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「デジタルサービスデザイン」って何?(第3回 サービスブループリント)

三越伊勢丹のデジタルサービス開発において重要な要素となる「デジタルサービスデザイン」について3回シリーズで紹介します!

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■サービスブループリントとは?

前回の記事では、ユーザーエクスペリエンスマップを使い、顧客の感情をデザインすることで、サービス価値の体験プロセスを考えました。

ユーザーエクスペリエンスマップはお客さまとタッチポイントにフォーカスしているため、それだけで現場の業務をデザインできません。現場では、そのタッチポイントを提供したり、運営するためのプロセスが必要になります。

そこで利用するのがサービスブループリントです。サービスブループリントはサービス開発における分析と管理ためのツールとして考えられたものです。1984年、G. Lynn Shostack(リン・ショスタック)氏がハーバード・ビジネス・レビューに寄稿した記事「Designing Services That Deliver」で提唱されました。

サービスブループリントは顧客の行動(アクション)を時間軸に配置しながら、以下のように4つで階層化します。このうちユーザーエクスペリエンスマップは、カスタマーアクションとフロントステージアクションに対応します。
- カスタマーアクション:顧客の行動
- フロントステージアクション:顧客に見えるところで発生するアクション。接客するスタッフの行動やセルフサービスでのシステムの挙動など
- バックステージアクション:顧客からは見えない、裏側にいるスタッフや関係者の行動
- サポートプロセス:組織内のプロセスやスタッフを支援するプロセス

これを整理することでタッチポイントに関わるスタッフ、取引先、パートナー企業、社内システム、データベースなどの間で、相互にどのような情報やモノがやり取りされていくのかを時系列に沿って整理ができます。

特にタッチポイントが複数あったり、関係者や関係システムが多く存在したり、サービスの提供がいくつかの要素で構成する場合、サービスブループリントがとても有効です。

■サービス全体のフロー

YourFit365のサービスブループリントの前に、まずは全体のサービスフローについて説明します。YouriFit365では以下の3つの領域に分類して、全体のサービスフローを取りまとめています。

- マスタ登録:YourFit365をサービス提供する前の領域。「靴の木型データ」やそれに基づく商品情報の登録などを行う。
- 店内:お客様にご来店いただく領域。足形の測定から適合した商品を紹介し、購入履歴の登録やフィッティング結果の登録などを行う。
- 店外:お客様に靴をご購入いただいた後の領域。購入履歴から再購入していただいたり、新たな適合商品の紹介などを行う。


■サービスブループリントでサービスを改善する

実は店頭にはYourFIT365を提供する前から足形計測器が置いてありした。この計測器には、次のような機能がありました。
- 計測結果用紙の印刷:足を計測した後、その結果を紙で印刷する
- 詳細な計測結果の表示:結果の用紙についているQRコードを読み取ると、より詳細な足形情報をパソコンの画面に表示する

足を正確に測るための計測器としては十分な機能ですが、三越伊勢丹の店頭でサービスとして提供するためには不十分でした。
- 計測結果用紙や詳細な測定結果は専門的な内容で、一般人がみてもわからない
- 次回来店時に紙を持ってこないと測定結果がわからない

これをまとめたのが、以下のサービスブループリントです。


そこでYourFIT365では、いくつかの改善を考えていました。それは以下のような点です。
- お客様への説明はわかりやすい情報に絞り、タブレットで見せる
- 計測結果を三越伊勢丹アプリの会員IDと紐付けることで、次回来店時にはアプリの会員証を見せるだけで計測結果がわかる

そこで、YourFIT365ではタブレットが計測器やアプリと連動し、計測結果と会員IDの紐付けをデータベースに保存する必要があります。この作業を計測の後に行うことで、計測結果をタブレットでみることができるのです。
- お客様が足を計測する
- 計測器に表示された足形IDをタブレットが読み込んで連携する
- お客様にアプリの会員証を出してもらい、タブレットが読み込んで連携する
- タブレットに足形情報を表示して、お客様に説明する

また、会員IDがあることで、お客様の悩みや履いた感想、購入した商品などをメモとして取っておく機能を提供しました。これによって、次回の来店時には会員証を見せるだけで、足形情報だけではなく、前回の購入理由や商品も表示され、より満足度の高い接客が可能になったのです。

この流れの中で計測から計測結果の連動を表現したのが以下のようなサービスブループリントです。YourFIT365では計測器、店頭のタブレット、お客様のアプリと複数のシステムを連携させています。こうした流れを時間軸に剃って整理をすることで、システムが何をするのか、スタイリストが何を操作するのかが明確になるのです。


以上、三越伊勢丹のデジタルサービス開発において重要な要素となる「デジタルサービスデザイン」について、3回シリーズでお届けしてまいりました!

この後は具体的な開発フェーズに進めていく「開発ディレクター」の仕事となります。デジタルサービス開発において「デジタルサービスデザイン」から開発ディレクターの仕事に繋げる部分も非常に重要なので、次回はこれまでまとめてきたユーザーストーリーやサービスフローからプロダクトバックログに落とす手法について紹介します。ぜひ次回の記事もご覧ください!

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