シコメルが描くビジネスモデル / 事業展開を具体的に伝えることで、会社の目指す未来が見えてきます。
実は、シコメルには「事業展開の3フェーズ」が設計されていて、それぞれ3つのフェーズを段階的にクリアすることで、関わる人すべてのペインを取り払おうと目論んでいます。
では実際にその3つのフェーズがそれぞれ担う役割とは何なのでしょうか? COOの川本さんにお話を伺いました!
川本 傑 / 取締役COO
株式会社シコメルフードテック取締役COO, 株式会社アントレ取締役。情報経営イノベーション専門職大学准授。2008年リクルート新卒入社。SUUMO事業の立ち上げに従事したのち、独立起業支援のアントレ事業部へ異動。 2019 年のアントレ・スピンアウトのタイミングでアントレの取締役に。
5年以内に、3つのステップを
ーーシコメルが提供するサービスは、今後どうなっていくのでしょうか?
現在は主に「仕入れ業務」のDX化が目下の課題ですが、これは第一段階に過ぎません。さらに2つのステップを想定しています。
現段階のシコメル1.0では「仕込みの改善」ですが、その次に控えるシコメル2.0で「受発注の効率化」を、そして最後のシコメル3.0では「経営改善」を提供したいと考えております。
ーー現在のモノはまだ3つステップがあるうちの1つ目なんですね!
シコメル1.0のステップはすごくシンプルで、要するに仕込みのアウトソーシングです。店舗の厨房で行っていた調理を、我々で請けて工場が仕込みます。
労働時間・労働力の削減に繋がるほか、キッチン面積も削減できるので、客席を増やして売上を伸ばす戦略も可能になります。
ーー食品工場側にもメリットはありますか?
はい。工場側のメリットは効率化です。魚の調理が得意な工場は魚ばかり、揚げ物が得意な工場は揚げ物を中心に……というように発注内容を固めることで生産性が上げられます。
ーーこれが「シコメル1.0」の内容ですが、進捗はいかがですか?
アプリを公開してまだ1年ほどですが、1,000店舗以上のアカウントを獲得しています。かなり良い調子だと思います。
ーーすごいスピードですね!
弊社スタッフの頑張りもありますが、戦後から累積する食品業界の課題が数字となって表れただけとも言えるでしょう。
人材不足はコロナの前からずっと飲食の悩みでした。シコメルというプロダクトを知ってもらうことで、改めてこの問題を認識してくれたのかなとも思います。
もしそうであれば、多少の採算は度外視してでもシコメルに挑戦した甲斐があるなと思います。
役員や株主などに食品業界の重鎮を揃えてようやく実現したサービスです。
同じことをするにしたって、小さいお店が工場に直接掛け合ったとしてもロットの問題や価格の問題で頓挫してしまう。我々が責任をもってやると覚悟を決めたからこそできた要因もあると思うと誇らしいです。
次に目指すのはシコメルだけで完結する本当のDX
ーーそれでは、シコメル2.0の「アプリのストア機能」について詳しく教えてください。
まずはメニューのシェアリングです。
たとえば、ある店のポテトサラダを他店舗に共有するとメニューを作った「オリジナル店」にも収益が入るモデルの確立です。ミュージシャンとカラオケ店のような関係ですね。
消費者側としては北海道のミシュラン店の味を東京の居酒屋でも食べられるような仕組みとなります。
ーー利便性以外にも訴求点があるんですよね。
はい。大手スーパーで売っているような既製品とは違った高いレベルのレシピを提供することで、「あのシェフの味が食べられる」というブランド性での集客も狙います。
ベーシックな品も並べますが、シコメルだからこそ手に入れられる「プロの味」を用意したいと考えています。「ミシュラン料亭の出汁」「有名店のビーフシチューの仕込み」などの提供ラインナップを揃えたいですね。こちらのストア機能については2022年の2月下旬にカットオーバー予定です。
ーーなるほど。「メニューのシェアリング」が2.0の内容なんですね!
それだけではなく、取引会社さんの受発注は全てシコメルのアプリで完結できる仕組みを目指しています。
たとえば店舗であれば、シコメル(工場)の他にも近所の酒屋に注文を可能にしたりなどですね。電話や FAX よりも効率的な受発注作業を提供し、受発注においても紙ベースのやりとりを世の中から無くしたいです。
そもそも「仕入れ」や「発注」という業務自体をゼロにすることも視野にいれています。たとえば、株主様にスマレジさんがいらっしゃいますので、そこと提携してどのメニューがどれだけ売れているかといった売上の内訳から受発注を自動化するとか。
不要な労働時間をどんどん削っていける工夫を施していきたいです。仕込み済みの食品を仕入れるためアプリの域を超えたサービスを見据えています。
ーーこの「シコメル2.0」とそれ以前の「シコメル1.0」の違いは?
