房田 基嗣's Wantedly Profile
合同会社Musubi Lab, CEO/Founder 神戸大学大学院卒業後、2012年より三井物産にて、製造業に関連する海外営業・事業投資のほか、東南アジア地域での事業開発を推進。2021年2月にMusubi Lab代表へ就任。
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Musubi Labで働くスタッフについて紹介している『Musubiスタッフの仕事』。今回はその特別編として、当社代表の房田さんにインタビューしてみました!
会社設立の裏側や、伝統食器にこめる思いなど、盛りだくさんの内容になっております。ぜひ最後までお楽しみください!
まずは事業を始めたきっかけについてお伺いします。
房田「事業の構想が浮かんだのは以前私がシンガポールに住んでいた時でした。週末に度々訪れていた百貨店に日本の工芸品を集めたブースがあり、家族が買い物をしている間そこを眺めるのが好きでした。それぞれ結構良い値段がついていたのですが、実際に物に触れて説明を読んだ訪問客が買っていく姿をみて、やっぱり日本の工芸品には商品力があるんだなと感じました。
同時に、伝統和食器の出荷額が過去30年近くにわたり縮小を続けており、職人の方々の高齢化・廃業に伴って、素晴らしい技術が日々失われていることをネット記事などで度々目にしていたので、その目の前で売れている状況とのギャップに疑問を感じました。
その時に浮かんだ仮説は、日本の工芸品にはプロダクトとしての力はあり、こういった百貨店などの物の魅力をしっかり伝えられる場にアクセスできる人には工芸の魅力が伝わっているものの、そういった場にアクセスできない人へのPRが出来ていないんじゃないかというものでした。
その後、インターネット上で工芸を上手にPRし、流通させる仕組みを持ったプレーヤーはいるのかなというのを調べるようになりました。調べているうちに自分ならこうするのに、、、というアイデアが積もってきて、実際に動き出すことになりました。
初めは海外マーケティングのコンサルティングをするのが良いのかなとも思いましたが、そもそも全く違う業界に居た自分の話を聞いてくれるような相手は居ないだろうし、プレーヤーを経験していないと本質的な課題への理解は出来ないだろうな、という考えから、まずは自分で小売を立ち上げ、売上の実績を作っていくところから始めようと思い、ECを立ち上げるに至りました。
初めはとにかく顧客を掴んで数を売れば産業が盛り上がるという単純な考えでしたが、やっていくうちにもっと本質的な課題を知るに至りました。」
国内では作家もののうつわが人気を集めていたりしますが、伝統食器の場合には市場がかなり縮小していると聞いて、私も驚きました。
房田「これは国内需要の減退と、コロナ禍ではインバウンド需要の消失が影響していますが、そもそもなぜ海外需要の開拓が長年進んでこなかったのか?という部分が大きくて、その理由を調べていくうちに、現実的な課題が見えてきました。一言でいうとリソースと知識の不足です。」
「世界広しと言えど、和食器を日常的に必要とする人は海外にはまだ少なく、販売を伸ばすにはライフスタイルや商品背景などをしっかりと伝えて潜在顧客を見つけていくことが必要なのですが、それを継続的にやれる人材や知識が産業の中に十分になかったこと。従来そういった機能の提供は商社が得意とする部分ですが、手作りの産業には大手が本腰を入れて取り組みづらい事情があったりもします。」
会社設立には、商社時代に得た知見が生かされているんですね。
需要の減退にともなって、伝統食器の作り手も減っていると聞きましたが。
房田「この点について産地の方々から多く聞いた意見は、『長く低迷が続いているために、窯元に新しく人を雇う体力がない。』『何度も継承をトライしたが、迎え入れた若手がすぐに辞めてしまうので、もうやりたくない。』というものでした。」
良くないサイクルに陥ってしまったんですね。いつ頃から始まったのでしょうか?
房田「伝統和食器の低迷が始まった時期は、中国から安価な大量生産の和モチーフの食器が流通し始めた時期とおおよそ一致します。中国産に負けないために、価格を下げ、量産に踏み切った結果、良くないスパイラルに入ってしまったのかもしれません。伝統的な方法で良いものを作るけど、価格は挙げられない状況では、人件費や利益の幅も確保できません。その結果、繊細な作業を低賃金でスピーディにこなすことを求められるようになり、職人への負担は急激に増していった可能性があります。」
大量生産、大量消費の時代との相性が良くなかったんでしょうね。
房田「当時の消費動向として、現代で重視されている『消費の意味』よりも、『安くてそこそこ質の良いもの』が求められていた結果、そうせざるを得なかったという事情も大きかったでしょう。その結果として、若者が「豊かな未来」をイメージしにくい業界になってしまったことが、継承が進まない本質的な要因ではないかと考えています。」
このまま伝統食器の需要や産業自体が消失してしまうとは感じませんでしたか?
房田「決してそうでは無いと思っています。その危機感は創業のきっかけとしてありましたが、そうはならないと思っています。伝統和食器に秘められた歴史的背景や、職人の哲学は他国にコピーできない日本の大切な無形資産ですし、色も形も異なる様々な食器を組み合わせ、その調和を楽しむ日本の食のスタイルは、海外の方々の毎日の食に、更なる豊かさと奥行きをもたらす可能性を秘めているとも感じます。そして純粋に、職人が作る伝統食器には素晴らしいものがたくさんありますし、局所的には若い職人さんも入ってきています。大切なのはこれを丁寧に『伝えて』共感する方の輪を大きくすることで、私たちの事業ではそこを最重要視しています。」
潜在顧客に響くようなアプローチを取ろうということですね。
房田「潜在需要の掘り起こしには、Google検索のキーワードでのアプローチなどがあまり使えないので、コンテンツの作成と発信に結構なコストと労力が必要なのですが、今では世界最大の和食レシピサイトが私たちの伝統食器を推奨してくれたり、複数のミシュランレストランに使用頂けたりと、多くの方の支援を得て少しずつ輪が広がってきています。」
サイトの顧客にはリピーターも増えていて、確かにその実感がありますね。
房田「そうですね。しかし産業のトレンドを転換させるにはまだまだ不十分で、根気強くアプローチを続けていく必要があります。職人の技術継承の仕組みや、情報・物流インフラの整備も必要なのですが、それらを確実に機能させ、職人・窯元の方々からの賛同を得るには、コンテンツを通じたユーザーとの繋がりと、需要の創出を積み上げていくことが大事だと考えています。」
房田「創業依頼、Musubi Labは素敵なメンバーに恵まれています。コンテンツ制作スタッフみんなが顧客目線で価値づくりを積み上げて来たことが、現在の顧客の評価に繋がっていると思いますし、それは今後もチームの拡大を含め伸ばしていきたいところです。当社のコンテンツ制作チームには主婦の方が多いですが、普段から食器を使う立場であったり、顧客との共感力が高かったりと、身内ながら感激させられる瞬間が多くあります。そんなスタッフが自己実現の場としてワークライフバランスを保ちながら快適に働ける環境をもっと整えていきたいです。また、日本酒・抹茶・食材など、食文化に関連する外部の方々ともコラボレーションを増やしたいと思っています。」
では、最後に一言お願いします!
房田「だいぶ長くなってしまいました。産地には素敵な方がいっぱいで、その辺も書きたいのですがまた次回にします。
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