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IPO STORY #01 WebコンサルからSaaSへの転換ビジネスの相棒と歩んだIPO

起業家とジャフコの出会いから上場までの軌跡を紐解く「IPO STORY」。見事に上場を掴み取った起業家の今だから語れるエピソードや想い、これからへの展望を語ります。

今回は、2021年2月にマザーズに上場した株式会社WACUL 代表取締役CEO 大淵亮平氏と、ジャフコ担当キャピタリストの坂祐太郎による対談をお届けします。

【プロフィール】

代表取締役CEO 大淵 亮平 (おおぶち・りょうへい)

1987年生まれ。京都大学経済学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ株式会社に入社。テクノロジー・メディア・テレコムセクターで新規事業の開発や経営戦略の策定に従事。株式会社WACULを共同創業者として設立し、2011年9月に取締役COOに就任。営業・開発など事業面から財務・人事など管理面まで幅広く管掌。その後、2017年12月に代表取締役CEOに就任。企業のデータドリブン経営、デジタルトランスフォーメーション推進に取り組む。

【What's 株式会社WACUL(ワカル)】

「テクノロジーでビジネスの相棒を一人一人に」をビジョンに、セールス&マーケティングのDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する株式会社WACUL。AIによる分析でWebサイトの成果を最大化する「AIアナリスト」は、データ分析から改善ポイントの提案、施策の管理と成果の検証と、デジタルマーケティングのPDCAを支えている。

2010年9月に設立。2015年6月、2016年9月にジャフコより資金調達を受け、2021年2月19日にマザーズ上場。

「Webサイト改善」のニーズの高さに、WACULの将来性を感じた

坂:

WACULさんと最初にお会いしたのは、創業して2年半ほど経った2013年3月あたりでしたね。

大淵:

メンバーが5人程度だったときに、当時の雑居ビルに来ていただきました。当時は、Webコンサルティング事業がメインで、そんなタイミングで、「なんでうちに来たんだろう」と思っていました(笑)。


坂:

UI/ UX に興味があって当時のWACULホームページを見ていたら、大手企業のコーポレートサイトの制作事例が載っていたんです。なんでこんなに小さな会社が、そんな大手企業の案件を受注しているんだろうと気になって、会いに行ってみたのがきっかけでした。

大淵:

当時はコンサルの会社でしたし、経営戦略上、まだまだ外部株主を入れるのは先だと思っていたので、やんわりと出資をお断りした記憶があります。

坂:

そうでしたね。でも、僕はどこかで今後接点がありそうな会社さんだと感じたんです。2013年時点で、今の「AIアナリスト」のようなプラットフォームを作りたいという話をしていて、面白そうだな、接点を持っておいたらよさそうだなと思っていました。

大淵:

その後、資金調達を受けようと意思決定したのは、2015年1月でした。

もともとWACULは、コンサルティングファームにいた私が、私の大学の先輩である前社長と2人で立ち上げた会社です。2018年に組織拡大フェーズに移り変わる中で私がバトンを引き継ぎました。


前社長は前職の経験からWebコンテンツ制作やマーケティングに知見があり、私もテック系・通信系の会社にコンサルティングをしていたので業界知識があった。両者の得意領域であるWebコンサル事業を少数精鋭でやっていこうという考えがありました。経営陣が一番先頭に立って、現場で価値を出しつつ、そこで培った知見を一般化してプロダクト化・機械化する道を模索していました。

坂:

2014年の年末に連絡をいただいて、「AIアナリスト」の前身となるプロダクトのSaaS化を進めていきたいので、資金調達をするべきかという相談を受けました。当時はまだ類似のサービスはなかったですし、ポテンシャルも大きいサービスだと感じたので、調達するべきだと思う、うちで投資しますと答えました。当然社内の決裁を取る必要はあるので、私一人で決められるわけではないんですが…(笑)。個人としてはすぐにでも投資したい会社・事業でした。

大淵:

意思決定のスピードが早かったですよね(笑)。

坂:

僕は当時、マネーフォワードさんをはじめ様々な企業を担当していて、どこも同じ課題があることに気づいていました。テクノロジードリブンで非常に優秀な方が集まっているスタートアップ企業ですら、Webサイトの改善には全然手が回っていませんでした。Googleアナリティクスの分析が大変だといろんな方から聞いており、「AIアナリスト」はまさにその課題を解決するサービスだと思いました。なので、実は事前のデューデリジェンスはほぼ終わっていたんです。

