「周りの大工に、『これからの時代はひとり親方じゃなくて、正社員大工だよ』と伝えている」と話してくれたのは、ユウマペイントで大工として働く六笠さん。彼は、20年以上にわたりひとり親方として働き、正社員になるつもりは一切なかったのだそう。
ではなぜユウマペイントの正社員として働くことを決めたのでしょうか。ひとり親方にはない、正社員でしか得られないメリットについて詳しく伺いました。
六笠 和彦 / 工事部施行課
高校を卒業後、文房具メーカーに就職。退職後、幼馴染からの紹介で、大工見習いとして働き始める。独り立ちできるようになってから、ひとり親方として、友達が社長を務めている工務店から仕事を受注。他の会社からの仕事は一切受けずに、20年近く働く。工務店から離れ、ユウマペイントを含めた様々な会社から仕事を受注。5年近くそのような働き方をし、ユウマペイントへ正社員として入社。大工だけでなく、多能工職人として働いている。
思いがけないことから、大工の道へ。ひとり親方として20年働く。
ーー高校を卒業された後、サラリーマンとして働いていたと伺っています。
そうですね。文房具メーカーの会社に就職して、働いていました。実家が文房具屋を営んでいたため、そのお店を継ぐために、会社で経験を積もうと考えていたんです。
ただ働いている中で、実家のお店が廃業することになって。文房具メーカーで働いていてもやりがいを感じることがなかったため、退職しました。
ーーその後どのような経緯があって、大工の道に進まれたんですか?
当初は大工になりたくてなったわけではなくて、、、。幼馴染の親が大工をやっていて、たまたま見習いを募集しており、幼馴染から声をかけてもらいました。当時は会社を辞めていましたし、何もすることがなかったので、やってみよう、と。それで大工として働くことになりました。
その後独り立ちできるようになってから、東京の足立区にある工務店に移って、大工として20年近く働いていました。
ーー正社員で就職をされた?
いや、ひとり親方のような形で、日給で働いていました。ただ他の会社からの案件などは受けずに、その工務店の仕事だけに集中していました。
基本的に日曜日が休みでしたが、天候によって急遽休みになったり、連休で仕事量が減ってしまったり。日給だったので、その分、収入に波がありました。
ーーなるほど。
当時は大工を正社員で雇ってくれる会社は、自分の周りにはそれほど多くありませんでした。そのため、これが普通の働き方なんだと思っていたんです。
ガソリン代や道具は自分で負担していましたし、怪我をしたら補償はありませんでした。「怪我と弁当、自分持ち」と業界を象徴する言葉があるのですが、まったくその通りですね。
「正社員になるつもりはなかった」自由がなくなることへの不安
ーーひとり親方として働いていて、良かったなと思った点は何ですか?
日給とは違ってひとつの現場でいくらという仕事もあり、そのような仕事はやればやるだけ収入が増えたので良かったと思っています。
あとは自由が効くことです。今日は体調が悪いから早めに切り上げようと思えば、好きなときに帰ることができました。仕事中も誰にも干渉されずに、自分のやり方でできましたし、髪型とか服装とかも、一切指図されません。
そういう部分は、働いていてものすごく気楽だったと思います。
ーー工務店には20年ほど勤めてらっしゃったんですよね。その後はどのような働き方をされていたんでしょうか?
勤めていた工務店は辞めてしまって、今度は友達と2人でひとつの会社からだけではなく、色々なところから仕事をもらって働いていました。ただはじめは全く仕事がもらえなかったんです。それまでにお付き合いのあった会社さんに「何かお仕事はありませんか?」と尋ねてみたこともありましたが、断られてしまいました。
それで、工務店に所属していたからこそ今まで依頼がもらえていたことを認識したんですよね。個人では、簡単には仕事をもらうことはできないのだ、と。
1ヶ月ほど仕事もなくフラフラとしていたのですが、そのときに当時ユウマペイントに勤めていた知り合いが声をかけてくれたんです。そこからユウマペイントの仕事を手伝うようになりました。現場で知り合った人から他の仕事も依頼してもらえて、仕事が毎日ある状態になっていきました。
ーーフリーの大工さんとしてユウマペイントに関わっていらっしゃったということですよね。ユウマペイントには、どのような印象を持たれましたか?
実は、ぼくが働いていた工務店の親方は佐々木社長の祖父だったんです。そのためユウマペイントという名前はよく耳にしていました。ただ「塗装屋さんなのに、どうして大工を必要としているのだろう」という疑問は抱いていました。
実際にユウマペイントで働き出してからも、いままで自信を持ってやってきた自分のやり方と会社のやり方が違っていて。「これで大丈夫なのかな」という不安も多少はありました。
あと最初は正社員になるつもりも全くなかったんです。「組織に入ると色々な決まりがあるし、自由がなくなってしまうだろうな」と思っていて、佐々木社長から2回、正社員へ勧誘してもらったこともありましたが、断っていました。
「会社の規則には慣れていく」正社員になって感じたこと
ーーそれでも最終的にはユウマペイントの正社員になられたんですよね。どのような理由があったのでしょうか?
