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一生使える思考の中核技術

去年、筋痛性脳脊髄炎の病状が悪化してしまい、「もう長くないかもしれない」と思い、どうしてもこの世に残しておきたいものをYouTubeや文章で遺してきました。さらに今年の1月から3月にかけて「山口道場」という偉そうな名前をつけた連続講座を開かせていただき、20歳から35歳の約20名の方々に参加してもらいました。講義は、新しい時代、AIは何ができて、どこに到達できないのか、人間は何をすべきなのか、そのために何をどう考えるべきなのか、そもそも考えるとは何なのかという本質を徹底的に教え込み、ケーススタディを通して実践知として身につけてもらうというものです。私も参加者も真剣そのものガチンコに向かい...

株価ではなく、価値を見る ―― Valuation Matrix という道具のこと

もう長いあいだ、私は「価値とは何か」を考えつづけてきた。会社の価値、人の価値、お金の価値。答えの出ない問いだと分かっていながら、そこから離れられなかった。ValuationMatrix(VM)は、その問いに、道具というかたちで一つの答えを出そうとした試みだ。はじめに、身も蓋もない事実を書いておきたい。財務データそのものには、もう価値がない。売上も利益も、有価証券報告書の数字も、いまや誰でも、ほとんどタダで手に入る。かつては情報を持っていること自体が力だった。その時代は終わった。数字が誰の手にもあるということは、数字を並べるだけの分析には、もう差がつかないということでもある。では株価はどう...

論理を極めた先に、本質はない

沈む、という言葉を使っても、もう大袈裟ではないと思っている。人材は足りず、インフラは老朽化し、地方は空きはじめている。財政は高齢化に引かれ、実質賃金は長く上がらない。一つ一つは、ずっと前から指摘されてきたことだ。目新しい話は何もない。にもかかわらず状況が変わらないのは、これらが個別の不具合ではなく、互いに噛み合った一つの構造だからである。私が2010年頃から産業創造に関わってきたのも、このままでは日本は沈むと考えたからだった。当時それを口にすると悲観的すぎると言われたが、見立ては残念ながら、おおむね当たってしまった。ただ、危機感そのものには何の力もない。多くの人は、この感覚を持て余してい...

中高生が絶対知っておくべき「日本の健康診断」

みなさん、こんにちは。今日は少し変わった授業をします。テーマは「日本という国の健康診断」です。健康診断は受けたことがありますよね。身長、体重、視力、血液検査。自分の体がいまどんな状態か、数字で教えてもらえる仕組みです。実は、国にも同じことができます。世界中の研究機関が、いろいろな国について、ものすごくたくさんの数字を集めているからです。今日の授業で使うのは、「World Effect Benchmark」というデータ集です。中身は、日本を含む先進国37カ国について、1,193種類もの数字を集めたもの。どんな数字があるかというと、平均寿命や物価みたいな定番のものから、「その国の人は昨日笑っ...

資本主義の次に来る世界秩序:SpaceXのIPOが告げる「計算工学」時代の幕開け

先日、世界を揺るがす大きなニュースがありました。SpaceXがIPO(新規株式公開)したという話です。この出来事は、単なる一つの企業の資金調達という話に留まりません。これは、一つの時代が終わり、新しい時代が始まったことを示す、歴史的な転換点だと私は考えています。SpaceXのIPOにおける評価額は初値で約2兆ドル(約320兆円)でした。これは、日本の国家予算(約130兆円)の2〜3年分に匹敵する桁違いの規模です。もちろん、IPOによってSpaceXがその評価額すべてを現金として手にしたわけではありません。実際に流入した資金は30兆円程度ではないかという認識ですが、重要なのはそこではありま...

あなたの「健康」は、誰が責任を持っていますか?

少し、想像してみてください。朝起きて、なんとなく体が重い。かかりつけの医者に行くと「異常なし」と言われる。ウェアラブルを見ると数値は記録されているが、それが何を意味するのかわからない。サプリを飲んで、ジムに通って、食事に気をつけて——それでも、「自分の体がどこに向かっているのか」が見えない。これは、あなただけの話ではありません。現代の医療・健康の仕組みは、機能ごとに縦割りになっています。研究者は論文を書くが患者に届かない。医師は診断するが忙しすぎて追跡できない。デバイスはデータを取るが深く解析しない。食事・運動・睡眠・精神・環境——これらはすべてバラバラに扱われ、あなたという「一人の人間...

AIに法人格を持たせるか?

AIに法人格まで持たせるか?という議論が白熱し始めました。AI革命の第二幕ですね。これまで人間は判断・責任という役割を担ってましたが、AIだって信用を蓄積し資産を持てばリスクを取れる、つまり判断や責任を負うことができます。その上で人間にまだ残されたものはあるのですが(使命や道を生きる、愛・一体性など)、AIが法人格を持ち判断や責任という倫理層に踏み込めばますます社会は混乱し不安は増えるでしょう。ちょうど1600年の東インド会社設立によって資本主義(資本集約秩序のことね)ができたように。それから人類は貨幣経済の僕(しもべ)として約400年間、数字の元に行動秩序を規定されてきました。もう今は...

お金のなくなる日

僕はずっと本当の経済、つまり経世済民について考えてきた。そして、経済を壊し人類を滅ぼすものの正体は実は経済取引に使われる貨幣ではないかと考えている。確かに貨幣は便利な道具だ。数字で表現されるし誤解がない。ただ一方で、価値を数字で表した途端に漂白されてしまうものもある。それが文脈というものだ。文脈には意味、すなわち物語や繋がりがある。このような財の中に畳み込まれている価値の大きさを我々は過小評価しすぎているのではないか?貨幣を使うことによる清算の手軽さより、財を形成するまでに紡がれた文脈価値の方が大きいというケースは実際多いのである。それで僕がずっと考えてきたのは、どうやれば貨幣と非貨幣、...

