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【vol.2】エンジニア教育のすゝめ ~「オンボーディング研修」を支える講師の裏側~

AGESTのオンボーディング研修

AGESTでは、入社翌日から参加する「オンボーディング研修*」というものが存在しています。

そのカリキュラムの1つに、中途入社社員各自のレベルに合わせて最短2週間でソフトウェアテストの基礎を学べる研修カリキュラムがあります。これらをを支えているのが、AGEST Academyの講師陣です。

*...入社初日はオリエンテーションに終日参加いただき、翌日以降中途社員をスムーズかつ迅速に新しい組織に慣れ、各人のパフォーマンスを向上させることを目的とした期間/カリキュラムを指す

※AGEST Academyについては、こちらの記事もご覧ください。
https://www.wantedly.com/companies/company_1428464/post_articles/935595

・エンジニアとしての経験やスキル、知識もバラバラな新入社員に対して、どのような計画で研修を実行しているのか?
・習熟度はどのような観点で測っていくのか?
・講師として、教えるうえでどのような工夫をしているのか? などなど、Academyで講師を務める社員にもインタビューを行いました。


研修を支えるAGEST Academy講師たち

複数名いる講師陣の中でも、今回はオンボーディング研修を中心となって支える講師2名にインタビューをしました。

-講師紹介-

Sさん(以下、S)…講師歴3年、AGESTの前身である株式会社デジタルハーツ(以下、デジタルハーツ)のエンタープライズ部門に在籍していた頃から、少人数向けの講師業務をスタート。Academyの立ち上げメンバー1人であり、現在に至るまで北海道在住で、フルリモートにて講師業を行っている。

Nさん(以下、N)…講師歴12年、AGEST在籍期間は1年未満と短いものの、これまでのキャリアを活かして、オンボーディング研修のメイン担当として活躍。子育てしながら働くママさん講師であり、基本的に在宅勤務で業務を行っている。

講師キャリアを振り返り、AGEST Aacdemyで気づいたやりがい

まず、お二人のご経歴を教えてください。また、AGESTで講師業を務めるようになったのは、どのようなキッカケがあったのでしょうか?

S:私はこれまで医療関係や観光業など、様々な業界で働いたことがあるのですが、『ゲームを仕事にしてみたいな〜』と、完全に自身の趣味を理由にデジタルハーツへ入社しました。当時はいずれ講師業を任されるなんて、想像もしていませんでした。

大好きなゲームに囲まれる日々を想像してワクワクしていたのですが、エンタープライズ系のプロジェクトに縁があり、テスター⇒テストリーダー⇒テスト設計者⇒PM…と徐々に任せられる仕事レベルも上がっていきました。そんな中、2022年4月に株式会社AGESTが誕生して、私の在籍する北日本エリアの1つである札幌ベース*で「テスト設計ができる人を増やす」という方針を聞き、エリア内では割と経験が豊富だったことから、設計研修を運営するお仕事が舞い降りてきました。これが私の講師というキャリアがスタートしたきっかけです。

*…AGESTは支社オフィスのことをベースと呼称する

当初は札幌ベース内のみで、経験の浅い方に向けてOJTのような立ち位置でテスト設計の基礎を教えていたのですが、「在籍拠点や経験問わず、QAエンジニアとしての基礎を築き直す機会を設けよう」という方針から、専門部署である「AGEST Academy」に異動になって現在に至ります。現在の研修が生まれたのも、この方針がキッカケでした。

N:私は新卒で入社した会社で、組込みシステム開発者向けの研修講師を務めていました。3日間ほどの勉強会スケジュールを計画し、運営するというサイクルを繰り返していて、現在との大きな違いは参加者が社外の方々という点でした。

「自身の知識が誰かの役に立つ」という点に、講師業のやりがいを感じていました。ただ時代も移り変わっていきますし、もっとプロジェクト現場のノウハウを活かせる研修を実施したいと考えていました。一方で子供もまだ幼く、実際にプロジェクトにアサインさせてもらうのは現実的に厳しく、ジレンマを感じていました。

自身の希望にマッチした環境を探すべく、転職活動を始めて、元々品質保証やテストの仕事に興味があったこともあってAGESTの求人内容が目に留まりました。プロジェクトに携わる部門と密に連携して、そこで得た知見をカリキュラムに落とし込み、エンジニアに還元する―こうしたプロセスに興味が湧き、「Academyってどんな集団なんだ?」ともっと詳細を知りたい気持ちから選考に進み、自身の講師経験も役立てられそうなことも相まって入社に至りました。2024年1月に入社して、まだ社歴1年未満ですが…Sさんが担当されている研修に4月からサブ講師として参加し、実際の学習内容をインプットし、その年の7月から自身もメインで研修を運営するようになりました。

講師という仕事で、一番「面白い」「やりがいがある」と感じるのは、どういった部分ですか?

