株式会社BEUYSの代表をしている上田です。
現在、都内で3店舗、「MM Canelé」というカヌレブランドを運営しています。
ただ、僕自身はパティシエでもなければ、もともと飲食業界にいた人間でもありません。
もともとはデザイン会社として、企業やブランドのビジュアルやコンセプトをつくる仕事をしてきました。
はじまりは、二人のデザインプロジェクト
BEUYSは、2011年に二人のクリエイターで始めた小さなデザインプロジェクトです。
名前は、ドイツの芸術家 Joseph Beuys(ヨーゼフ・ボイス)から取りました。
ボイスには「すべての人は芸術家である」という有名な言葉があります。
彼は絵画や彫刻だけではなく、人々の行為や対話、さらには社会そのものも創造の対象として考えていました。
僕たちも、デザインは単に「見た目をきれいにすること」ではないと思っています。
そして、デザインだけでブランドをつくれるとも考えていません。
どれだけ華やかな広告をつくっても、商品の魅力がゼロなら、広告を100かけても結果はゼロです。
一方で、商品そのものに1、10、100と魅力があれば、パッケージや店舗、接客、発信など、一つひとつのデザインがその魅力をさらに大きくしていく。
逆に言えば、広告に頼らなくても人から人へ伝わっていく。
それが強いブランドだと思っています。
僕たちが考えるブランドは、
・商品そのもの(プロダクト)
・パッケージ(包装)
・店舗やSNS(ビジュアル・世界観)
・買い方や商品の届け方(購入体験)
・スタッフの接客や言葉(コミュニケーション)
そうした一つひとつの体験の積み重ねによって、つくられていくものです。
長くクライアントワークをする中で、いつからか「自分たちで事業そのものをつくってみたい」と思うようになりました。
ロゴやパッケージだけではなく、商品も、店舗も、接客も、働くチームも含めて、一つのブランドをつくってみたい。
そんなところから始まったのが、MM Caneléです。
なぜ、カヌレだったのか
「デザインをやっていた人が、なぜカヌレなんですか?」
これは、よく聞かれます。
理由はいくつかありますが、カヌレというお菓子には、まだ余白があると感じたことが大きかったと思います。
例えば、チョコレートやシュークリーム、バームクーヘンには、「これ」と思い浮かぶブランドがあります。
一方で、カヌレには、まだ「カヌレといえばここ」という第一想起されるブランドがない。
カヌレはいまやコンビニでも買えるほど身近なお菓子になりつつあるのに、です。
だったら、自分たちがその存在になれないだろうか。
そんなことを考えました。
また、絵文字は日本から生まれ、今では世界中で使われているコミュニケーションツールです。
ドーナツやケーキの絵文字はあるのに、カヌレの絵文字はまだありません。
だったら、自分たちなりの方法で、カヌレという存在そのものをもっと身近にできないだろうか。
「カヌレが絵文字になるまで。」
は、そこから生まれたブランドスローガンです。
いつか「カヌレ」が、それくらい当たり前のお菓子になったら。
そのとき、本当にカヌレの絵文字ができていたら面白いなと思っています。
遠い目標ですが、そのくらいの方が長く続けられそうです。
1店舗目から、3店舗目へ
最初の店舗を清澄白河につくったときは、本当に分からないことだらけでした。
僕たち自身、飲食店を運営するのは初めてです。
・商品をつくる
・パッケージをつくる
・店をつくる
・販売方法や自分たちらしい接客を考える
・お客様に届ける
デザイン会社の日常とは、まったく違う毎日が始まりました。
それでも、一つずつ試して、失敗して、直していくうちに、少しずつお店らしくなっていきました。
そして2026年、駒沢大学駅に2店舗目、8月には初台に3店舗目をオープンしました。
会社をつくって約1年半。
振り返れば、かなりのスピードで進んできたと思います。
でも、僕たち自身は「急成長している会社をつくろう」と思っているわけではありません。
目の前にある「もっとこうした方がいい」を一つずつやっていたら、結果としてここまで来た、という感覚の方が近いです。
