春日部市の公共施設リニューアルで起きたこと
「ホームページをもっと良くしたいんです。」
今回のご相談は、そんな一言から始まりました。
ただ、私たちはこの相談を、
単なるWebサイトリニューアルだとは考えていませんでした。
なぜなら、
本当に整理すべきものは、Webサイト自体の見た目や導線ではなく、
「この施設は、誰にどんな価値を届けたいのか」という、組織の共通認識だと感じたからです。
今回ご紹介するのは、
春日部市の公共施設「ウイング・ハット春日部」様で行った、
価値整理から始まったプロジェクトについてのお話です。
課題は「伝え方」ではなく、「価値の共有」にあった
実際に現状を丁寧に見ていくと、いくつかの課題が見えてきました。
たとえば、
- 情報が施設単位で分かれていて、利用者が全体像をつかみにくい
- 初めて訪れる人にとって、必要な情報にたどり着きづらい
- 「ここで何ができるのか」が直感的に伝わりにくい
こうした表層だけを見ると、UIや導線設計の問題に見えるかもしれません。
ですが、対話を重ねる中で見えてきた本質は、もっと別のところにありました。
「この施設は、誰に、どんな価値を届ける場所なのか」
その共通認識が、まだ十分に言葉になっていなかったこと。
ー届けたい想いはある。
ー現場にも熱量はある。
けれど、それぞれが大切にしているものが共有され、ひとつの方向に束ねられている状態ではなかった。
だからこそ私たちは、いきなり制作には入りませんでした。
まず着手したのは、価値を定義するための対話です。
現場を巻き込んだのは、そこに“価値の源泉”があるから
今回のプロジェクトで大切にしたのが、現場の皆さんを巻き込んだワークショップでした。
テーマはシンプルです。
- 私たちは何を大切にしているのか
- 利用者に、どんな時間を届けたいのか
- この施設は、地域にとってどんな存在でありたいのか
普段は、それぞれの持ち場で仕事をしている方々が、立場を越えてひとつのテーマについて話す。
それだけでも、新しい景色が生まれます。
さらに印象的だったのは、参加された方々の声でした。
「こういう場って、意外と今までなかったですね」
「同じ施設の中でも、関わる人が違えば見えている景色も違う。
でも話してみると、目指したいことは近かったのだと気づきました」
「利用者に笑顔になってもらうなら、まず自分たちが笑顔で働ける場であることも大事だよね。」
この対話を通して少しずつ見えてきたのは、
施設として提供したい価値と、そこで働く人たちが目指したい姿が、実は深くつながっていたということでした。
生まれたのは、「共通言語」だった
そうして整理された想いをもとに、生まれたコンセプトが、
「JOY ― 春日部の笑顔を結ぶコミュニティ」
という言葉です。
このコンセプトは、私たちが外から与えたものではありません。
現場の皆さんの対話の中から生まれてきたものです。
だからこそ、この言葉には強さがありました。
この施設は何を届ける場所なのか。
利用者に、どんな時間を過ごしてほしいのか。
地域の中で、どんな存在でありたいのか。
その問いに対する答えが、シンプルに、でも芯を持って込められていたからです。
そして何より大きかったのは、この言葉が組織の共通言語になったことでした。
判断に迷ったとき、立ち返る場所になる。
新しい取り組みを考えるときの軸になる。
日々の接客やコミュニケーションの土台になる。
コンセプトとは、飾るための言葉ではなく、行動の基準になる言葉なのだと、改めて感じる瞬間でした。
その後に初めて、Webサイトを設計した
価値の軸が定まったあとで、ようやくWebサイトの設計に入ります。
ここで意識したのは、デザインの新しさよりも、利用者体験のわかりやすさでした。
たとえば、
- 施設単位ではなく、「目的」から情報を探せる構造にする
- 初めて訪れる人でも迷わない導線設計にする
- 「ここで何ができるか」がひと目で伝わる情報設計にする
表面的な見た目を整えるのではなく、
施設の価値が、利用者に自然と伝わる体験を設計する。
その視点で、一つひとつを組み立てていきました。
本当に変わったのは、サイトよりも「組織」だった
公開後、Webサイトに対しては嬉しい声をいただきました。
「以前よりずっと見やすくなった」
「利用者目線でつくられているのが伝わる」
「施設の魅力が、前よりよく分かる」
ただ、今回のプロジェクトで最も印象的だった変化は、別のところにありました。
それは、組織の中の会話が変わったことです。
- 以前より意見が出やすくなった
- 「自分たちは何を大切にするか」を共有できるようになった
- 主体的に動く人が増えた
Webサイトは、あくまで成果物のひとつ。
でも、その手前で行った対話のプロセスが、組織そのものに変化を生んでいました。
「何を作るか」の前に、「なぜ作るか」を揃える
今回のプロジェクトを通して、改めて実感したことがあります。
それは、
制作の成果は、作る前の整理で大きく変わる。
ということです。
- 方向性が曖昧なまま進んでしまう。
- 社内で意見がまとまらない。
- 作ったのに、思うような成果につながらない。
こうした悩みの背景には、設計や制作の問題ではなく、
価値の共有が曖昧なことが隠れているケースが少なくありません。
だから私たちは、「つくる前の対話」を大切にしています。
言葉を整えること。
価値を見つけること。
目指す方向を揃えること。
その土台ができて初めて、伝わるWebサイトが生まれると考えているからです。
そしてこれは、
私たちの仕事そのものに通じる考え方だと思っています。
正解が決まっている仕事ではありません。
だからこそ、
「どうすれば相手に届くのか」
「企業の変化に、どう伴走できるのか」
を考え続けられる人と働きたいと思っています。
コムデでは現在、
コミュニケーションプロデューサーを募集しています。
経験の有無よりも、相手を理解しようとする姿勢や、本質的なコミュニケーションに向き合えるかを大切にしています。
まずはカジュアルにお話しできれば嬉しいです!