日本思想OSの海外展開チャンス(Japan Future Institute構想について)

クールジャパン機構は、累積損失383億円を超え、廃止・統合の岐路に立たされている 。 政府は2033年までに海外売上20兆円という目標を掲げながら、実施主体が機能不全に陥るという矛盾を抱えている 。ポケモンやナルトというIPが単独で数兆円規模になる一方、その思想的背景は誰も「売って」いない。プロダクトだけが先走っている。かつて岡倉天心は1900年のパリ万博でフランス語による日本美術史を著し、日本文化を「思想の体系」として西洋に提示した 。それから125年が経った今、日本は依然として個別のプロダクトを売るだけで、「なぜこの文化が生まれたか」というOS層を輸出できていない。そこで私達は、日本...

思考せよ。なぜなら世界は一つだから。

思考は才能ではない。それは技術だ。誰でもできるものだ。賢い人は、知識が多いのではない。“翻訳”が速い。そして、翻訳のための「箱」を持っている。思考家は、常に抽象的なボックスを持って、そこにITの話も人事の話も家族の問題も何でも一回ぶち込んでから戻す。出来事を、そのまま受け取らない。いったん“構造の言葉”に変換する。そして戻して、判断する。この往復ができる人が、強い。知らない言葉が出てきてもいい。略語が分からなくてもいい。でも、怖がらなくていい。分からない言葉を、分からないまま放置しない。でも、完璧に理解しようとして止まらない。構造だけ掴む。正確さより、意味。意味より、判断。構造化とは、箇...

『投資の哲学』――未来を創造する者たちへ

序章 新しい時代の「投資」をはじめよう春になりましたね。この言葉が持つ、どこか浮き立つような、新しい始まりの予感を皆さんも感じているのではないでしょうか。この季節と同じように、私たちの社会も、そしてお金との付き合い方も、大きな変化の時を迎えています。巷では「新NISA」や「老後2000万円問題」といった言葉が飛び交い、多くの人が「投資」というものに目を向け始めています。しかし、その関心の多くは、「どうすればお金を増やせるか」という一点に集中しているように見受けられます。もちろん、それも大切な動機の一つです。しかし、今日ここでお話ししたいのは、そうしたテクニック論に終始する「投資」ではあり...

AIでこれから日本がどう破壊されていくか?

『2028年・日本版インテリジェンス危機』AIが「救い」のはずだった国で、静かに起きること「人手不足だからAIは救いだ」――。この語りは、日本では長く支配的でした。実際、半分は正しいのだと思います。日本の人口構造は、統計がはっきり示しています。2024年10月1日時点で、65歳以上人口は 3,624.3万人、総人口比 29.3%。過去最高水準です。労働供給の制約は構造問題で、AI導入の余地も大きい。これは事実です。けれど、問題はそこではありません。問題は、AIが「どこに効くか」です。1. 日本版の危機は、失業から始まらない雇用は強く見えます。2024年の完全失業率(年平均)は 2.5%。...

人間と機械が統合する時代:AI、サイバネティクス、そして「地域」というセーフティネット

最近の僕は、事業や投資という観点で、二つの大きな潮流に注目しています。一つは、人間と機械が統合していく「サイバネティクス」の領域。もう一つは、人間や自我という枠組みを超えて私達を癒す「地域」という現場です。一見、まったく異なるこの二つのテーマは、実は深いところでつながっています。それは、「AI革命の先で、僕らはどこへ向かうのか?」という根源的な問いに対する、僕なりの答えでもあります。今まさにAIが社会を席巻し、それが「フィジカルAI」としてロボットへと波及していく中で、一つの大きな問いが浮かび上がります。それは、「人間と機械が統合していく時代に、どんなテクノロジーが必要になるのか?」とい...

AIを使う側のビジネスパーソンが持つべき思考法

序章:道場の始まり車のエンジン音が止む。岸田さんが駐車場に車を停め、カメラ機材を運び込んでいる。私が先に部屋に入り、機材のセッティングを始めながら、これから始まる「山口道場」の参加者を待っていた。「岸田さんのカメラがセットできたら始めましょうか」部屋には少しずつ人が集まり始める。緊張と期待が入り混じったような独特の空気。私は参加者に向かって呼びかけた。「さて、皆さん。前回、宿題を出しましたよね」そう、これは単なる講義ではない。参加者自らが考え、手を動かし、発表する実践の場――「道場」なのだ。「ハーバード大学の学生のように、ここに提出してください。これから発表してもらいますからね」私の言葉...

日本の思想OSが世界を救う

私は世界を捉えるにあたっていつも七つの層で見ている。一番低い層は、数字(結果)、ニ番目が構造(論理や方程式など)、三層目は物質・空間(つまり五感で捉える世界)、四層目が概念、これは目には見えないが、倫理や時間など社会のOSやプロトコルとなっているもの、五層目は使命や価値観で構成される固有の世界線(日本人は道という)、六層目は一体性(愛)、七層目は空である。個々の事象や領域を僕はこの七つの層で捉え直す。昨今のAI事情にあてはめれば、二層目がAIによってハックされたことで生産の最適化が進みホワイトカラーがオフィスから締め出され、フィジカルAI(ロボティクス)によって三層目の物理空間さえも人間...