さらに大淵さんが、「Webサイトの改善はもちろん、WebサイトのデザインすらもAIによって自動化できる」という、想像を超えるような話をされて、驚いたのを覚えています。ニーズがあるだろうし、できそうだなと思ったのが、投資を決めた理由です。

大淵:

そうでしたね。Webサイトの改善点をAIが指摘してくれて、デザインを作って運営してくれたらいいなと構想を語っていました。もちろん今でもその構想は活きています。初回ご出資時、何ならその前から戦略の根幹となるコンセプトは変わっていなくて、途中途中にある業態や組織の変化をずっと坂さんには見てきていただいていますね。


ハンズオンの営業支援から経営課題の相談まで、全てにおいて助けられた

大淵:

ジャフコさんには、「AIアナリスト」のリリースと同時に3億円出資していただき、そこから泥臭く二人三脚でやってきました。坂さんとは同い年で、「一緒に成長していこう」という想いを共有していた気がします。

坂:

僕もキャピタリストとしてまだ駆け出しだったので必死でした(笑)。

まずは出資直後から、営業先をできるかぎり紹介し、WACUL3人、ジャフコチーム3人の営業6人体制で、「100件紹介キャンペーン」等もやっていましたね。

大淵:

ジャフコさんのネットワークには本当に助けられました。WACULが直接営業に行くよりも、ジャフコさんに紹介してもらっていく方が、信頼度が違いますから。

坂:

営業支援で入り込みながら、経営課題についても、洗いざらい話し合っていましたよね。

大淵:

そうそう。投資家の方にそこまでフラットに、洗いざらい相談するのはダメなんじゃないか…という悩みも含めて。上場企業に足る、いや上場しようがしなかろうがですが、企業として・組織として・経営体制としてこのまま進むのが正しいのだろうかというような自分が率直に感じたこともお話させていただいたりしました。

坂:

IPOに向けた事業拡大と組織体制の強化においては、大淵さんが代表に就いたことで、やれるようになったことが多かったですね。

大淵:

そうですね。前の体制だと、他に誰もやらなかったので(笑)、自然と管理部門を管掌するようになり、結果として営業戦略やプロダクト開発という、事業の根本的なところに自分で手を加えて着手することが徐々にできなくなってきてしまっていました。

「なんでこんなプロダクトを作っているんだろう」というものも取締役という立場で言うのもなんですが多発していましたし、それが当初の戦略コンセプトやエクイティ・ストーリー(資金調達後の事業戦略、成長戦略を投資家に説明するもの)とも少しズレが出てきていたので追加の資金調達をする際にどのようにステークホルダーに説明していくのか方針を決めるのも難しくなっていた。

そんなときに前社長自身に、経営じゃないところで新たな挑戦がしたいという意向があり、バトンを受け継ぐことにしました。


事業家サイドの大変さを、身をもって知った

坂:

代表就任となった2018年のタイミングで、それまで大淵さんが担っていた取締役CFOのポジションを僕が担うことになりました。組織体制が変わるタイミングで、新たにCFOを採用する時間がなかったので、それまでのつなぎ役という感じでしたね。

大淵:

そうです。組織の状況がわかっていて、WACULに対する同じ想いを持っていて、給与をはじめお金のことを全面的に任せられる人材は誰がいるだろうって考えたら、坂さんしかいなかった(笑)。出向という形で来ていただけないかお願いしました。




坂:

入ったらもう、やるべきことの多さに驚きの連続でした。キャピタリストは降りかかってきた課題を一人で解決することが多いのですが、役員の仕事は、チームに振り分けていって課題解決を目指さなくてはいけない。これまでやったことのないような仕事内容を任されて、うまくやれている感覚がないまま走っていました。

大淵:

僕も代表就任直後から、プロダクトを再整理し、会社としてどこを目指すのかという事業戦略を考え直し、組織カルチャーの言語化も一気に進めなくてはいけなかった。みんなが、手一杯な状況がしばらく続きました。

坂:

僕がCFOになって得た最大の学びは、投資家と事業家サイドの違いを肌で知れたことでした。

それまでは投資家として、“あるべき論”を語る側にいました。でも、事業家サイドに立つと、「それはわかっているんだけど、できないんだよ!」ということがよくあります。スタートアップの経営陣は株主を含め、多方面から様々なアドバイスを頂きます、もちろん、全てありがたいアドバイスなのですが、10人アドバイザーがいれば、10通りのアドバイスがあるわけです。Aが正解という人はいれば、Bが正解という人もいる、そしてそのアドバイス両方正解です。重要なのは、自分達にとっての正解はどれなのかを決めていかなければならないことです。

