(前編)意思決定の場に女性(多様性)が存在するのは当たり前。男女比率1:1を目指す松井証券の役職者が語る「何も障壁にならない職場」とは?【コンプライアンス部:課長, 瀧本 祐紀 / 人事総務部:プロフェッショナル, 土橋 美也子 /司会者】
意思決定の場に女性(多様性)が存在することは,世の中の「当たり前」
- └瀧本さん(瀧):当社のなかで女性として就任した初の課長。コンプライアンス部をリード
- └土橋さん(土):プロフェッショナルという役職で、人事総務部で労務全般をリード
- └司会者(司)
司:本日は異なる役職でご活躍の皆さんと一緒に対談ができればと思います!早速ですが現在の当社は働きやすいと思いますか?
瀧:条件面でいえば転勤がないことは大きいと思いますね。総合職でしっかり仕事をしようと思うと、大企業は転勤がつきものですけど、1つの拠点で働きたい場合に、当社はコールセンター配属(札幌)以外は都内勤務ですので、それは良いなと思いますね。あとは業務面では全員が総合職採用なので、職種別になっておらず、取り組む仕事内容としても男女差がなく、評価という側面においてももちろん男女差がないので、そこも働きやすいと考えられる1つかなと思いますね。
司:瀧本さんは初めての転職で当社を選んだんですよね。前職は大企業のメーカーに在籍されていたと か・・・?
瀧:はい。前職は私も転勤がありました。回数は1回で海外なんですけど、転居を伴うので、特にご家族がいる方は大変だなと、周囲を見ていてもそう思いました。それがないのは良いなと思います。
司:転職のボトルネックになりましたか?
瀧:前職は本社を地方に置いていました。私は出身も東京で家族も東京なので地元にいたいという思いが強かったんですよね。転勤は「地方か海外か?」の2択だったので、どうせ戻ってくるなら、これ以上転勤はないほうがいいなという気持ちがありました。
司:金融業界を軸で選んでいたんですか?…って面接みたいでなんかすみません(笑)
瀧:たしかに、面接みたいで新鮮です、ふふ(笑)。業界絞っていたわけではなくって、とりあえず面接のオファーがあったところといいますか(笑)、タイミングや条件、一緒に働く人で一番「ピンときた」のが当社だったという感じですね。
司:当社は現在、最終選考前後で、可能な限り候補者の方の不安やボトルネックをなくしたいので、会いたい人はいますか?誰でもいいですよ!とご要望を伺ったうえで対象者と会えるようにセッティングして「働くイメージ」を持ってもらえるようにしていますよね。当時は社長交代前の旧体制かと思いますが、最終選考前後で瀧本さんは誰と会いましたか?
瀧:コンプライアンス部の役員や管理職と会いましたね。全くの別業種でやってきた人間も受け入れてくれる雰囲気があったので、それであれば、極めてきた法務のスキルを別業種でいかしてみようかなと。
司:「ピンときた」とのことでしたが、言語化できる部分はありますか?
瀧:そうですねぇ・・・様々「ピンと」きたんですが(笑)、一番の決め手は、当時の社長(現顧問)が最終面接時に「東京戻ってきたいんでしょ?」と言ってくれて。面接内でそういう思いが端々に出ていたんでしょうね(笑)。空気を察して親身になってくれた。これは話が早い・・・!そう思いました(笑)
司:率直なやりとりがあったんですね
瀧:そうですね。私の前職と比較すると、上層部の人とも非常にフラットに話ができて、驚きました。前職は企業規模もありますが、役員と話すこと自体ほとんどなかったので、すごく風通しがいい企業なのかなと思ったんですよ。
司:そうなんですね!ちなみに、瀧本さんが感じる「当社のここは変えてほしいな」とかありますか?女性としての働きやすさでもいいですし、ジェンダーに拘らない視点でもいいですし…
瀧:そうですね。前述の通り、大前提として評価に男女差が存在しないのが当社ですが、せっかく社員全体で見たときの女性比率も近年上がってきているので、女性管理職の人数も増えたらいいなと思いますね。全員が管理職になる必要があるという意味ではなく、意思決定の場に女性というか「多様性」が存在するのはもう世の中の「当たり前」なので。私は社外の研修に様々参加してきましたが「属性が同じ人の集団よりも、多種多様な属性の人が集まったほうが、議論が活性化するな」というのは肌身で感じたことなので、当社もそうなればいいなと思いますね。
司:素晴らしい視点ですね!「多種多様な属性が存在したほうが議論の活発化につながる」という実体験は、当社を今後一層変えていくうえで貴重な視点です。当社は「将来のリーダー育成を目的としたリーダーシップ研修」をずっと行ってきましたよね。いままで管理職が対象だった本研修も今後は裾野を「管理職候補者」まで広げて中⾧期的な観点から育成を行うと決めるなど、人の育成には本当に力を入れている当社ですが、瀧本さんの受けた研修も、当社が企画した研修でしょうか?