まだ、全然整っていません
ここまで読むと、順調そうに見えるかもしれません。
実際は、そんなにきれいではありません。
会社としての制度も、店舗のオペレーションも、まだまだ改善することがあります。
昨日決めたことが、今日変わることもあります。
新しい店舗をつくれば、新しい問題も出てきます。
「これ、誰がやるんだっけ?」
となることも、普通にあります。
大きな会社のように、役割もルールもキャリアも全部用意されている環境ではありません。
でも、僕はそれを悪いことだとは思っていません。
決まっていないということは、自分たちで決められるということでもあるからです。
「もっとこうした方がいいんじゃないですか?」
と誰かが言ったことを、次の日には試している。
うまくいけば、それが新しいルールになる。
今入ってくれる人たちが考えたことが、5年後、10年後には「MMでは昔からこうしているよね」と言われているかもしれません。
今は、そういうタイミングです。
最初は、店舗から
これから入社する方には、まず店舗に立ってもらいます。
接客もします。
カヌレもつくります。
掃除もします。
商品を並べたり、在庫を数えたりもします。
ブランドづくりやマーケティングに興味がある人からすると、
「それをやるために入ったんじゃないんだけど」
と思うかもしれません。
でも、僕たちは現場を知らずにブランドをつくることはできないと思っています。
どんな商品をお客様が選ぶのか。
何を言われたときに喜んでもらえるのか。
どこでスタッフが困るのか。
なぜこの作業には時間がかかるのか。
そういうものは、資料を読んでいても分かりません。
お客様と商品の間に立って初めて分かることがあります。
だから、店舗は下積みではありません。
ブランドを理解するための、一番近い場所です。
その先は、かなり自由です
一方で、「3年間は店舗で修業してください」という考えもありません。
基本的な店舗運営を任せられるようになれば、早い段階で店舗マネージャーを任せたいと思っています。
売上を見る。
チームをつくる。
スタッフを育てる。
もっと良いお店にする。
そこから先は、その人の得意なことや、やってみたいことによって変わります。
新しい店舗をつくることに興味があれば、店舗開発へ。
人にブランドを届けることが好きなら、マーケティングへ。
商品を考えるのが好きなら、オリジナルグッズや新商品の企画へ。
POPUPや他ブランドとのコラボレーションにも、どんどん関わってもらいたいと思っています。
会社が小さいので、仕事と仕事の間にあまり壁がありません。
それを「大変そう」と感じる人もいると思います。
逆に、「いろいろやってみたい」と思う人には、かなり面白い会社だと思います。
「何ができるか」より、「同じ温度でやれるか」
採用では、経験やスキルももちろん見ます。
でも、それ以上に大切にしているのが、温度感です。
ブランドを大切にできるか。
お客様を大切にできるか。
一緒に働く人を大切にできるか。
そして、
「もっと良くできないかな」
と考えることを楽しめるか。
すごい経歴がある人を集めたいわけではありません。
分からないことがあったら聞く。
失敗したら直す。
困っている人がいたら助ける。
良いアイデアがあったら言ってみる。
そんな当たり前のことを、同じくらいの温度で大切にできる人と働きたいと思っています。
まだ途中だから、一緒につくれる
MM Caneléがこれから何店舗になるのか、僕にもまだ分かりません。
10店舗かもしれないし、100店舗かもしれない。
日本だけなのか、いつか海外にもあるのか。
カヌレ以外のブランドをつくっているかもしれません。
決まっていないことがたくさんあります。
でも、一つだけ決めていることがあります。
自分たちにしか創れないものをつくること。
完成した会社に入るというより、これからの会社を一緒につくってみたい。
そんな人と出会えたら嬉しいです。
そして、いつか本当にカヌレの絵文字ができたら。
その日はみんなで、ちょっと自慢したいと思っています。