Sさん:1番の魅力は「さまざまな人と関わることができる」点だと思います。
ポテンシャル採用で入社されたQA知識まっさらな方だったり、知名度のある企業でQM*経験のあるベテランの方だったり、経験も年齢もバラバラな方が毎月集まる環境には中々立ち会えないと思います。同じ事象に対しても、出てくる意見も千差万別。おかげで視野が常に広く保てていると自負しています。

*…クオリティ・マネージャー、またはクオリティ・マネジメントの略称。

加えて私、飽き性でして…。同じことを繰り返し行う業務は向いてないと自覚しているんです。現在のAcademy講師という仕事は、日々「そういう考えもあるのか〜」と自分自身も学ばせていただいており、講師を担当し始めて以来、一度も飽きは訪れてません!(笑)

Nさん:私はシンプルに「目の前の人のお役に立てている」という点が1番のやりがいです。
私は元々人前に出て話すことは得意じゃないのです…。ただ「自身の知見を活かしつつ、適切に研修を運営して、学ぶ機会を提供している」役割が講師業を続けさせてくれています。

QAを含むIT業種は、技術力が注目されます。プロジェクトの明暗も、エンジニアのスキルにかかっているといっても過言ではないと思います。そんな彼ら/彼女らの育成する時間は、会社にとっても非常に重要な投資だと感じていて、ダイレクトに会社への貢献を感じられる貴重な役割だと思います。

■研修初日では自己紹介交えて交流

小さな積み重ねで大きな成果を生むために、日々工夫するコミュニケーション

反対に、「難しい」「苦労する」ことはあるのでしょうか?

S&N:人に教えるということ全般が難しいです…!!

Sさん:その難しさも、もちろん私たちのやりがいにつながっているのですが…やっぱり言語コミュニケーションに費やす時間が一番多いかと思います。相手の受け取り方次第で、本来伝えたかった意味と180°異なる意味で伝達しちゃうこともよくあります。「どういう風に伝えると、100%自身の考えを伝えられるのだろう?」と、悩むことが多かったなと思い返します。

ただ講師歴も長くなってきて、全てを伝えきることに執着しないマインドに切り替わってきました。研修という性質上、自身で考えて気づくことも学ぶ上で重要なプロセスです。ポイントは伝えるけど、ダイレクトに答えに導くようなキーワードは出さない―など、最近は「コミュニケーションの塩梅」を意識することに努力しています。

Nさん:前職との比較にもなりますが、社内向けの講師経験が浅いので、社員間の適切な距離感を保つのは時折難しく感じます。「淡々と事務的に研修を進めても、参加者はつまらないかな」「雑談は挟みつつ、メリハリをつけるにはしっかりとタイムマネジメントしなくちゃいけないな」などなど、コミュニケーションを大切にすることを念頭に置いているがゆえに、研修そのものに悪影響が出ないよう配慮しています。

研修終盤では、参加者のプレゼンテーションについて講師サイドで振り返ることも欠かしません。これまた対象者の特性を見極めて、自身が感じたことを言語化する難しさを痛感しています。Sさんはいつも的確な表現をされるため、参考にさせてもらっています。

Sさん:自身の語彙力が問われる点でもありますからね、私も駆け出し講師時代は苦労してましたよ(笑)ただこれも経験を重ねていくにつれて表現が豊かになりましたし、何より年間約100名程のエンジニアの方と関わるので、彼ら/彼女らのアウトプットから「こんな言い回しがあるのか!」とインスピレーションを受けています。講師といえど、我々も学んでいることはたくさんあるんだなと、今改めて実感しています。

お二人とも「講師という仕事の難しい点」については、研修参加者とのコミュニケーションについて挙げられていました。自ら工夫している点はありますか?

S:参加者の年齢層を考慮して雰囲気づくりをすることですね。基本的には肩肘張らずに、カジュアルな雰囲気を保てるようにしています。その方が参加者の方々も質問しやすく、かつ参加者同士での交流を促せていると思います。

一方で、QMの方やベテランのテスト設計者が多く参加しているケースだと、少しフォーマルな雰囲気を意識しています。この場合、我々より年齢が高い方であることの方が多いため、マナーとしてはもちろん、あまりにフランクすぎると参加者と講師間での温度差が生じてしまって、逆にギクシャクした雰囲気になってしまうことを回避するようにしています。

N:研修初日の印象で、何となく参加者それぞれのお人柄を把握できるように意識しています。物怖じせずに人前で話せる方、緊張しがちで上手く話せない方、どういったタイプの方でも安心して研修期間を過ごし、かつ平等にコミュニケーションをとってもらえることを大切にしています。

ツール上で直接喋りかけてくださるのも良し、チャットを送ってくださるも良し、ご自身がベストだと感じる方法でコミュニケーションをとって、自身の学習チャンスを無駄にさせないことも講師陣の役目だと感じています。

■オンラインコミュニケーションツールも活用


研修の特徴の1つに「スキルも経験もバラバラ」という点が挙げられると思います。習熟スピードも異なるかと思いますが、各人の習熟度の計測に対する工夫や、習熟を促すために意識的に行っていることはありますか?

