、当初は「よし、モバイルアプリを作ろう!」と考え、モバイルアプリの開発を進めていきました。
しかし、当時は学校教育では、モバイルアプリどころかデジタルデバイス自体がほとんど使われていませんでした。そのため、一生懸命労力をかけてモバイルアプリを開発したものの、導入がまったく進みませんでしたね…。
この点が大きな課題だったと感じたポイントだったように思います。今思えばしっかりとマーケットリサーチをする必要がありましたね笑
ただ幸いにも、何名かの学校関係者の方々のご協力で試験的にモバイルアプリをご利用いただきまして…。結果としてたくさんのフィードバックを得ることができました。
そのおかげで、モバイルアプリよりもWebアプリの方が使い勝手は良いしスケールすると判断しました。
ーはじめはモバイルアプリからのスタートだったんですか!
ALPHAが現在の形に至るまでには、試行錯誤があったんですね。
…2度目の壁はいつ訪れたのでしょうか?
2度目はコロナのタイミングです。
2020年3月頃は、ちょうど我々が学校向けの導入提案を進めている時期でした。
そんな中、緊急事態宣言が発令。
新しいWebアプリケーションの導入どころか、学校教育自体が停止してしまう事態となりました。
当時はどうしたら良いかと頭を抱える毎日でしたね。
でも思い返すと、ここがALPHAの急成長に繋がる“ターニングポイント”でもあったと思っています。
と言うのも、文部科学省の掲る“GIGAスクール構想”というものが、コロナ禍をきっかけに大幅な前倒しが求められたんです。
“GIGAスクール構想”では、
「2025年までに児童生徒向けにタブレット端末を1人1台揃える」という目標を掲げていました。
実際には、2021年にはほぼ100%の公立小中学校で通信インフラが整えられたんです!
この出来事ををきっかけに当時のメンバーとギアを踏み直し、ALPHAの拡大に成功しました。
ーコロナ禍でのリモート授業の推進が、学校教育の現場の変化を後押ししたんですね。
実はもうひとつ、ALPHAの“ターニングポイント”がありました。
最初のALPHA導入先となった、茨城県教育庁との契約です。
2020年度に契約を締結し、同年に導入を開始したのですが、当時先方には明確な課題がいくつかありました。そして、それらの課題は「ALPHAを通じて解決できる」と、強く感じていたんです。
実際に導入いただくことで、様々な課題を解決することができ、茨城県教育庁のご担当者の方々の業務効率化の実現に成功しました。
これを皮切りに、他都市でも営業を開始。
その際、「既に教育委員会で導入実績があること」や「業務効率化に寄与していること」を大きく評価していただくことがありました。そうして初年度から、近隣自治体でも一気に拡販していったんです。
(2020年1月に初訪問した際の写真 *井上撮影)
▼“ALPHA”を世界中の人々の健康と幸せの架け橋に
ー多くの自治体や教育現場の皆さまにALPHAの可能性を感じていただけたんですね!
2020年の当時から、4年が経とうとしていますが…
友綱さんは現在、どんな想いで事業へ向き合っていますか?
会社の経営業務に取り組みながら、自分の足を動かして事業を営んでいくことを意識しています!
とはいえ、創業から5年が経ち、メンバーも増えてきました。そのため、役割分担や権限委譲もしっかりと進めるようにしています。その甲斐あってメンバーも急速に成長してくれています!
今は、「自分が細かいところまで見る」よりも、自分は「社内外のみなさんがペスタロッチを通じて価値を感じられる企業づくり」に注力したいな、と。
その上で、メンバーと考えた「2034年までに運動データ保有量世界一になる!」というビジョン実現に向け、会社のネクストステップに繋がることを考えるようにしています。
ー続けて、“ALPHA”への想いも教えていただけますか?
ALPHAを通じて蓄積された運動データを、ユーザーの皆さまにとって“価値のあるもの”として提供したいと強く思っています。
我々は現在、“運動ビッグデータ領域”でイノベーションを起こしていっているところです。
会社のパーパス(存在意義)として掲げている、「運動データを価値あるものに」を実現すべく、メンバー全員で日々走り続けています。
そのためには、紙データをデジタル化するだけでは留まりません。
2024年現在、「データアナリティクス部」という社内の分析チームが、あらゆる角度から運動データの分析を進めているんですが、これまでになかった価値をユーザーへ届けるために動いてくれています。
いずれは、「ALPHAを海外にも展開していく」という構想もあります。体力テストって、日本ではもう60年ほど続いているのですが、実は、海外ではほとんどの国で行われていないんです!
それに比べると、日本は運動ビッグデータを保有しているので、この価値をいち早く発揮したいなと考えているんですよね。
世界中の運動データを人々の健康や幸せにつなげるために、
ALPHAをさらに価値あるサービスに成長させていきたいと考えています!
ーペスタロッチの歴史について深いところまでお話しいただき、
自分としても改めてALPHAを世の中に広めていきたいと感じました!
「運動データを価値あるもの」にするため突き進みます!
次回は、ペスタロッチの「組織・カルチャー」についてじっくりお話を伺っていきます。
ありがとうございました!