一番の理由は家族に「正社員になってほしい」と言われたからです。フリーで働いていると国民健康保険や国民年金なども、自分ですべて支払う必要があります。また病気や怪我をして働けなくなると、収入が一切なくなってしまうというリスクも負わなければいけません。
そのため奥さんから「このままで将来大丈夫なんだろうか」「何かあった時、どうしよう」という不安をそれまでずっと与えてしまっていました。そのことが原因で喧嘩をしてしまい、ギスギスしていたこともあります。
佐々木社長から3回目のお誘いを受けたときに、奥さんに相談したら「いますぐ正社員になって」と言われました。これまで自分の好き勝手に、自由に働いてましたが、もうそろそろいいかな、と。奥さんや家族を安心させるためにも、正社員として働こうと決めました。
ーー正社員になられてからの業務内容を教えてください。
これは以前勤めていた工務店でも同じでしたが、造作大工といって、主に木材を使う壁や床、階段、敷居、窓枠などを組み立てることを行っています。ユウマペイントは塗装屋ですが、塗装以外のリフォーム工事も行っており、その工事に職人として関わっています。
また材料がどれくらい必要になるのかといった積算業務や水道屋さん、電気屋さんなど協力業者の手配などを行う業務も行っています。
ーー正社員になられる前は「自由がなくなる」といった不安を抱えていらっしゃったと思いますが、実際に正社員になられてからはどのように感じてらっしゃいますか?
自由がなくなるという不安は、時間が経つごとに解消されていきました。例えば、フリーだった頃は直行直帰が基本でした。正社員になってからは、朝会社に出社して、現場仕事が終わった後に会議に参加しないといけないこともあります。
はじめは「早く帰りたいのに、なんで会社にいちいち行かないといけないんだ」と思っていたこともありましたが、今は全くそのように思いません。働き方に慣れてきて、それが当たり前になったので、ストレスも感じなくなりました。
正社員になって実感しているのは、会社に守られているという安心感
ーー正社員になってよかったなと思っていることはどのような点ですか?
やはり安心感があります。ユウマペイントで働きだして2年目ぐらいのときに、髄膜炎にかかって1か月半ぐらい入院したことがあるのですが、休んでいても給料がもらえていました。まずそこが衝撃でしたし、何より安心して休むことができました。
正社員になる前だったら働けないので収入は0円です。入院していてもソワソワしてしまっていたと思います。
思えば正社員になる前は、体調が悪くても無理をして仕事を行っていました。毎日なんとかしてお金を稼がないといけないというストレスがあったんです。
ーーそういうストレスもなくなった。
はい。大工さんはよりお金を稼ぐために、一人親方を目指す人が多いと思います。もちろん稼いでいる人もいますが、ほとんどの人は思ってるよりも稼げません。
税金や保険料、交通費、道具代などの経費を、すべて自分で負担する必要があるからです。フリーのときには交通費だけで6、7万円かかっていたときもあります。それに住宅ローンや賃貸契約の審査に通らないこともありました。
会社員だとそういうことはほとんどありません。結果的にぼくの精神面も、家族の精神面も安定し、家族関係にも良い影響がありました。
ーーへぇ!ご家族との関係性も変わったんですね。
お金のことで文句を言われたり、将来の不安をぶつけられたりすることが少なくなりましたね。夫婦円満だと思います。
家族仲が良いからか、仕事も今まで以上に頑張れているような気がします。これも正社員になってよかった点です。
「変なプライドを捨てる」正社員大工として働くコツ
ーーユウマペイントの魅力はどのような点だと思われますか?
ユウマペイントで働く皆さんは優しく、いい人ばかりです。どんなことでも相談すれば、親身になって聴いてくれます。そのため、働いていて嫌だと思ったことはほとんどありません。非常に勤めやすい会社だと思います。
ーーユウマペイントにマッチしそうなのはどのような方でしょうか?
変なプライドを持たずに挑戦できる人、また新しいことに楽しんで取り組める人がいいと思います。ユウマペイントの皆さんは向上心の高い人ばかりですし、新しいことにどんどん挑戦しています。
かつての自分は自分のやり方にこだわりのある、プライドの高い人間でした。大工さんにはそういう人が多いと思います。
しかしユウマペイントに入ってからは、変なプライドを捨てて、周りの人に教えてもらいながら新しいことにも挑戦してきました。そのことで身につけられた知識やスキルがあります。
プライドを持つことは悪いことではありませんが、より良くするために柔軟に考えられる人だと嬉しいです。大切なのは、素直さですかね。