シコメルを使えば使うほどご自身のお店にあったサービスにアップデートされ続け、より便利になることでしょうか。
たとえば、飲食店の仕入れ状況を把握していれば「そろそろ仕込みが要るはずでは?」というリマインドを送ることができます。その店が本当に必要な食品工場も見えてきますから、日々使ってもらうごとに、飲食店に新たな価値をもたらすことができると思います。
ーー食品工場側のメリットは?
食品工場側に対して提供するのは受発注の「見える化」です。
「シコメル2.0」まで成長したシコメルでは、受発注の量とタイミングが見える化されているので、「次の注文だけど、だいたい10kgくらいかなあ」「やっぱりやめます」というような雑なコミュニケーションが無くなります。
単純なことですが、「見える化」できるだけで工場が得られる安心は非常に大きく経営にも良い影響を与えると考えます。
そして、飲食・食品業界のインフラSaasサービスへと昇華
ーーでは、3つめの最終フェーズである「経営改善」について詳しくお願いします。
先ほど「シコメルを使えば使うほど経営がスムーズに」という部分に触れましたが、それをさらに発展させた形です。「シコメル2.0」までに培ってきたデータと、外部データを繋いで経営改善するSaas としての価値提供をしたいです。
「いま東京ではこんなメニューが流行ってますよ」というデータからくるトレンドをもとにレコメンドしたり、他店よりも高く購入している食材を指摘したり。工場側には、「販売先が分散していますが、もっとエリアを絞るべきでは?」「この食材の売上が落ちています。いっそのこと廃止しませんか?」などの提案をするようなサービスへと発展させるつもりです。
こうしたことは、受発注のデータがあれば割と簡単に予測可能になってくるはずです。
ーーなるほど。では、外部データを活用するとどんな情報が見えてきますか?
近年は外部APIが非常に充実しているので、それと連携して飲食店の知りたい情報を提供します。たとえば直近の例で言うと天気予報やコロナの感染者数の推移など。
こうした外部データを総合して「今週末の仕入れどうしよう?」「アルバイトのシフトは増やすべき?」という意思決定を客観的な論拠をもってサポートします。
機会損失は無くなり、経営も改善するはず。やはり飲食店寄りの話になってしまいがちですが、工場側としても「先読み」ができるだけで業務は著しく効率化に向かうのではないかなと思います。
シコメルを使い続けることで経営も上向く仕組みを作りたいです。
ーー「シコメル3.0」は飛躍的ですね!
シコメル1.0とシコメル2.0は商品の対価。シコメル3.0では経営改善 Saas への対価になります。たとえばダッシュボード的な機能をつけて月額1万円とかそういう感覚でお代をいただく形になりますね。
困ったらシコメルを開く、またはシコメル無しでは経営が出来ないといった飲食・食品業界のインフラとなるサービスになりたいです。
技術「だけ」では解決しない飲食・食品業界に必要なのは「業界の経験と現場の声」
ーーしかし、「シコメル3.0」ともなるとこれはかなりの規模になりますね。
そうですね。シコメルの戦略はどこのスタートアップでもできるモノではないことは確かですね。役員や投資家に最適な面子を揃えてようやく実現する代物です。
「食品」という誰もが触れる超巨大マーケットでかつ、戦後からあまり変わってきていないレガシー産業の変革は簡単な道のりではありませんが、だからこそ描くことのできる成長ストーリーがあります。
ーー最適なの面子がそろっているからこそ挑める?
平たく言えばそうですね。
たとえば、凄腕のエンジニア集団が食品業界に乗り込んで同じことをやろうとしても上手くはいかないでしょう。業界の苦労を知っている人が先導して提案することが大切です。
今取り組んでいる「シコメル1.0」に相当する「仕入れのアウトソーシング」でも苦心しているのは開発でも広報でも営業でもなくオペレーションだったりします。厨房と工場では考え方が異なるため、双方の気持ちを深く理解でき、意見を上手に橋渡ししてあげるオペレーターの腕と業界の知見が非常に重要になっています。どこの誰かもわからないかつ、業界経験がないただただテックやビジネスに強い会社が来てもすぐに門前払いをくらってしまうようなイメージですね。
オイシックスさんが農家さんの気持ちを深く知るために、起業した当時行われていた"農家さんと一緒に農業をする"ということに似ているかもしれません。それくらい当事者や現場の気持ちを理解することが重要と言うことです。
ーー技術だけではなく業界の不に対しての"想い"も重要になる訳ですね、、、!
はい。弊社はテック企業ですがそれ以前に食品企業です。食品業界はテクノロジー「だけ」で一変させるのは難しいでしょう。業界のビジネスモデルやビジネススキームだけではなく、現場の消えを聞き深く理解することが重要です。
ありがたいことに、この業界で戦えるだけの経験と技術と度量のあるメンバーがシコメルには揃っています。今後、一緒になって本気で奮闘できる新メンバーに出会えれば良いですね!