曽我部 卓のプロフィール - Wantedly
株式会社83Design, シニアデザイナー ...
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お読みいただき、ありがとうございます。
モノづくりを楽しみ、本気で没頭するデザイナー集団「83Design 」です。
工業デザイナーには、大きくわけて2つの所属があります。インハウス(メーカーなど)と、83Designのようなデザイン会社です。もちろん、個社ごとの性質もありますが、インハウスとデザイン会社には実際どのような違いがあるのでしょうか。
そこで今回は、大手インハウスデザイナーから83Designにジョインした曽我部 卓さんにインタビュー。デザインのアウトプット、業務範囲、文化など、数々の違いを率直に語ってもらいます。
ーー 工業デザイナーになるまでの歩みを教えてください。
きっかけは、幼少期に観たカーデザイン番組です。その後、グラフィックデザイナーを目指していた高校時代もありましたが、SONY製品のデザインにダントツで憧れていて。
Web・グラフィック・工業・UIなど、デザインって今ではこれだけ細分化されていますが、使いやすさをも見た目も良くするという点では、原点はみんな同じ。基本的なグラフィックデザイン感覚を活かしながら、大学からは工業デザインに転向し、大学卒業後は念願のSONYに新卒入社しました。
ーー SONYで一番心に残っているプロジェクトは何ですか?
僕は定年までの38年間、ウォークマン・VAIO・PlayStation・デジタルカメラα7・ヘッドフォンなど、ほぼすべての製品群のデザインを担当。ありがたいことに、40を超える国内外のデザイン賞もいただき、最後の作品となったワイヤレスヘッドセットLinkBudはグッドデザイン金賞、Reddot、ならびに全国発明表彰の発明賞をいただきました。
中でも心に残っているのは、入社4年目ほどで担当した知る人ぞ知るシースルーモデル『WM504ウォークマン』。僕起点で商品企画から練って、事業部に直談判したところ、みんな共感してくれて。最終的には製品化まで漕ぎ着けました。SONYの得意とする「デザインからの商品提案」の良い例ですね。
ーー WM504ウォークマンでは、具体的にどのようなアウトプットを行いましたか?
何よりも、グラフィックを非常に意識しましたね。
当時のウォークマンは、カセットテープ式。ウォークマンにもいろいろなバリエーションがあったけど、工業デザイン要素が強かったんです。黒くて、なんとなく機械的な。でも僕は「カセットを隠してしまうのはつまらない。」と思って、メカ自身の美しさとカセットテープのグラフィックそのものが“製品の顔”になる透明なウォークマンを考えました。その後アップルなどが展開した透明をテーマとしたFrutiger Aeroデザインのモトになったと自負しております。
実は、ポップアートの巨匠アンディー・ウォーホルの作品にも取り上げていただいたんです。ウォークマン=聴く だけではなく、ファッションとして楽しむ。グラフィックデザインとしても認められた製品だと思ってます。
使いやすさのレベルは下げず、ユーザーの目を楽しませる。この実現可能性をどれだけ引き上げられるかは、工業デザイナーの腕の見せどころです。
ーー 定年退職後の歩みを教えてください。
SONY時代の知人からのオファーで家電メーカーのテレビのデザインのチーフデザイナーを務めましたが、かねてから興味のあったデザイン事務所を探していました。
ーー 83Designへの入社の決め手は何だったのでしょうか?
デザインのアウトプット(方向性)と、矢野さんの人柄への共感でしょうか。
HPを見た瞬間に、アウトプットが僕が求めているものと同じだと思ったんです。操作性だけでなく、グラフィックにもこだわっている。かわいらしさ・あたたかさをどことなく感じました。
デザインのアウトプットは、会社よりもデザイナー個人に依存すると思っています。SONYを例にしても、個人個人のアウトプットはだいぶ異なり、ブラッシュアップしてようやくSONYらしさが表れる。であれば、共感できるアウトプットの場所で働きたいなと。
「これをやりたい、ここをこうしたい。」を伝える時の共通言語も、矢野さんと同じでした。具体をお伝えするのは難しいですが。デザインの方向性と共通言語は、入社してからも変わりませんね。(シュッとかカチッリとか擬音が多い。笑)
ーー SONYと83Designの違いを教えてください。
個人的には、以下の通り2つの違いがあると思っています。
①”会社”という枠を超えたモノづくりの機会があるか
②チームプレーでモノづくりを進める文化があるか
ーー 「①“会社”という枠を超えたモノづくりの機会」について、教えてください。
SONYでは、基本的に会社を超えることがありません。コンセプトデザイン〜製造・販売まで、基本すべてが社内で完結します。
職種ごとに役割が決まっているので、デザイナーの業務はデザインに関わる範囲内。実際の設計・検証は担当外な場合が多いです。SONYブランド全般に関わることができる一方で、家電という製品の縛りもあります。
83Designでは、会社内で完結することが一切ありません。クライアント様、時には広告代理店様を巻き込みながら進めるので、調整力・コミュニケーション力を問われる難しさはあるでしょう。一方で、家電・文房具・家具、時にはオリジナル製品をつくるなど、製品群の幅は無限。幅を広げて実力を高めたい工業デザイナーには、ぴったりな環境だと思います。
ーー 「②チームプレーでモノづくりを進める文化」についてはいかがですか?