瀧:そうですね、例えば一般的にもかなり有名な「女性リーダー塾」とかですね。当社が会社として申し込みを行い、将来のリーダーとして成長してほしい人には、業務として研修を受けてもらっていますが、私もすごく勉強になりました。
司:土橋さんはどうですか?当社は働きやすいですか?あ、決して誘導してるわけではありませんので(笑)、率直に教えてください!
土:私は働きやすいと思っていますね。社歴が22年と長いので、昔と比較できる材料が自分の中にありますが、昔と比較しても今のほうが断然働きやすいと感じています。あ、これは決して記事として出すから良いこと言っているわけではなくって(笑)。私の役職は「プロフェッショナル」ですが、以前は「どういう役割を求められているか?」のアカウンタビリティが全社的に非常に曖昧で。ここでは端的にご紹介しますけど、「プロフェッショナルとは、高い知見と経験を持ち、業務のマネージを通じて、管理職と共にチームが最大のパフォーマンスを上げることに貢献できる人」と非常に明確になりましたよね。そういう意味でも働きやすい。
司:私が入社したのは2022年ですので、すでにアカウンタビリティは明確化されていましたが、以前は曖昧だったんですね。曖昧さをいかになくすか?というのは、(複数社見てきた私としては)どの企業も課題のように思いますが、改善点を放置しないというのは非常に良いですね。働きやすさという観点で、変えたほうがいい部分はありますか?
土:瀧本さんと同じですが、世の中は多様性を求めていますよね。企業の在り方としても「多様性をいかに取り入れるか?」が非常に重要だと思います。性別・年齢・過去の経験で区切らず「様々な人が活躍できる場」を企業が用意するのがグローバルスタンダードになっているので、当社もまずはさらなる多様性を取り入れて、様々な人が活躍できる場を用意して、そこから全社員の意識も変わっていけば、どのような人にとっても「働きやすい職場」が実現するかなと思いますね。
司:別記事で土橋さんのインタビューをさせてもらいましたが、本当に感動して。土橋さんって、本当にタフなんです。22年間、当社の良いところも悪いところも、全て見てきた。過去の様々な障壁にも負けず、実体験を踏まえて「こういう思いを人にさせたくない!」と、現在の働きやすさを実現してくれている。こういう方が在籍し続けてくれて、現在に光をあててくれていることが、どれほど当社の「力」になっているかと思いました。もともとは派遣社員でスタートされたんですよね。
土:そうですね。そちらのインタビューでも回答しましたが、もともと社労士で開業したかった(笑)。武者修行として社労士事務所で学んでいる合間の「生活費を稼ぐ」ことを趣旨として、当社のコールセンターで働くことになり、その後に正社員登用の話をもらい…という流れでしたね。当社はかなり前から正社員登用を行っているので、そこは誇れる点ですね。
司:私は瀧本さんや土橋さんに感じるんですが、レジリエンス力(ストレスからの回復力。強いほど逆境に強い)が、強いなと。レジリエンス力を採用の評価基準で導入している企業も増えていますよね。
瀧・土:レジリエンス力・・・強いですかね(笑)。ただ、やっぱり当社は「変化に柔軟で挑戦的な環境で成果を出せる人」がマッチする職場ですから、一定のレジリエンス力はほしいですよね。
司:そうですね。お話戻りますが「ジェンダーによる障壁を感じない」環境を提供したいですね。私も人事として入社したからには、より多様性を受け入れられる環境を、必ず実現したいんです。
瀧:そうですね。今後も当社に合った、活躍できる人を女性も男性も採用したいわけじゃないですか。当然女性で優秀な方もいらっしゃるわけで。そこでジェンダーが障壁になって活躍できない環境はないほうが絶対にいい。そう思いますね。
司:あえて「女性の働きやすさ!バーンッ!」と掲げなくても(笑)、女性も男性も「みんな」働きやすいよね、それって当たり前だよね、という環境というか風土というか、そういうのって大事ですよね。ちなみにですが、女性としての働きにくさを感じたことあります?