S:大前提として、スキルや経験を考慮したカリキュラムの変更は行いません。座学を終えたら演習に移行するのですが、その際はリアルタイムで進捗が追えるようGoogle Work Spaceを活用しています。その様子を覗き見させてもらっていて、「あ、想定スケジュールより遅れているな」「座学で学んだ技法が上手く使えていないかも?」など、何に困っているかを把握し、本人からどのような質問が届くかを想定し、その回答の準備をします。明らかに困っている様子が伺えた際には、質問が届く前にこちらから助け舟を出すことも稀にあります。

N:「平等に習熟してもらう」ことも大切ですが、それは経験によって致し方なく差が出てくるところでもあるので、「誰も置いていかない」という表現の方がしっくりくるかもしれません。
専門用語1つとっても、それを理解できない人もいれば、知っている単語だけど前職までは違うニュアンスで使っていた人など、捉え方は異なります。なるべく用語に頼らない教え方を意識したり、用語を使用する際には説明も欠かさず行ったり、小さな配慮が大きな違いを生むと感じています。

S:あとは我々講師陣が「ベテランだから」「QMだから」と参加者の経験によって抱きやすいバイアスを捨てることも重要です。確かに現場経験は豊富で第三者検証に長けていたとしても、我流で知識を蓄積してきた方々も少なくなく、テスト自体の経験は平均的なケースもしばしばです。そのような方でも、配属部門からの「改めてQAの基礎を固めてほしい」という希望もあることから、「AGESTのやり方」を教えつつ、固定概念を矯正し、初心に返って学び直してもらう楽しみを提供することも習熟度には良い影響を及ぼしています。

企業内教育機関として、今後目指していきたいビジョン

講師目線で「これこそAcademy研修の醍醐味だ!」といった、独自性・優位性はどのような部分でしょうか?

N:少数精鋭だからこそ、フットワーク軽く行動できる点は講師として魅力に感じます。大企業かつ社外向けの研修を企画する部門だと、決まりきった時間割にあてはめられ、良くも悪くも参加者の習熟度は度外視して研修を進めます。「研修を運営すること」が目的ではなく、「研修を適切に運営し、なおかつ参加者にテスト技術の基盤を築いてもらうこと」を目的としているため、より参加者との距離も近くて、都度サポート体制をカスタマイズしながら学習機会を提供できる点は優位性だと思います。

S:JSTQBやJCSQEなどを代表とするテスト技術に関する国際資格が存在していますが、それらを受験するためにも基礎学習というのは重要な役割を果たすはずです。私たちAGEST Academyは、そういった「QAのプロになるための最初の一歩を支える」ような存在かと自負しています。将来的に市場価値の高いQAエンジニアになれるであろう人材たちの育成に携われるといった点は、当社ならではの独自性に思います。

今後計画していきたい研修プランなども含めて、「AGEST Academy」の理想の姿を教えてください!

N:毎月メンバーとの定例MTGで「さらに実りある研修にするには」というディスカッションは欠かさず行うようにしています。現在は、研修における習熟度やプレゼンテーション成果を配属部門に共有し、プロジェクト参画や部門サイドでの育成計画に役立ててもらっています。

今後は少し視点を変えて、「このレベルまで到達したい」「こういう設計ができるようになってほしい」など、本人と部門の意見を交えた研修企画ができる機会を設けられたらなと考えています。それらを実現するには時間はもちろん、部門の協力も必要となります。その基盤を作るべく、現在は自身も現場の理解度を深めていく準備期間でもあると思っています。

S:現在はあくまでも「基礎」に重きを置いています。もちろんそれが重要だという認識に変わりはありませんが、もっとプロジェクト参画を見据えた研修も企画していきたいと思っています。プロジェクトマネジメント研修や品質評価研修など、一概に正解はない領域かもしれませんが、経験問わずこういった研修を受けてインプットすることで、参画中のプロジェクトにおいて良質なアウトプットを還元できるような仕組みづくりをしていきたいです。

AGEST Academyの創設者である高橋寿一さんが唱える「ソフトウェア品質領域におけるトップレベルエンジニアの輩出を目的とした教育・育成機関」という本来のビジョンからブレることなく、今後もエンジニアの成長と共に、会社の成長を支えられる集団でいたいなと思います。


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