まず、SONYは徹底した個人プレー、83Designはチームプレーでモノづくりが進んでいきます。
SONYでは、1プロジェクトに1名の担当者を決め、基本的に他のデザイナーが手を触れることもありません。担当者が責任をもってアイデア展開を行い、企画設計とすり合わせを行いながら、毎週の会議でデザイナー全員でブラッシュアップする。これを繰り返し、幾つかのデザイン決定会議体を経て最終デザインを決め、その後は担当者のみで調整を進めていきます。
83Designでは、適宜、複数人でアイデアを出し議論を交わします。デザインするものがヘッドフォンだとしたら、ドライバーユニット、ハウジング、ヘッドバンドというパーツひとつひとつを、各デザイナーがつくって持ち寄る。要は、ひとつの料理を複数人でつくるイメージです。ひとりで味付けするのとは、訳が違いますよね。
アイデアが増えれば、必然的にコミュニケーションのラリーも増える。アイデア展開を共有しながら短期間でまとめあげるアートディレクター的な要素も求められます。ひとつのデザインを共創しようなんて、僕ははじめての経験でした。設計・検証も必要であればすべてやるので、今でも戸惑うことがあります(笑)。
ーー 「アイデア展開の量」とありますが、具体的に教えてください。
アウトプットの量は尋常じゃありません。SONY時代に、大量のアイデア出しのことをのことを「1000本ノック」と呼んでいたことがあります。所謂ブレーンストーミングですね。とは言っても、担当者の裁量に任せられている部分もありましたが。
比べて83Designは、毎日が1000本ノックです。良いも悪いも、アウトプットをとにかく出すことが大前提。色・設計・視認性・操作性、どこをとっても膨大なアイデアが飛び交っています。これが本物の1000本ノックですね(笑)。
ーー 83Designでのプロジェクトの中で、紹介したいものはありますか?
今年7月に発売されたオープン型のヘッドフォン『nwm MBH001』です。完了まで1年以上、かなり長かったと思います。83Designならではのチームスタイルで、全ての要素をチームで創り上げました。
オープン型ヘッドフォンは、名前の通り耳を塞ぎません。メリットは、耳の中の蒸れなどを防いだり、装着したまま会話・家事・運動を楽しめること。デメリットは、その形の特性上発生してしまう音漏れです。そこでnwm MBH001は、音漏れを防ぐ独自技術を取り入れ、使いやすさを追及しています。
ーー どのようなアウトプットを行なったのか、教えてください。
デザインといっても、いくつもの味付けがある。その中で、独創的かつ新しい技術を、デザインで表現したい。そこで考えたのが、敢えてトレンドには当てはまらないデザインです。
ヘッドフォンといえば、丸くて柔らかい。このデザインは、いろんなメーカーでも見かけることでしょう。一方僕たちはアンチテーゼ的な考え方で、どのディテールもエッジを立てて仕上げました。
過去トレンドになっていたカチッとしたデザインを、今風に新しくアレンジ。円の中は抜けていて、無駄な装飾もサーフェイスもない、ミニマルなデザインで表現しています。
ーー 「敢えてトレンドに合わせない」という判断は、依頼にあったのですか?
依頼はいただいてません。
「ヘッドバンドが良いのか、耳にかけるのが良いのか」といった感じで、たくさんのアウトプットを出しながら決定していきました。最後の候補に残ったのは3案。うちの1案には、実はトレンドを取り入れた丸いデザインもあったんです。
最終的にクライアント様に認められたのが、敢えてトレンドに合わせないエッジの効いたデザイン。とても気に入ってくださったようです。ヘッドフォンのトレンドの中に、新しさを生み出した瞬間でした。
この機会をひとつのきっかけとして、イヤフォンにも同じデザインベースを使っていけるのかなと思います。
ーーどんなデザイナーと一緒に、デザインを楽しみたいですか?
「これをやりたい、ここをこうしたい。」を伝える時の共通言語が同じ人、です。
デザイナーは基本、同じような大学に入り、見て学び育っているので、そこまでズレはないはず。一方で、言語化しにくいことを例えば擬音で表現する時とか、どんな表現でどう伝えるかは、個人の感性が大きく影響していると思います。
共通言語が同じだと、なんとなく伝えたいこともわかる。議論もスムーズで、さらにレベルの高いデザインを実現できるかなと。たくさんの仲間たちと、これから始まる新しいモノづくりを一緒に楽しみたいですね。
大手インハウスデザイナーとして経験も豊富。「デザインへのアウトプット」という芯だけは、絶対に変えない。それでも、学びや新しい発見がまだまだあるようです。83Designだからこそ、あなたが経験したことのないモノづくりを体験していただけると思います。
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