瀧:すごく主観なのですが、私が管理職になったときは、他に誰も「女性の管理職」がいなかったんですよ。部長と課長が集まる場があると、おのずと私しか「女性」がいなわけですよ。そうすると、ものすごく「ニュアンス」の話になるのですが「なんとな~くの居心地の悪さ」っていうのがあるんですよ。
司:おぉ!もう少し具体的に教えてもらってもいいですか?
瀧:主観的で体感的なお話ですけどね。なんでしょうね・・・前職での海外赴任中に日本人が私1人だと「あぁ、私はマイノリティなんだなぁ・・・」と感じた感覚に似ていますね。事実として、男女という生物としての違いがあるわけで、居合わせる会議の女性比率が低いと「あぁ、私はマイノリティなんだなぁ・・・」と感じるというか。そういう「ボヤっとした違和感」だけど。いまは女性管理職も増えて、それを感じる機会は減りましたけど、昔は感じましたね。まぁ、だからといって発言しづらいとかは昔から全然ないですけどね(笑)。
司:現状、当社の在籍人数に対する女性比率は約33%・全管理職に対する女性管理職比率は11%ですが、女性活躍推進法の改正が行われたことを皮切りに、現在から2035年までに在籍人数に対する女性比率は1:1・全管理職に対する女性管理職比率は30%にする(今後はそれ以上に増やす)ことを届出ましたので、今後はジェンダーがボトルネックになりうる環境を積極的に改善していく予定です。土橋さんは女性としての働きやすさ/働きにくさはどうですか?
土:うですねぇ・・・。当社は(20年以上前)から、男女関係なく「総合職」という働き方を採用していたんですよ。「女性は一般職」という「日本の常識」がありましたから、非常に先進的だったと思いますね。「形としての総合職」ではなく、実態としても男女ともに「総合職」として与えられる仕事に差がなかった。活躍の機会が男女ともにあったので、女性だから意見が通りにくいことも昔からなかった。そういう意味で旧体制の頃から、一定の「女性の働きやすさ」は存在したと思いますね。
土:瀧本さん、女性管理職だから意見が通りにくいなどありますか?
瀧:私は、割と言いたいことは言ってしまうタイプなので参考になるかわかりませんが (笑)、女性であるゆえの発言しにくさはないですね。みんな意見は聞いてくれますし。ただ単に私が「女性一人だ」と感じる、逆に言えばそれだけですね。
瀧:土橋さんはいかがですか?
土:当社に入社してから、私は女性が多い環境で働いてきたので、特に感じたことがないんですよね。ただ、昔の瀧本さんのような環境に身を置いたら、私や他の人も違和感が生じる可能性があるのかもしれません。「部署の男女比率」という側面においても、改善していきたいと思いましたね。
瀧:自分が女性の場合、同性がいたほうが「なんとなくリラックスできる」ってありますよね。私が入社して間もなく、札幌コールセンターと本社で打ち合わせがあり、私がメインで取り仕切る場だったので多く発言していたんですよね。終わったあとに、札幌のメンバーから「いつも会議は男性が多いので、今日は女性の瀧本さんがいてくれて発言もしてくれて、今日の会議は自分もすごく喋りやすかったです!」と言われたことがあって。理屈ではなく、やはり同性だから安心するって、あるんだと思うんですよね。
司:本当にそうですね。生物としてのジェンダーが一緒というのは、共通項になるので、一定の安心感が生まれるのかもしれませんね。
瀧:どっちかの性別に偏っているのは、普通に考えて不自然ですよ。自然な状態のほうが、本来の自分をだしやすいというか、力を発揮しやすい環境なのかなと思いますね。
▲ここまでが前編