スタートアップの経営陣は、正解がどれか分からない中、数多くの選択肢の中から何かを選びとっていかなければいけない。その意思決定の難しさを思い知りました。今までそういった状況を知らず、投資家として助言してきた数々の起業家の皆様に対して「申し訳ございませんでした」と猛省しました(笑)。

大淵:

とはいえ、投資家としてあるべき論を伝えてもらうことは経営者にとってものすごく大事ですし、ありがたかったです。

坂:

伝えるだけではなくて、意思決定をサポートしてあげるような助言をしないと意味がないんだなと学びました。正解はこれだ、と言うのではなく、その会社の正解を作るための意思決定のサポートがVCの役割なんだなと。そこは履き違えていたなと思います。


ビジョン、ミッションを言語化し、採用方針も一新

大淵:

ビジョン、ミッションの言語化も、半年ほどかけて役員で「経営合宿」をして決めていきました。

ただ、大切なのはビジョン、ミッションだけではなく、事業内容や戦略、組織風土を含めてパズルを全部同時並行で揃えること。どこか一つがズレることで総崩れを起こさないように、ビジョン、ミッション、行動指針の設計と、事業戦略を行ったり来たりしながら、ずっと議論していました。

坂:

その間も、ファイナンスが迫ってきていて、ビジョンなんて悠長なことを言っている場合なんだろうか…という焦りもありましたよね。

大淵:

そうそう。その後、ようやくいろんなところでWACULのビジョンや事業内容を話す機会があって、いい反響をいただくことで一つずつ自信にしていったという感じですね。

当時の大変さを振り返ると、IPOに向けた準備フェーズは、やるべきことが明確だったので進めやすくなりました。ジャフコさんへの相談も、「どんな人を採るか、どう売上を上げるか」の2点に絞られていきました。

坂:

採用方針も大きく変わりましたからね。

それまでは、経営陣が組織をリードする中で、「この業務を任せられる人材がほしい」とニーズが細分化されていた。組織拡大フェーズになってからは、マネジメントを含め組織全体を任せられる人、が必要になりました。

大淵:

地頭が良ければ採用!みたいな大雑把なことをしてきたんですが、これからはスキルや経験だけにフォーカスするのではなく、一緒に組織運営をする仲間として、どこまで同じ想いでできるかという“人間と人間”の向き合い方になる。選考時のコミュニケーションをどう変えていくのか、ジャフコさんの採用支援にも助けられました。


デジタルマーケティング領域に留まらないサービス展開を目指す

坂:

2020年2月にマザーズ上場を果たした今、これからをどう見据えていますか。

大淵:

僕らは、データをもとに結果を出す知見を持っています。今は、DX とかデジタルマーケティング領域の支援に留まっていますが、AIによる業務の自動化はもっとあらゆる業態に転換していける。社会全体を、WACULのユニークさで幸せにできるといいな、と思います。

坂:

WACULは、僕の投資判断軸にすごくバチッとはまった企業なんです。

僕は面倒くさいことや、同じことを何度もやることが嫌いなタイプなので、「AIアナリスト」のように、自分が欲しいと思った答えをパッと出してくれて、情報が溢れている中で自分がたどり着きたい答えを瞬時に出してくれるような、相棒みたいなサービスがほしいと思っています。

これからもそういう企業に投資をしていくと思うので、大淵さんが「社会全体を幸せに」するようなサービスを展開していってくれると、投資をしてよかったなと思います。なんだかすごくキレイごとっぽいですけど、割と本心です。

大淵:

本心、伝わっていますよ(笑)。

僕にとって坂さんは、一緒に成長してきた仲間という存在です。ジャフコさんはそんな坂さんをうちに快く出向させてくれた。感謝しかないですね。

ジャフコさんは、事業内容や成長率を実直に見て評価してくれるところが、僕にとっては心地よかったんです。「ベンチャーなのに地味だね」とよく言われるんですが、地味さを否定せずに、数字をきちんと見ている。自分たちが向いていること、やれることをやろうと振り切れたのは、ジャフコさんがいたからだと思います。

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